貴重な貴重なサービスシーン ◆d4asqdtPw2


「ったく、あれから暫く走り続けたってぇのに人っ子一人いやしねぇ」
そう吐き捨てたのは逆十字号に乗って西へ向かっていた愚地独歩。
だが、この暗闇の中で人を探しながら走るのは流石の彼でも骨が折れる。
見かけたのは小さいホテルが一軒だけ。
欠伸の一つでも出したところで

目の前に少女が飛び出してきた。

「……うお!」
油断していた隙の突然の出来事に、独歩はハンドルを切ってなんとか対処しようとする。
「……!」
一方の少女はヘッドライトが目晦ましとなり、対応が遅れる。
静かな夜空にキキキィというブレーキ音、直後に車体が横滑りする音が響いた。
「痛ってぇ~! 何だってんだ全く!」
土煙の中からほぼ無傷の独歩が現れる。どうやら車も大事には至っていないようだ。
落ち着いて辺りを見渡すと、先ほどの少女が倒れているのが見えた。しかも……血まみれだ。
「だっ……大丈夫かい嬢ちゃん?!」
やっちまった、と独歩は思った。交通事故は油断した頃にやってくるとはまさにコレだ。
(こんな様じゃあ夏恵に顔向けできやしねぇ)
自分の帰りを待つ妻が脳裏によぎり、情けなくなる。だが、今は少女の安否を確かめなければ。
「おい! 生きてるかい? 返事しろい!」
少女の体を抱き起こす。どうやらまだ息はあるらしい。
「うぅ……ここは?」
「ふぅ……大丈夫みたいだな。思ったより元気そうで良かったぜ。……するってぇと、この血はなんだ?」
少女が意識を取り戻したことに安堵したが、同時に新たな疑問が浮かび上がる。
「これは……あの……おじさん、助けて! 私、追われてるんです!」
少女、シェリスが独歩に抱きついてそう叫んだ。


★  ★  ★


「おい嬢ちゃん。着いたぞ」
独歩がシェリスに呼びかける。

シェリスによると彼女は汚水処理場で男女二人の殺人鬼に追われていたらしい。
最初に出会った人間も男の方に切り刻まれてしまい、体の血液は彼を抱えて逃げたとき付着したそうだ。
そして名も知らぬ仲間が息絶えたのを確認すると、彼を放り出して逃げてきた。
そこにエンジン音がして、助けを乞おうと飛び出してきたって事らしい。
『ひとまず、シャワーが浴びたいなっ!』
と、恐ろしいエピソードとは打って変わって元気になった少女の願いで、さっき見かけたホテルに戻ってきた独歩であった。

「へぇー。なかなかおっきいホテルだねぇー。すっごぉい!」
血だらけではしゃぎ回るシェリスを尻目に、独歩がホテルのロビーに足を踏み入れる。
「カウンターには誰もいないな。……まぁ当然か」
ロビーは入るものを歓迎するように、だだっ広い造りになっていて。大量のソファーやレストラン、カフェなどが設置されていた。
外見からは想像できないほど豪華な造りだ。とてもじゃないが殺し合いの場にはそぐわない。
「ねぇねぇ! どうせならスイートにしようよっ!」
彼女の住むロストグラウンド都市部にはこれ以上のホテルなど山ほどあるのだが、
さっきまでいた汚水処理場とのギャップだろうか、子供のようにはしゃぎ回る。
独歩が案内板を除くとスイートは五階と六階にあるらしい。
カウンターで適当な部屋の鍵を物色するとエレベーターを呼ぶボタンを押す。
「おい嬢ちゃん、おいて行くぞ」
エレベーターの到着を知らせる間抜けな電子音が響き渡ると、独歩は「5」と刻まれたボタンを押してシェリスに呼びかけた。
「はぁーい」
元気よく返事をしてエレベーターに乗り込む。その手にはそこら辺で物色してきたらしいホテルの従業員の服があった。

スキンヘッドの初老の男性と一緒にホテルに入っていくスタイルの良い少女。
誰が見たって「そういう事」である。
もっとも状況が状況だし、目撃者など誰もいない訳だが。

エレベーター内に再び間抜けな音が響き、目的地への到着を知らせる。
「絶対覗かないでよっ!」
シェリスが目を細くして言い放つ。
「見やぁしねぇよ。だいたいここはオートロックだ、そもそも入れねぇよ」
「……入れたら見るつもりなの?」
「……シャワーが終わったらロビーに集合だからな」
独歩がシェリスに鍵を渡し、自分も隣の部屋へ入っていく。
彼女に抱きつかれた際に服に血がこびり付いてしまったからだ。
長い廊下に再び静寂が訪れた。


★  ★  ★


清潔感漂う脱衣所に降り立つ一つの影、その表情は曇っていた。
服を脱ぎながら思考するのは、さっき見た死体の事。

あんな残酷な事をする人間がこの会場にいる。

そこまで考えて、やめた。折角この血を洗い流せるのだ、嫌なことを考えるのは後回しとしよう。
血に染まった服の下から現れたのは戦いの中で多くの傷を負った身体。
しかしその身体にコンプレックスなど、ない。
そんな自分だからこそ好きになってくれる人がいる。戦いの中でしか出会えない人がいる。
だからこそ同世代の人間とは違う。この身体も好きになれた。
下着を脱ぐと肉好きの良い引き締まった尻が揺れる。
西洋の絵にあるような完璧な肉体は、無数の傷すらも魅力として見るものを虜にするだろう。
裸の肢体を空の浴槽へと移して、シャワーの栓をひねる。
全身を生暖かい液体が濡らし、狭い浴槽に湯煙が立ち込める。
その湯煙の中に愛しい人の幻想を見た。
手を伸ばそうとするが、その姿は音もなく一瞬で消え去ってしまう。
「……夏恵」
囁く男の髪のない頭を、降り注ぐ湯が濡らし続けていた。

「アッー! いいお湯だったなァー! また浴びてぇなぁ」
独歩が風呂場から出ると、ロビーで見つけたスーツに着替える。
その年齢の割に大きな体に合う服を見つけるのは苦労した、やっと見つけたこのスーツでさえ多少小さいくらいだ。
しかし我が侭は言ってられない。
「戦うのにはこれ位のサイズがちょうどいいんだぃ」
自分に言い聞かせるように呟いて独歩は廊下を歩き出した。


★  ★  ★


一方その隣の部屋の脱衣所に降り立つ影、シェリスの表情は明るいものであった。
なんとか強い人間にも出会えたし、この血も洗い流せるとあれば当然のことであろう。
上機嫌で血に汚れた上着を脱ぎ去るとその下から豊かな


(  中  略  )


風呂場から出たシェリスはホテルの従業員の制服に着替え、急いでエレベーターに乗り込んだ。

一階には結構前から待っていたらしい独歩が、ソファに座り、机に足を乗せ、思いっきりくつろいでいた。
「おう。遅かったじゃねぇか」
こちらに気づいた独歩が声をかける。
「髪を乾かすのに時間がかかったの! あなたが羨ましいわ!」
ムッとした表情のシェリスが反論する。
当の独歩はそりゃどうも、と言って静かに笑った。

「で、嬢ちゃんはこれからどうするよ?」
さっきまで笑っていた独歩が真剣な顔で尋ねる。
「劉鳳に会いたい……」
シェリスは自分と劉鳳の関係やカズマ、そして死んだはずのジグマールの事を簡潔に伝える。
「死人が生き返る、ねぇ。
 そんなことが……まぁ、深く考えても仕方ねぇ」
そう告げると独歩は勢いよく立ち上がる。
「さぁ! どこへでも連れて行ってやるぜ?」
すでに愛車となった逆十字号を指差し、独歩は笑った。


シェリスは安堵していた。
この男なら安心だ、自分を守ってくれるはずだ。
しかし彼女は同時に懸念していた。
カズマやジグマールのようなアルター使いに対して、また未知の力を持つ敵に対して。
(そんなやつらと戦うには、『知識』が必要になる……)
以前自分が戦ったT・Tという男が言っていた『知識』そして彼に操られているときに自身が使った技。
自らの能力を知識を『応用』し、敵の力を『吸収』する技。
(アプライド=サック=アップ……!)
この体は、頭は確かに覚えている。あの技を、そして彼と共に刻んだ、進化の言葉を。

【D-8 ホテル一階ロビー 一日目 早朝】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:健康、ホカホカ
[装備]:逆十字号@覚悟のススメ、キツめのスーツ
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~2、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない
1:ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎・カズマ・ジグマール・平次(名前は知らない)と接触、戦闘
2:乗っていない人間にケンシロウ・上記の人間・タバサ(名前は知らない、女なので戦わない)の情報を伝える。
3:シェリスとともに劉鳳を探す。
4:ま た シ ャ ワ ー を 浴 び た い
[備考]
※逆十字号に乗っている場合、移動速度は徒歩より速いです
[参戦時期]
地下トーナメント後、死刑囚前。


【シェリス・アジャーニ@スクライド】
[状態]:健康、ホカホカ
[装備]:光の剣(ただのナイフ)@BATTLE ROYALE、ホテルの従業員の服
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:劉鳳に会うまで死にたくない
1:独歩とともに劉鳳を探す
2:劉鳳に会うまで、他の参加者(今は独歩)に匿ってもらう
3:思考2で匿ってもらった参加者が自分に害意を持っていると判断した場合は、殺される前に隙を突いて殺す
4:平次、タバサ(両方とも名前は知らない)は殺人鬼という情報を流す。
[参戦時期]
劉鳳と同時期
[備考]
※タバサのマント@ゼロの使い魔 はホテルの脱衣所に放置、内側は血だらけです。
※アプライド=サック=アップについて
触れた相手のアルターを吸収する能力。シェリス単独で使用可能とします。
アルター以外の特殊能力(スタンド、魔法など)にも吸収の効果は及びますが、能力などの制限は不明とします。


053:アンデルセンは二度死ぬ!!仮面ライダー最後の日!! 俺の名は――― 投下順 055:ピンクの髪のペッタンコ娘、そしてマダオ
053:アンデルセンは二度死ぬ!!仮面ライダー最後の日!! 俺の名は――― 時系列順 056:才賀勝
023:間違えるのはお約束 愚地独歩 075:双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.―
045:ひとりぼっちのエスケープ シェリス・アジャーニ 075:双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.―