5スレ>>491-2

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紫陽花クラス日誌。 6月6日  当番:アメタマ 今日も雨が降っていた。 クラスの金魚鉢にはコケが貼り付いて取れなくなってしまっていた。 最悪。 新しい金魚鉢を早急に買うことをオススメします先生。 今日のケガ人はふたり(百日紅クラスの奴とケンカしたカノコとガーディ)。 それ以外は異常なし。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 紫陽花クラス日誌。 6月7日  当番:ヒツギ 今日で連続一週間雨でした。 湿気も酷く、アメタマ殿の机の中から緑色になったパンが 発掘されたくらいにジメジメしていました。 今日読んだ本には、古代中国には 「真っ暗な部屋に閉じ込めて拘束し、十数分に一回のペースで  水滴を額に落とし続ける」という拷問があったと書いてありました。 水滴を額に落とすだけで、本当に拷問になるかどうかはいささか 理解できませんでしたが、その拷問を一時間ほど行われた人は 「額に鉄球を落とされている、痛い」と泣き叫び許しを請うほど だったそうです。 今日のケガ人はなし。 (若干顔色の悪そうな人はひとりいました) +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 百日紅クラス日誌。 6月8日  当番:ニドラン きょうはひさしぶりの晴れ! お日様がとても気持ちよかったです。 でもカタツムリは勘弁。気持ちわるかったぜ。 ツムギのやろうにまたボコられそうになって逃げていたら、 フシギソウが地面で寝てたので保健室につれていった。 夜更かししていたのか、よく寝ていた。 今日一番悪かった生徒:ノコッチ お昼のプリンを、だまって他の奴のぶんまで食べてました。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 金木犀クラス日誌。 6月9日  当番:ニャース 昨日に続いて今日も晴れました。 ですが空気がムシムシしていて凄く辛かったです。 自慢のヒゲもしおれてしまって、何だか嫌な一日でした。 紫陽花クラスの男子と百日紅クラスの男子がケンカしてましたが、 またディアルガ先生が「ざ・わーるど」をしてくれた おかげで無事に解決されました。 …ところで、昨日の夜なんですが、ふらふらと外に出て行く誰かの 姿を見たような気がしました。怖かったです。 (寝ぼけていたので記憶があいまいですが…) 先生、ぜひ正体を突き止めてください。安心してお手洗いにいけないです。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 紫陽花クラス日誌。 6月10日  当番:カノコ あーめあーめふーれ、じゃなくてふるなーーーーーっっ!!! じゃんじゃんざかざか降りやがって! うっとおしいったらありゃしないぜ! またアメタマの机の中からカビたパンが出てきたし! そういえば、サイカチお姉はまだ部屋から出てこないです。 食堂のおばちゃんが言うには、みんながこない時間にこっそり出てきて ごはんは食べているらしいけど…。 しんぱいだーーー 今日のケガ人、フシギんが授業中にぶったおれた以外は、なし! +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 白詰草クラス日誌。 6月11日  当番:ムウマ ニョロモに言わせると、また雨が降る日が続くらしい。 図書室の本がふやけるから、あんまり降らないでほしいです。 そういえば、最近夜中に学校を徘徊する影が頻繁に目撃されているようです。 噂では新種の幽霊萌えもんだとか言われているけれど… 早く真相が判明されることを願います。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 金木犀クラス日誌。 6月12日  当番:ヒトカゲ 「……あ゛ーーーーーーーー、日誌ったって何書けばいいんだよ…頭痛いぜ…」 紫陽花クラスのふたつ向こう側にある、金木犀クラスの教室でヒトカゲが 自慢のしっぽの火を揺らめかせ、木製の椅子に座ったまま唸る。 授業が終わった放課後なので教室内には彼以外誰も居ず、しーんと静まり返っている。 どうやら本気で日誌に何と書けばいいのか分からないらしく、自身の生命力を現す 炎の勢いが蝋燭のようにしぼんでしまっていた。 ……ごてん! 金木犀クラスの教室の前、廊下からドアごしにも分かるような音が聞こえてきた。 それは、何かがぶつかったような音。 慌ててヒトカゲが教室の戸を開け、廊下に飛び出すと… そこには大きなツボミがいっこ。 いや違う。 紫陽花クラスのフシギソウが廊下のど真ん中でうつぶせに倒れていた。 「うおおっ!? お、おい、大丈夫かお前!?」 「…んー…んあー……はっ!  あ、あぁうん、平気平気! ちょっとクラっときただけだから…」 「充分やばいだろそれ! 何なら保健室まで連れて行ってやるぞ!?」 「へ、平気だよぅ……ありがと、心配してくれて…それじゃあねー…」 心なしか頭のツボミをしおれさせつつ、フシギソウはその場からフラフラと おぼつかない足取りで去っていった。 ヒトカゲは思った。 ああ、日誌のネタが決まったな と。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ この全寮制の小学校の近くには、マンションだとか、一軒家だとか コンビニだとかスーパーだとか、他の建物らしきものは一切建っていない。 周りは木や草に囲まれ、静かに水がせせらぐ川や湖がある のどかな田舎のようなところだ。 故に、夜になれば星がきらめき、月は煌々と輝く。 今宵は満月。 月明かりが暗闇を、やさしく暴きだしていた。 ふらふら、ふらふらと、夢遊病者のようなおぼつかない足取りで 月がやさしく暴き出した道を歩む影がひとつ。 影は、天に向かって真っ直ぐに伸びた、背の高い植物がたくさん生えている 花壇の前で止まった。 ぐらつきながらも影は花壇の前にしゃがみ、植物…おおきくツボミを膨らませた ヒマワリたちに手を当てて、動きを止めた。 ……ふわり…… ……ふわり…… 影が動きを止めて数十秒。 薄緑色の球状の光が、ヒマワリたちの周りを浮遊しはじめた。 その光は、ともすればホタルの光と間違えてしまいそうなくらい小さく 儚げな光だった。 しかし、小さな薄緑色の光がヒマワリたちの中に吸い込まれていくと、 虫にやられてくたびれていたヒマワリが、心なしかしゃっきりとしていくように見える。 大きなツボミを宿した影から、儚く小さな光が放たれる。 そしてそれを、ヒマワリたちが受け止める。 その度に、ヒマワリたちは生命力を取り戻していく。 しかし、ツボミ付きの影のほうは…… 「……あ、う、わ……!?」 ぐらりと大きく体が揺れる。 もはや、しゃがんでいる体を支えていることさえ出来なくなった 影…フシギソウが、地面に倒れそうになる。 しかし、その前に彼女の肩が何者かに支えられたお陰で、転倒の危機はまぬがれた。 「もう…もうやめてよフシギソウ…!  もういいよ、もういいよ…もう、いいんだよぉ……!!」 「…へ、へへ…やっぱり、サっちゃんにはバレてたか…」 「当たり前でしょ…? 私、閉じこもるようになってからずっと…  フシギソウがどれぐらい頑張ってたか、窓からずっと見てたもん…  アブラムシを追い払う為に、花を咲かせるために…昼も夜も、  雨の日も、ずっとずっと頑張っていたの…」 バツが悪そうな笑みを、フシギソウがサイカチに向ける。 「…ギガドレインを、応用して…私の体力を、ヒマワリにあげて…  『弱った花には虫がつく』…セキが言った、あの言葉で、思いついた方法…」 未だ蕾のまま、咲く気配すら見せないヒマワリの群れに すがるような視線を送るものの。 ヒマワリは、輝く月の光に照らされ、静かに佇むだけ。 「私の体力を、ヒマワリにあげて…ヒマワリに元気になってもらって、それで  アブラムシたちを追い払う……これなら、殺虫剤なんて物騒なものを  使わなくて済むし……傷つかない。  花も…虫たちも……」 「何で…なんで、そんなになるまで頑張れるの…?  フシギソウはなんで、そんな…花たちのために…  倒れるまで頑張れるの…?  …わかんないよ。花はいつか枯れるのに。  花は、私たちよりも早く終わってしまうのに…なんで……」 咲かないヒマワリから、級友に視線を移す。 頬から流れ落ちるふた粒のしずくが、月光でわずかに輝いている。 それは、悲しみからくる雫。 フシギソウは、知っていた。 悲しみで、自身から雫を生み出せるのは、感情を持つ生き物だけだと。 しかし、その雫は悲しみからだけではなく 歓喜からも生み出される、ということを。 それは、いつかどこかの、本人さえ忘れた思い出。 差し出されたちいさな花。 それは、フシギソウが「キレイだな」と一瞬だけ見惚れた、道に咲く花。 孤独で思い悩んでいた彼女に差し出された、友からの贈り物。 嬉しかった。 どんな気取った言葉も、おしゃれなセリフも、救いとはならなかった。 ただ、その一輪だけが 彼女の心に届いた。 彼女の孤独を溶かした。 「…花は、人間や萌えもんと違って、しゃべらない。  でも、心が崖っぷちに追い詰められたひとには、どんなに上手な言葉より  ……ただ、そこに咲いているだけで、心に届くことがあるから」 級友に寄りかかり、力の入らない指先を懸命にヒマワリの茎に伸ばす。 やさしく、やさしく。 繊細なガラス細工の置物でもさわるように、フシギソウは物言わぬ花を やさしく撫でる。 「…私の、下手くそな言葉よりも…やさしい“何か”を伝えてくれるから。    だから私は、花が好き。  キレイに咲きますようにって、頑張れる……はは、変…だよね……」 いよいよ体に力が入らなくなり、級友への寄りかかりはより増して。 肩に寄りかかるだけだった体勢が、ずるずると崩れ落ちて膝枕の体勢になる。 級友の頬には、雨上がりの花びらのように沢山のしずくが零れ それにつられたのか、ツボミの少女も沢山のしずくを溢れさせていた。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ どのくらい、そうやって二人で静かに泣いていたのか。 時間は過ぎていって、月は天高く昇り ちょうど、フシギソウとサイカチのいる真上あたりで輝くようになった頃。 変化が、訪れた。 それは、ごく小さな、ほんの僅かに進んでいく変化。 されど、確実に進んでいく変化。 固く閉ざされていた蕾が、すこしずつ、すこしづつ緩んでいく。 綻んだスキマから、中に閉じ込められていた花びらが解き放たれていく。 その変化に最初に気がついたのは、以外にもサイカチだった。 フシギソウは倒れて空を見上げていたので、変化に気がつかなかったのもしれない。 まあ、時間差はあったものの、サイカチが息を呑む気配を感じた フシギソウも、花壇のほうにようやく気がつき ふたりして、無言でその光景を見詰め続けた。 花は、ふたりの観客の熱烈な視線にも照れることなく はなびらを開いていく。 白く輝く月に照らされ、花は咲いていく。 月には古来より、不思議な力が宿っていると伝えられている。 その力は、神秘の力とも狂気の力とも言われている。 そんな月の光に照らされているせいなのかどうかは分からないが、花を咲かせていく ヒマワリたちは、とても不思議な魅力を宿していた。 花びらは黄色ではなく、白色に近い銀色。 月光をよく反射する白い花びらが満開になったとき ふたりはやっと、自分が息すら止めていたことに気がついた。 「………キレイ………」 肺一杯に、忘れていた空気を吸い込んで。 フシギソウが、感嘆の言葉と共に息を吐き出す。 「……うん、すごく、キレイ……」 現実と把握できていないのか、どこか夢見ごこちな声でサイカチも 感嘆の言葉を吐き出す。 もっと語彙が頭脳にあれば、もっと気の利いた褒め言葉が出てきたのかもしれない。 今のふたりにとって、目の前の銀のヒマワリの光景は ただただ「キレイ」としか言いようが無く そして、それで充分だった。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「しんじられない。なんで、こんな夜中に…向日葵が…」 「…向日葵じゃ、ないよ」 サイカチの言葉に、フシギソウが振り返る。 月の光は、残酷なくらい二人の姿を照らし出して。 「月に向かって咲いたから、“向月葵”(ツキマワリ)…だよ、きっと」 しばらくぶりのサイカチの笑顔も、月は余すところなく輝かせていた。 「ツキ、マワリ……」 「…変、かな」 不安を滲ませた声で、月の元で咲く花を命名した少女が問う。 少女の友は、少女に負けないくらいの笑顔で 「ううん、サイコーだよ、それ」 新たな花の誕生を、共に喜んだ。 深い深い、光を吸い込んでしまいそうな暗闇の中。 それにすら負けないような、煌々と輝く月の下。 奇跡の塊のような花が生まれ、ふたりの少女がそれを心の底から笑い、祝う。 そんな、おとぎ話みたいな夜のこと。 サイカチとフシギソウ。二人の他、誰もいないと思われた夜の中。 二人から離れた茂みの陰で、誰にも気づかれていない姿がふたつ。 「…はぁ~あ、とんだ骨折り損のくたびれ儲けだよ」 「何がくたびれ儲けだ、このナマグサが。良いことづくしだろうが」 「それを言うなら怠け者じゃないの?  ていうか良いことづくしなのはアンタだけだよ、三大馬鹿大将」 「その呼び方止めろっつっただろうが。もう忘れたのか芋虫が」 赤い髪の小さな影…ケムッソが睨むのは、小さいながらもどこか 冷たい部分を感じさせる少年・ツムギの横顔があり そしてケムッソの横っ面には、鈍く光る小さな鉄の筒。 ケムッソの方など微塵も見ないまま、ツムギは級友に短銃を突きつけている。 突きつけている側も、突きつけられている側も、特にこれといった 表情は顔に浮かんでいない。 まるで「こういう状態で当たり前だ」とでも言いたいような、こういう事態に 慣れきった顔だった。 「とりあえずその物騒なのどけてよ、もういいでしょー」 「こうでもしねえと仕事しねえだろテメエ  最後の最後までアブラムシどかすの渋りやがって…」 引き金から指を離し、物騒で無機質な輝きを反射する銃を パーカーのポケットの中に押し込む。 凶器の姿が消えたことに、ケムッソはやっと生き物らしい安堵の溜め息を漏らした。 「…にしてもさ、大将何だってあの子の為にここまでやるのさ?」 一文の得にもならないのに。 さっさと背を向けて帰ろうとしているツムギに、虫の少女の乾いた言葉が 浴びせられる。 そのセリフに動きがピタリと止まったが、ツムギはさして癇に障った訳でもないらしく、 凶器を構えていた時と全く変わらぬ顔で言葉を紡ぐ。 シリカゲルのようなカラカラに乾いた声色に、ほんの少しだけ人間らしい 熱を込めて。 「知るか、馬鹿野朗」 ――― これは、当事者以外誰も知らぬ夜の 誰も知らない、夜闇の裏側。

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