狂喜の宴

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mangaroyale

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狂喜の宴 ◆ozOtJW9BFA


(今考えるべきは、何故こうなったかじゃない。これからどうするかだ)
平山幸雄にとって、麻雀を打っていたら突然闇に飲み込まれ瞬間移動をさせられたのも
殺し合いをしろとだけ言い渡され、また次の瞬間には畑の真ん中に放り出されたのも
つまり先程までに自分の身に起きた事は全て、彼の理性や知識では到底計り知れない事であった。
だから平山はそれらについては思考の埒外に置き、殺し合いの中如何に生き延びるかに焦点を絞る。

(まずは手元に有る情報を、確認して整理しないとな)
デイパックの中を改め何が入っているか一通り確認し、ランタンを点け名簿に目を通す。
(知っている奴は……赤木に鷲巣、あいつらまで来ているのかよ!)
孤独を強いられる殺し合いの中で、名簿に有った赤木しげると鷲巣巌は二人しか居ない平山の知人である。
だが平山にとって二人は、できれば避けたい人物でもあった。
(赤木にすれば俺は自分の名を騙った偽者だ、いい印象は持っていないだろう。それどころか俺の悪評を振りまく危険性も有る。
 鷲巣に至っては最悪だ。あのイカれたじいさんなら、嬉々として殺し合いに乗ってもおかしくない)
平山の脳裏に、この殺し合いに参加する直前の記憶が過ぎる。
鷲巣に文字通り命懸けの麻雀を強いられ、平山は致死量寸前まで血液を抜かれた。
(死に怯える俺を見る鷲巣の目は、まるで狂喜に歪む悪魔そのものだ。
 仮に俺と鷲巣の両方が生き残れば、間違いなくあれの続きをさせられる。俺が死ぬまで………
 いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。とにかく自分が生き残る方法を考えるんだ)

名簿を仕舞いショットガンと書かれ、折りたたまれた紙を取り出し開く。
中からは明らかに紙より大きい、ショットガンが出てきた。
(な、なんだよこれ!?)
平山は動転したが、すぐに気持ちを切り替える。
(……なるほど、これはこういう物なんだ。ここに来る時に瞬間移動したように、ここじゃこういうことが普通に起こりうるんだ。
 と、とにかく武器は確保出来た。……他に武器になりそうな物は……無いみたいだな。
 折りたたまれた紙がまだ2枚入ってるが、こっちはよく分からない事が書いてあるから、うかつに開けない方がいい)

地図を取り出して、現在地を田園地帯と推測する。
(こういうゲームで生き残る為には、誰にも会わないように動くのが賢明だ
 そういう意味では今の位置は好条件だが、こんな開けた畑の真ん中では明るくなれば格好の狙撃の的になる
 暗い内に何処か隠れる所が多くて、人が来そうに無い場所に移動しないとな……
 ここから近い所だと……そうだな、汚水処理場か)
ランタンの火を消しショットガン以外の荷物を仕舞って、平山は汚水処理場へ出発した。

◇ ◆ ◇

平山が全身白ずくめの奇妙な後姿を見付けたのは、移動を開始してから30分程経った位の事だった。
(ど、どうする?相手は背後の俺に気付いていない上、俺は背後からショットガンを向けている。殺そうと思えば簡単に出来る。
 だが交渉次第では味方に付けるか、少なくとも情報は引き出せるかも知れないな)
自分の有利を確信し気を強くした平山は、白ずくめの者の背中に近付き声を掛けた。
「デイパックを地面に落として、ゆっくり手を上げろ」
その言葉を聞いて、白ずくめの者はゆっくり振り返る。

「ククク…その声は平山くんじゃないか……」
「……あんた、鷲巣か!?」
(顔まで覆う妙な服のせいで分からなかったが、こいつは鷲巣だ。……くそっ、まさかいきなりこいつと会うとはな)
「……名簿に君の名を見付けた時はまさかと思ったが、本当に生きていたとはな…ククク」
「動くな!!」
こちらに振り向いた鷲巣に、強く握り締めたショットガンを掲げる。
「さっき言った事が聞こえなかったのか!デイパックを落として、手を上げろ!」
「随分声を荒げるじゃないか、平山くん。ククク…こんなに近いんだ、ちゃんと聞こえとるよ」
鷲巣は緩慢な動きでデイパックを落とし、両手を上げる。

「……あんたは殺し合いに乗ってるのか?」
「ククク…カカカッ……!」
「何がおかしい!」
「ククククク…それを聞いて、どうすると言うのだ?」
「乗っていないのなら、交渉の余地はある」
「交渉……?カッカッカッ……交渉だと!?」
さも愉快そうに肩を揺らして、鷲巣が笑う。
「笑うな!貴様っ……質問に答えないと殺すぞ!!」
平山は依然、両手を上げる鷲巣にショットガンを向けているが
鷲巣に威されているかの様に、声を震わせていた。
「殺すと言うなら、さっさとそうすればいい」
「貴様、自分が何を言ってるのか分かってるのか!?これははったりじゃ無いし、この銃も偽物じゃ無いんだぞ!!?」


ドン!


ショットガンを撃ち、鷲巣の足下に穴を開けた。
「ククク…どうした?ちゃんと体を撃たんと、わしは殺せんぞ?……ん?」
それを意に介さず、鷲巣は一歩平山に歩み寄る。
「い、今のは威嚇だったが!こ、今度は本当に狙うからな!!」
次弾を装填しながら、鷲巣に合わせて平山が一歩下がる。
「もしかして平山くんは、まだわしの返答を待っておるのかな?」
「ほ、ほ本当に!本当に殺すからな!!」
「ククク…殺すか殺さないかも、相手に聞かねば決められない。凡庸な……到底殺し合いを生き残れんな、お前は」
鷲巣が一歩進む。
「こ、これはショットガンなんだ!!お前のその妙な服が防弾性だったとしても、衝撃は防ぎきれない!
 これで撃たれたら、絶対に死! 死ぬしか無いんだぞ!! 鷲巣!!」
平山が一歩下がる。
「……いや、凡庸どころか愚鈍。知も才も無いクズ………そんなクズが」
鷲巣の声に、怒気が混じる。
「偉大な王である、わしを殺そうなどと……許せない!」

――平山が鷲巣の目を覗き込んだ瞬間。
――記憶が蘇る、自分を死の淵まで追い込んだゲームの記憶。
――致死量寸前まで血を抜かれ、麻雀牌を一つ打つごとに死の恐怖に震える自分を見つめる狂喜の目。

「う、うわーっ!!!」


ドン!


「ククク…ちゃんと体に当てられるではないか」
「…………な、なんで死なないんだよ……」
鷲巣の胸の部分を、平山は正確にショットガンで撃った。
だが鷲巣の服が、ショットガンの弾も衝撃も全て弾いた。
「この服はシルバースキンと言ってな、わしの支給品じゃよ」
平山は慌てて、次弾を装填しようとする。
「わしにはまだ面白い支給武器が有ってな……キング・クリムゾン!」
鷲巣の上体から人の形をした何かが現出し、平山からショットガンを奪い取る。
「あ、あああ………」
平山は鷲巣に背を向け、駆け出した。

ドン!

鷲巣はショットガンで、平山の右膝から下を吹き飛ばす。
「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」
平山が落としたデイパックを拾い上げながら、鷲巣は語り掛ける。
「ククク…情けない悲鳴を上げるな、お前は仮にも王を討とうとした程の者だ。
 最期の時位は、もっと毅然としていたらどうだ?」
ショットガンに、弾を詰め込む。
「……ひぃっ、た、助けてくれ……」
地面を這いずりながら、平山は消え入りそうな声で助けを求める。
「カッカッカッ……素晴らしい!その苦痛に…!恐怖に…!絶望に満ちた顔!!
 ククククク…平山くんは、そんなに死にたくないのか?」
「………た、頼む……」
「ククク…けっこうけっこう……ならば今回は、平山くんを救ってやろうじゃないか」
「……ほ、本当か…?」
平山の表情に、僅かに生気が戻った。
「もちろんだとも、ちゃんと救ってやる……」
ショットガン銃口を、平山の額に当てる。
「この世の、あらゆる苦しみからな」
平山の顔から、また生気が抜け落ちる。
「カカカッ…!!本当にいい顔をするな、平山くんは!」


ドン!


◇ ◆ ◇

何より鷲巣には、確信があった。
自分が選ばれし、偉大な存在であるという確信が。
だから鷲巣はこの殺し合いに招聘されても、全く動揺が無かった。
見た事も無いディスクを頭に差し込むのにも、全く躊躇が無かった。
それらは全て、自分を高みへと押し上げるという確信があったからだ。

「ククク…アカギもこの殺し合いに参加しとるらしいし、ちょうどいいここで決着を付けようじゃないか」
自分と平山の分の荷物を整理し、次の獲物を求め闇の中を歩き始める。
その足取りに、一切の恐れも躊躇も無い。
何より鷲巣には、予感があった。
(この殺し合いを勝ち残れれば……わしは到達するだろう…!
 歳……75年間の最高地点……至福の瞬間に……!)


【7-D 田園地帯 一日目 深夜】
【鷲巣巌@アカギ】
{状態}健康。
{装備}シルバースキン@武装錬金、ジャギのショットガン@北斗の拳、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
{道具}、支給品一式×2、ジャギのショットガンの予備弾26@北斗の拳、不明支給品1~3(本人は確認済)
{思考・状況}
基本:殺し合いに乗る
1:次の獲物を捜す。
2:優勝する。
参戦時期:原作13巻終了後
[備考]
※キング・クリムゾンは1秒しか時間を飛ばせません。
時間を飛ばすと大きく体力を消耗する上、連続しては飛ばせません。 

【平山幸雄@アカギ:死亡確認】
【残り56人】


023:間違えるのはお約束 投下順 025:戦う運命
023:間違えるのはお約束 時系列順 025:戦う運命
初登場 鷲巣巌 049:上がれ!戦いの幕
初登場 平山幸雄 死亡


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