鬼酔酒◆05fuEvC33.



先程からの風に舞い散る1枚の黒い布が、先を急ぐ俺の脚に絡まる。
向かい風に逆らうのも、少し億劫に感じていた為か容易く脚が止まった。
見覚えがあるなと手に取って見ると、案の定それは勇次郎の着ていた服だった。
勇次郎の奴とは散々宿縁を結んできたが、まさか着てる服にまで縁が有るとはぞっとしない話だ。
勇次郎は身体が石化して服だけを残して砕け散った。
エレオノールの話によると、何処かでしろがねとやらになった為にああいう最期になったらしい。
前から人間離れした奴だと思っていたが、そこまで本格的に止めていたとはな。
何にしてもこの薄汚れた布切れは、奴の遺品になる訳だ。
夥しい量の染み込んだ血が乾いて、不快な感触を示している。
一体どれだけの返り血を浴びたんだこいつ?
俺はそれを持ったまま、近くのコンビニに入る。
無論店員なんて居ないもんだから、堂々とお目当ての缶ビール2本を失敬して店を出た。

ジャングルジムとブランコと砂場しかない、小さな公園。
そこの砂場に黒衣を埋めて……その上に、缶ビールを突き立てると。
何の真似かって? 墓だよ、供え物も兼ねてな。
酒位いけるだろ? ビールが舌に合うかは、知ったこっちゃねぇが。
あの世で文句言うんじゃねぇぞオーガ。おめぇみたいなのが墓を作って貰えるだけ有り難く思えや。

どうせお前さんみたいな大馬鹿野郎、死んで哀しんでくれる物好きも居ないんだろ?
最期の戦いの時だってそうだ。
入れ替わり立ち代りで戦って、お前を倒したら皆諸手を挙げて万々歳だ。
惜しむ奴はおろか、もう省みる奴も居ねぇ。
それを不当だとは、言えねぇわな。
こんな事をやってる俺も、おめぇをぶっ殺すのに躍起になってた。
もし墓から這い出て来たら、ぶん殴ってあの世に戻してやる。
なんせおめぇは俺が知ってるだけで勝、神楽、コナンと殺してる。
本当にろくでもない野郎だよ、お前さんは。
ま、周りの全てを敵に回したなんておめぇにとっちゃ普段と変わらねぇよな。


殺し合いの中で俺がここまで戦ってこれたのは、言ってみれば同じ立場の人間が他に居たからだ。
俺よりずっと若い奴等が、殺し合いという状況に負けねぇって踏ん張ってるから
俺も自分を支えて来れた。
お前さんの生き方じゃ周囲を支えになんて無理な話、何時でも力付くで押し通るだ。
これはキツイぜ。俺がお前さんと同じ力を持っていても、同じ生き方はとても出来ねぇ。
義も道理も無く暴れまわって、息子にまで恨まれる始末だからな。

俺は手に持った缶ビールのプルトップを開ける。
それにしても思い出すほど、どうしょうもない野郎だ。
我が事ながら、一体何でこいつの墓前で杯を傾けるんだ?
哀しんでやる道理も、哀れんでやる気持ちも無い。
こいつは最初から最後まで、ただただ自分の為に暴れまわっただけなんだからな。
きっと悔いの1つも残してねぇぜ、筋金入りに嫌な野郎だからよ。
……………………そうさ、こいつは最後まで自分の暴力(ちから)のみ信じ頼む
忌々しい勇次郎でしかなかった。
こいつは悪鬼(オーガ)である事を、巨凶である事を、地上最強の生物である事を
範馬勇次郎である事を、最後の最後まで裏切らなかった。
だからこいつは別れの杯だ。
1人の武術家が、たった1人で戦い抜いた馬鹿に手向ける1杯だ。他意は無ぇよ。

缶の中のビールを、一度に飲み干す。
「……ッ~~~ンめェな~~~オイ」
もしあの世から俺を見ていたら、勇次郎はどんな反応するんだろうな?
下らないと嘲笑うか?
腑抜けたと怒るか?
案外素直に喜ぶか? いや、それは無いな。
最近流行のツン何とかみてぇに、頬を赤らめて…………もっと無いな。

『それでは午前6時、5回目の定時放送じゃ。』
ご老公の声が鳴り響いた。


残りは俺を含めて9人か。
これで殺し合いに乗った奴は0になった計算だが、油断は出来ねぇ。
首輪と24時間ルールが有る限り、人間どう転ぶかは分からないからな。
特にパピヨンは危うく思える。
あいつはきっと『他人を疑う』のには長けて頭も切れるが、多分『他人を信じて頼る』のは不得手な感じだ。
まあ、そっちは学校に向かった連中に任せるしか無いか。
俺の方は急いで、ヒナギクの嬢ちゃんの支給品を探しに行かなきゃならなくなった。
今居るE-2と、ついでに探し物の有るH-4が禁止エリアになるからな。
主催者の連中は、完全に俺の行動を読んでやがる。
そういやH-4って、口に出して言っちまってたか? 確か盗聴されてるんだったな。
俺は空き缶を墓前に置いて、急いでホテルへ戻った。

ホテルの受付口のテーブルに戻り、置手紙を書き換える。
ここには戻れないから、『宝探し』の後は学校にでも行くか。
パピヨンの事も気になるしな。

『ちょっと宝探しに行って来るわ、済んだら学校に行く』

そして置いて行くつもりだったジャッカルと傘とベレッタと棍棒を、デイパックに仕舞う。
置手紙の錘には麻雀セットを使った。
ホテルには戻らないんだから、やっぱり武器を置いては行けないわな。
もう忘れ物も無いみたいだし、今度こそ出発とするか。

ホテルを出て、向かい風を進む。
先刻墓をたてた公園の前に差し掛かった。
なんとなく視線が向き、また足が遅まりそうになる。
出し抜けに向かい風は止んだ。
……未練を残さず、さっさと行けってか?
言われるまでも無ぇんだよ。
大体俺も、オーガも湿っぽいお別れなんて柄じゃないだろ。
今更、掛ける言葉も思い付かないしな。

…………へっ、下らねぇ。
さっきから俺は何を考えてる?
死人と、それも勇次郎の奴とお喋りか?
たかが缶ビール1本で、幾らなんでもそれは酔い過ぎだろ。
勇次郎の墓には目もくれず、俺は先を急いだ。
きっと未練が有るのは酒の方だ。中途半端に飲んじまったからな。
そういや何時ぞやに、覚悟とヒナギクとで一緒に生き残ったら酒を飲む約束をしてたな。
いや、あの2人は握り飯だったか? まあ、どっちでもいいや。
さっさと決着付けて、あいつらと飲むとしよう。
さぞ美味い酒が飲めそうだ。

【E-2 南東部/2日目 朝】

【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、頭部に小程度のダメージ、左肩に大きな裂傷 左腕を深く抉られている
[装備]:キツめのスーツ、シルバースキン@武装錬金
[道具]:基本支給品一式×2、首輪×2、ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂
ベレッタM92(弾丸数0/15)、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳、懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達    
[思考・状況]
基本:闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する
1:H-4でヒナギクの支給品を探す(時間は未定)
2:可能なら、光成と会って話をしたい。
3:適当な時に学校へ行く


[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海・覚悟・村雨・ヒナギク・かがみと情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。
※BADANの存在を知り、かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。
※愚地流奥義にしたいと思っている技を会得しました(意を消した拳、これを拳のみならず他の空手技にも用いる事が出来る)
※繁華街のホテル(E-2中心部)内に鷲巣麻雀セット@アカギ、置手紙が放置されています。

【村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、エレオノール、服部、ジョセフ、八人の共通備考】
※一通りの情報交換は終えています
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
①殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
②最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※五人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている 。
首輪にはステルス機能があり、身を清め水を掛ける事で解除可能
※五人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
光成は司会役として脅されている。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。


238:第五回放送 投下順 240:運命のルーレット叩き壊して
238:第五回放送 時系列順 240:運命のルーレット叩き壊して
237:信じるということ/GET WILD 愚地独歩 244:ふしぎなおくりもの