ハッキング ◆1qmjaShGfE


三村信史は端末を無言で叩き続ける。
彼のアクセスしたそこは、無尽蔵に広がるデータバンクであった。
几帳面に整理されている場所もあれば、フォルダのタイトルと中身が全く一致しない乱雑な場所もある。
これらからもこのデータバンクは一人の人間によって作り上げられた物でない事がわかる。
流石に全てをコピーするというわけにもいかず、とりあえずあてずっぽうに、片っ端からデータを確認していく三村。
それは見ているだけで胸糞の悪くなるデータであった。
隣から覗き込むジョジョの表情から余裕が消える。
映像データ、数値データ、論文、様々な形態があったが、三村はそれらのデータが一つの目的に基づいた物である事を見抜いた。

『勝利』

戦争における勝利を得る為、ありとあらゆる手段が模索されている。
いや、それは正確ではない。
戦争に勝利する為の手段として、軍事力の行使以外の選択肢は全て放棄している。
その上で、思いつく限りの全ての事をやっているのだ。
様々な手段が取り沙汰され、そして消えていった。
取捨選択を繰り返し、それらのデータは新しい物程、より小型に、より人の扱いやすい物へと変化していった。
三村は怒りに震えながらも、頭の芯を凍らせてデータに見入っていた。

千を越える種類の毒に対する被験者の反応、対応を詳細に記したデータがあった。

人体の構造を知る為に、生きたまま分解された人間達のデータがあった。
人殺しの技の精度をあげる為、生きた人間相手に技を練習するデータがあった。
恨みを力に変える為、意図的に我が子と引き裂かれ、憤死した母のデータがあった。
雪山にて戦う三人の悲しき親子のデータがあった。
そして三村は、一つのフォルダを発見する。
「バトルロワイアル音声」と書かれているそのデータを開くと、人名と思われる名がついているファイルが数十個あった。
試しに一つを開いてみる。
PCに付属していた音楽用アプリケーションが開き、音声がPC内臓スピーカーから漏れ出してくる。
何か小さな音が少しづつ聞こえるだけで、大した意味のある音声ではないようだ。
アプリケーション下部を見ると、その音声を聞き終えるのに必要な時間がわかるようになっている。
そのファイルの再生時間は43時間25分。
とてもではないが、全部を聞いている暇は無い。
ジョジョはこの三村の操作の意味がわからないのか、PCの前を離れて何やら考え事をしている。
ジョジョの知識になかった映像データの説明はしてある。
意外に高い知性でそれを理解したジョジョだったが、色々と自分の中で整理する必要もあるのだろう。
三村はそう考え、ジョジョの好きにさせていた。
不意に、かけっぱなしにしていた音声データから人の声と思しきものが聞こえてきた。

『なんだって殺し合いなんかしなきゃなんねーんだよ!』

その後にも何やらぶつぶつと呟く声が聞こえてくる。
いきなりな声に目を大きく見開く三村であったが、同時にある閃きが脳を走る。

これは、マズイ。とても、ヤバイ、状況だ。

必死の形相で端末を叩き始める三村。
急に忙しなくなった三村の動きに、ジョジョも考えるのを止めて歩み寄る。
「どうした? これ以上俺の胸糞を悪くするようなデータは御免だぜ」
三村は口に人差し指を当て、静かにするよう促す。
しかし、ジョジョには何の事だかわからない。
「はあ? お前、なんで急に可愛いらしいフリなんかしてんの? 俺相手に欲情でもしたのか? いや~ん、アタシ既婚者よ~」
三村は椅子を蹴って立ち上がり、ジョジョの口を塞ぐ。
「むごむごむごー!(ちょ、ちょっと待てお前本気か!? 悪いが俺にはそういう趣味はねえ!)」
三村はジョジョの耳元に口を当て、擦れるような声で囁く。
「理由は後で説明してやるから、今は絶対に声を出すな」
言いたい事を言うと、ジョジョから離れて再度端末をたたき出す。
そして接続の痕跡を完全に消し去ってから、PCの電源を落とし、部屋にあった工具箱のドライバーを使ってパソコンを分解し始める。
外側のケースを外すと、中からハードディスクを抜き取り何度も何度も踏み潰し、無残にひしゃげたそれを懐にしまいこんだ。
それが終わると、呆気に取られているジョジョを他所に、三村は家電売り場を歩き回り、目的の物を見つけるとジョジョの元へと戻ってくる。
三村が探していた物は、メモ帳とペン。

そこに、三村は誤解を極力無くすよう細心の注意を払って書き込んだ。
『俺達の会話がこのプログラムの主催者達に聞かれている可能性がある』
いきなりの話に驚くジョジョ。
「なんだと!? そりゃ本当……」
三村が再度口に人差し指を当てる。
今度はジョジョもすぐに静かになった。

バトルロワイアルの名で括られたファイル達、そしてそこに納められていた音声データ。
あの老人に逆らうと爆発するという首輪、これに盗聴器をしかけていたとしたら、ああいった音声データを取る事も可能だろう。
そしてその仕掛けの有効性は言うまでも無い。むしろ仕掛けない理由があるのならそれを聞きたいぐらいだ。
更に、もう一つ忌まわしい事実がある。
このプログラムは、どうやら初めて開催される訳ではないらしい。
それらをジョジョに丁寧にメモ帳を使って説明しながら、三村は最後に口に出して言った。
「すまん、つまりはハッキングは失敗したって事だ」
既にオンライン上に痕跡は残っていないはず、そして今ハードディスクも破壊した。
これで三村がハッキングを成功させた証拠は全て無くなったはずである。
しかし三村がハッキングを試みたという事実は残った。これ以後同じ事を試すのは少々リスキーであろう。
それでも、いずれはまた挑まなければならない。
ここの家電売り場の様な固定回線は次回以降は避けるべきだろう。
今回の事で主催者達が罠を仕掛けていたとしたら、引っかかるつもりは無論無いが、万が一ハッキングが見つかった場合、すぐに接続先の所在地を特定出来てしまう。

出来れば無線での接続が望ましい。
無線ならば、連中の裏をかける回線に心当たりがある。
その為のパーツに使えそうな物を幾つか家電売り場から回収しながら、三村はジョジョを見やる。
ジョジョは美人タレントの等身大ポスターを下から覗き込んでいた。
正気を疑うが、どうやらこれがコイツの素らしい。
悪名高いプログラムに放り込まれたというのに、そこで最初に出来た相棒がコレとは、不運にも程がある。
大仰にため息をついてみせる。
すると、ジョジョは何を思ったのか陽気な顔でこちらへと歩いてきた。
「ようシンジ、お前の技は見せてもらったぜ。クソの役にも立たなかったってのはさておき」
「……悪かったな」
「だから、今度は俺の技を見せてやるよ。そこの壁に寄っかかってみな」
「壁に? 何する気だ?」
「いいから、いいから」
強引に壁際に立たされる。
ジョジョはまっすぐにこちらの目を見つめる。
少し警戒しながらジョジョの目を見つめ返す三村。
ジョジョは、ゆっくりと視線を横に逸らしていく。

気が付いた時には遅かった。
つられて視線を横に逸らした隙に、ジョジョが拳を振り上げ殴りかかってきていたのだ。

完全に虚を付かれた三村は、その拳をまともに額で受けるハメになった。

メメタァ!! ドグチァッ!!

衝撃音と共に、背後にあった壁が大きくへこむ。
三村は横に転がってジョジョの正面から距離を取った。
殴られた額に手をあて、そして大きくへこんだ壁を見る。
「次にお前は『痛く無い』と言う」
「痛く……無い? はっ!?」
にやにやしながらジョジョは床に座り込む三村に手を差し伸べる。
「これが波紋だ。恐れ入ったか?」
とても悪趣味な奴ではあるが、どうやらコイツは未知の力を持っているらしい。
三村は素直に自分の認識を改める。
「ああ、確かに大した技だよ」
ジョジョの差し出した手を取った瞬間、体重を前かがみにかけながら軽くジョジョの腕を捻ると、その大柄な体が軽々と宙を舞う。
「痛ぇっ!」
三村は体の埃を払いながら立ち上がった。
「だから、次やる時は最初に断ってからにしろ」

ぶちぶち文句を言っているジョジョを連れ、電気屋を後にする三村。

主催者の目的の一つに、軍事力の強化というものがある事はわかった。
このプログラムもその一環である可能性が高いとすれば、連中はこのルールで三村達を戦わせてどのような利点を得るつもりなのか?
そしてこのDISCやジョジョの波紋のような不可思議な能力。
時代すら違う人間を集めるという途方も無いやり方。
何を推理するにしても、情報が少なすぎる。
他参加者との合流と情報交換、そして再度のハッキングを確実かつ安全に実行する為に携帯電話が必要だ。
三村は振り返ってジョジョに訊ねる。
「おいジョジョ、まさかもう諦めたってんじゃないだろうな?」
イライラしていたジョジョは乱暴に答える。
「はあ? 誰に言ってるんですか、言った事もやりとげらんねえヘッポコさん?」
苦笑する三村。
「オーケイ、落ち込んじゃいないようだな。これからは他の参加者と合流して仲間と情報を集めに回る。危険は増えるが構わないな?」
「了解、了解。弱っちいシンジちゃんも俺が守ってやるから大船に乗った気でいろよ」
三村の叔父の言っていたクールであれというあの言葉。
アレを完全にやりきるにはまだまだ修行が足りないと自覚しつつ、額に青筋を立てている三村であった。

【D-6 事務室@総合スーパー/1日目/早朝】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康。
[装備]:ハイパーヨーヨー*2(ハイパーミレニアム、ファイヤーボール)、江頭2:50のタイツ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:あのスカタンに一発ぶん殴ってやらねぇと気が済まねぇ~~。
1:シンジ使えねー、でもまあ腕っ節はそこそこあるな
2:「DIO」は警戒する、一応赤石も探しとくか……無いと思うけど。
3:ところで、何で義手じゃないんだ?
[備考]
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※承太郎、吉良、DIOの名前に何か引っかかっているようです。

【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:精神、肉体的に疲労。
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)、バスケットボール(現地調達品)、ハードディスクを抜き取ったデスクトップ型パソコン(現地調達品)、壊れたハードディスク(現地調達品)基本支給品。
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。
1:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す
2:あの老人が「プログラム」をするメリットを考える。
3:集められた人間の「共通点」を探す。
4:可能なら杉村と合流する、「DIO」は警戒する。
5:他参加者と接触し、情報を得る
[備考]
※本編開始前から連れて来られています。
※この世界が現実世界ではないという考えを持っています。
※クレイジー・ダイヤモンドは物を治す能力のみ使用可能です。
復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。


068:マダオはマダオであってマダオ以外の何者でもない 投下順 070:覚悟とルイズと大男
068:マダオはマダオであってマダオ以外の何者でもない 時系列順 070:覚悟とルイズと大男
058:全滅エンド直行フラグ立ちまくり 津村斗貴子 092:続:ハッキング
058:全滅エンド直行フラグ立ちまくり 花山薫 092:続:ハッキング