進化(後編)◆1qmjaShGfE



ケンシロウは初めてギャランドゥと遭遇するが、その姿は先だって戦ったDIOのスタンドに酷似していた。
故に、ジグマールの雄叫びに合わせて殴りかかってくるギャランドゥも、それと同種の物と見て対応する。
ギャランドゥから猛然と降り注ぐ拳の嵐。
その一発に焦点を合わせ、カウンターで拳をねじ込む。
「おぼっ!」
そんな悲鳴と共にジグマールの顔が変形する。
進化の初期であるせいなのか、ギャランドゥを自在に操るのに感覚のリンクが必要になっている。
そんな真似をすれば当然こうなるのだが、ジグマールは委細構わずそうし続ける。
ジグマールの事情を知らないケンシロウは、ジグマールのアルターをDIOのそれと同じ特性を持っていると認識した。
ギャランドゥは構わず拳を振り上げる。
今度は一発目から合わせる。
「はぼふっ!!」
それでもギャランドゥは拳を止めない。
次こそはと両手を用いて乱打戦を挑んで来る。
ケンシロウはその全ての拳打に合わせて、カウンターの拳を叩き込んでやった。
「おぶっ! おぼっ! ほぼろわっ! あがぐえっ! ひひぇい!」
一発ごとにジグマールから悲鳴が上がるも、ギャランドゥがその拳を止める事は無い。
ならばケンシロウも拳を止める理由なぞ無い。
ジグマールが、この人形がそれを止めるまで、その拳全てに合わせてこちらの拳を撃ちこんでやろう。
「ほぉ~あーたたたたたたたたたたたたたたた!!」
ジグマールは一歩も引かない。どれだけ殴られても、どれだけ痛い思いをしても。
その意思の強さは、信念の頑なさは、確実にギャランドゥに伝わっていく。
徐々に速度と力を増していくギャランドゥ。

「わらひぃが! 頑張ららいと! ギャランドゥが戻ってこれらいんだああああああああ!!」

遂にケンシロウをして応じきれない拳が飛んで来る。
「くっ!」
その拳を、ケンシロウはカウンターではなく、手の平で受け止める。
「ほぉぉぉぉあああああああああ!!」
ケンシロウはあらん限りの力を込め、受け止めたギャランドゥの拳を握り締める。
「ほあたぁ!!」
まるで熟れたトマトか何かのようにその拳を握りつぶすケンシロウ。
それでも、ギャランドゥは止まらなかった。
「ほれがろうひたあああああああ!!」
残った拳を振り上げ、ケンシロウに殴りかかるギャランドゥ。
その拳も、ケンシロウの手に受け止められる。
『ギャランドゥはもっと早かった! もっと強かった!』
今度はケンシロウにも握りつぶす余裕なぞ無い。
満身の力を込め、押し込まれんと堪えるケンシロウ。
『ギャランドゥは強かったんだ! 自我を持つ程に! 次元すら越えてしまう程に!』
「らああああめえええええええるううううううなあああああああ!!」
拮抗していた力と力は遂にその均衡を破り、ケンシロウは拳の勢いに殴り飛ばされ建物の外へと吹っ飛んでいく。
ギャランドゥはそれで止まらない。
吹っ飛んだケンシロウを追って建物の外へと飛び出すが、それをケンシロウは同じく拳で迎え撃つ。
「おおおおぉぉぉ!! ほあたぁ!!」
振り下ろされるギャランドゥの拳に、自らの拳を叩き込むケンシロウ。
一瞬、その場で完全に止まる両者の拳。
直後、ギャランドゥの腕にヒビが入ると、その拳が、腕が粉々に砕け散る。
ジグマールは発音が怪しくなっていた自分の顎を、壁に叩きつけて元の状態に戻す。
「引くな! 怯むなギャランドゥ! 一歩たりとも下がる事は許さんぞ!」
自分の腕も各所から血を噴出しているが、それに構うそぶりは欠片も見られない。
ハタ目に見てわかるほど、ギャランドゥの右足が膨れ上がる。
「蹴散らせえええええええ!!」
ギャランドゥは丸太のように太くなった右足を、ケンシロウ目掛けて振りぬく。
しかし、ケンシロウもそれを避けようとはせず、真正面から受け止めてやると言わんばかりにその足目掛けて蹴りを放つ。
「ほぉあたあああっ!!」
二人を包む空気が破裂する。
大地が跳ね跳び、二人を中心に大きくへこんで弾ける。
「ほおあああぁっ!!」
「ぬああああぁっ!!」
二人の力が反作用を生み、同時に二人が弾け飛ぶ。
空中で半回転して、着地するケンシロウ。
いや、弾けとんだのは一人だ。
ギャランドゥは先ほどの場所から動いていない。
何故なら、吹き飛ぶはずのギャランドゥを駆け寄ったジグマールが後ろから支えていたのだから。
「絶対に下がらせん! そう言ったぞケンシロウ!」
涙の跡、殴られた傷、噴出した血、こすりつけられてついた汚れ。
それらでぐちゃぐちゃになったジグマールの顔には、しかし今までに無い、輝きが見てとれた。
ケンシロウは、この戦いで初めて北斗神拳の構えを取る。
「来いジグマール。北斗神拳の真髄、その体に焼き付けてやろう」
「無論だ! 決着を付けるぞケンシロウ!」

ジグマール操るギャランドゥは進化に進化を重ね、ケンシロウをすら凌ぐ速度と力を発揮していた。
ギャランドゥは確実にアルターとして成長を遂げている。
その成長は留まる事を知らず、一撃ごとに進化していく。
しかし、それをすら凌駕するのが北斗神拳。
純粋な力でいかに勝ろうとも、単純な速度がいかに優れていようとも、その素手での戦闘に特化した技術体系は容易くこれを粉砕する。
激戦を手放したジグマールは、傷の治癒を行う事が出来ない。
確実にその身にダメージは蓄積されていく。
本来の彼のタフネスは、実は相当高い物である。
カズマの全力の拳を受け、劉鳳にズタズタに切り刻まれて尚命があるそのしぶとさは、特筆に価する能力だ。
だがそれにも限度がある。
それを、ジグマールは無視して走り続けた。

「ケンシロウ! まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだあああああああああ!!」

砕けた拳をケンシロウに向けて振り下ろすギャランドゥ。
ジグマールの意思に応え、既に数度の再生を行っているが、その都度ケンシロウに砕かれているのだ。
「あたぁっ!」
ギャランドゥの膝がへし折れる。
「ほあたぁ!」
その頭部が半ばから吹っ飛んで砕ける。
「ほぉぉぉあたたたたたたたたたたたたたたあたぁっ!」
連打に次ぐ連打で全身がバラバラに砕かれる。
「この程度で終わるものか! 進化は何処までも続くからこそ進化なのだ!」
砕けた側から再生していくギャランドゥ。
再生する度、強く激しく進化していくも、ケンシロウは真っ向から受け止め、再生する側から打ち砕いていく。

エレオノールは、二人の戦闘を呆然とした顔で見つめている。
「御前……一体、何が二人をここまで……」
御前も似たような顔で二人を見つめている。
「おかしいだろ二人共。何だよこれ、意味がわかんねぇ……」
かつて同盟を組んだ男ジグマール。
少なくともエレオノールの知る限りにおいては、こんな無茶な戦い方をするような男ではなかった。
だが、今の彼はまるでケンシロウを倒す為に自分は生まれて来たとでも言わんばかりに、全てを投げ打ってこの戦いに挑んでいる。
「あれが、アルター……」
ジグマールの不屈の闘志に力が応える。
注意深く二人を見ていたエレオノールは気付いていたのだ。
ジグマールの怪我が、少しづつ治っていっているのを。
ケンシロウの勝利を疑う訳ではないが、それに立ち向かうジグマールの姿に、恐怖とそれ以外のあまり認めたくない感情を持っている事は、事実であった。

それは唐突にやってきた。
ジグマールは待ち焦がれたその瞬間を、実はケンシロウを殴らせる事に夢中でまるで気付いていなかった。
「おいおい、せっかく戻ったってのに、挨拶も無しかジグマール?」
ギャランドゥがジグマールの指示通りに動かず、今まで絶対に許さなかった後退を始める。
ケンシロウは様子が変わった事に気付き、警戒しながらそちらを見ている。
「……え?」
「えじゃねえよ。ようやく戻って来た相棒に、おめえは一言も無いのかって言ってんだ」
そんな事を言いながら、ギャランドゥはいつものあのかっこいいドリルになってる手でジグマールの頭をぽんと叩いた。
「良くぞ……良くぞ戻ったギャランドゥ!! 私は君を待っていた!」

これで、最後の賭けを挑む為の全てのカードが揃った。
完全に元の力を取り戻す事に成功した証、それがギャランドゥの自意識。
私は、ここから更に先へ行く。
それが出来ねばこの場で死んでやるわ!!

「ギャランドゥ、私のやりたい事がわかるかい?」
「当たり前だ。ここまで急速に俺を引っ張り上げたお前なら、必ず出来る!」

ジグマールとギャランドゥは並んで立ち、アルター力を最大限にまで引き上げる。
「最大限? 冗談ではないな」
「全くだ。俺達に、アルターに、限界なんて存在しねえんだ!」
ジグマールの側にある電信柱、それが一本丸々消滅する。
ギャランドゥの背後にあったクリーニング屋の店舗が完全に消えて無くなる。
それらはアルターの青白い輝きとなり、ジグマールを、ギャランドゥを包み込む。

「行くぞケンシロウ! マーティン・ジグマール一世一代の大技! 堪能して死ね!」

二人が同時に片腕を天に向けて突き上げる。

『 人 !』

その指先から、全身から噴出すアルターが二人の周囲で嵐となる。

『 間 !』

限界を遙かに超越したそのアルター力を、二人は一つの意思の元に纏め上げる。

『ワーーーーーーーーープ!!』

二人が振り下ろした腕、その先に居たケンシロウは、北斗の技も奥義も出す暇すら与えられず、その場から消失した。

ほんの僅かの時間差も無かった。
ケンシロウはそれを感じ取れる能力を持つ。
ジグマール達の手から何かが放たれる。
そう感じたケンシロウはその場から飛びのいたのだが、確実にかわせる間合いでありながら、次の瞬間にはここに居た。
目は見えずとも感じられる様々な情報全てが言っている。
ここは、今までジグマールと戦って居た場所ではない、何処かであると。
それが何処なのか。
それは皮肉な事にケンシロウを弱体化し、その行動に制限を加えている首輪が知らせてくれた。

『禁止エリアに抵触しています。あと30秒以内にここを脱出しなければ爆発します』

どちらに向かえばよいのかわからない。
だが、この場に留まっていて良い事も無さそうだ。
ケンシロウは猛然と走り出す。
禁止エリアの大きさを考えるに、方向さえ間違えなければケンシロウの足ならば充分その範囲から抜け出せるはず。

『あと20秒……』

走りながら周囲の気配を探るも、何処からも人の気配を感じない。

『あと10秒……』

さっきからまっすぐに向かっているこの方向からは、相変わらず何の変化も感じられない。

『あと5秒……』

恐怖は無い。例え行く先に絶望しか無かろうと、それでも進むが北斗の道なのだから。

『あと1秒……』

最後の瞬間まで、勝利を追い……

「ユリア……」

こうして、北斗神拳千八百年の歴史は、あまりにも呆気なくその幕を閉じたのだった。

完全に消失したケンシロウ。
手ごたえはあった。奴は、確実にジグマールの術中にあった。
ならば、これは、つまり……

「勝ったぞ!! 私の勝ちだケンシロウ!! 見たか赤木! この私の! 勝ちだああああああああああ!!」

両腕を高らかと振り上げ、歓喜に叫ぶジグマール。
全身を覆う傷の痛みも吹っ飛んだ。
自分が今どんなみっともない格好をしてるかも、まるで気にならない。
体の奥底から湧き上がる達成感に、思う様その身を任せていたい。
こんなに爽快で晴れやかな気分は、生まれて初めてだ。
ギャランドゥがジグマールにすがりついてくる。
「見たかいギャランドゥ! 私がケンシロウに勝った……」

『……制御限界値を越えました。ただちに首輪を爆破します』

「いいから首輪を外せジグマール!」
ギャランドゥの必死の形相を、ジグマールは不思議そうな顔で見返し、そのままの顔が爆発音と共に宙に舞い上がった。

「ジグマーーーーーーーール!!」

絶叫するギャランドゥ。
その視界が反転する。
ジグマールを映していたはずの目は、地面を映し、背後にあった崩れかけたビルを映し、漆黒の空を映し、そして最後に、目までを覆うヘルメットを被った男を映して、その機能を失った。

首を失った二つの体が折り重なる様に倒れ臥す。
最後にその場に立っていたのは、ライダーマンのヘルメットを被り、ライドルをその手に下げた川田章吾であった。

状況についていけないエレオノールは御前と共に、その戦場に立っている川田と、首を失った二つの死体を見つめている。
言葉も出ない、思考が完全に停止してしまっている。
そんな二人に、どうやら再生はしてこないようだと安心した川田は、常と変わらぬ口調で問いかける。
「よう、幾つか聞きたい事があるんだが、いいか?」
その声で我に変えるエレオノール。
「な、何が起こった!? ケンシロウは何処へ行ったのだ!?」
表情は見えないが、その髭を撫でる仕草から、彼がどう応えたものか考えているのではと思われた。
「あくまで俺の推測にすぎないが、それでも良けりゃ聞くかい?」
御前と縦に並んで同時に首を縦に振るエレオノール。
「まずはケンシロウって男だが、奴はおそらくジグマールのワープによって何処かに飛ばされたと俺は考えている」
「そんな事が出来たのか奴は!?」
「出来なかったんだろうな。だが、見ててわかったろ。ジグマールは戦闘中とんでもない速度で成長していった。当人は進化とか言ってたがね」
川田はライドルを脇に挟むと、両手を使ってタバコを取り出し火をつける。
この話に少し時間をかけるつもりのようだ。
「奴の技、人間ワープは元々自分だけのワープ能力だったようだが、そいつを他人にも仕掛けられるよう進化した。そう考えるのが妥当だわな」
「ではケンシロウは何処かに飛ばされたというのか! それならすぐに探しに行かなければ!」
手をひらひらと振る川田。
「よせよせ、無駄な事だ。ワープでどれだけの距離飛ばせるかは知らねえが、少なくともケンシロウを禁止区域に放り込む程度の距離は可能なんだろうよ。だとしたら、奴はもう生きてねえだろ。でもなきゃ奴のあの勝利宣言の意味がわからん」
「そんな!?……そんな馬鹿な事が……あのケンシロウが死ぬはずが無いだろう! あんなに強いのだぞ彼は!」
「らしいな。初めて見た俺もそう思ったよ。ジグマール大逆転って所だ。もっともその代償に奴は命を支払う必要があったみたいだが」
そこで御前が口を挟む。
「そうだ! 何であの男の首輪が爆発したんだよ! それに、お前は何なんだよ! ジグマールの事良く知ってるみたいだし、ジグマールの仲間なんじゃないのか!」
川田は二人の疑問に一つ一つ丁寧に答えてやる。
「これも予想に過ぎないがね。首輪の制御能力すら越えるジグマールの進化って奴に、首輪が緊急避難的な対応したって話じゃねえのか? ありえねえ話でもねえだろ」
推論ばかりで確たる根拠も無いが、川田はこの持論に結構な自信があった。
「そして俺が奴を斬った理由だが、ジグマール達の身につけた新しいワープの力の事考えりゃ当然の行為だと思うがね」
「何故ジグマールの力が関係あるのだ?」
そう問うエレオノールに、川田は失望する。
もう少し知恵の回りが早いと思っていたようだ。
「見ただけで相手を好きな所に飛ばせる能力。こんな馬鹿げた無敵な能力持った人殺し放っておけるかよ。ジグマールの能力がそれと知らない相手なら百回戦って百回勝てるぜ」
そこから先は、言っても無駄なので川田は言わなかった。
その能力運用をジグマールが考えた場合、優勝するのに最早協力者は不要となる。
後は、ジグマールの能力を知ってしまっている川田、エレオノールと御前さえ消せば、ジグマールの無敵は約束されたようなものだ。
喜びに両腕を振り上げるジグマールを見ながら、追い詰められた川田がジグマールとギャランドゥ双方を消す機会を伺っていた所、首輪が反応してくれた。
後は首輪の爆発にタイミングを合わせて、残るギャランドゥの不意を突いて一撃で殺すのみ、という話だったのだ。
「そういう訳だ。んでそっちの質問には答えたんだ。俺の質問にも答えて欲しいんだがね」
突然のケンシロウの死、それを受け入れられず混乱するエレオノールは、言われるがままに頷く。
「その銀髪と綺麗な面、エレオノール、だよなアンタ。ジグマールと同盟組んでると聞いたが……その敵とつるんでるってなどういう話だい?」
川田の言葉から推察される事実。
川田はエレオノールが殺し合いに乗っている事を聞いている。
「わ、私は……もう人殺しはしない。ケンと御前と一緒に、この企みを打ち砕くと決めたんだ」
しばしの沈黙。
それを破ったのはエンゼル御前だ。
「そうだよ! エレノンはもう殺し合いなんてしないのさ! 俺が保証してやるさ!」
川田は、その右手をエレオノールに差し出した。
「そうかい、俺は川田章吾だ。あんたが本気でそう思ってるってんなら俺達はこれから一緒にやっていけるな」
その手を取ろうとエレオノールが伸ばしかけた手を、御前が止める。
「待てよ。お前はジグマールと一緒に居たんだろ。だったらお前も殺し合いに乗ってるって事じゃないのかよ」
愉快そうに笑う川田。
「エレオノール、あんたならジグマールの性格良くわかるよな。知恵は回るがお調子者でプライドが高い。そんな奴を言いくるめて殺されないようするのはさして難しい事じゃない、そうだろ?」
「そうなのエレノン?」
エレオノールは考え込んでしまう。
ただでさえ頭が混乱しているのだ、そこにこのように判断に迷うような事を言われても、即断は出来ない。
「確かに、ジグマールはお前の言う通りの男だが……」
「悪いが一から十まで全部信用させられるような証拠なんて持ち合わせちゃいない。ここは信じてもらうしかないんだが、もし信じてもらえないのならせめて情報交換ぐらいはしたいんだが……それもダメかい?」
エレオノールは一瞬計算高いしろがねとしての思考が働きかけるのを、大きく首を振って打ち消す。
「いえ、貴方を信じます。私はエレオノール、こちらはエンゼル御前。私の大切な仲間です」
エレオノールのそんな迷いと決断が見て取れた御前は、嬉しそうに頷いた。
「おっけー! エレノンがそう言うんなら俺も信じてやるよ! よろしくなしょーちん!」

「川田、その、ケンは……本当に死んでしまったのですか?」
情報交換をしようという事になり、開口一番エレオノールはそんな事を川田に尋ねる。
「確認出来るのは次の放送の時だ。もし無事ならあれだけの男だ。それまでに倒されるって事ぁ無いだろ」
エレオノールは川田の言うケンシロウの死をどうしても認める気になれなかった。
そんな事、絶対にあって欲しく無い。
「とりあえず、エレオノールや御前が今まで出会った奴の事、教えてくれないか」
そうして二人の口から語られる話を聞き、川田は内心、苦虫をまとめて1ダース近く噛み締めてしまったような気分になる。
『……そうかい、次は泉こなたの情報が来るか……くそっ、何だってんだ畜生!』
しかしそれらを聞いて、ようやく川田は自分達とは違う場所で起こった一連の出来事の流れを知る。
『つまり、喫茶店を中心とした集まりがあり、そこにDIO、範馬勇次郎といった連中が絡んできてると』
二人の話から聞けた生存者と、名簿を照らし合わせる。
川田が直接知る生存者は、ヒナギク、ラオウ、赤木、エレオノールの四人のみ。
ここに、泉こなたと同行していた男パピヨン、ジグマールを追っていったはずの独歩、超の付く危険人物範馬勇次郎、ジグマールから聞いた柊かがみの情報が加わる。
残る不明の人物は、劉鳳、服部平次、ジョセフ・ジョースター、江戸川コナン、村雨良の六人。
川田は詳細を若干変更しながらも、素直に自分の持つ情報を二人に分け与える。
これらを共有しながら、今後の行動を考えようとした矢先、御前からその言葉が漏れた。
「どっちにしてもこなたん学校に居るんだし、独歩拾ったらすぐ学校行くのがいいんじゃない?」
流石にその言葉は聞き逃せない。
「……何? ちょっと待て、泉こなたは学校に居る……のか?」
あの時は髪の色まで良く見えなかったが、まさか、あそこに居るのが泉こなただったと?
「ん、確かにケンがそー言ってた。赤木って奴と二人でそこ行ってるって」
『津村の野朗、お前が外見特徴もう少し丁寧に説明してくれてりゃ、こんな事に……』
本音を言わせてもらえば、川田は泉こなたや柊かがみを自らの手で殺したくは無かった。
気が付いたら何時の間にか誰かに殺されていた。こんな展開が理想だったのだが、やはり世の中そんなに甘くは無いらしい。
御前とエレオノールの話を整理すると、学校には泉こなた、赤木しげるの二人が居て、そこにパピヨンと言う男が戻る予定らしい。
パピヨンという男は、御前の話によると人間離れしている、というか人間ではない模様。
泉こなたは基本無力な女子高生と聞いているので、赤木しげるが本命、対抗パピヨン、大穴泉こなた、といった所か。
『段々絞れて来たな……俺の復讐を邪魔してくれやがった野朗は』
「良し、それじゃあとりあえず移動するとしようか。俺は荷物取ってくるからそこで待っててくれ」
そう言い残して自分の荷物とジグマールの荷物を回収する川田。
マイクロウージーにアラミド繊維内蔵ライター、スタングレネードに、核金激戦とヘルダイバー。
これにハルコンネンにライドル、ライダーマンのヘルメットとなるのだから、ちょっとした戦争気分だ。
重量のある物はヘルダイバーに乗せ、ハルコンネンを抱え、ヘルダイバーを押しながら戻る川田。
「よし、距離は……こんな所か。この爆裂鉄鋼焼夷弾ってな近距離で使うようなものでもないしな」
エレオノールと御前は馬鹿面下げてこっちを見ている。
そこに川田はハルコンネンを向け、引き金を引いた。

あのケンシロウがジグマールに倒された。
しかしそのジグマールもまた、首輪と川田によって亡き者となった。
急な話すぎて、何が何やらわからない。
ケンシロウには返しきれない恩がある。もっと色んな事を返さなければならないのに。
心の整理が全くつかないままに、川田という男と同行する事になった。
とにかく、今は殺し合いに乗っていない全ての人の為に、出来る事をやるしかない。
そう思って顔を上げたエレオノールの視界に、長大なライフルを構える川田の姿が映った。
「え……」
「エレノン! 腕を奴に向けてあげて!」
御前が怒鳴る。
言われるままに腕を上げると、御前が腕に弓と矢を作り出し、それを放つ。
「間に合えっ!」
そのすぐ後だ、大量の炎がエレオノールを包み込んだのは。

噴き上がる炎に視界を奪われる。
あの人形、ハルコンネンの弾に矢をブチ当てやがった。
信じられない事をする。
それでも被害はあの女の方が大きいだろうが、あの人形の矢は厄介だ。
その威力の程はわからないが、少なくとも今の川田を貫くぐらいは簡単にやってのけるだろう。
こんな芸当の出来るエレオノールとの射撃戦はまずい。ならばこの炎に紛れて接近するか?
いや、この炎はすぐに晴れる。今の射撃で距離も開いただろう。
まっすぐに突っ込むのはリスクが大きすぎる。
そこまで瞬時に判断し、川田はこの炎に紛れてヘルダイバーで逃亡する事を選んだ。
最高時速六百キロ、加速度もそれに相応しい力を持つヘルダイバーは、あっという間に川田を御前の射界から連れ去ってくれた。

「エレノン! しっかりしろエレノン!」
息が苦しい、全身が焼けるように熱い。
「起きろよエレノン! 頼むよ! まだ間に合うから武装解除って叫ぶんだ!」
「……ご、ぜん?」
「エレノン! 武装解除だ! そうすれば核金になってエレノンの治療が出来る! だから早く! そのまま意識無くしたらエレノン死んじゃうよ!」
御前の言葉は、いつだって安心出来るし心から信頼出来る。
だから、それに逆らう理由なんて一つも無かった。
「……ぶ……そう……かい…………………じょ」
御前の姿が消える。
後は、もうわからない。

【ケンシロウ@北斗の拳 死亡】
【マーティン・ジグマール@スクライド 死亡】
【残り15人】


【D-3 西部/2日目 黎明】

【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労大 全身に火傷 気絶 (核金により治療中)
[装備]:エンゼル御前@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり)
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ)
[思考・状況]
基本:主催者を倒す。
1:ケンシロウ、エンゼル御前と共に、独歩を救いに向かう。
2:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。
3:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
4:一人でも多く救う。
[備考]
※ジグマールと情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶を取得した可能性があります。
 が、断片的かもしれないし、取得していないかもしれません。
 才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※川田と情報交換をしました。

【D-3 西部/2日目 黎明】

【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康 、小程度の疲労、ヘルダイバーに乗車中、ライダーマンに変身中(ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITSを装着中)
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン4、ジッポーライター、 ライドル@仮面ライダーSPIRITS
    バードコール@BATTLE ROYALE アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙、激戦(核鉄状態)@武装錬金
    ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS
[道具] 支給品一式×3、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた、ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン 、
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(4本消費)、ツールナイフ、つかさのリボン 首輪探知機@BATTLE ROYALE
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾3発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、不明支給品1(未確認)、
[思考・状況]
基本行動方針:最後の1人になってつかさを生き返らせ、彼女を元の世界に戻す。
1:学校を襲撃する。
2:斗貴子を殺した参加者を殺害する。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
※津村斗貴子と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。
※つかさの遺体を、駅近くの肉屋の冷凍庫に保管しました。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的は、①殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、②最強の人間の選発、の両方。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくためのもの。 零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※覚悟、斗貴子は死んだと思っています
※ライダーマンに変身中のため身体能力が向上しています。勿論、カセットアームなどの機能はありません。
※ライドルの扱い方を一通り理解しました。
※エレオノール、エンゼル御前と情報交換をしました
※赤木しげる、泉こなた、パピヨンの内の誰かが斗貴子を殺した犯人だと睨んでいます


227:鬼が来たりて笛を吹く 投下順 229:心を縛るものを ひきちぎればすべてが始まる
227:鬼が来たりて笛を吹く 時系列順 229:心を縛るものを ひきちぎればすべてが始まる
225:こころはタマゴ ケンシロウ 死亡
225:こころはタマゴ 才賀エレオノール 233:決戦
221:たとえ罪という名の仮面をつけても―― 川田章吾 232:神に愛された男
221:たとえ罪という名の仮面をつけても―― マーティン・ジグマール 死亡