神に愛された男(後編)

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神に愛された男(後編)◆WXWUmT8KJE



 カラッと降り注ぐ陽光の胡散臭さに赤木は思わず目を細める。
 ここは偽者の空間。ゆえに、目に映るものはすべて信じられない。
 流れる砂漠の砂も、身体を吹きぬける風も、天空から降り注ぐ太陽の光も、すべて偽者。
 にもかかわらず、悠々と赤木は歩く。生まれついての自信、不安など捨て去ったかのように。
 やがて、視界に黄金の怪人JUDOが入る。
「ここがキサマらが目指す、我が牢獄だ」
「クク……なるほど。ここに閉じ込められている……というわけか」
「うむ。せいぜい、我が抜け出れるのは、その首輪サイズくらいだ」
「……俺たちをずっと見ていた、というわけか。
まあ、あの時は盗聴器から気づいて、何らかのアクションが来ると思っていたがな」
 赤木の言葉に、大首領は人間で言えば、『呆れる』という行為をとる。
 赤木の行動は余りにも分の悪い賭けである。主催陣を挑発するような物言い、下手をすれば先ほど首輪が遠隔操作されたように、命を失いかねない。
 ただ、大首領と話をする。そのためだけの行動としては、普通はありえない。
「ほう……お前は、死ぬかもしれないという恐怖はないのか?」
「……ありはするさ。5%くらいはな。だが……それもよりも恐れるものがあるッ!」
 大首領は不思議そうな視線を向ける。まるで、ペットが急に体調が悪くなったのを気にする飼い主のような姿だったが。
「俺が俺らしく死ねないことだ……」
「死を望む人間か。珍しい……いや、違うな。いたな、死を厭わない、裏切り者たちが」
 大首領が何かを思い出すように天を睨みつけている。
 赤木には関係ない。誰と重ねられようとも、自分は自分だ。
 仮面ライダーと呼ばれた男たちの話に、赤木は一切興味を示さなかった。


「JUDO……一つ賭けをしないか?」
「賭けだと?」
 赤木がデイバックから取り出したのは、お椀とサイコロ。
 どちらも学校から調達したものだ。
「半丁賭博という賭け事がある。二つのサイコロをこいつの中で転がし、下に降ろす。
二つのサイコロの目を足した数が……丁(偶数目)か半(奇数目)か」
「それくらい我が力で臨む結果を出せる」
「いいや……あんたは出来てもやらない。
分かっているはずだ……これは久しぶりの……勝敗の分からない勝負のチャンスだと……」
 赤木はさらに大首領に近寄る。
 鷲巣の時に感じた共感を、鷲巣以上に大首領へと赤木はぶつけた。まるで、恋焦がれていたように。
「JUDO。俺は賭けよう……この半丁賭博に……俺の命を……!!」
「ほう……」
「こいつを俺が振り、降ろした時の目……JUDO、お前が勝てば俺は自らの手で首を切ろう……。
お前に俺が勝ったら……そうだな。勝ったとき、一つ軽い願い事をかなえてもらおう……」
 どうだ、とJUDOに赤木は声をかけて、サイコロを弄ぶ。
 大首領は呆れたような視線を赤木へと向けた。ため息まで吐いている。
「余りにも、キサマが死ぬ確率が大きいぞ。我はその目を操作するなど、造作もない。
たとえしない、と我が約束をしたとしても、それを破ってお前を殺すかもしれないが?」
「それなら、俺はそこまでの男だったと言うことさ……」
 常人では考えられないほどの狂気の行動。
 赤木はこの殺し合いを潰すことに全力を賭ける、といった証明である。
 もともとこの殺し合いを潰す確率など、無に近い。この機会、大首領との接触は殺し合いを潰す確率を上げるために必須。
 命ごとき賭けなければ、おおいな利益は得られない。
 とはいえ、大首領との接触事態、幸運中の幸運、奇跡に近い。
 首輪まで外れた。いつ赤木の運が尽き、無残に死ぬか。
 生か死か、その狭間にいることを自覚しながら、赤木はなお笑う。
 そこが、自分の居場所だと言わんばかりに。
 大首領は数秒赤木を見つめていたが、やがて返事をする。
「いいだろう。その戯れ付き合ってやる」
「感謝する……」
 大首領が約束を守る保証などない。そのなかで、赤木はお椀に二つのサイコロを放り投げ、地面に振り下ろした。
 膝をついたままの姿勢で、視線を大首領へと向ける。
 無機質な、それでいて圧倒的な威圧感を持つ大首領を前に、赤木は口を開いた。
「半か…………丁か…………」


 窓から覗く空の闇が晴れていき、紫色へと変化していくなか、赤木は悠々とタバコをふかしていた。
 外から聞こえる雨の音が心地よい。
 久々のニコチンの味を感じながら、静かに煙を吐いた。
 見る人間が見れば、神に対して不遜だと罵ったのだろう。
 赤木は北にある神社の、ご神体が祭られる社で堂々とタバコをふかしていたのだから。
 最も祭られているのは、この殺し合いの参加者にとって馴染み深いもの。
 誰もが目撃したもの。
 強化外骨格、大首領の魂を宿す存在。
 赤木は勝負に勝った。戦利品を手に強化外骨格に背を向ける。
 台座に機械に組み込まれた核鉄を――赤木は知らないが、核鉄を組み込んだ機械をRS装置という――を尻目に。
 みたところ、厳重に固定されて、生半可な行為では外れないようになっている。爆弾も見え隠れするが、赤木は興味はない。
 扉に手を当て、赤木は一旦後ろを振り向いた。
「……JUDOだな。機会があれば……また会おう」
 初めて会えた同類よ、赤木は内心でそう言い残し、扉を開ける。
 その先には――


【D-1 神社・強化外骨格が祭られている社 二日目 早朝】


【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、眠気、首輪がありません。
[装備]:基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)、マイルドセブンワン二箱
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、
 水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)
[思考・状況]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:大首領との再会。バトルロワイアルに引きずり込む。
2:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
3:強敵を打ち破る策を考えておく
4:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。

[備考]
※マーティン・ジグマール、葉隠覚悟と情報交換しました。
 またエレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法は、スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要なにあると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。
※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。
※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。
※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ていますが、それでも彼女は死にました
※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。


『Dr伊藤』とのチャットによりわかった事
1:首輪は霊的に守護されている
2:首輪の霊的守護さえ外せれば、後は鋭い金属を継ぎ目に押し込む程度で爆発無しに外せる
3:既にその霊的守護を外した者が居る。そいつが首輪を外したかは不明だが、おそらく外してはいない
4:監視カメラは存在せず。首輪についた盗聴器のみでこちらを監視。その監視体制も万全ではない
5:敵には判断能力と機転に乏しい戦闘員が多い
6:地図外に城? がある
7:城には雷雲を突破しなければならず、そのためには時速600キロ以上の速度が必要

※大首領との接触により、大首領とBADANとの間のズレを認識。


【その他共通事項】
※社には強化外骨格が祭られており、RS装置に核鉄『バスターバロン』が組み込まれています。
 また、固定がされており、RS装置が外れると、核鉄も一緒に爆破するようになっています。



 降り注ぐ日差しの中、大首領は地面に置かれたお椀とサイコロを見つめる。
 賭けは赤木の勝ち。
 サイコロの目は六ゾロの丁。大首領は半を選択した。
 赤木との約束を守って、自らの能力を使わなかったわけではない。むしろ、使ったのだ。
 赤木を生かすために。
 やがて、大首領の右前方に、亡霊のように同じ姿の黄金の怪人が現れた。
 名を、ツクヨミ。
 大首領をこの時の牢獄に閉じ込め、今また裏切り者であるZXを支援する邪魔者である。
「何か言いたげだな?」
「……なぜあの男を生かした? よりにもよって、お前が……」
 大首領は無言で歩き、サイコロを手に取る。
 肩の震えが大きくなり、やがては天を仰いで笑い出した。
「ツクヨミ……我は奴の望みが気になり、答えを待った……」

 ―― キサマの勝ちだ。願いを言ってみよ。そうだな、死者を蘇らせてもいいぞ?
 ―― そうだな。……タバコをくれ。
 ―― なに?

「ククク! ツクヨミ、我は虫けらなど、どうでも良い」
 実際そのはずだった。
 大首領は、己の肉体になる人間などに興味はない。
 ただこの牢獄から脱出さえ出来ればいい、それでよかった。
 そのために、ZXを開発させた。
 そのために、強化外骨格に目をつけた。
 平行世界への干渉する能力を得たのは偶然だ。
 そこで目に付けた強化外骨格の技術は、己が肉体を得るのに相応しい技術。
 強化外骨格に必須な英霊を集める手段に、このプログラムを選択したのはただの気まぐれ。強化外骨格の完成までの余興。
 BADANは、ガモンあたりは優勝者を、最も優れた能力者を自分の肉体にしようと画策している。
 それとは反対に、大首領は人間など、虫けら(ワーム)など歯牙にもかけたことはない。
 最強の生物範馬勇次郎も、零式防衛術継承者葉隠覚悟も、吸血鬼アーカードも、北斗神拳伝承者二人も、興味を示さない。
 強化外骨格は完成間近。あと必要なのは、数人の魂と大首領が強化外骨格に乗り移るためのエネルギー。
 エネルギーの確保自体もまた、容易であった。RS装置――エネルギー物質変換装置――は火薬もプルトニウムも必要としない。
 核爆発を引き起こせるほどのエネルギーを生み出せる悪魔の機構。
 核鉄「バスターバロン」の質量をすべてエネルギーに変換させ、牢獄と強化外骨格へのゲートを開く。
 とはいえ、それは完全でない。バスターバロンとの相性もあり、牢獄に作れるほころびは魂が通る程度だ。
 キングダークも失ったゆえ、核鉄「バスターバロン」を使うしか道はないが。
 すべて上手くいくほど、甘くはなかった。ゆえに強化外骨格に頼らざるを得ない。
 そして装着者。
 大首領は装着者など、誰でもよかった。
 今も、装着者など誰でもいいと思っている。ただし……
「アカギ、名を覚えたぞ。キサマが我に「酔い」を与える日を楽しみにしておこう。
今のままでは味わう気にもならん。我を同類というのなら、我をそこへと引きずり込め。もしくは、再びここへ来い」
 大首領は、初めて人間に期待をする。
 彼はもともと、亜空間に幽閉されていることも相まって、命の尽きる恐怖など味わったことがない。
 ショッカーが仮面ライダー1号2号に追い詰められても、V3が心臓に拳を食らわせても、他のライダーたちにいくつも組織を潰されても、彼自身は死を感じなかった。
 赤木に言われるまで気づかなかったが、自分は参加したいのだろうと思った。
 度し難い退屈。終わりのない生。
 ゆえに、大首領は思う。
「クク……一刻も早く、我に肉体を与えよ。あのアカギと、我は再会したいのでな……」
 その命令は、やがてBADANを震え上がらせ、動揺させる。
 大首領、かつては人に神とあがめられ、BADANには神とされる存在。
 彼は、赤木しげるを愛した。

【空間の牢獄 二日目 早朝】


【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:空間の牢獄を脱出する。
1:赤木との再会。
2:肉体を得る。そして、赤木のいう「酔い」を味わう。

※大首領はあくまで、「肉体を得る」ことを優先しています。
※強弱は拘っていません。また、バトルロワイヤル開催の理由は、ただの戯れ。


231:悪鬼 投下順 233:決戦
231:悪鬼 時系列順 233:決戦
219:求めはしない 救いはしない 未来(あす)に望むものは―― 赤木シゲル 235:束の間の休息
219:求めはしない 救いはしない 未来(あす)に望むものは―― パピヨン 234:STILL LOVE HER ~失われた未来~
228:進化 川田章吾 234:STILL LOVE HER ~失われた未来~



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