永遠の夢に向かって

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永遠の夢に向かって ◆uiAEn7XS/.


漆黒の夜空は僅かに白みかかり、煌々と輝く月は太陽に出番を譲って姿を消そうと準備を始める。
朝が来る。
お前たちの時間はおしまいだと、吸血鬼どもに告げている。
だが――。

「URYYYYYYYYYYYYY!!!!」

獰猛なる唸り声、吸血鬼DIO。
右腕欠損。
左足骨折。
顔面陥没。
これだけのダメージを負っても退くつもりはない。
いや、だからこそ退けない。
傷つけられた帝王の誇りにかけて!

「HAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

けだものの笑み、吸血鬼アーカード。
頭蓋陥没。
四肢の複雑骨折。
全身からの出血は地面に血だまりを作る。
こちらも退くつもりはない。
戦いはこれからだ。
お楽しみはこれからだ!

二人ともお互いの攻撃により、道路の両脇に吹き飛ばされた状態。
その余波で破壊されたブロック塀の瓦礫の中から、眼前の敵を倒すべく立ち上がろうとする。
だがお互いのダメージがそれを許さない。
折れて砕けた足では立ち上がれず、ただ敵を睨むのみ。
刻々とタイムリミットは迫っていく。

「ヌウッ、ザ・ワールド!!」

黄金のスタンドが出現し、DIOの身体を引っ張りあげる。
その勢いで宙を舞ったDIOは、折れた片足をものともせず、もう片方の足で着地。
逆方向に曲がった脚を無理矢理に元に戻しつつ、勝利へ向かう思考は片時も止めない。
(このDIOの勝利とは完全なる勝利!この戦いに勝っても、朝日によって消滅しては何にもならぬ!)
そして道路を挟んで対峙するコートの男を睨み、さらに考察する。

『スタンドはスタンド使いにしか見えない』
『スタンドはスタンドでしか倒せない』

そのはずだ。
だが、あの男だけでなく平賀才人にもスタンドの姿が見えている。
さらにあの男には先刻、『世界』の腕を素手で掴まれ、へし折られまでした。
(スタンド能力そのものが制限されている……これがこの殺し合いを仕組んだ奴等の能力か?)
「敵」から流れ出た血液がざわざわと蠢いている。
周囲の闇と同化し、赤黒い何かが砕けた肉体を徐々に修復していく。
「どうした?来ないのか?ならばそろそろこちらから行くぞ?」
挑発に乗っている場合ではない。DIOはさらに考察を続ける。
もちろん敵に十分な警戒態勢をとった上で。
(あの男が実はスタンドであり、本体は別にいるのであれば――いや、首輪をしているからにはそれはない……ん?)

――首輪!?

「そうか……ククククク、いいだろう!スタンド能力が制限されているのであれば、他にもやりようはあるッ!」

「――気化冷凍法ッッ!!」

その叫びと同時に、出血を続けていたDIOの右腕の切断面が変化を起こした。
血の勢いが徐々に弱まりシャーベット状になっていく。
やがて真紅の血液は、赤黒い氷の結晶と化して出血を止めた。
(フン。ジョセフの血を吸ったこの状態なら、百年前と同じく一瞬で凍結できるかと思ったが……血が足りぬか)
DIOは拳を固める。
眼前に迫るアーカード。
いまだに身体のあちこちが傷ついたままだが、そんなことは意に介さない。
「準備はできたかね。ならば始めよう!闘争を!甘美なる闘争を!!夢の如き闘争を!!!」
振り下ろされる豪腕はかすめただけで肉や骨をえぐりとる、正に鉄槌。
対するDIOは動かない――が。
「当たらなければどうということはない!無駄ァァ――ッッ!!」
完璧なスウェーバック。完璧な距離感。
さらにカウンターの左拳をアーカードの顔面に叩き込む。

「貧民街ブースボクシングの技法!このまま親指を眼の中に突っ込んで――殴り抜けるッッ!!」

DIOが人間だった頃、ジョナサンとの一騎打ちの際は単なる目潰しでしかなかった。
だが吸血鬼の膂力はそれを、頭蓋を砕き脳みそを撒き散らす破壊の嵐に変える。
普通の人間から見れば、すれ違いざまにアーカードの頭部が爆裂したようにしか見えないだろう。
さらに片足でのワンステップで数メートルの距離をとり、その両眼を妖しく光らせた。

「とどめだッ!URYYYYYYYッッ!!」

それは圧縮した体液を眼球から撃ちだす技。
ただの水でもコンプレッサーで圧力をかければ、それは手術にも使用できる水圧のメスと化す。
それと同じく、DIOの超絶の能力によって圧を加えた体液は、岩をも砕く弾丸となった。
狙いは首輪。
そして寸分違わずそのフレームに穴を開ける。
DIOはあの老人が最初に首輪を爆破した時の言葉を思い出していた。

――ちなみに首輪は大きな衝撃を与えたり、力ずくで取り外そうとした場合も爆発するようになっとる。

爆発音が起こり、三分の一ほどが欠損したアーカードの頭部が宙に舞った。
「終わりだ!破裂するホウセンカの種の様に――肉と骨と脳漿をブチまけるがいいッ!!」
そのまま首を振り上げ、空中の生首に破壊の視線を見舞う。
アーカードの頭部であったそれは、原形をとどめない程にバラバラになって地面へ降り注いだ。
ぼたぼたとだらしのない音が止んで、やがて静寂が訪れる。
吸血鬼であるDIOでも脳髄を粉微塵にされては生きていられない。
ゆえに勝利を確信し――、


「勝ったッッ!!HELLSING 完ッ!!!!」


「――まだだ」

「何ィ!?」
首が無いのに何故喋れる――いや、そんなことは問題ではない。
「何故生きている!?」
「生きてなどいない。私はすでに死人なのだから。吸血鬼なのだから」
まるで歌うように。
血臭漂う空間にアーカードの声が響き渡る。
DIOのほうへ向き直った首なしの「死体」はすでに顎まで修復されようとしていた。
「吸血鬼――このDIOと同等の存在だと!?いや……ならば、なおのこと!首から上を吹き飛ばされて動けるはずが無いッ!!」
「そうか。おまえもそうなのかDIO。だが私はこの程度では死ねない。
 このアーカードを殺したいのなら――ここをえぐるしかないのだ」
オペラ歌手の様に優雅に胸に手を当てて、そして言葉を続ける。

「心の臓を」

「アーカード――――ブラム・ストーカーか?中世ヨーロッパの時代より生き永らえてきた伝説の吸血鬼とでも言う気かッッ!!」
「――そうだとしたら?」
にたぁり。
「…………ッ!ならば貴様……朝日が怖くないのか!?夜明けまでもうすぐだというのに!」
DIOは内心でかなりの焦りを覚えていた。
時間が無い。このままではこの男を殺しきることはできない。
日の光を遮るための寝ぐらを探す時間を考えれば尚更だ。

「一つ教えてやろう。この私にとって、日の光とは弱点ではない。大嫌いなだけだ」

「――――ッッ!フ……フハハ……フハハハハハハハハ――ッ!!!!」
その言葉を聞いた瞬間のDIOの反応は素早いものだった。
吸血鬼のパワーに『世界』のパワーを加え、数十メートルの距離を一足で跳躍する。
「逃げるのか。お前も犬と同じなのか。出来損ないの下らない生き物め」
アーカードの侮蔑にDIOは唇の端を吊り上げ、高らかに答えた。

「フン!このDIOにとって、勝利とは結果こそが全て!
 今は貴様を殺しきれんし、その時間もない……口惜しいがな。よってここは退く。
 だがッ!この仕組まれた下らんゲームにおいて、俺は新たなる目標を手に入れた!
 アーカード、いや吸血鬼ドラキュラ!俺は貴様のボディを手中に収め、日の光を克服する!!
 そして究極の生物となって新たなる高みへと昇り、真に絢爛たる永遠を生きるッ!!
 俺はそのために力を蓄え、必ず貴様に勝利することをここに誓おう!!
 貴様に犬と蔑まれようが、誇りなどという犬の糞にも劣るものを捨てようが、そんなものはどうでもいい!!
 過程がどうであろうとも、最終的に――――、


 勝てばよかろうなのだァ――――ッッ!!!!」


DIOが地を蹴る度に打楽器の重低音にも似た音が響き、その身体が宙を舞う。
それを何度か繰り返すだけでアーカードの姿は見えなくなった。

(市役所……繁華街……このあたりなら隠れる場所にも困らんだろう。
 駅が近いから、食料にする為の人間どもも集まりやすいはずだ……。
 まずは体力の回復、手頃な代用の腕も見つけなければならんしな)

そして自身の首輪に目を落とす。
アーカードと同じく、このDIOも首輪の爆発如きで死ぬことはない。
このゲームの主催者は我々を舐めているのか?
……もし自分がアーカードに爆弾を仕掛けるとするなら、奴が弱点と公言した心臓だ。
そしてそれを自身の弱点に当てはめれば――。
「試してみるか」
才人と初めて会ったときと同じように、DIOは自身の頭部に指をズブリと突き刺した。
そして感触を確かめるようにゆっくりと動かし、今度は反対方向からもう一度深々と突き刺す。
「脳漿の中に固い感触……やはりここか」
DIOには首輪の他に、脳髄の中にもう一つ爆弾が仕掛けられているということだ。
アーカードの心臓にも同じ様に埋め込まれたものが存在しているのだろう。
「『世界』で時を止めて取り出すか。いや、相手も何らかのスタンド使いである可能性がある以上、早まってはならん……まずは――」

太陽が顔を出すまで時間がない。DIOはペースアップするべく、強烈に大地を蹴った。

    *

空と大地の境目から真っ白な光が覗く。
忌むべき太陽が顔を出すのも、そう遠いことではないだろう。
「クククククク、フハハハハハハ」
血の色をした闇を身体にまとわりつかせて、アーカードは笑う。
その闇が蠢くたびに傷ついた体が修復されていく。
「この私の体を乗っ取ると言うか。面白い。面白いぞDIO」
路傍に放置されたDIOの右腕をひょいと拾う。
そして――、

ばきり。むしゃり。ぼり、ぼきり。ごくん。

血とは魂の通貨。命の貨幣。
命の取引の媒介物。
『それ』を喰うということはジョナサンの肉体の、ジョセフの血液の、DIOの記憶を我が物とすること。
ノイズだらけではあるが、アーカードの脳裏にDIOの奇妙な冒険譚の全てが走馬灯の様に閃いた。

「すばらしい」

空条承太郎、ジョセフ・ジョースター、花京院典明、J・P・ポルナレフ、モハメド・アヴドゥル、イギー。
そしてジョナサン・ジョースター。

なんという男だ。なんという男達だ。
まるで――まるであの男達の様だ。

アーサー・ホルムウッド、キンシー・モリス、ジャック・セワード、そして。
そして――エイブラハム・ヴァン・ヘルシング。

夢の様だ。
人間とは夢の様だ!

DIOよ。
化け物よ。
俺とまるで同じ糞たれよ。
俺はお前が羨ましい。
お前にはあのような素晴らしき御敵がいるのだから。

だからこそお前は夢を望むのか。
化け物でありながら、人間の様に。
絢爛たる永遠とやらを目指すのか。

そして、だからこそ気付かないのか。
永遠なぞ――、

「永遠なぞというものは――『こ の 世』には存在しない」

皆、死んだ。
皆、死んだぞ。
お前の為に、お前の夢の為に。
お前の永遠の為に――皆、死んでしまった。
自分までも。
全く。
全く以って度し難い化け物だよ。

――それでも、
――それでもなお、

「……いや、それだ。それこそが」

――それでもなお、諦めを踏破するのなら。

声がする。
「……!!」
呼び声がする。
「……ター!!」
誰かの――呼ぶ声がする。

「マスタ――――!!」


なあんだ。お前か。


【C-3南部 高速で北上中/1日目 早朝】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:右腕欠損(出血は気化冷凍法で止血)。左脚骨折(自然治癒中)。疲労大
[装備]:スタンド『世界』(現在の体力では時止め不可)
[道具]:支給品一式。デルフリンガー(紙状態)、ダーツ(残弾数1)
[思考]
基本:帝王に負けはない。参加者を殺し、ゲームに優勝する 。アーカードのボディを乗っ取り、太陽を克服する。
1:繁華街/市役所を目指す。どこかで休みつつ、人間を襲って体力を回復させる。
2:アーカードの打倒
3:平賀才人に時止めを使って『勝利』する
4:ジョースターの血統を根絶やしにする
5:ゲームを仕組んだ輩を断罪する
※アーカードとの戦闘で更に鬱憤が溜まりました。
アーカードにはどんな手を使っても勝つつもりです。
[備考]
・参戦時期は、ジョセフの血を吸った後、承太郎に時を止められるまでの間の時間帯から
(具体的にはジョジョの奇妙な冒険28巻、DIOの世界17)
・時を止められる時間は約3秒間です
・首輪の他に、脳内に同様の爆弾が埋め込まれています。


【C-5 路上/1日目 早朝】
【アーカード@HELLSING】
[状態]:頭蓋陥没、頭部にダメージ大。全身に打撲や骨折、ダメージ大(自然治癒中)。疲労大
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考] …………。
基本:殺し合いを楽しむ
1:DIOと戦い、殺したり殺されたりする
2:誰でもいいので、自分を楽しませてくれる相手と戦いたい
[備考]
・参戦時期は原作5巻開始時です 。セラスの死を感じ取りました。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人が気付いているかは不明。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。


051:鬼と戦士と喧嘩師 投下順 053:アンデルセンは二度死ぬ!!仮面ライダー最後の日!! 俺の名は―――
051:鬼と戦士と喧嘩師 時系列順 053:アンデルセンは二度死ぬ!!仮面ライダー最後の日!! 俺の名は―――
047:ハレ晴レフカイ(DIOver) DIO 064:闇と嘯く
047:ハレ晴レフカイ(DIOver) アーカード 059:ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!――



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