AWAKEN-目醒め ◆hqLsjDR84w



 何やら暗闇大使がやたらと怒りに身を震わせながら部屋を飛び出していったが、そんなことは私の興味の範疇から大きく外れている。
 はっきり言ってしまえばバトル・ロワイアル自体、心の底からどうでもいい。
 世界征服? 大首領のボディの選定? 強化外骨格? BADAN症候群? 挙句の果てには、貴様等が神に愛されし者? 下らない。
 BADANだか知らんが、貴様等は所詮下らない事を目的にしている――藁の家に住まう者にすぎない。
 身の程を知れ。深遠なる『天国』を目的とする、私とDIOの砦に踏み込んで来るんじゃあない。
 まあ、DIOを蘇らせてくれたことと、空条承太郎の記憶を見せてくれたことには、ほんの少し思うことはある。
 それはただ、『天国』の『引力』がそういう『運命』を引き寄せただけだが、一応の感謝くらいはしておこう。
 さて、何より今は気にすべきことが、他にある。

 ――即ち、『生まれたもの』。

 ――――――――時は遡る。

 私はスタンド『リンプ・ビズキット』の能力を行使し、彼の骨を蘇らせた。
 ホワイトスネイクが持ち帰った彼の骨を手に入れて、それこそ一分も経たぬうちに。
 一切の躊躇なく。
 私のスタンドパワーを全て注ぎ込むくらいの勢いで。
 明らかに愚行。期を伺うべきだったのは、自明。
 だが、とても――待てなかった。
 二十年以上待ち、やっと手に入れた機会。
 彼が蘇ったことを知りながら、話しかけられず。死神13を使用するも、邪魔が入り。
 結果、再び私の元からいなくなってしまった彼。
 その彼の意思を、『天国へ行く方法』を目の前にして、耐えられるワケがない。
 ああ、反省はしている。しかし、後悔など一片もない。
 そんなこと、しても仕方がない。何より、している暇がない。
 すべきことが他にある。

 ――即ち、蘇りしDIOの骨の観察。当初は、追うことを目的としていたが。

 私は、DIOの骨に全てのスタンドパワーを注ぎ込もうとした。
 しかし、それは叶わなかった。
 何故か――本当に一瞬だけ能力を使用した途端、骨が動き出したのだ。
 蘇らせた私にも、コントロール不可。
 明らかに何かの『意思』を感じた。
 だがBADANの連中にバレては困る、すぐに止めるべき。そのように判断するも、出来なかった。
 私の右掌に載せておいた彼の骨は移動する際、私の掌を皮も肉も、さらには骨をも貫いて行ったのだ。
 痛みに悶え、地に膝を付けている間に、骨は部屋から出て行ってしまった。
 追わねばならない。そう判断し、私は部屋を飛び出した。
 その時には、掌の痛みなど脳内から消えていた気がする。
 部屋を出たと同時に周囲を確認。背後にはホワイトスネイクを発現させ、死角を限りなく無にする。
 リンプ・ビズキットのDISCを挿し込んでいた為、骨の位置は分かる。無論、コントロールは不可能だが。
 ホワイトスネイクを待機させ、骨の元へ駆け寄ろうとした瞬間。
 あの男の記憶を介し読み上げた彼の著が、脳裏を過った。
 人間――正しくは、魂――が、不用意に近付くのはまずい!
 足を止めて、ホワイトスネイクを向かわせようとして、背後のホワイトスネイクの視界にある物が映った。
 ――部屋に戻ろうとする暗闇大使の影。
 ここまで来て怪しまれては困る。先程ある程度の信用を得たというのに。しぶしぶ部屋に戻った。
 リンプ・ビズキットのDISCがある限り、彼の骨の居場所は分かる。そう自分に言い聞かせて。
 部屋に戻り、暗闇大使と言葉を交えるも、意識は動き続ける彼の骨の方。
 適当に相槌を打っていたのだが、四度目の相槌の際に気付く。

 ――骨の動きは、止めるべきでない。まして捕らえるなど、もってのほかだ。

 骨が動く。それは、つまり間違いないということの裏付け。
 彼の『天国へ行く方法』が、確実に存在すると言うことだ。
 追跡はするべき――リンプ・ビズキットを挿入した私には骨の場所が分かるので、それも後で構わない――だが、放っておくべきだ。
 彼の骨が一体『何をしたいのか』……それは骨に任せるのだ。
 私は、ただそれを観察――これもまた居場所が分かるので、骨の『したいこと』が終わってから見に行っても構わない。本当は見たいが――する。
 そして、あのバトル・ロワイアル開始前に見た空条承太郎の記憶と合わせ、真実を突き止めるッ!!
 彼の骨の事は気になるが、今はとりあえずまるで何事も無かったかのように、『忠誠を誓った組織が行っている一大イベントの終わりが近づいてきた』風を演じねばならない。
 先程まで、執拗に一切興味の湧かない話題を振ってきた暗闇大使は、イヤホンを装着しながら衛星カメラが捉えた映像が映し出せるモニターを眺めている。
 では、私の方もイヤホンを付けるとしよう。ジョセフ・ジョースターの首輪ナンバーは……名簿順だから、24か。
 チャンネルをジョセフ・ジョースターに合わせようとした瞬間だった。

「シィィッ!!!」

 歯を噛み締めているのかギリという音を鳴らしながら、立ち上がる暗闇大使。
 一瞬で扉の方へ移動すると、扉を力任せに引き千切って、出て行った。
 顔に怒りを浮かび上がらせながら。
 綾崎ハヤテにさんざん拳を浴びせられた挙句、大首領とやらへの忠誠心のせいでトドメをさせずに戻ってきた時のように。
 しかし、何がそこまで暗闇大使を激昂させたのか。
 モニターの方へ視線を向けると、映っていたのは学校。しかし、そこに人は映っていない。
 と、なると、内部にいるのか。
 どうでもいいが、暗闇大使が怒っているのは愉快だ。
 暗闇大使を怒らせた輩は誰だ。暗闇大使はイヤホンを持って行ってしまったが、一瞬だけ見た記憶によれば、チャンネルは01にセットされていた。
 01番……赤木しげるか。
 なるほど。一度も赤木しげるにチャンネルをセットしたことはないが、BADANの情報ではあえて暗闇大使を挑発したりしそうな奴ではある。
 しかし暗闇大使は挑発なんかされても、『この場に来ることすら出来ぬ羽虫が、戯言をぬかしている』とか言って嘲笑いそうな下衆だ。
 ならば、一体何を――?
 好奇心が刺激され、チャンネルを赤木しげるに合わせようとした瞬間、電話が鳴り響いた。

 ――今にして思えば、あの電話が暗闇大使のいない時に来たのにも、『運命』を感じる。

 電話を取ると、やはりかけてきたのは正真正銘人間のBADAN構成員。
 そもそも怪人同士は、何やらテレパシーのようなもので意思の疎通ができるので、電話など設置する必要はない。
 しかし、非怪人のBADANの構成員や私はテレパシーなど使えるわけがない――スタンドを介しての会話は可能だが――。
 だからと言って、緊急時に通信不可と言うのも困るので、一応一つの部屋に一つと各構成員に一つずつ携帯電話が支給されている。
 もちろん私も渡されている。使ったことは、使用可能か確認したとき以外に無いのだが。
 何にせよ、電話の向こうの構成員が、さっきからやたら暗闇大使の名を呼び続けている。
 彼の報告など気に留める価値はないだろうが、伝言くらいは頼まれてもいい。

『あああ~、暗闇大使様、暗闇大使様ァァ~~』
「何だか知らんが落ち着け、私はエンリコ・プッチだ。現在、暗闇大使は外しゅ」
『う、うああああああああああああ!?』

 唐突に奇声を浴びせられる。
 その声には、明らかに『怯え』や『恐怖』が含まれていた。
 何が起こったのか。そもそも彼はどこにいるのか。

「……どうした」
『…………』

 返事はない。というより、呼吸音を除けば無音。何らかの異変が生じたのだろうか?
 電話を切っても構わないのだが、あちらの携帯からここに電話をかけたという証拠が残る。
 そしたらば、『BADANの為に行動している』ように、今まで私が演じていたのが無意味となってしまう。
 故に、尋ねる。

「お前は誰だ? そして、どこにいるんだ?」

 その質問から数刻が経った時、やっと電話の向こうから声が聞こえた。

『うね、うね、うね、うねうね、うねうね、うねうねうねうねうねうねうねうねうね』

 明らかに奇妙。
 もしや別人に成り代わったのではないかという仮説が浮かんだが、声は確かにさっきの構成員と同じだった。

『うねうねうね、日なた、ぼっこ、うね、気持ちいい、うね、太陽、光
 レロ、レロ、レロレロ、レロレロレロレレレレレレレレレレロ、レロレロ、レロレロ
 光は、レロ、あったかい…………、元気で……、みんな集まって、あったかい…………レロ』

 最後の『レロ』の直後に、パァァンと何かが爆ぜる音が耳を刺激した。
 思わず耳を離してしまい、次に受話器に耳をあてがうと、ただザーッという壊れたテレビに電源を入れたときのような音しか聞こえなかった。
 気になるのは、彼の言っていた――――太陽。
 確かに、もうそろそろ太陽が昇ってもおかしくはない頃合だ。
 しかしその時私がいた部屋からは、実際に太陽が昇っているのか判別不可。ここからは外が見えない。
 モニターの向こうは未だ夜だが、そちらの太陽と月は作り物。こちら側とは、別のものだ。
 私のいるBADANの砦で光が入ってくるであろう場所は、私の知る限りたった四つだけ。
 さらに朝日となれば、東側からしか光は入るまい。
 その点を考慮すれば、いま構成員が電話をかけてきた場所は一つに絞れる。

 ――そしてその場所は、ちょうど骨の存在を感じる場所。

 『太陽』、『光』。
 私の見た空条承太郎の記憶を思い出す。
 必要なのは、『三十六人の罪人の魂』。
 自らを神に愛されていると主張するBADANの構成員、及び怪人共は、罪人と言って差し支えない。
 そこには、三十六人を遥かに上回る数の怪人と見回りに向かった一人の構成員。
 つまりは――――
 私は全てを理解した。
 いま感じている彼の骨の気配は、蘇った骨のものではない! 新しく『生まれたもの』となっているッ!!
 既に『生まれたもの』になっているのなら、いち早く私はそれを手に入れればならないッ!!!

 ――――――――ここで、時は最初に至る。

 暗闇大使は思った通りの場所にいた。
 構成員からの電話が来て、通話中に奇声をあげだした。疑問に思うものの、気付けば電話は切れていた。
 誰か他の構成員に向かわせるべきかもしれないが、例によって暇な人材がいないだろう、だから私が向かってもいいか?
 先程助ける理由もない綾崎ハヤテを助け、『BADANの為ならば、命を喪うかもしれない行動もする』かのように演じた。
 その上での発言だった。
 尋ねると、まるでそんなことは気にする価値もないという様子で許可した。
 綾崎ハヤテの件があったとはいえ、ここまですんなり了承を得られるとは。
 あそこまで暗闇大使から平常心を奪ったことを感謝するぞ、赤木しげる。
 まあ、あれだけ暗闇大使を怒らせれば、首輪を爆破されるかもしれんがな。

 ◇ ◇ ◇

 『生まれたもの』の気配のする方向へと辿り着いた。
 そこは、やはり唯一現在外から光が漏れてくるであろう場所だった。

 ――怪人収容所NO.4

 全部で八つあるという怪人の収容所の内の一つ。
 八つのうちNO.1からNO.4にはコマンドロイドとやらが、NO.5からNO.8には再生怪人とやらが収容されているらしいが、違いは教えてもらっていない。
 怪人を収容しているのにもかかわらず、監視カメラも盗聴器も設置されていない。
 それをチェックする人員がいないからだ。
 だから六時間に一回だけ、人間の構成員が異変が無いかを確認しに来るのだ。
 おそらく、ちょうど今回その当番だったのが、先程の電話の男だろう。
 収容所には、一部屋につき五十ほどの怪人がいるらしい。
 三十六に至るには、あまりに十分すぎる。
 扉を開ければ、周囲はくすんだ緑色。
 よく見れば、それは枯れた植物。
 何か違和感を感じる。あんな植物があっただろうか?
 かなり広い部屋――怪人共が五十人も収容されているのだから当然か――なのに、内部はほぼ全面が植物。
 湿気が強く、そこはまるで熱帯雨林のようだ。
 ガチッ。
 木に触れないように歩いていたのに、足元に異変を感じる。
 同時に響いた音から、何かを踏んだと判断する。
 足をあげるとやはりというべきか何というべきか、それまで右足を置いていた場所に見るも無残なまでに潰された携帯電話が落ちていた。

 ――もしや、これは先程電話をかけてきた構成員の……

 そう思い、携帯電話の残骸を拾い上げようとする。
 しゃがんで視線を下げ、枯れた植物に近づいた。
 触れることはしないが、まじまじと見据える。

 ――植物の幹の細い部分に、BADAN構成員であることを示す証明カードが紐で括りつけられていた。

 BADANの構成員は、このようにして首にカードを吊るしているな……そうだ。
 違和感の正体は、これか。つまり、そういうことなんだな。

 ――周囲に生える木は、全てが全て人や動物のような形をしている。

 罪人の魂を、このようにして『回収』したというワケか。
 それにしても、一体何が生まれたのか。
 どんな物なのだろう?
 周りの異形共を見る限り、植物か? 動物か? はたまた人間か?
 おどろおどろしいのか? 高貴なのか? 美しいのか?
 巨大なのか? 小さいのか? 小さいとしたら、どの程度?
 小石程度? 掌程度? はたまたハードカバーの書籍程度?

 カラン、カラン、カラン。
 考え事をしていれば、それまで私以外に何一つとして動くものが見当たらなかったのに、唐突に何かが転がる音。
 すぐさま、ホワイトスネイクを発現。
 ホワイトスネイクに背後への警戒を任せ、音のした方向へと視線を向ける。
 そこにあったのは――彼の骨。
 ……あれが、求めるものなのか? 何一つ見た目に変化は無い。
 いや、見た目で判断するのは愚人のする事だ。
 光のほうへと転がっていく骨――いや、アレは既に――『生まれたもの』を手に入れる!
 骨を追いかける為に一気に足を踏み出そうとして、やめる。
 思い出せ。空条承太郎の記憶を、DIOの著を。
 そうだ。私は近づくべきでない。
 しかし、手に入れねばならない。ならばどうする?
 そんなものは簡単だ。

「『ホワイトスネイク』ッ!!」

 スタンドを向かわせればいいんじゃあないかッ。
 不用意かもしれないが空白の部分が無い以上、木に触れてでも近付いて手に入れる。
 こちらからは死角となる場所に『生まれたもの』は転がっていったが、ホワイトスネイクには視力があるタイプのスタンドッ。
 手に入れるのは、あまりにも容や――

「なにィィィィィィイイイイイイ!?」

 ホワイトスネイクが距離を詰めれば詰めるほど、私の体に植物が生えてくる!?
 いや、周りに転がる異形を見る限り、体が植物化しているのか!!
 ホワイトスネイクを止める。ゆっくりと、だが確実に私の元へと戻す。
 一瞬、最も大きい木の影にホワイトスネイクがすっぽりと納まった瞬間、植物が一気に消滅した。
 しかしその後、光の届く私の元へと戻ったときには、またしても私の体は植物化していた。
 とはいえ、少し前に『生まれたもの』に一番近づいたときよりはだいぶマシだ。
 木の影に入った瞬間に、植物化が解除された。
 そして、あの電話。電話の向こうの構成員の言葉。『日なたぼっこ』、『光』、『太陽』……ならば。
 脳内に浮かぶ仮説。迷わずホワイトスネイクを解除して、駆ける。
 体が植物化していく。気にせず走り、目標――先程ホワイトスネイクが通った最も大きい影――へ到着。足を止める。

「ハァ……ハァ……、やはり……かッ!」

 植物になりかけていた体は、肉へと戻っている。
 やはり、やはり光がない場所では、植物化は解除されるッ!
 この要領で、『生まれたもの』へと辿り着いてみせる。『生まれたもの』は、私が手に入れるッ。
 決意し、ホワイトスネイクを発現。2、3、5、7、11、13……
 木の影は大人が二人入るのには小さい。だが、スタンドが光を受けても植物化することは確定している。
 なので無理につめて、影に体を押し込んでいく。
 呼気を整えるまでは、とりあえず植物化を解除させておくべきだ。

 がしィィィ。

「ッ!?」

 何か得体の知れないものが体に触れ、思わず飛び上がりそうになる。
 しかし、こらえる。飛び上がれば植物化が進行する。
 影からはみ出ないように首を捻って、体に触れたものを確認しよう。
 ゆっくり、ゆっくりだ。焦りは禁物。素数だ、再び素数を数えて落ち着くんだ。
 17、19、23、26……いや29。クッ、二桁の時点で間違えるとは……ッ。あまりに焦っている。
 31、37、41、43、47、53、59、……61か、67、71、73、79……――――

「これはァーーーーッ!?」

 触れたものを確認した瞬間、叫んでしまう。
 焦りは禁物と思っていたが、もはや気にする余裕などない。
 素数を数える余裕すらない。どこまで数えたかも、もはや忘却の彼方だ。
 そうだ、そこにあったのは――――何だ?
 植物の実のような物の中に、それはある。
 それは、覆う実の表皮は透けていて中身が見える。
 その実の中を見てみれば、いるのは人間の赤ん坊? いや、そう見えるだけか?
 思えば、ここの影が最も大きいということはだ。
 つまり、『全ての植物の根が、ここに集っている』のでは?
 ここに集い、『魂』を『回収』し、この実――そして、その中身――を形成したんじゃあないかッ!?

 つまり――――『骨=罠』ッ!!

 この実の中のモノこそ、『生まれたもの』ッ!

 しかし、これはあくまで仮説。
 これで確定だとするには弱すぎ……なかった。
 私は見た。
 ピクリ、と。本当に少しだけ、実の中身が動いたところを。
 そして、実の中身に、『星形のアザ』があるのを。
 いま確信した。これこそが、私とDIOが求めていたものだったのだ。

 ◇ ◇ ◇

 あの部屋から出る時は苦労した。植物化を意に介さず、走って光が入り込む部屋から脱出せねばならなかったからだ。
 とはいえ、今の私はこれまでの人生で最高にハイというヤツだ。
 ハイになった精神はホワイトスネイクに今まで以上のエネルギーを与え、そのホワイトスネイクが一気に私を引きずり出した。
 太陽の光の当たらない場所に来れば、僅か十分ほどで植物化は解除されていった。
 それでもほんのすこしだけ残っているが、目立たないし行動にも支障は無い。
 さて、やっと部屋の近くまで戻ってきたのだが……
 『生まれたもの』をどうするか、それが問題だ。
 まだ、『動かない』。
 空条承太郎の記憶により、私は『生まれたもの』を『支配』する方法を知っている。
 しかしそれは、まず『生まれたもの』が動かないことには使えない。
 そして、もうすぐ放送だ。
 放送の時には部屋にいろ――そう命じられている。
 とはいえ、『生まれたもの』を持っていくわけにはいかない。
 どこかに隠すしかない。
 どこに隠す――フン、隠せる場所なんて最初から一つしかない。
 そこの扉を開け、中に入る。

 ――私と暗闇大使のいる部屋の近くにあるトイレのロッカー。

 そもそも暗闇大使を含む怪人達は、用を足すことをしない。
 なのに、BADANの砦内にトイレが設置されているのは、電話と同じく構成員と私のためだ。
 つまり、トイレには怪人共は来ない!
 そして構成員共は、わざわざ意地の悪いことで有名な暗闇大使の部屋の近くのトイレを使用しない。
 要するに、私と暗闇大使のいる部屋の近くのトイレは、私しか使用しないのだッ!
 掃除の為に清掃員がやってくるが、それは十二時間に一回だけ。そして三時間前に、掃除は完了している。
 それでも近くを通った構成員が本当に焦っている状態なら、ここのトイレを使用するかもしれない。だがッ、ロッカーは見るわけがないッ!
 そこほど優秀なものを隠すスペースがあるだろうか。いや、ないッ!
 だから、ここを選ばせてもらおうッ!!

 嗚呼、DIO。
 今更だが、『運命』を感じるよ。
 本当は、この下らないバトル・ロワイアルが始まったときから知ってたのだが。
 改めて、感じずにはいられない。
 バトル・ロワイアルの会場には、嘘の太陽と月が浮かんでいるようだ。
 その証拠に、夜に生きる君は見ただろう?
 『バトル・ロワイアルが始まった日』も『その次の日』も、全く変わらぬ同じ形状の月――欠けた箇所のない満月――が浮かんでいるのを。
 その事実が、そこに浮かぶ月が虚構だという事を如実に裏付けていることが分かると思う。
 そして私のいるところには、贋者でない本物の月と太陽が回っている。。
 クッ、あまりにうまく行き過ぎている。
 『運命』を『引力』を感じずには、いられない。
 次の次だ。
 次の次に月が天に昇った時、その姿を目視することは難しい。同時に、もっと明るいものが空に存在するからだ。


 そう、二日後は――――『新月』。



「待たせてすまない。
 放送が終わってから話すが……尋常でない事態が起こっていたものでな……」

 プッチが、ガモンのいる部屋の扉を開けた瞬間だった。
 プッチの瞳にガモンと、放送の原稿を渡されている老人――徳川光成が映った瞬間。
 本当に同時。コンマ一秒としてズレもなく、その瞬間。
 トイレのロッカーの中で、彼が回収した緑色の球体の表面に――ぴきっ。
 一筋のヒビが走った。
 まだ誰も、その事には気付かない。

【マップ外/BADANの砦内の自室 二日目/早朝(放送直前)】
【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]骨を蘇らせた際に右掌に怪我、微植物化、強い決意
[装備]リンプ・ビズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険、BADANより支給された携帯電話
[思考・状況]
基本:天国に行く。
1:放送が終わり、頃合を見計らって、トイレの『生まれたもの』を確認しにいく。
2:『生まれたもの』が動き出せば、承太郎の記憶より知った『支配』する方法をためす。
3:1と2の為に、暗闇大使を遠ざける。とりあえず再生怪人収容所NO.4のことを話し、何とかしてそこに行かせる。
4:暗闇大使に首輪を起爆されるのは、避けねばならない。なんとかして解除を。
5:ジョセフ・ジョースターよ、私を押し上げてくれ。
[備考]
※首輪をつけています。
※空条承太郎の記憶DISCは、既に確認した後です。
※暗闇大使とプッチの部屋の近くのトイレのロッカーに、『生まれたもの』を隠しました。

【怪人収容所について】
※BADANの砦内に、NO.1からNO,8まで八つ存在します。
※NO.1からNO.4にはコマンドロイドが、NO.5からNO.8には再生怪人が、収容所一つにつき内部に五十体ほどずつ収容されています。。
※監視カメラや盗聴器の類は一切設置されておらず、六時間に一回人間のBADAN構成員が異変が無いかチェックに行きます。
※収容所NO.4内にいたコマンドロイドと構成員の魂は、『回収』されました。
※一体どのようなモノが、再生怪人と呼ばれて収容されているのかは、後続の書き手さん達にお任せします。



235:束の間の休息 投下順 237:信じるということ/GET WILD
235:束の間の休息 時系列順 237:信じるということ/GET WILD