闇と嘯く ◆56WIlY28/s
「クックック……。まさか……まさかこうも簡単に新たな右腕が見つかるとはこのDIOも思っていなかったぞッ!」
日の光の届かない、人工的に生み出された光のみが存在を許されるそこに、一人の男――吸血鬼DIOの笑い声が響いていた。
彼のその言葉通り、先のアーカードとの一戦で失われたはずの彼の右腕は肩ごとまったく新しいものに移植されていた。
日の光の届かない、人工的に生み出された光のみが存在を許されるそこに、一人の男――吸血鬼DIOの笑い声が響いていた。
彼のその言葉通り、先のアーカードとの一戦で失われたはずの彼の右腕は肩ごとまったく新しいものに移植されていた。
先ほどの戦いからまだそう長い時間は経過していない。それなのに、なぜDIOはこんな短時間に新たな右腕を手に入れることが出来たのか?
――その答えは今から十分ほど前に遡る…………
――その答えは今から十分ほど前に遡る…………
■
「地下鉄……地下を走る鉄道か。思えば、このDIOがまだ人間であった時代には乗り物など馬車しかなかった…………。
やはり100年という歳月は人間たちにもそれなりの英知が与えられたということだな」
やはり100年という歳月は人間たちにもそれなりの英知が与えられたということだな」
とある地下鉄の駅の階段をDIOはゆっくり一段、また一段と降りていく。
「――しかし、やはり体の動きが鈍っている感じがするな。平賀才人の奴から受けた紫外線のダメージがまだ残っていたか?」
あの後、市役所あるいは繁華街へ向かおうと考えたDIOであったが、彼が目的地に到着するよりも太陽が東の空から顔を出すほうが早いのは目に見えていた。
そのため、DIOは無理に長距離を一気に駆け抜けるなどという無謀な真似はせず、偶然見かけたこの駅に身を潜めることにしたのだ。
地下ならば自身唯一の弱点である太陽の光を防ぐことが出来るし、なにより長距離を移動しようと考えた他の参加者――DIOにとってそれはすなわち食料であり失った右腕のスペアである――がのこのことやって来るかもしれないからだ。
そのため、DIOは無理に長距離を一気に駆け抜けるなどという無謀な真似はせず、偶然見かけたこの駅に身を潜めることにしたのだ。
地下ならば自身唯一の弱点である太陽の光を防ぐことが出来るし、なにより長距離を移動しようと考えた他の参加者――DIOにとってそれはすなわち食料であり失った右腕のスペアである――がのこのことやって来るかもしれないからだ。
駅のホームに着いたDIOは、まずは現在の時刻と地下鉄の時刻表を確認することにした。
――現在の時刻は午前5時42分。
そして、時刻表に載っていた次の電車がこの駅に到着し発車する時刻は6時過ぎであった。
どうやら、ひとつの駅につき十分から十数分間隔で列車が来るようだ。
「…………向かい側の方はどうかな?」
そう言うとDIOは持ち前の身体能力を生かし、向かい側のホームへと軽く飛び移る。
『飛び移る』といっても(漫画のように擬音を付けるならば)『バッ!』というような勢いのある跳躍ではなく、『フワリ』という擬音が付きそうなほどの本当に軽い跳躍だ。
――現在の時刻は午前5時42分。
そして、時刻表に載っていた次の電車がこの駅に到着し発車する時刻は6時過ぎであった。
どうやら、ひとつの駅につき十分から十数分間隔で列車が来るようだ。
「…………向かい側の方はどうかな?」
そう言うとDIOは持ち前の身体能力を生かし、向かい側のホームへと軽く飛び移る。
『飛び移る』といっても(漫画のように擬音を付けるならば)『バッ!』というような勢いのある跳躍ではなく、『フワリ』という擬音が付きそうなほどの本当に軽い跳躍だ。
楽々と反対側のホーム――繁華街行きではない列車が来る方――に飛び移ると、その方面に来る列車の時刻表にも目を通すDIO。
――こちらも繁華街行き列車同様、十分から十数分間隔で列車が来て、次の電車がこの駅に来る時刻は6時過ぎであった。
――こちらも繁華街行き列車同様、十分から十数分間隔で列車が来て、次の電車がこの駅に来る時刻は6時過ぎであった。
「……時が来るまでは英気を養うか……。
…………いや、もしかしたら途中で鉄道が地上に出ている可能性もある。少し周辺を調べてみるとしよう」
そう言うと、DIOはホームに設置されていた椅子に自身のデイパックを置いていくと、そこから路線に下りて、それに沿って歩き出した。
…………いや、もしかしたら途中で鉄道が地上に出ている可能性もある。少し周辺を調べてみるとしよう」
そう言うと、DIOはホームに設置されていた椅子に自身のデイパックを置いていくと、そこから路線に下りて、それに沿って歩き出した。
薄暗い地下道をDIOは走っていた。彼が一歩一歩足を進めるたびに地下道に彼の足跡が響いていく。
――どんなに長い地下道でも吸血鬼であるDIOにかかれば数十分かかるはずの道も数分で完走は可能だ。現にDIOは30秒もしないうちに1キロ近くの道のりを駆け抜けていた。
――どんなに長い地下道でも吸血鬼であるDIOにかかれば数十分かかるはずの道も数分で完走は可能だ。現にDIOは30秒もしないうちに1キロ近くの道のりを駆け抜けていた。
「ム……。この匂いは……」
駅から少しばかり――といっても間違いなく1、2キロくらいの距離を――走ったところで、DIOは『ある匂い』に気が付いた。
その匂いは闇の帝王であるDIOにとっては既に嗅ぎ慣れている――いや、嗅ぎ飽きてしまっていると言ってもいいものの匂いだった。
「血の匂い…………」
その匂いがするということは、すなわち、この先で戦いがあったということだ。
「…………」
DIOは無言で走るペースを上げた。
駅から少しばかり――といっても間違いなく1、2キロくらいの距離を――走ったところで、DIOは『ある匂い』に気が付いた。
その匂いは闇の帝王であるDIOにとっては既に嗅ぎ慣れている――いや、嗅ぎ飽きてしまっていると言ってもいいものの匂いだった。
「血の匂い…………」
その匂いがするということは、すなわち、この先で戦いがあったということだ。
「…………」
DIOは無言で走るペースを上げた。
「アレか…………」
少ししたところで、DIOは『ソレ』を見つけるとピタリと足を止めてソレを凝視した。
少ししたところで、DIOは『ソレ』を見つけるとピタリと足を止めてソレを凝視した。
――――それは、首から上と四肢を失った人間の肉体であった。
その肉付きからして男の胴体であることは一目で分かった。
その肉付きからして男の胴体であることは一目で分かった。
「ふむ……首輪を破壊されたことにより頭部が吹き飛んで死んだようだな」
目の前に転がっている胴体を軽く一瞥するDIO。
その胴体の胸部には七つの傷があり、おそらくあの時参加者が一同に終結していたホールにいた拳王と名乗った男や勇次郎という男のようにそれなりの実力をもった戦士だったのであろう。
肉体に腐敗したような具合は特に見られないことから死後そう数時間も経っていないのがうかがえる。
目の前に転がっている胴体を軽く一瞥するDIO。
その胴体の胸部には七つの傷があり、おそらくあの時参加者が一同に終結していたホールにいた拳王と名乗った男や勇次郎という男のようにそれなりの実力をもった戦士だったのであろう。
肉体に腐敗したような具合は特に見られないことから死後そう数時間も経っていないのがうかがえる。
「……だが、このDIOにそのようなことはまったく関係ないし興味もない。今このDIOに関係し興味があるは…………」
その言葉と共にDIOはゆっくりと残った左腕を上げ――――
「これだけだッ!!」
勢い良く左手の指をその数刻まで人間だったものの胸部に突き刺した。
七つあった胸の傷はDIOのこの一撃による傷が追加されたことにより合計八つになった。
七つあった胸の傷はDIOのこの一撃による傷が追加されたことにより合計八つになった。
…………1分も経たないうちに胴体はDIOにより血という血を絞り取られ、脱水され乾いた雑巾のようになった。
「――これで少しはパワーも回復したかな?」
DIOは胴体から左手を引き抜くと、次にその周辺を捜索することにした。
四肢の切断具合からして腕、足はそう遠くない場所に転がっているだろうと判断したのだ。
もちろん、自分やアーカードのような吸血鬼、もしくはそれに類似した存在が自己の利益のために『持っていった』という可能性も考慮しているうえでの捜索である。
「ム……?」
――良く見ると少し先からは微かに光が差し込んでいた。どうやらこの先からは地上に出るようだ。
「……いかんな。朝日がここまで差し込む前に駅に戻らなければ…………」
「――これで少しはパワーも回復したかな?」
DIOは胴体から左手を引き抜くと、次にその周辺を捜索することにした。
四肢の切断具合からして腕、足はそう遠くない場所に転がっているだろうと判断したのだ。
もちろん、自分やアーカードのような吸血鬼、もしくはそれに類似した存在が自己の利益のために『持っていった』という可能性も考慮しているうえでの捜索である。
「ム……?」
――良く見ると少し先からは微かに光が差し込んでいた。どうやらこの先からは地上に出るようだ。
「……いかんな。朝日がここまで差し込む前に駅に戻らなければ…………」
まず最初に見つかったのは男の頭部の残骸と思われる肉片であった。
「フン……!」
――が、もちろんDIOにはそんなものに興味はないため、彼はソレを足で軽くグシャリと踏み潰した。
「フン……!」
――が、もちろんDIOにはそんなものに興味はないため、彼はソレを足で軽くグシャリと踏み潰した。
――次に見つかったのが足だ。
先に左足、そしてその近くに右足が転がっていた。
こちらは踏み潰すことはせず、胴体同様血を根こそぎ絞り取って自身の栄養源とした。
先に左足、そしてその近くに右足が転がっていた。
こちらは踏み潰すことはせず、胴体同様血を根こそぎ絞り取って自身の栄養源とした。
そして――――
「ククク……ははははは…………! やはりッ……! やはりあったかッ!!」
その後に見つかったのがDIOの求めていた右腕であった。
それも肩から先、切断面以外に目立った外傷はない――DIOにとっては極上の代物だった。
「やはり人間(友人は除く)はこのDIOのために利用されてこそその価値を発揮するようだ……! それがスタンド使いであろうと……既に死んだ者であろうとッ!!」
そう叫ぶと同時に、DIOは残った左腕で手刀を作り、それで自身の右腕の残った部分を右肩ごと綺麗に切り落とした。
右肩を切り落とすと、すぐさま気化冷凍法で切断面を軽く凍らせて折角補充した貴重な血液を失わないようにする。
その後に見つかったのがDIOの求めていた右腕であった。
それも肩から先、切断面以外に目立った外傷はない――DIOにとっては極上の代物だった。
「やはり人間(友人は除く)はこのDIOのために利用されてこそその価値を発揮するようだ……! それがスタンド使いであろうと……既に死んだ者であろうとッ!!」
そう叫ぶと同時に、DIOは残った左腕で手刀を作り、それで自身の右腕の残った部分を右肩ごと綺麗に切り落とした。
右肩を切り落とすと、すぐさま気化冷凍法で切断面を軽く凍らせて折角補充した貴重な血液を失わないようにする。
次にDIOはその切断面に軽く力を込めて先が針のように鋭くなった自身の血管を伸ばした。
その血管はまるでアサガオやヘチマのツルのようにするすると伸びていくとやがてDIOの足元に転がっている右腕の切断面の血管に次々と突き刺さっていった。
その血管はまるでアサガオやヘチマのツルのようにするすると伸びていくとやがてDIOの足元に転がっている右腕の切断面の血管に次々と突き刺さっていった。
やがて、血管は掃除機のコードのように引き戻り、ついに右腕とDIOの身体――正確にはDIOの身体は100年前のジョナサン・ジョースターのものだが――はひとつになった。
右腕はなぜか肘などの関節が外れていたが、それは吸血鬼の脅威の回復力で瞬時に治療した。
右腕はなぜか肘などの関節が外れていたが、それは吸血鬼の脅威の回復力で瞬時に治療した。
――そして、右腕を手に入れるとDIOはすぐさま全速力で駅に戻り、今に至る。
■
「右腕が完全に接合して馴染むにはもうしばらく時間はかかるだろうが…………まあ直に完全なものになるだろう」
そう言って手に入れた新たな右腕を伸ばしてみたり、曲げてみたり、時には肩ごと大きく回してみたりしながらDIOはホームに設置されている時計に目をやる。
そう言って手に入れた新たな右腕を伸ばしてみたり、曲げてみたり、時には肩ごと大きく回してみたりしながらDIOはホームに設置されている時計に目をやる。
まもなく午前6時。この殺し合いが始まって最初の朝がやって来る。
吸血鬼であるDIOにとっては一番の天敵である時が来るのだ――――
吸血鬼であるDIOにとっては一番の天敵である時が来るのだ――――
「……待っているがいい、アーカード。このDIO、日が沈むまではこの地下という『闇』で己を養うとしよう。
だがッ、いずれ貴様を倒し、その肉体を手に入れ、このDIOは真の帝王となってみせようッ!!」
だがッ、いずれ貴様を倒し、その肉体を手に入れ、このDIOは真の帝王となってみせようッ!!」
「そして平賀才人ッ! 次に貴様と出会う時は、我が『世界(ザ・ワールド)』の真の能力をもって『完全なる敗北』というものを味あわせてくれるッ!!
そちらがどのような姑息な手を使ってもだッ!!」
そちらがどのような姑息な手を使ってもだッ!!」
――人口の光のみが空間を照らす地下鉄のホールに『闇の帝王』と呼ばれる一人の男の笑い声が響き渡った。
【C-2 S2駅 1日目 早朝】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左脚骨折(自然治癒中)。疲労大
[装備]:スタンド『世界』(現在の体力では時止め不可)
[道具]:支給品一式。デルフリンガー(紙状態)、ダーツ(残弾数1)
[思考]
基本:帝王に負けはない。参加者を殺し、ゲームに優勝する 。アーカードのボディを乗っ取り、太陽を克服する
1:夜になるまで地下で英気を養う。及び、地下鉄に乗りにやって来た参加者を各個撃破し体力を回復
2:アーカードの打倒
3:平賀才人に時止めを使って『勝利』する
4:ジョースターの血統を根絶やしにする
5:ゲームを仕組んだ輩を断罪する
[備考]
[状態]:左脚骨折(自然治癒中)。疲労大
[装備]:スタンド『世界』(現在の体力では時止め不可)
[道具]:支給品一式。デルフリンガー(紙状態)、ダーツ(残弾数1)
[思考]
基本:帝王に負けはない。参加者を殺し、ゲームに優勝する 。アーカードのボディを乗っ取り、太陽を克服する
1:夜になるまで地下で英気を養う。及び、地下鉄に乗りにやって来た参加者を各個撃破し体力を回復
2:アーカードの打倒
3:平賀才人に時止めを使って『勝利』する
4:ジョースターの血統を根絶やしにする
5:ゲームを仕組んだ輩を断罪する
[備考]
ジャギの右腕を移植しました。完全に馴染むまでしばらく時間がかかりますが、普通に自分の右腕として動かすくらいは可能です
アーカードとの戦闘で更に鬱憤が溜まりました。アーカードにはどんな手を使っても勝つつもりです
時を止められる時間は約3秒間です
首輪の他に、脳内に同様の爆弾が埋め込まれています
S5駅方面の列車は途中で地上に出ることを確認しました
アーカードとの戦闘で更に鬱憤が溜まりました。アーカードにはどんな手を使っても勝つつもりです
時を止められる時間は約3秒間です
首輪の他に、脳内に同様の爆弾が埋め込まれています
S5駅方面の列車は途中で地上に出ることを確認しました
備考
1:B-3、C-3の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあります
2:S5駅のホームに肉片と鮮血が結構広い範囲に飛び散っています
3:C-3の地下線路にジャギの胴体(血が抜かれている)、ジャギの両足(血が抜かれている)、ジャギの左腕、DIOの右肩が転がっています
4:S5駅のどこかに空っぽになったジャギのデイパックが放置されています
1:B-3、C-3の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあります
2:S5駅のホームに肉片と鮮血が結構広い範囲に飛び散っています
3:C-3の地下線路にジャギの胴体(血が抜かれている)、ジャギの両足(血が抜かれている)、ジャギの左腕、DIOの右肩が転がっています
4:S5駅のどこかに空っぽになったジャギのデイパックが放置されています
063:三千院ナギと素直じゃない仲間 | 投下順 | 065:反逆ノススメ |
063:三千院ナギと素直じゃない仲間 | 時系列順 | 065:反逆ノススメ |
052:永遠の夢に向かって | DIO | 076:美徳の不幸 |