人の瞳が背中についていない理由は(中編)

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人の瞳が背中についていない理由は(中編) ◆KaixaRMBIU




「いったか」
 独歩は魔法陣に飛び込んでいく長足クラウン号とZXと覚悟を見届けて、追いかけようとするコマンドロイドの首を貫手で貫く。
 さらに一つのモーターギアで地面を走り、もう一つのモーターギアを拳につけて、敵を殴り砕いた。
 敵の残骸が身体にかかることも構わず、次の標的へと独歩は突進する。
「キキィー!!」
 コウモリ奇械人が不快な鳴き声と共に空より強襲してくる。
 独歩は冷静に両腕の突きを捌き、喉元に正拳を叩きつけた。
 だが、砕くことは敵わない。なぜなら独歩の拳はモーターギアを装着していないからだ。
「たくっ、自信がなくなっちまうぜ。何十年も繰り返しついた突きなんだがな」
「キキキキキィー」
「笑っているのか? だったら俺からの忠告だ」
 独歩が次の言葉を告げる前に、コウモリ奇械人の頭が宙に舞う。独歩の右腕には空を旋回してきたモーターギアが留まっていた。
「後方不注意……って、遅かったか」
 そのまま拳にモーターギアを装着したまま、幾百もの怪人を前にして空手の構えを取る。
 かつて武神と呼ばれた男は誰一人通す気などないと、無言で示した。
 次の怪人の襲撃を独歩は待ったが、敵は遠巻きにこちらを見るだけだ。
 不審に思っていると、怪人の群れを掻き分ける一人の白い男がいた。
「誰か残ったと聞けば、ただの人間か……」
「ほう、こりゃ驚いた。怪人の連中は全員、ギーだのガーだのしかいえないホラー映画の怪物じみた連中しかいないと思っていたぜ」
「我々デルザー軍団の改造魔人には魂はない。ゆえに、蘇ったとしても記憶や知識を失うことはない。
もっとも……なぜか今回蘇ったのは俺だけだがな……」
「あんまり嬉しそうじゃねえな……」
 独歩の問いにシャドウは答えず、鞘に納まるシャドウ剣の柄に手をかけている。
 その動きに隙がない。不意打ちを仕掛けようかと思ったが、シャドウはそれも想定しているだろう。返り討ちは必須だ。
 大物に出くわしたことに内心冷や汗をかきながらも、独歩は構えを解かない。
 うごめく後方の再生怪人を視界に納めると、独歩は奥歯を噛み締めた。
 とても雑魚を潰しながら相手にできるような敵ではない。すると、シャドウは独歩を向いたまま口を開いた。
「キサマらは手を出すな。奴は俺が殺す」
 敵の意外な言葉に独歩は目を丸くする。好都合だが、敵が何か考えているのではないか、警戒をする。
 否定の言葉はあっさりとシャドウの口から出た。
「案ずるな。キサマごときに策をとったなど、我が改造魔人の名に傷がつく」
「そうかい」
 舐められたことにむかっ腹を立てながらも、シャドウの隙を独歩は待ち続ける。
 剣を使った武術でも収めているのだろうか。喋っている最中ですら、ピクリとも動かない。
 知能がある分、改造されている身に過信して付け入る隙がないかとも思ったが、そんなに甘くはないようだ。
 止まっているのに、落雷は来ない。目の前の男が止めたのだろうか。
 風が吹いて、コマンドロイドの残骸が転がる。その残骸が再生怪人の一匹に踏み潰された音が響いた。
 瞬間、独歩とシャドウがほぼ同時に地面を蹴る。
 シャドウが剣を逆袈裟に振り上げた。凄まじい速度で、独歩の右目でも追えない。
 ゆえに、剣を握る手を手刀で捌けたのは偶然というしかなかった。
 懐に入った独歩は、五十年以上繰り返した正拳突きの構えを取り、右腕を突き出した。
 幾人も沈めた拳が、改造魔人ジェネラルシャドウへと迫る。
 その拳は、シャドウの身体を、
「トランプフェード」
 貫かず、トランプの束を風圧で吹き飛ばしただけだった。
 すぐに敵を探そうと体勢を整える独歩の腹から、剣が生えていた。
「終わりだ」
 シャドウは独歩と背中合わせに呟いている。
 逆手に構えた剣が独歩の背から腹まで貫いていた。シャドウは剣を引き抜いて、血を振り払う。
 腹に感じる痛みと熱さに耐え切れず、独歩は膝をついた。


(他愛もない……)
 シャドウはどこか虚しい気持ちを抱えながら、崩れ落ちた独歩には視線もくれず進んだ。
 列車にいる仮面ライダーを含む生存者を始末せねばならない。
 それが自分に与えられた仕事だ。本来のシャドウならその仕事をそれほど熱心に遂行しようとは思わなかっただろう。
 誇り高きトランプの魔人は使い走りになることを良しとはしない。
 暗闇にいいように扱われている現状は、本来の彼なら不満を持って当然の出来事なのだ。
 だが、ストロンガーがいないという事実は、シャドウをナーバスにしていた。
「待ちやがれ……」
 聞こえた声に、シャドウは驚く。急所は確実に貫いたはずなのだが。
 首を回して視線だけ向けると、重症の独歩が立ち上がっている。
「ち……今隙ができたのに……不意打ちする元気すらねえ……」
 モーターギアとかいう武器を核鉄に戻し、傷跡に当てている独歩を認めたシャドウは再び構えを取る。
 人間にしてはしぶとい相手だと思いながらも、笑っている独歩に不思議に思う。
「なにがおかしい?」
「ああ……なんでかな。俺は死にかけで、お前さんは万全だが……」
 独歩の両腕が段々と上がる。そのまま核鉄を、独歩は捨てた。
「……どういうつもりだ?」
「へ……あんなものに頼っているから、お前さんに半歩踏み込みが足りなかったぜ。
こっからは……俺が五十年鍛え続けた拳がお前を殺す……」
 シャドウが独歩の殺す、という言葉に反応する。
 独歩の隻眼には諦めという文字は浮かんでいない。
「その拳が、俺に……いや、それどころか改造人間にすら通用すると思っているのか?」
「思っているぜ。人間が幾千年もかけて闘争のために練り上げた技法なんだからよ」
「血反吐を吐き、致命傷を負い、そこまで吼えるか……」
「てめえに一つ教えてやるよ……」
「む?」
 独歩が腰をどっしり構えて、息を整えた。
 その構え、重傷人とは思えないほど隙が見当たらない。

「人の瞳が背中についてねぇのはな……後ろを振り返らず、前に進むためだぁ……いくぜぇ」

 シャドウは口角を僅かに上げ、首だけではなく身体を向きなおす。
 剣のかっ先を独歩へと向けて、風に白いマントをはためかせた。
「キサマの名……聞かせてもらおう」
「今更か? まあ、いいがな。愚地独歩……ただの空手家よ」
「愚地独歩……覚えておこう」
 シャドウが呟いたと同時に互いの殺気が膨れ上がる。
 またも隙の探りあい。シャドウは独歩の認識を改めている。
 一度見せた技、トランプフェードがもう一度使える相手だと思ってはいない。
 五枚の巨大トランプとなって囲んだり、シャドウ分身で二つ身となって独歩に迫るの手もある。
 そのどちらも、シャドウは良しとしなかった。久しぶりに宿る胸の何かに従ってただ純粋に剣技をもって葬りたい。
 シャドウにしては珍しい欲求に従い、独歩と対峙する。
 今度は独歩の荒い息遣いが聞こえる。再び風が吹くと同時に、シャドウの身体に覇気が漲る。
 わざわざ、迎撃装置をオフにした甲斐があるものだ。
(ああ。ストロンガー……城茂。キサマは常に、俺にこんな感情を抱かせてくれたな。
キサマは俺に、多くの力を刻んでくれたな。あの時も!)
 かつて、ストロンガーと黄金の剣と赤い悪魔の剣を交えたころの気持ちを思い出し、シャドウが僅かに高揚する。
 久しぶりに心地よくなり、知らずシャドウは笑っていた。

「うりゃアアァァァァッ!!」

 独歩の怒声がシャドウの耳朶を打つ。神速の踏み込みで間合いに入った独歩が拳を振るうと同時に、シャドウも剣を水平に薙ぎ払う。
 互いに身体をすれ違いさせ、剣を、拳を振るいきったままの姿勢で固定した。


 静寂。
 二人の間に風が流れ、音を消す。
 シャドウの口元から、血が一筋つつっ……と流れ落ちた。
「俺が魔人なら、キサマはさしずめ……」
 シャドウが告げると同時に、独歩の身体が崩れ落ちる。左脇腹から心臓までを一気に斬り裂いた。
 生存は不可能だ。
 その代わり、命を懸けて独歩は最後の突きをシャドウの右胸へと叩き込んでいた。
 避けきれず、充分な威力を持ってシャドウへと傷を負わせた。シャドウは自然と、剣を眼前へと掲げ、死体となった独歩に敬意を示す。
「武神といったところか……。感謝する、キサマのおかげで思い出した」
 戦士とは、戦いにおいて死ぬべきだと。
 シャドウの瞳に闘志が戻る。
 かつてストロンガーの命を狙い続けた、雇われ幹部としての闘志が。
 再生怪人の群れが、独歩の死体に殺到しかける。

「触るなッ!!」

 再生怪人の頭部に、トランプが突き刺さって爆発した。
 爆炎が風に散る中、シャドウは悠然と仁王立ちで一群を睨みつける。
「魂を持たぬお前らに誰一人として、この男を触ることは許さん!」
 シャドウはマントをはためかせ、独歩を抱き列車が消えたほうへ視線を向ける。
 再生怪人たちに待機するよう命じ、トランプとなって姿を消した。
 独歩の肉体の確保の命令が届いたのは、その直後だった。


(ああ……俺はここいらで終わりか……)
 薄れいく意識の中、独歩は自分が死に近づく感覚を噛み締めた。
 戦いの中で死ねるのなら、それなりに幸せじゃないか。
 唯一つ、地上最強となれなかったことが心残りだった。
(最後の最後まで……頑張ったな……俺の拳……)
 シャドウの頑強な身体を殴り、砕かれた拳を見つめて独歩は労う。
 五十年、ただ突き、貫き、無茶をし続けた己の半身だ。
 ふと、視界の向こうに手招きする鬼がいたような気がする。
(ああ……たく。そんなにそこは暇なのかよ……。お前が望む最強に近い生物はいるだろう……?)
 ニィッとその男が生前と変わらぬ笑みを浮かべた。
 独歩ははげ頭の後頭部をガシガシ掻き、呆れた表情をする。
 ただ、口は笑みを形作っていた。
(しょうがねえ。俺もやることはやったし、そこで付き合ってやるよ。すぐにトンでもねえ奴が来ることも、教えてやらねばな)
 独歩は光に向かって歩いた。
 そこには、彼の知る鬼が永遠の闘争を持って存在していた。


【愚地独歩@グラップラー刃牙 死亡】
【残り9人】



「おい! てめえ……どういうことか説明しやがれ!!」
「そうよ……なんで独歩さんが囮になっているのよ!?」
 ヒナギクとジョセフの声で、意識が覚醒した赤木が目を瞬かせる。
 腹に鈍い痛みが残っているが、直前に独歩に気絶されたことを思い出した。
 ジョセフの剣幕を見て、赤木は不機嫌な表情となる。
「やめい……ジョジョ、桂」
「だがよ! 服部!!」
「赤木……囮になるッつーたのは、お前のほうやな」
 服部の確認するような言葉に、赤木は答えない。その態度にヒナギクがさらに怒りを募らせている。
 対してジョセフは、服部に答えを求めるように続きを促していた。
「独歩はんを囮にするつもりなら、ここで赤木が寝とる理由がつかん。独歩はんの性格と現状なら、文句を言わずに向かうやろうからな」
「待てよ! こいつが煽ったってこともあるじゃないか!?」
「無意味やな。煽ったところで独歩はんは都合よく動かせるような人やない。それは短い付き合いやけど、よく分かったはずや」
「でもよ……」
 ジョセフはどこか納得しきれないように呻く。ヒナギクは悔しそうに俯いていた。
 それもそうだろう。仲間が一人死んだのだ。服部の胸も抉れるような痛みが襲う。
「いつ魔方陣を抜けるか分からん。とっとと持ち場に戻るで。突入前の打ち合わせは覚えているやろう?」
「分かったよ。だが、俺は納得はしねえ。いいな、服部」
「ええで」
 そういって先頭車両に戻るヒナギクとジョセフを見送り、服部は赤木に右手を差し出した。
 赤木が掴み、立ち上がったのを確認して服部は問う。
「……実際のところはどうなん?」
「俺がけしかけたかどうか……か?」
「ジョジョや桂にはああいったが……お前さんが独歩はんが自ら囮を買って出るように仕向けたんじゃないか、少し疑うている」
「ククク……はっきり言う」
 服部の表情が僅かに歪む。少なからず、二人を騙したことをすまなく思っているのだ。
 とはいえ、敵本拠地に乗り込むというのに、わだかまりができたままではまずい。
 非情ともいえる判断をとらざるを得なかった。もしかしたら、ジョセフあたりは理解して、あえて乗ってくれたのかもしれない。
「……正直に言えば、独歩が囮になる手は現状……二番目に有効な手だった……」
 歯に衣を着せない言い方に、服部はカチンとくる。
 正直とは違う。隠すことに意味を感じないと言わんばかりの、非人間的な態度だ。
「もっとも……独歩の生還が望めないという点では愚策……。後の戦闘のことを考えると、独歩の喪失は痛い……」
「お前さんが囮になることのほうが、何倍もよかったちゅうわけか」
「……ククク。何より、独歩はお前たちの信頼が厚い……まとめ役としては充分……」
「……だとしたら、お前が独歩はんの代わりにまとめ役をやることや。今回は独歩はんの性格を読みきれなかった、お前のミスやで」
「確かにな…………」
 あっさりと認めた赤木に驚きながらも、服部も先頭車両へと向かう。
「とはいえ……お前が死ぬ必要もなくなったな……」
「……嫌な言い方するな。独歩はんなら、確かに内と外から大首領を倒す計画を知ってる。信頼も厚い……。けどな……くそっ!」
 僅かにホッとしている自分を許せず、服部は己の手の平に拳を打ち込む。それも、落ち着くためだ。
 もうじき、戦場へと突入しなければならない。
 最後の決戦が、今始まる。


『良よ……』
「零……俺は納得はしない。あまりにも理不尽だ……」
「残念ながら、それが戦場というもの。我ら葉隠一族は理不尽に耐えることを良しとしない。
理不尽に勝利することを目指す……村雨殿、我らは今、理不尽を強いる敵へと向かっている」
「ああ……覚悟、零。俺はもう、俺や姉さん……死んでいったみんなのような、悲しい気持ちを抱かせる理不尽はごめんだ……」
『その怒りを、悲しみを決意に変えるのだ! 良よ!』
「ああ……俺は……」
 ZXがバイクのアクセルを全開にして異空間を駆け抜ける。
 後ろは振り返らなかった。振り返ることじたい、今は残った独歩への侮辱のように思えたからだ。
 悔しさと無念を抱えながらも、ZXの中に燃える覚悟が生まれる。
 誰も悲しませない。全てを抱えて戦い続ける。
「俺は……仮面ライダーだ!」
 魔方陣を駆け終えて、光がZXの視界に満ちる。
 クルーザーの白い車体が、ZXの思いに応えるかのようにエンジン音を唸らせた。


 黒い巨体を地面に下ろし、全てを飲み込むように不気味に佇む要塞が一つ。
 サザンクロスと呼ばれたバダンの要塞は、目の前に現れた列車の突撃を避けきれず、突入を許してしまう。
「だからドリルは外せといっただろ……なんて誰か言わんかねー」
「アホかい」
 長足クラウン号の先端についているドリルで、サザンクロスの外壁を砕いて突入したのだ。
 服部はこのまま、長足クラウン号を走らせ続ける。
「このまんまぶっちぎるでぇー!!」
 襲い掛かる再生怪人ごと長足クラウン号が突き進み続ける。
 何もかも蹂躙するその歩みを止めるものはいない。
 ―― …………トランプフェード………… ――
 その声が、小さくだが服部に聞こえた。と、同時に長足クラウン号が傾き、地面と車体を削る不快な音が響く。
 必死でブレーキをかけるが、効果が薄い。
「みんな、席に掴まれぇぇぇー!!!」
 服部の声が車内に響く。壁にぶつかって大きく長足クラウン号が揺れ続いた。
 何が起きたのか、中にいるメンバーには理解ができなかった。


「あれは……ッ!」
『列車の車輪を斬っただと……!?』
 絶技といえる所業に、覚悟と零に戦慄が走った。
 突如現れた、バイクにまたがる白い怪人に驚きを隠せない。
「くっ! 列車に、近づかせるか! マイクロチェーン!!」
 ZXはクルーザーからシャドウへと飛び掛り、右腕から鎖を射出。
 シャドウはZXの姿を認めたとき、僅かに微笑んでチェーンを切り払った。
 そのまま体勢を崩すZXへと迫ろうとした時、横から覚悟が蹴りを捻じ込む。
「重爆ッ!」
「ちッ!」
 シャドウは飛び退き、列車の屋根へと立つ。いつの間にか、エレオノールもあるるかんを構えて屋根へ立っていた。
 ジョセフも、波紋を漲らせてシャドウの右斜め前方で待機している。
「……ここでは邪魔が多いか」
「逃がしはしねえぜ、化け物野郎!」
 ジョセフが拳を叩き込んだとき、トランプの群れが虚しく散る。
 あっけにとられた一同に、隙ができた。突如列車の中から、かがみの悲鳴があがる。
「かがみから手を離しなさいよ!」
 列車から出てきたヒナギクが叫ぶが、周囲にシャドウの姿はない。
「あいつはどこよ! いきなり中に入ってきたと思ったら、かがみ連れて行っちゃうし、トランプしかないし!」
「落ち着け、桂。かがみは……」
「俺ならここだ。仮面ライダー」
 声に振り返ると、星型のヘッドライトをつけたバイクにまたがるシャドウの姿が目に入った。
 警戒心を剥き出しにする彼らを前に、気絶したかがみを脇に抱えたまま、ZXに視線を向けていた。
「かがみを離せ!」
「構わんぞ」
 あっさりと返った声に、一同は戸惑う。
 明らかな罠じゃないか? 猜疑心に苛まれる一同の様子に、シャドウはまったく気にもしなかった。
「ただし……」
 シャドウがカードを投げ、列車の壁に突き刺さる。
 ZXが視線をシャドウに向けたまま引き抜くと、カードに要塞内地図が描かれたいた。
 一室に指定がある。どういうことかと、ZXはシャドウに視線を向けた。
「ここでは邪魔が多いからな。そこに……一人で来い」
「決闘というわけか……?」
「さあな」
 ZXに曖昧な態度を返して、バイクのエンジンを唸らせる。
 シャドウを逃がすかと、ジョセフが走った。
「そういうわけにはいかないだろうがッ! 普……!?」
 しかし、ジョセフは途中で急ブレーキをかけて止まる。
 シャドウとジョセフの間に、十字手裏剣が飛び込んできたのだ。
 コマンドロイドの群れが現れ、ジョセフが舌打ちをする。
「言っただろう。ここは邪魔者が多いとな。……待っているぞ、仮面ライダー。トランプフェード!」
 シャドウが言い切り、トランプが舞い散って姿が消える。
 襲い掛かってきたコマンドロイドと再生怪人と組み合いながら、ZXは必死で手を伸ばすが届かない。

「かがみぃぃぃぃぃ――――!!!」

 残ったのは、無数に散るトランプのカードだけだった。


「因果ッ!!」
 シオマネキングを砕き、血に塗れながら覚悟は降り立つ。ZXと背中合わせになり、前方の敵を睨みつけた。
「村雨殿……行くがいい。ここは任せてもらおう」
「覚悟……」
「けどよ、罠って可能性もあるんじゃないか?」
 ジョセフが波紋でコマンドロイドの身体機能へと異常を起こさせてから、疑問を投げかける。
 その疑問ももっともだが、覚悟は静かに首を横に振った。
「あの瞳は一流の武人の魂が宿っていた。技にも曇りがない。おそらく、本気で村雨殿との決闘を望んでいる。
もしも私が決闘を申し込まれたなら、唇に朱をひいて向かわねばならぬほどの武士【もののふ】と見受けた」
「ですが、かがみさんを人質にとるような人なので、油断はできないのでは?」
「そうよ! かがみを連れ去るような奴のところに、一人で行く必要はないわよ! 村雨さん、一緒に行ってかがみを取り返しましょう!」
 エレオノールとヒナギクが反対の意を示しながら、蜂女を八つ裂きにする。
 その意見ももっともだと思う。名前の知らない白装束の怪人の言葉を信用するのは危険が大きかった。
「いや、俺は一人で向かおうと思う。あいつは、俺をZXではなく、仮面ライダーと呼んだ」
 その理由を、どうしても知りたい。だからこそ、罠かもしれないが、ZXは一人で向かう気になった。
 エレオノールは心配そうにこちらを見ている。ヒナギクはムッとした表情で、不機嫌なのが一目瞭然だ。
「行くなら、こっち来る前のいうたこと、覚えているよな?」
「……一旦離散し……再び合流する……」
 ZXは知らないが、服部が作戦前に告げた、仲間の死に覚悟や村雨が影響されないための策である。
 ZXたちには、基地を探索し、幹部を仕留めるためと教えていた。
 とはいえ、突入前の打ち合わせ通りとはいかない。村雨と独歩が欠けてしまった以上、チーム分けは変えざるを得ない。
 新たなチーム分けを発表してから、頷いたZXを確認して、服部が大きく息を吸った。
「じゃあいくでぇ! お前ら!!」
 応!と各々の応える声が響く。
 それぞれ、未来のためへと散っていった。


「きゃっ!?」
 かがみは地面に乱暴に降ろされて、目を覚ました。目の前にいるのはここで出会った頼れる仲間じゃない。
 畏怖すべき、異形の怪人だ。かがみは恐怖に錯乱した。以前のかがみなら、だが。
「……き、きっと……村雨さんがあんたを倒しにくるんだから……!」
 恐怖に脅えながらも、かがみはシャドウを睨みつけた。
 そのかがみを認め、シャドウは感心したような眼差しを向ける。
「な……何よ……」
「この俺と一対一でいる割りに、それほど恐れていないのを感心しただけだ」
「恐れて欲しかったの……?」
「いや、どうでもいい」
 シャドウは投げやりに答える。扉が急に開き、コマンドロイドが入ってきた。シャドウは鬱陶し気に見る。
 コマンドロイドは無機質な動きのまま、シャドウへと声をかけてきた。
「ジェネラルシャドウ様……愚地独歩を殺したアナタ様に質問がございます」
「独歩さんが……ッ!」
 かがみの声を無視して、シャドウは顎で続きを促した。
「独歩を優勝者と認め、回収命令が出ています。生死は問わないので、その身の在り処を教えて欲しいと暗闇様からの伝言です」
「フン……」
 シャドウは鼻を鳴らしながら、コマンドロイドに出口を示す。
 戸惑うコマンドロイドに不機嫌なまま会話を続けた。
「あの男は見事な死に様だった。欲しければ俺を倒して無理やり吐かせろ。そう伝えとけ」
「まさか……アナタも反逆をっ……!」
 するつもりか、と続ける前にコマンドロイドの頭が吹飛ぶ。
 その額に、シャドウがトランプを撃ち込んでいたのだ。
 シャドウは死骸には目もくれなかった。


「アナタが……独歩さんを殺したの!?」
「……奴には感謝をしている」
「え……?」
 シャドウの意外な言葉に、かがみは目を見開いた。
 シャドウの眼差しに懐かしむ色が宿る。手前にあるバイクの星型のヘッドライトを撫でた。
「このバイクは我が宿敵、仮面ライダーストロンガーのものだ……」
「仮面ライダー……って村雨さんの……」
「先輩に当たる。奴は強い。俺は奴と戦うことを至上とした。そう、最後のあの決闘……あれは心躍った……」
 饒舌な怪人を前に、かがみは反応に戸惑う。しかし、シャドウの声のトーンが急に下がった。
「だが、死んで大首領の力で蘇ったこの世界には、ストロンガーはいない……。
奴が残したカブトローを乗り回しているが……俺には虚しさが積もるだけだった」
 かがみはここまで人間臭い怪人もいることに不思議に思う。
 だがすぐに、村雨のことを考え、そんな相手もいるだろうと考え直した。
「独歩さんは……」
「キサマらを逃がすために、最後まで戦い続けた。己が負けることなど、微塵も信じずに。
この核鉄とやらを捨てて、自分の鍛えた拳だけでな。奴の形見だ、持っておけ」
 シャドウがそういうと、首輪のまかれた核鉄を投げた。
 かがみは抵抗できる手段を渡したことに驚くが、逆を返せば核鉄程度の力があろうと、シャドウは問題視していない、ということだ。
 そしてその認識が正しいことを知っているため、村雨たちの足を引っ張る形となり、己自身を責める。
「俺はこのまま腐るつもりは、もうない……。ストロンガーがいないというのなら、その後輩と戦う。だが……」
 シャドウが急に構えて、独歩の死体の在り処をかがみに耳打ちして離れる。
 独歩の死体の在り処を教えてもらうのはありがたいが、突然のことでかがみは戸惑う。
 シャドウはかがみを無視して、覇気を入り口に向かって放った。

「キサマがストロンガーに誇れる仮面ライダーであるかどうかは、この剣に聞く!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 壁をバイクで破壊し、座席から跳んで入ってきたZXが十字手裏剣を投げつけた。
 シャドウはそれを切り払って、ZXへと踏み込む。
 二人の身体が交差し、互いに距離をとった。

「俺の名はジェネラルシャドウ……行くぞ! 仮面ライダー!!」
「俺は……仮面ライダー! ZX!!」

 仮面ライダーと改造魔人、二人の意地が激突する。


【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]右胸に打撃痕。疲労(小)。
[装備]シャドウ剣。トランプ内蔵ベルト。
[道具]なし。
[思考]
基本:心残りを解消する。
1:仮面ライダーと決着を着ける。
2:独歩の死体の在り処を、暗闇たちに教えるつもりはない。
[備考]
※暗闇の指令【独歩の死体を使って大首領の復活】を知りません。


【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に負傷小。核鉄の治癒力と自己再生にほぼ回復。疲労(小)。首輪が解除されました。ZXに変身中。
[装備]十字手裏剣(2/2)、衝撃集中爆弾 (2/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ジェネラルシャドウを倒す。
2:かがみを助ける。
3:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る。
4:仲間と合流する。
5:穿孔キックを完成させる。
6:パピヨンを止める。
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です。
※参戦時期は原作4巻からです。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。
※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます。


 かがみはなぜシャドウが独歩の死体を教えたのか、おぼろげに理解した。
 シャドウはZXとの戦いを、無傷で済むと考えていないのだ。
 むしろ、命を落とす可能性も考えての行為だろう。覚悟も似たようなことを行なうと聞いた。
 そして、彼と話していると独歩に敬意を払っていることに気づいた。
 純粋にZXとの戦いに赴くシャドウに複雑な気持ちを抱えた。
 シャドウは強いのだろう。
 そうでなければ、仮面ライダーに戦いを挑もうと考えはしない。
(私には祈ることしかできない……。でも、村雨さん、お願いだから勝って!)
 かがみは静かに祈る。それだけしかできないから。
 だがそれこそが、戦うものの力となる。


【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】

【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:健康(クレイジーダイヤモンドにより、左腕復活)、首輪が解除されました。
[装備]:巫女服
[道具]:ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン。モーターギア(核鉄状態)@武装練金
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:村雨の勝利を祈る。
2:別れた仲間と合流。
3:独歩の死体に、手を合わせたい。
[備考]
※独歩の死体の在り処を知っています。




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