未来への遺産 ◆hqLsjDR84w





 ◇ ◇ ◇


「んん………………?」

 やたらと日常じみた声を漏らしながら、服部平次が目を覚ます。
 同時に、自身がもう一度目を覚ましたことを疑問に思う。
 しかしすぐに、ポケットに入った二つの金属片のことが脳裏を過る。

(核鉄の治癒力のおかげ……か?)

 その答えは、半分だけ正解。しかし訂正するものは、この場にいない。
 上体を起こした服部は、自身の回復具合に驚く。
 腹に穴を開けられたのに、今の服部は万全の状態といって変わりない。
 傷口を触れようとするが、傷は既に塞がっていた。
 錬金術の結晶の能力に感心しつつ、塞がった傷口の上――左胸に傷痕を発見する。
 服部には身の覚えのない傷。
 これまた塞がっているが、だからと言って『ならいいや』と済ませるほど、服部は能天気ではない。
 困惑しつつ、服部は腹に向けていた視線を周囲に移す。

「う、うあああああああああああああああああああああああっ!?」

 直後、服部の口から上ずった悲鳴がこぼれる。
 服部の隣には、助けたはずの男が横たわっていた。
 右腕と右耳がなく、左足に奇妙な傷を負い、背中から血を流し、体温を喪った状態で。
 状況を理解できず、ただただ焦る服部の手元に何かが触れる。
 それは一枚のDISC。表面に透けて見える筋骨隆々な男性の姿――クレイジー・ダイヤモンドに、服部は見覚えがあった。
 首輪を嵌めていない服部に、クレイジー・ダイヤモンドの適正が存在するはずがない。服部も知っている。
 だが服部は両手に力を込めて、自らの額より飛び出そうとするDISCを無理矢理に押さえつける。
 その状態を維持しながら、胸中で何度もクレイジー・ダイヤモンドの名を呼んで発現させようとするが、そうそううまい話があるワケもなし。
 スタンドが発現しないという事実に、予想していたとはいえ服部の両の瞳から涙が浮かんでくる。
 瞼に収まりきらないほど溢れ続ける涙は、遂には頬を伝って床を濡らす。
 それでも諦めきれずに、服部はDISCを額に捻じ込もうとする。
 瞬間、服部の脳内に、DISCに付着した記憶が映し出される。
 記憶の高波に襲い掛かられ、服部は抵抗できずに倒れこんだ。
 うつぶせに倒れこんだこともあり、服部の額からDISCが射出されることはなく、付着した記憶は服部の中に流れ込み続ける……――――


 プッチを殺して重力が元の状態へと戻った所為で、浮かんでいたバイクとボックスが無造作に散らばっている。
 ただのバイクなら、どれかが衝撃で壊れて炎上。
 他のバイクに燃え移って格納庫中が火の海に、なんてことになりそうなもんだが……
 そこは、さすがBADANの技術力ってとこかね?

 服部は途中で俺が安全地帯へと放ったのが幸いし、瓦礫に埋まらずほぼ無傷みてェだ。
 ……プッチにやられたとこ以外は。
 俺の所為で服部は殺され、服部が俺にDISCを突っ込まなきゃ俺は倒れたままだった。
 感謝しても、し足りることはない。
 いまは、一刻も早く仲間達と合流しなきゃならない状況だ。
 しかし何より先に、服部の元へと行って、手を合わせるくらいはしなくちゃあならない。

 あー……クソッタレ。全ッ然、進まねェ。
 さすがのジョセフ・ジョースターにも、この足はつらいぜ。
 大首領とやらをぶちのめす前に、病室かなんか探すべきかもなァ。
 BADANの技術力なら一瞬で治ったりすんだろ、多分。
 そんなことを考えていた時だ。
 扉を開ける音が響く。

「ちィ、こんな時にッ! 『マジシャンズ・レッド』!!」

 マジシャンズ・レッドを発現させて、扉の方へと首を向ける。
 しかし、そこにいたのは怪人の類ではなく……

「ひっぃぃいいいいいい!」

 ……両手を上に上げて縮こまる白衣の男。
 どう見ても、一般人。
 どういうことなんだ? と思ってたら、勝手に相手が全部話してきた。

「わっ、私は、プッチ神父に無理矢理UFOを操縦しろと言われただけでっ!
 そ、そんなことしちゃいけないのは分かってたんですが、脅されててっ。逃げたらっ、こ、こ、殺されるかと」

 ふんふん、なるほどな。
 プッチは『北緯28度24分西経80度36分』に行くために、あのUFOを使おうと思ってたのか。
 その為に、アイツを脅したと。
 にしても、この怯えっぷりに発言の内容。
 ……もしかして、俺もBADANの一味だと思われてるのか?
 ケーッ! あんなヤツ等と同類だと思われるなんてなんて、失礼にもほどがあるぜ!
 にしても、この白衣……
 村雨の知り合いっつってた、伊藤博士ってヤツかね?
 そう考えたとほぼ同時に、その案を塵にした。二度と思い返すことはないだろう、絶対。
 こんなびびりまくってるヤツが、情報を漏らしたりするワケがねー。
 そういや、村雨が命を握られて渋々従ってる研究員が多いっつってたな。
 もう一度目の前の男に視線を向ける。
 ……いやー、スッゲェ脅されてそうな気配がするぜー。

「おい、手短に答えろよ。お前は、BADANの研究員なのか?」
「は、はいいいいっ」
「命を握られてしょうがなく従ってんのか?」
「そっ、そんなワケがないじゃ」
「正直に言えよォー。俺は相手が嘘吐いてるかどうなのか、簡単に見破れんだぜェー」

 勿論、根も葉もない嘘。
 ……こんな下らねー罠は、めったに仕掛ける機会がなさそうだぜ。

「ひっ、ひいいいいいいっ! た、確かに嫌々ですが、逆らう気なんて毛頭あり――」
「オーケー、だったら助けてやるぜ」
「ませんので……へっ?」

 呆けている研究員に、正体を明かしてやる。

「俺の名は、ジョセフ・ジョースター。侵入者が来たのは知ってんだろ? その中の一人だ。ところで――」
「侵入者……ひいいいいいいいいっ! 仲間だと思われたら殺されるううう!」
「おいおい、待てって」

 逃げようとする研究員に、マジシャンズ・レッドの炎を放つ。
 当たり前だが、当てる気はない。
 予想通り、へたり込む研究員に話を続ける。

「いつ気まぐれで死ぬかも分からねーのに、BADANなんかに従ってていいのかァ? それより、こっちについた方が良くなァ~い?」
「そ、それは……」
「こっちにゃ、大首領様とやらに対抗できるスゲェ仲間がたくさんいるんだぜェー」
「本当、です……か?」
「本当も何も、大マジよ! そもそもBADANの妨害を破って、ここまで侵入出来てるんだぜ?」
「確かに、そう……かもしれません」

 よっしゃあ! 食いついたぜ!
 あと一押しだな。

「それにな……ここだけの話だけど、強化外骨格に大首領を光臨させるんだろ?」
「な、なんでそれをっ!」
「その強化外骨格の天敵とも言えるアイテムを持ってんだよ、俺たちは! 完璧だよォ、この脱出作戦はーーーっ!!」

 思いっきり笑顔を見せる。
 そしたら……

「…………分かりました」

 おし! 誘導成功!
 頼みたいことは、それこそいろいろある。
 伊藤博士とやらの居場所を教えてくれとか、薬もってこいとか、暗闇大使とかいうヤツの居場所とか。
 でも、まずは……

「よし。じゃあ、まずは俺に手を貸せ。あそこまで行きてえんだが、足を怪我しちまって困ってたんだ!」

 左足の代わりとなってもらうかね。ヒッヒッ、いい足を手に入れたぜェー。


  ◇  ◇  ◇


 手に入れた足のおかげで、服部の元に着くまですぐだった。
 服部の近くに転がる二つのデイパックを回収。
 デイパックに入っていた水と食料として支給されたフルーツを、供え物として服部の前に置く。
 そして両手を合わせて、謝罪と感謝、両方の意を心の中で伝える。
 この場ではこれくらいしか出来ないが、許してくれ。
 戦いが終わったら、ちゃんと埋葬する。
 そう誓って、しゃがみこんでから服部のポケットに手を入れる。
 すまないとは思うが、今の俺には核鉄が必要なんだ。悪いな。
 ポケットの中は、まだ死んでから大して経っていない服部の体温が残って――――

 いやいや、待て待て待て待て。
 おいおいおいおい。今、胸が上下しなかったか?
 しかしそんな奇跡が起こるわけが……あんな致命傷を……
 服部の口元に手を持っていく。手に感じたのは、風。つーか、どう考えても吐息。

「生きて、やがる……」

 どうやってあんな致命傷を受けて生きていたのか。
 別に服部が生きてたんだから理由なんかどうでもいいはずだが、どうにも気になる。
 思い当たるのは、核鉄の治癒力。
 しっかし、あんな傷を耐えれんのかァ? だったら、勇次郎と戦った時にもっと早く回復するはずじゃねーか?
 つっても、核鉄以外には思い当たらないが――ッ!
 頭の中で、点と点が繋がる感覚。なるほど……そういうことかい。
 制限が解除されて、『零』は普段通りの策敵能力を取り戻したと言っていた。
 ってことは、支給品にも制限がかかっていたのだろう――核鉄の治癒力にも。
 そう考えれば、勇次郎の時と今の回復スピードの違いが説明できる。

 服部の顔に目を向ける――表情は蒼白。
 服部の手首に指を当てる――脈拍はかなり遅い。
 核鉄二つ分の治癒力は、確かにすばらしい。
 死に至る傷を負った服部を、『生き長らえ』させている。
 そう、服部は生き長らえたにすぎない。
 今では出血が止まっているが、血を流しすぎている。
 仮に、あと核鉄が二つ三つあれば別だが、このままでは――――服部は死ぬ。
 だが……血を戻す方法はある!
 クレイジー・ダイヤモンドで服部を殴れば、飛び散った血液が戻ってくるはずだ。
 なんせ電線に取り込まれたヤツも治したんだからなァ!
 笑みを隠し切れずに、クレイジー・ダイヤモンドを発現させようとした瞬間だった。

「――ごめんなさい」

 焼けるような感覚が、背中一面を走った。
 赤黒い液体が口から溢れ出し、身体が勝手に倒れこむ。
 体勢を立て直そうとするが、うまく力が入らない。
 どうにか服部に圧し掛かるのだけは阻止して、服部から数メートルはなれた場所の床に勢いよく腹を打った。
 スタンドを出そうとするが、無理だった。
 何とか顔を横に向けた俺の前に、仲間にしたはずの研究員が立っていた。
 さっき拾った時、研究員に一応持っとけと渡しといた、最初に襲い掛かって来たコマンドロイドが使っていた電磁ナイフを右手に握って。
 血を滴らせている電磁ナイフを見て理解する。
 俺は、アイツに背後から斬られた。
 ちくしょう、アイツは自分の意思でBADANに従ってたのかよ……
 そんなことを考えていたら、アイツが口を開いた。

「無理なんですよっ、BADANを倒すなんて!
 かつて十人ライダーも、あなたみたいに私を助けてくれた……
 で、でもっ! 十人ライダーが……いっ命を賭けて倒したはずの大首領は、まだ生きていました……」

 研究員が、悲痛な表情で言葉を続ける。

「平和な生活はたったの三年で崩れ! またBADANに私は拉致されてしまった……
 一瞬、私も夢を見かけましたが……十人ライダーでも出来なかったのに、大首領が倒せるわけがないんですよっ!」

 それだけ言うと、研究員はポケットから銀色の機械を取り出す。
 確か服部も持っていた……携帯電話とか言うヤツだ。
 研究員はそれを開いてから、俺に視線を落とす。

「どうせBADANに拉致されたままなら、少しでもBADAN内の地位を向上させたほうがいい。
 侵入者を殺害すれば、私の地位は急激に上昇するはず……そう思ってあなたと同行したんです。
 ハハハ……まさか自分から武器を渡してくれて、背中まで見せてくれるなんて思ってませんでしたよ」

 それだけ言うと、研究員は携帯電話のボタンを押して、それを耳に押し付ける。
 服部によると小型の電話らしいから、上司に成果を報告する気か……?
 だが……動けねーと高をくくって、俺から目を離したのは失敗だぜ……
 ダメージが大きくスタンドは出せなくて、呼吸が整わず波紋も練れねーが……波紋は体内に残っている。
 それなら……バレないように、右足を落としたデイパックに伸ばす。

「あっ、わ、私です、研究員NO.021ですっ!
 暗闇大使様は……あ、出征なさってますか、す、すいませんっ。なら、伝言を……」

 右足にデイパックが引っかかった。
 バレないように足を元の場所へと戻し、音を立てずにデイパックに左手を突っ込む。

「あ、あの侵入者……筋骨隆々な外国人の男なんですが……え? あ、名前は……えーと、ジョセフ・ジョースターって言ってました、すみません。
 その男を殺害しました! い、一緒に同行していた学生風の日本人少年にも、いまトドメを刺します。以上ですっ」

 目当ての物が見つかった。
 ゆっくりと電話を切り、電磁ナイフを携えて服部へと歩く研究員が視界に入る。
 手を動かそうとするが、なかなか動かない。
 やっと左手を研究員の方向へと伸ばせた時、既に服部は電磁ナイフに貫かれていた。
 だが、刃が数センチ入っただけだ。まだ間に合う。
 体内の波紋を左手へと送る。
 左手に集った波紋は、掴んでいるエイジャの赤石――波紋増幅器――内を幾度となく反射。
 反射を繰り返す波紋エネルギーは、その度に強まっていき――火の玉のような形状となって、研究員の方へと射出された。

「自暴……自、棄に……なるのは、テメ、ェの、勝手だが…………
 殺し、に……かかる、ってことは……やり、返さ……れる覚、悟も……あっての、ことな……んだ、ろう、な?」
「……へ?」

 事態を理解できぬまま、研究員は波紋エネルギーを右肩に受けて左肩から先が焼失。
 腕の付け根であっただろう胸からは、おびただしい量の血を流している。
 後ずさりしながらふらついて、最終的に地に臥す研究員。
 あの様子じゃあ、放っといても立ち上がるのはあろか、生き長らえるのは不可能だろう。
 電磁ナイフを持ってるということは、服部の左胸にナイフが刺されたままではないということだ。
 床を這いずり回って、服部の元へと向かう。
 体内に残った波紋は、ごく僅か。
 右腕の喪失による痛みも、右耳の喪失の痛みも、裏返った左足の痛みも、斬りつけられた背の痛みも、緩和させることは出来ない。
 しかし、それでいい。
 むしろこの痛みを鈍らせてしまえば、俺はそこで気を失ってしまう。
 激しすぎる痛みこそが、俺の意識を繋ぎ止めてくれているのだ。
 ちくしょう。二メートル、三メートル程度の距離だってのに、服部までやたら遠く感じられるぜ……

「あハハ。……どう、せ……アンタも、すぐ死ぬ……よ、その……傷、じゃ。……何で、そ……ん、なに、意地……張っ、て…………っ」

 研究員が、下らねェことを聞いてくる。
 肺まで攻撃は届いていたらしい。
 喋るたびに、胸の傷から溢れる血に気泡が入り混じっている。

「人、間、の……くせに、バケ、モノ……なんかの……下、手、に出るテ……メェ、なんか……にゃ
 喋、った……ところで、理解、出来ねー……よ…………………」

 そうだ。
 俺が死ぬことくらい、俺がイチバン分かっている。
 それでも、やらなきゃならねェことがある。
 波紋で痛みを和らげて静かに死んでくっても、かなり魅力的だが……そういうワケにはいかねえ。

 曾祖父さんは、ディオの攻撃から祖父さんを身を挺して守った。
 祖父さんは、エリナお祖母ちゃんとリサリサ先生を脱出させて、沈み行く船の中でディオを深海へと道連れにしていった。
 親父は吸血鬼に対抗する手段を持っていなかったのに、ただ殺されるのではなくバレないように証拠を残した。
 承太郎は危険だと分かっていながら、徐倫を庇ってDISCを抜かれた。
 この殺し合いに参加していた承太郎はどうしたか知らねェが、アイツが何もしないで死んでいったとは思えねェ。
 他にも……
 シーザーはピアスを手に入れ、最後の波紋を俺にピアスを届けるために使った。
 シーザーの祖父さんは、俺の祖父さんに波紋の力を与えて死んでいったという。
 スピードワゴンは、死んでからもずっとジョースター家を支えてくれている。
 シンジは一時期錯乱していたが、最後にクレイジー・ダイヤモンドのDISCを託してくた。
 ハヤテはなよなよとした見た目のくせに、村雨を仮面ライダーにしたという。
 劉鳳のヤローは、あのラオウを倒してやがった。
 復活したDIOを倒すために集った仲間――イギーは、アヴドゥルは、花京院は!

 みんな、最期に誰かに何かを託していったんだ……

 何かを受け継いで、それを未来に残して、そして死んでいったんだッ!

 俺だって、そうさせてもらうぜ。

 俺は誇り高きジョースターの血統だ……何としてもそうする。

 何も残さねェなんてみっともなさすぎて、それこそ落ち着いて死んでもいられねーぜ……

「着いた、ぜ……」

 やっとのことで服部の元へと辿り着いた。
 赤石を服部の腹の上に置いて固定する。手が震えて時間がかかったが、完了した。
 次に、体内に残った波紋を全て搾り出して左手へ集中させる。
 そしてその左手を赤石へと押し付け、波紋エネルギーを一気に放出する。

「波、紋……疾走……ッ!」

 赤石によって波紋エネルギー=生命エネルギーが、何倍にも増幅する。
 その全てが服部の体内へと流れ込み、みるみる服部の傷が塞がっていく。
 しかしこの程度では、まだまだ波紋の効果は終わらず。
 服部の脈拍が正常に戻ると、続いて青白かった顔色もピンク色へ。

 ――治った。

 そう確信したと同時に、全身が重くなる感覚を覚える。
 目蓋が勝手に塞がってきて、身体に力が入らない。
 視界が白く染まっていき、傷の痛みも感じなくなっている。
 これが『死ぬ』ってことか。
 服部が起きたら自分を責めそうだなァ、アイツ。
 気にすんな、服部。俺が勝手に我意を通しただけのことだ。
 下らねェことに悩む暇があるんなら、大首領とやらを倒すのに集中しろ。
 そう遺言でも書き記してやろうと思ったが、焦点が定まらないし、何より指すらも動かせない。
 全生命エネルギーを外に出しちまったんだから、当たり前か。
 抵抗も出来ずに、床に体を叩きつけてしまう。その痛みすらも僅か。
 衝撃でDISCが抜け落ちる感覚が脳内を駆け巡ったが、それを確認することすら適わない。
 あー……名前まで考えてたんだから一回くらい抱いてやりたかったぜ……ホリィ……


 付着した全ての記憶が服部の脳内に流れ込み、記憶の奔流は幕を閉じる。
 現実に帰還した服部は、近くにある二つのデイパックを回収して、スーパーエイジャをポケットへと突っ込む。

 ジョセフが残そうとして諦めた遺言は、確かにジョセフへと伝わった。
 ゆえに、服部はジョセフの方を見ることはしない。
 これまで散っていった仲間の意思に加えて、新たに託されたジョセフの意思も胸に立ち上がる。
 無造作に積まれたバイク――量産型ヘルダイバーの中から、適当に動きそうな一台を選んで跨る。
 服部がアクセルを捻ると、それに堪えるようにエンジン音が響く。
 動くのを確認した服部は、プッチから聞いた暗闇大使の玉座へとヘルダイバーを走らせる。
 最高速度は出せるわけもないが、結構な速度を出しながら、服部は扉をぶち抜いて格納庫を後にする。
 彼が、うしろを振り向くことは決してなかった。
 両目から涙が溢れそうになるのを、服部は必死で堪える。

 仲間達が愚直なまでに貫き通した意思を拳に込めて、大首領へと叩き込むために――――服部平次は、もううしろを振り向きはしない。



【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】
【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:三村を殺したことから大分立ち直りました、首輪解除済み、負傷・体力全回復、ヘルダイバーで疾走中
[装備]:携帯電話、ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金、二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金、
スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険、量産型ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRIT
[道具]:支給品一式×2(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、
綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、 ギーシュの造花@ゼロの使い魔、キュルケの杖、拡声器、
包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック) 病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、
バヨネット×2@HELLSING、 紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)、外れた首輪(服部平次)、
七原秋也のギターをばらしたて出来た弦@BATTLE ROYALE、支給品一式×2、
空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:一撃でいいから大首領をぶん殴る。
1:プッチから聞いた暗闇大使の玉座へと向かう。
2:別れた仲間と合流。
3:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
[備考]
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※クレイジー・ダイヤモンドのDISCには、死ぬ直前のジョセフの記憶が付着しています。



 ジョセフ・ジョースターは最後まで意思を貫き通して、その命を散らしていった。
 もう二度とジョセフが起き上がることはない。
 ジョセフの生命という名の演目は、幕は下りた。再演の予定もないし、ジョセフにもそんな気はさらさらない。
 しかしDISCに付着した記憶を見た服部は、ジョセフの意思を知った。
 そして服部は、ジョセフの意思を大首領に届ける決意を固めた。

 ジョセフの意思は――そして魂は、服部へと受け継がれたのだ。

 皮肉なことにだが、人を止めて不老不死の生命体となったDIOの意思は断たれ、人であり続けたジョセフの意思は継続する。

 確かに、ジョセフの生命は終わった。
 されど彼の意思は、服部の中に残り――そして他の仲間の中にも伝えられるであろう。
 だから、ジョセフ・ジョースターの話は終わりではない。
 ゆえに『完』や『終』などの文字ではなく、この言葉を最後に記す。

  To be continued ......



【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】
【残り参加者 7人】





※プッチの首輪、リンプ・ビズキットのDISC、死神13のDISCは、格納庫内に転がっています。
※プッチの持っていた携帯電話は、プッチと共に灰になりました。
※マジシャンズ・レッドのDISCは、ジョセフの死に引き摺られました。
※C-MOON覚醒以降は、『この身は我が組織のために』『真・仮面ライダー ~決着~』『覚悟のススメ』『Bellis perennis』よりも後の時間の話になります。
※C-MOON覚醒からプッチが死ぬまでの間、プッチの周囲半径三キロメートルは重力が狂いました。
※C-MOON覚醒からプッチが死ぬまで、だいたい五分程度の時間が経過しました。
※BADANの構成員に、研究員から侵入者の『ジョセフ・ジョースターという名の筋骨隆々な外国人の男』と『一緒に同行していた学生風の日本人少年』との連絡が入りました。








256:Bellis perennis 投下順 258:
256:Bellis perennis 時系列順 258:
252:人の瞳が背中についていない理由は 服部平次 258:
252:人の瞳が背中についていない理由は ジョセフ・ジョースター 死亡