A forbidden battlefield ◆7jHdbxmvfI


木々が揺れ、大地は震え、一陣の風が吹き荒む。
無数の木が立ち並ぶ林の奥深く。
男と男の信念と信念を賭けた戦いがそこにはあった。


「偽善者が!お前のような正義面したやつこそ罪人なんだよ!」

黄金のトラの姿を模した怪人は腰から何発もの銃弾を撃つ。
腰と背中から浮き出る大砲と銃口。それは正に異形の者としかいいようがない。
しかし、その異形の者が放つ銃弾は覚悟には当たらない。覚悟は疾風の風となり、一瞬で距離を詰める。

「因果!!」

必殺の正拳を腹部に叩き込む。それは体の奥深くに突き刺さる。
しかし――

「甘いぜ、それでくたばると思ってやがるのか?」

――それは無意味だ。
怪人と化した男には普通の打撃は通じない。

「っ!」

咄嗟に横にとび、銃弾を避ける。
一瞬の遅れが命取りとなりうる攻防戦。
先ほどまで覚悟がいた場所には無数の穴が開いている。

「どうした、逃げるのか。それなら先にそっちの女から殺すぜ。まあ殺す順番が変わるだけだがな」
「ふざけるな。この身は牙無き者を守るためのもの。当方に撤退の意思は無い!」

ありふれた挑発の言葉だった。
だがそれは覚悟を再度決意させるには十分過ぎた。
挑発が裏目となる。

「零式積極重爆蹴!」

再び風となった覚悟を止めるものはない。
怪人の腹部に二度目の打撃を打ち込む。
強い怒りを両の足に込め礎とした渾身の一撃を。

「がっ」

苦悶の声を浮かべる。手ごたえがあった。
しかしそれで手を緩めはしない。

「当方の拳は悪鬼を討つもの!零式積極直突撃!!」

次は顔に拳を叩きつける。全身全霊を掛けての渾身の一撃を。
怪人は大きく後ろに吹き飛ぶ。

「はあはあ……終わったのか」

怪人が倒れるのを見届け、息も絶え絶えになりつつ一言呟く。
右の拳には確かなる手ごたえが残っていた。

「終わったの?」
「はい」

木の陰に隠れ、死闘を見守っていたルイズがひょっこりと顔を出す。
死闘が終焉を迎えたのを確認して、安全と思ったのだ。

「……大丈夫?」
「無論だ。それより君……ルイズさんも足を怪我しているだろう。少年を弔い次第病院に……!」

心配事を呟くルイズに優しく応対しようという時。
不意な殺気を感じ、言葉を切り、怪人が吹き飛んだ方を見やる。
すると怪人はしゃがみこみ、背中の大砲を自分達に向けていた。
今すぐにでも発射されるかというところだった。

「ぐっ!」
「きゃっ」

覚悟は条件反射でルイズを抱きかかえると、すぐに全速力で移動を試みる。
それとほぼ同時、林の中に二度目の轟音が響いた。

   ☆   ☆   ☆

轟音ははるか遠い、林の中。
ラオウの耳にも届いた。
既に二度目の轟音、それは二度ともに東の方から聞こえてきた。

「……爆発音?近いな。先ほどの銀髪の男か。それとも……まあよい。この拳王、自らの目で確かめてくれる」

音がした方へ向かい、ラオウは歩き出す。
その歩みはゆっくりだが、ラオウの溢れる闘志は、周辺の木々を揺らし木枯らしが鳴り響いた。
そして木枯らしの中央に位置するラオウは、東へと、戦場へと歩き出した。
ゆっくりと、しかし確実に、木枯らしの波は移動していく。


   ☆   ☆   ☆


覚悟とルイズ、二人と距離は50センチ弱という先の林一帯。
そこは木々は焼かれ、地面は抉り取られていた。まるで爆弾が落とされた焼け野原のような惨状である。
覚悟がルイズごと移動しなければ二人の肉体は既にこの世には存在していなかっただろう。

「ちょっと大丈夫カクゴ!」

覚悟の状態をみるなりルイズが小さく叫ぶ。
覚悟は身を盾にして、爆発の炎と熱風からルイズを守ったのだ。
ルイズはほぼ無傷だが、覚悟の体からは湯気が立っていた。

「心配無用。この程度なんでもない」

でも覚悟は倒れない。
確固たる意思を持つ覚悟は、何事も無いような顔でルイズの問いに応じていた。

「ちっ、避けたか。さっきので死んでりゃ楽に逝けたのによ」

黄金のトラを模した怪人はゆっくりと立ち上がり二人を見据えた。
その目から出る威圧感は、人間のそれとは何かが違う。

「……貴様!」

覚悟は怪人と視線を交差させる。
ルイズの盾となり熱風を浴びた体から今もなお湯気が出ている。
それでもなお、怪人に対し、覚悟も睨む目線は外さない。
そして、両の拳を合わせ――

「当方には貴様を討つ用意有り!!」

――真っ直ぐ突っ込む。
幾度も繰り返した直線での突っ込み。
しかし同じ動きにも変化は生じる。
怪人は覚悟に向け、バッグを投げる。

「はあっ!」

覚悟は強く腕を振り、自らに投げられたバッグを払い落とす。
そこで勝負が大きく動く。

「ぬるいな」

バッグを払うのに一瞬視線が怪人から外れた。
払った直後に見る、怪人の、その両肩からは二つの銃口が覗かせていた。
そしてそれは覚悟の顔を射抜かんとしていた。

「っ!」

瞬時の回避行動により直撃は避けるも、肩を浅く掠めた。
その傷は浅いが、しかしそれでもバランスを僅かに崩してしまう。
その僅かが、ここでは完全に命取りとなる。

「偽善者が、弱者は強者の糧となれば十分なんだよ!」

怪人の腰、そして両肩から撃ち出された銃弾は、その全てが覚悟の体に吸い込まれていく。

「ぐうっ!」

覚悟はゆっくりと倒れ――

「因果!!!」
「がっ!?」

――ない!
咄嗟に両の足で大地を踏みしめ、そして頭で怪人の顔面へ頭突きを繰り出す。
怪人は二歩ほど後退する。
覚悟は倒れない。

「俺はまだ死ねない。悪鬼を前にして死ぬわけにはいかない!」

両の足は震えていた。
強化外骨格程ではないものの、持ち主の信念が伝わっている丈夫なライダースーツ、その下に着込むは多少の防火効果のある制服、
そして自らが鍛え上げた鋼の肉体。
この三つに守られた覚悟は、銃弾で致命傷を負う事はない。
しかし、至近距離から怪人の銃弾を浴びて全くの無事で済むわけもない。
そして先ほどの大砲の爆撃の熱風のダメージも決して浅くは無い。
覚悟の体は深く重いダメージで立っているのもやっとという状態なのだ。
それでも立っていられるのは、少年との約束があったからだ。それはルイズを守るという約束。
そして遥か過去に誓った決意。牙無き者の剣となり生きるという信念。
この二つがある限り、覚悟の膝が地に堕ちる事は決してない。

「……ちっ、死に損ないが!だが俺はお前のような罪人には絶対に負けねえ。絶対にな!」

怪人、三影英介も右手で覚悟にパンチを繰り出す。
志郎や滝や本郷と同じ、物事を真っ直ぐ見据える男の瞳は三影にとっては憎らしい以外何物でもない。
人間の裏の醜さを知っている三影にとって、目の前の男はこれ以上ないほどに甘い男に見えた。
その憎らしい男には、拳で嬲り殺すのが一番と判断。
怪人の力溢れる拳が覚悟を襲う。

   ☆   ☆   ☆

戦闘が始まった既にかなりの時間が経過している。
その間。怪人の拳が幾度と無く覚悟を襲う。
覚悟も応戦しているが、先ほどと違い明らかに劣勢。
それは二人の戦いを見守るルイズの目にも明らかだった。

 カクゴ……私には何も出来ないの?

歯がゆかった。
今の自分は無力なだけなのか。自分にはスギムラの仇は取れないのか。
とにかく苦しかった。胸が締め付けられるほどに。

 何か、何か私に出来ることは?

辺りを見回す。
とにかく何か武器がほしかった。
自分のバッグの中のものじゃはっきり言って役に立たない。
何度無く視線を移し変え、物を探す。
そして、見つける。
覚悟が叩き落とした、怪人のバッグを。

 あれは!……お願い。何か武器を!

怪人は覚悟との戦いに夢中で気付いていない。
ルイズは急いで怪人のバッグのところに、ばれないようにゆっくりと向かう。

   ☆   ☆   ☆

「くっ!」

覚悟は何度と無く怪人の拳を浴びて後退する。
既に倒れないのがやっとという状態だった。

「しぶとい野郎だ。正義の味方気取りかよ。反吐が出る。何度言えば分かるんだよ。お前のような偽善者こそ真の罪人なんだよ!」
「……それでも俺は自分の正義を信じる。偽善ではない正義を!」

怪人の言葉にも決して屈しない。
悪に対しては決して敗走しない、立ち向かう。
鋼の信念が覚悟を倒させはしない。
足を奮い立たせる。

「ちっ、最後までやせ我慢しやがって。まあいいぜ、次は絶対に殺してやるからな」

怪人は少し距離を取り、四つんばいになる。
背中の大砲にエネルギーを充填させていく。

 避けられない……どうする。ここで死ぬのか。否!まだ間に合う。

覚悟は両の足に鞭を打つようにして、怪人に向かい駆け出す。
その速さは決して風ではない。
常時より少し早い程度の速さ。それでも走る覚悟の顔は必死だった。

その時、一つの爆音が林の中に響き渡った。


   ☆   ☆   ☆


「何が……起こった?」

覚悟は驚き立ちすくむ。
突然目の前の黄金のトラは林の奥に吹き飛び視界から消えている。

「はあはあ、カクゴ大丈夫?」
「えっ?」

覚悟が振り向くと、そこにはルイズが立っていた。
木に深くもたれ掛かり、息は荒く、両手は大きく震えている。
そして、足下には大きな大砲のような物が転がっていた。
その大砲は、先ほどルイズが撃ったのを示すかのように、発射口からは僅かに煙を吐いていた。

   ☆   ☆   ☆

「ちっ、何をしやがった?」

三影は大の字になって林の中に横たわっている。

『――に―――--す』

雑音がやけに耳に入るが気にしない。
わき腹の火傷は酷いが致命傷ではない。それに行動に大きな支障はない。
何より、偽善者の仮面被りし罪人を前にして、のんきに眠るわけにはいかない。
心は折れてはいない。まだ戦える。

「……っと」

必死で起き上がる、すると目に入るのはあの二人。
正義感ぶった男と、やけに肝が据わった女。
どっちも澄んだ瞳で真っ直ぐ前を見据えていた。
それが非常に癇に障る。

 この腐りきった世界には善も悪も無いんだよ。生き残ったものが正義、そして生き残るのは俺だ!偽善者面の罪人じゃねえ!
 お前らのような弱者は死んで悪となればいいんだよ!

ゆっくりと歩き出す。
殺意をみなぎらせ、全身全霊を掛けて、あらゆる手段を用いて殺すことを誓う。

「っ!」

想像以上にわき腹が痛むが気にしない。
まだ二人は自分が生きて居ると気付いていない。
自分が目の前に現れて、恐怖で引きつった顔を見せる。
夢想家には無残な死を贈ることを決め、ゆっくりと歩き出す。

『禁止エリアに抵触しています。あと3秒以内にここを脱出しなければ爆発します』

 んっ!?なんだ禁止エリアってのは?

今まで雑音だったものがはっきりと耳に届く。
しかしそれが何を意味するのかは分からない。

 確か逃げようとすれば爆発と言ってやがったが……俺は逃げる気はねえ。絶対にあいつらの間違いを証明してやる!
 俺が逃げると思ってあのジジイ釘でも打ってんのか?ちっ、なめやがって。

三影はゆっくりと歩き続ける。首輪の警告音など全く意にも止めていない。
しかし『雑音』のカウントダウンは感情を汲み取ることなく進んでいく。

そして二人が自分に気付く距離までもうほんの少し、というところで小さな機械音とそして、小さな爆発音が響く。
今まで何度も轟音を響かせた男は、その轟音の主にはありえないほど静かな爆発で息を引き取った。

木の葉の影に隠れていはいるが、三影の数メートル手前には小さな看板が立っていた。
その看板の表には大きな黒字がはっきりと書かれている。
『この先エリア外につき、立ち入り禁止』と。

男と男の、信念と信念の戦いを最後に決めたものは、皮肉にも無感情な機械となった。
そして今、三影は自分の用いたルールにより、自らが悪となった。
彼自身が作った持論が、彼自身の信念が、彼自身――三影英介――を悪とした。

【三影英介@仮面ライダーSPIRITS:死亡確認】
【残り55人】

   ☆   ☆   ☆

「っ!?」
「どうしたのカクゴ!」

覚悟の傷の具合を確認しようとするところで、急に覚悟が後ろを振り向く。
三影が吹き飛んだ方角を。

「まさか生きてるのっ?」

思わず不安になったルイズが声をかけるが、それを覚悟はなだめる。

「爆破音がした気がしたが……気配は無い。心配無用だ」

優しい声。先ほど戦っていた時とは違う、穏やかな口調だった。
その声にはルイズも安心する。

「それよりその大砲は?」
「これ?あの男のバッグの紙に包まれてたの。多分あの男の支給品よ」
「なるほど、承知した」

覚悟はルイズの足下に転がっている大砲に疑問を浮かべていたが、回答により合点がいく。
大砲は覚悟が抱え、ルイズは3人分のデイバックと折れた軍刀を持つ。

「とりあえず病院にいきましょう。カクゴの怪我治療しないと」
「心配無用だ。この程度……」
「駄目よ。かなり深いでしょ。スギムラも弔いたいけど、あなたが先。貴族として私を助けたあなたには礼をしたいの。
 それにスギムラはあなたに私を託したんでしょ。それならもっと自分を大事にしなさい!」

ルイズの言葉には覚悟も返答に困りそのまま病院に向かう事になる。

「それに……私個人としてもあなたに礼をさせなさいよ……スギムラごめんなさい、でもすぐに弔ってあげるから……絶対」

小さく小声でルイズは呟いた。
覚悟にも聞こえないような小さな声で。
右手にはスギムラが持っていた軍刀を握り締めていた。
痺れと震えが残る手で、精一杯力強く。

「俺は絶対に守りぬく、この少女を、そして……あの真の悪鬼を必ず倒す!」

小さな声で覚悟は呟く。
ルイズにも聞こえないような小さな声で。
新たなる決意を胸に秘め、怒りは両の足が大地を踏みしめる礎とし、覚悟は歩き出す。

二人は満身創痍の身をふらつかせながら、病院への道を歩き出す。
ただ、二人の瞳には決意があった。

   ☆   ☆   ☆

轟音を頼りに、ラオウが向かうとその先にいた者は少女と手負いの男だった。
二人ともこちらに気付いた様子は無く林の中を歩き続けていた。

「……轟音の主はあの男か、それともあの男に傷を負わせた者か……どちらにしてもワシの相手が出来る状況ではないな」

ラオウは二人に背を向けると、林の奥へと消えていった。

「次こそは、この拳王の相手になる者を」

強者を捜し求めて、ラオウは歩き続けた。


【H-3 西部 林 1日目 黎明】

【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に重度の火傷 胴体部分に銃撃による重度のダメージ 全身に打撲(どれも致命傷ではない) 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS 
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。 この戦いの首謀者を必ず倒す。
1:病院に向かいルイズの言うとおり治療を受ける。
2:ルイズを守り、スギムラを弔う。

【ルイズ@ゼロの使い魔】
[状態]:右足に銃創 中程度の疲労 両手に軽度の痺れ 強い決意
[装備]:折れた軍刀
[道具]:支給品一式×3 超光戦士シャンゼリオン DVDBOX@ハヤテのごとく?
[思考]
基本:スギムラの正義を継ぎ、多くの人を助け首謀者を倒す。
1:病院に向かいカクゴを治療する。
2:スギムラを弔う
3:才人と合流


【H-3 南西部 林 1日目 黎明】

【ラオウ@北斗の拳】
{状態}健康
{装備}無し
{道具}支給品一式 不明支給品1~3(本人は確認済かも)
{思考・状況}
1:ケンシロウ、勇次郎と決着をつけたい
2:坂田銀時に対するわずかな執着心
3:強敵を倒しながら優勝を目指す
4:先ほどの短髪の男(覚悟)が万全の状態になれば戦いたい

{備考}
三影英介の死亡はマップ外潜入による首輪爆発によるものです。
首輪は禁止エリアに侵入した場合、30秒の警告音の後に爆発します。
三影英介の遺体はH-3東部から数メートル離れた位置に放置されています。


029:好きなら素直にスキと言え 投下順 031:花嫁は月輪に飛ぶ
029:好きなら素直にスキと言え 時系列順 032:しょってけ! ランドセル
005:二つの零、二つの魂 葉隠覚悟 070:覚悟とルイズと大男
005:二つの零、二つの魂 ルイズ 070:覚悟とルイズと大男
002:支給品に核兵器はまずすぎる ラオウ 070:覚悟とルイズと大男
005:二つの零、二つの魂 三影英介 死亡