間違えるのはお約束

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mangaroyale

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間違えるのはお約束 ◆L9juq0uMuo


シャンソンが流れるパブの片隅、そこに市川は座っていた。盲目の老人は何をするでもなく椅子に腰掛け、自らの状況を振り返っていた。
(盲目の老人に殺し合いをさせる……、つまりは、死ね。と言うことか……)
目の見えない彼には支給品を確認する事も土地勘も何も無い所を歩き回ることもできない。そういう意味ではこのパブへと飛ばされた事は彼にとっては幸運だっただろう。
だが、それは状況を改善するにはいたらない。今の市川は武器も無く、視力もない、耳がいいだけの只の老人である。仮に殺し合いに乗った物が入ってきたらそこまでなのである。
引きつった笑いを浮かべる市川の頬を冷たい汗が流れる。
と、その時、パブのドアが開く音がした。
「おっと、先客がいたみたいだな」
「クク……どちらさんだい?」
市川は入り口から聞こえた声の主へと顔を向けずに答える。
「俺の名か?今から死んでゆく物に名乗る名前は持ち合わせてはおらん」
「そうかい」
醜悪な笑みを浮かべる男に対し、市川はぽつりとただそれだけを呟いた。
「妙な奴だな。普通なら抵抗したり命乞いをするものだぞ?」
市川のあまりにあっさりとした対応をいぶかしんだのか、男は尋ねる。
「なに、こんな状況で盲目の老人が生き残れる確率なんてのは0に等しい。あんたが来た時点で覚悟はしていたよ。若いの」
苦笑を浮かべながら市川は天井を仰ぐ。もっとも、盲目の市川の目の前にはただ闇だけが広がるだけなのだが。
「なんだ貴様、目が見えないのか。なら特別だ。天才であるこの俺が、冥土の土産に治療してやろうじゃないか」
そう言うと男はデイパックを下ろし、市川へと近付いて行く
「治療ったって一朝一夕でどうにかなるもんじゃなかろうよ」
「このアミバ様に不可能はない。失明など秘孔を突けば一瞬よ」
その男、アミバは不敵な笑みを浮かべると、市川の体のある一点へと狙いを定める。
「失明を直す秘孔はここだ!」
アミバの指が市川の体へとめり込む。その直後。
「ガアッ!!」
市川の体に激痛が走り、市川が声を上げ、悶絶し、転げ回る。
「ん?間違えたかな」
転げまわる市川を、アミバは顎を擦りながら見やる。
「ああ、すまんすまん。うーむ、こっちだったかな?」
アミバの指が、転げまわる市川の秘孔を正確に貫いた。
「~~~~ッ!ガアァァァァァァァァッ!!」
先ほどの痛みを遥かに超える激痛に襲われ市川は喉が張り裂けんばかりの絶叫を上げた。
その直後、アミバの指が新たな秘孔を突き、市川の背中がぼこぼこと隆起し弾け飛ぶ。そこには先ほどまで1人の人間だった肉塊が転がっていた。
「馬鹿が!あんな大声を出しやがって、誰かが来たらどうしてくれる!」
肉塊を蹴り飛ばし、アミバは忌々しげに舌打ちをする。
「ラオウみたいなのに来られても厄介だからな。ここは退却させてもらうか」
そう言うと、アミバは市川のデイパックを回収し、裏口からパブを後にした。

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「悲鳴を聞いて来てみりゃあ……、こいつぁひでえや」
パブに転がる肉塊を見やり、愚地独歩は顔をしかめる。いままで数々の死闘を演じてきた独歩であっても、ここまで無残な死体は見た事が無かった。
「こんな爺相手じゃ勇次郎は手を出さねぇだろうし、刃牙や花山はこの爺が乗り気でもない限りぶちのめしはしねぇ。第一に奴等にゃあこんな芸当はできねぇ」
その死体はまるで昆虫が脱皮するように、背中が裂け、内臓が飛び出していた。独歩の知る限り自分の知り合いでこのような芸当ができる人間はいない。
「くっくっく、どうやら、勇次郎並みに戦い甲斐のある奴がいるみてぇだな」
独歩は未だ見ぬ強敵の出現に、心が打ち震えるのを感じ、自然と口角が吊りあがる。
と、その時、独歩は気配を感じ振り返る。振り返った先には、筋骨隆々とした大男、ケンシロウが立っていた。
「よぉ、兄ちゃん。あんたがこれをやったのかい」
死体を指差す独歩に対し、ケンシロウは首を横に振る。
「俺はやっていない、だが……」
ギリッ、と歯軋りの音が鳴る。
「こんな事をする奴の見当はついている」
ケンシロウの顔が激しい怒りに歪んだ。

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「つまり、そのアミバかジャギって奴の仕業ってことか?」
パブに転がっていた市川の死体を埋葬し、支給品である逆十字号に乗り込んだ独歩が、ケンシロウに尋ねる。
「ああ、俺の知り合いでもう一人ラオウという人間が乗っているだろうが、ラオウが殺したのであれば、先ほどの絶叫を上げる暇など被害者には無いだろう。
そしてあの死体には三つ秘孔を突かれた後があった。あの男ならば老人を殺すのにわざわざ三つも秘孔を突くような事はしない。……だが、俺が言ったその三人は既に死んだ筈だ。何故その三人が生きてここに……?」
ケンシロウが言うには、ジャギ、アミバ、ラオウの三人は全てケンシロウと死闘を演じ、敗れ去ったと言うのだ。
「だが、実際に生きてこの場にいる以上仕方あるめぇ。四の五の考えずぶちのめしゃあいい。考えるのはその後でも充分じゃねぇか」
「……そうだな、これ以上犠牲者を出すわけにもいかない」
決意を新たに、ケンシロウは星空を見上げる。北斗七星の脇に煌く星は今は見えない。
「それじゃあ、俺は行かせてもらうぜ。しかし、本当に乗って行かなくていいのかい?」
逆十字号を可動させながら独歩がケンシロウに尋ねる。
「ああ、俺は別の道で探してみる。心遣いだけは受け取っておく、すまないな」
「何、気にすんな。それじゃあお互い、精々生き延びようや」
そう言って、独歩は笑みを浮かべ、逆十字号を発進させようとした。
「一つ、質問させてもらってもいいか?」
ケンシロウの問いに独歩が首をケンシロウへと向ける。
「あんたは、どうして乗らなかったんだ?」
「……そんなもん決まってんだろうよ」
そう言って独歩はどこか遠くを見る。その顔はどこか微笑んでいるようにも見えた。
「女子供殺して帰ってきたなんて、女房に誇れるもんじゃねぇ」
独歩の答えにケンシロウはしばしの間呆気にとられ、やがて微笑む。
「……いい女房を持ったみたいだな」
「おうよ、最高の女房さ」
そう言ってひとしきり笑った後、二人それぞれ別の方向へと向かっていった。
(ユリア、これでいいのだろう?)
ケンシロウの脳裏に自分の最愛の女性の姿が浮かぶ。彼女の為にも自分は生き抜かなければ。そう胸に誓いケンシロウは月明かりに照らされる道を歩いていった。


【E-7 道路/1日目/深夜】
【アミバ@北斗の拳】
[状態]:健康。
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~3、本人未確認)×2
[思考・状況]
基本:ゲームに乗る
1:優勝する

【F-8 道路/1日目/深夜】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:健康。
[装備]:逆十字号@覚悟のススメ
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~2、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない
1:ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎と接触、戦闘
2:乗っていない人間にケンシロウ・ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎の情報を伝える。西に向けて移動中。
[備考]
※逆十字号に乗っているため移動速度は徒歩より速いです

【F-8 道路/1日目/深夜】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:健康。
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~3、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない
1:ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎他ゲームに乗った参加者を倒す
2:助けられる人はできるだけ助ける
3:乗ってない人間に独歩・ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎の情報を伝える。北に向けて移動中
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。

【市川@アカギ:死亡確認】
【残り57人】


022:MIND YOUR STEP!! 投下順 024:狂喜の宴
021:その男、反逆者につき 時系列順 024:狂喜の宴
初登場 アミバ 055:北斗神拳の恐怖
初登場 愚地独歩 055:貴重な貴重なサービスシーン
初登場 ケンシロウ 055:北斗神拳の恐怖
初登場 市川 死亡


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