5スレ>>503-2

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フライゴンの新たな一面を垣間見た数日後。 俺が朝食に行くと、フライゴンがそこにいないのに気付いた。 「おはようございます、マスター」 「ああ、おはようシャワーズ。…フライゴンはまだ来てないのか」 「みたいです…」 「…よし、じゃあちょっと様子を見てくる」 「お願いします」 「フライゴン、入るぞ?」 俺は部屋のドアをノックし、それから入った。 ベッドにうずくまっている姿を確認し…とりあえずその傍まで行く。 「ご、御主人様…」 「………」 フライゴンはメガネをかけていなかった。 「お前、メガネは?」 「な、ないから出られないんですよぅ…」 なるほど、そう言う事か。 「心当たりは?」 「わからないです…」 んー…どうしたものかな… 「とりあえず、朝飯くらいは運んできてやる。待ってろ」 「は、はぃ…」      * * * とりあえずシャワーズには簡単、かつ内密に事情を説明してから朝食を運んでもらい、俺はリビングを捜索し始めた。 …まぁ、ここにあればすぐ分かるのだが。 「…ん?」 ふと気付くと、ソファーテーブルの上にメガネが置いてある。フライゴンのではない。 そういえばフーディンが時々これをかけて本を読んでいたか。 「…ちょっと借りていくか」      * * * 「マスター、ありましたか?」 「いや。…だが、気になるものを見つけた。  フライゴン、これをかけてみろ」 「は、はぃぃ」 縁なしのメガネを手渡す。 「マスター、これ…フーディンのですよね?」 「ああ、借りてきた。見つかるまでこれで代用出来ればいいと思うんだが」 メガネなしの状態のフライゴンはドジなだけでなく、頭の回転も悪くなるらしい。 なので、とりあえずこれをかけさせて思い出させようと思ったわけだ。 「…どうだ、フライゴン」 「…ええ、頭は多少回りそうです」 「「…あれ?」」 なんか違うような… 「昨日の私はほとんどジムからでていませんので、メガネはジム内にあると思われます。  ただ、昨日アルコールを多量に摂取していたため記憶に不備があり――んにゃ!?」 「要するに思い出せないんだな、ならいい」 「あ、あぅぅ…」 解説の途中でメガネを外した。 …こいつ、かけるものによって性格変わるのか? 「とにかく、代用品とメガネを並行して探してみる。  シャワーズはフライゴンのフォローを頼む」 「わかりました」 「御主人様、いってらっしゃーい…」 …なんか気が抜ける…      * * * 玄関の棚の上から調べる。 多分、どこかの机の上にでも放り出されているのだろうから、とりあえずは目立つところから…という魂胆だ。 「……マスク、か?」 なぜか置いてあった、白い竜か何かを模したマスク。 …目を隠せるなら、これでもいいだろう。なんとなく被らせてみたい気もするし。 「と言うわけで被れ」 「きゃー!」 「…マスター…何か目的が変わってる気がします…」 おお、ピッタリだ…って、フライゴンの様子が… 「強靭☆無敵☆最強ぉー!!」 「「ええええーっ!?」」 なんか叫びだした!? シャワーズも壁際まで慌てて後退する。 「粉砕☆玉砕☆大・喝・采!!ワハハハハハハハハハハ……」 高笑いしてる…フライゴンが…高笑いしてる…!! って、あのモーションは…!? 「ブルーアイズホワイトドラゴンの攻撃!滅びのバーストストリィーム!!」 「破壊光線を撃つなぁあぁぁぁーーーっ!!」      * * * 「全く…酷い目にあったぜ…」 シャワーズが冷凍ビームで相殺してくれなければ、俺は死んでいたな… とりあえずマスクを元の場所に帰す。 「…俺の部屋には…ないな」 そもそもあいつは昨日俺の部屋に来てないし。 …何か代わりになるものはないだろうか…。 「…ん?」 目を覆うための目隠しか…。使えるかもな。 なんで俺の部屋にあるのかって?…聞くなよ、それは。 「と言うわけで、こんなものを用意してみた」 「目隠しですか…何か、いろいろ間違ってる気もしますけど」 とりあえず目隠しを広げてフライゴンに迫る。 「さぁフライゴン、大人しくこれをつけろ」 「い、ぃゃぁ…こわい、です…御主人様…」 「…マスター、なんか犯罪者みたいですよ…」 「ええぃっ、問答無用!」 「あ~~れ~~!」 と言うわけで、半ば無理やりに目隠しをさせたわけだが… 「どうだ?」 「…ぉ?ぉぉ、行ける行ける!マスター、目隠しでもいけるっぽいで!」 「そうか…よかった…」 「…でもマスター、これはこれで外に出られない気がするんですけど」 「そうだな」 …そこまで考えてなかった…。 と、何やらフライゴンの様子がおかしい。 「おい、大丈夫か、フライゴン」 「な、なんか…変な気分って言うか…ウチ、興奮してきた…」 「「ぇ?」」 なにやらフライゴンの頬が上気している。 よろり、とベッドからはい出てきて…俺に手を伸ばしてきた。 「ま、マスタぁあ…」 ヤバイ。アレに捕まったらヤバイ。 俺の体は無意識に、左隣にあったものを身代わりにしてフライゴンの手につかませた。 「……ぇ?」 「………ぁ」 次の瞬間、シャワーズがフライゴンの馬鹿力でベッドに引きずり込まれる! 「マスタぁぁぁぁぁっ!?」 「…許せ、シャワーズ…たぶん、死ぬことはないだろうから」 目を閉じたまま、俺は出口へ向かう。 耳にシャワーズの悲鳴が届く。…何か別のニュアンスの声も混じってる気がしたが気のせいだ。うん。 ベッドの方をなるべく見ないようにして部屋を出て、俺は鍵をかけた。力の限り。      * * * なるべく時間をかけてメガネを探す。 と、俺の目には奇妙なものが止まった。メガネのような、ゴーグルのような…まぁ、オモチャだ。 「ウルト○アイ…か?」 …目を隠すという点ではこれも一緒だろう。 その後、小一時間ぐらい探し回ったが、メガネは見つからずじまいだった。 「あ、おかえりなさい、御主人様」 部屋に戻ると、フライゴンが迎えてくれた。シャワーズは…ベッドで倒れて荒い息をついている。 「お嫁に行けない…」などと呟いているようだが、お前既婚者だろ。というか俺のとこに嫁に来てるだろ。 「フライゴン、とりあえずこれ付けてみろ」 「え…はぃ、わかりましたぁ」 右の手でウ○トラアイを持ち…勢いよく顔に装着する! 「ジュワッ!…って、できるかーっ!!」 …ジョウト特有のノリツッコミは健在らしい。 「もぉ、御主人様…ふざけてないでどうにかしてくださいよぉ…」 「そうですよ、マスター…」 ぉ、シャワーズが復活した。 「とは言ってもなぁ…フライゴンが思い出してくれないと、ジム内は結構広いんだぜ?」 文句を呟きながら、頭に手をやる。と…髪とは違う感触に気づいた。 「あ、そうだ。コイツを試してなかったな」 がちゃり、と。重量感のあるゴーグルを、額から外す。 シルフ社製多機能ゴーグルの試作型ワンオフモデル。俺が普段から愛用してる代物だ。 「じゃあフライゴン、これつけてみろ」 「あ、は、はぃ…重い…です」 「落とすなよ?」 少々不安定な手つきながらも、なんとかゴーグルを着け終わるフライゴン。 「…おぉ、行ける!行けるでマスター!」 「副作用もないか?」 「今のところないなあ。むしろ調子ええわ、50%増しってとこやな!」 …恐るべし、シルフ社製。 「で、どうだ、思い出せそうか」 「んーと…せやせや。ウチ、昨日はフーディンとお酒のんどって、そのまま寝てしもてん。  フーディンが知ってるかもしれへんね」 「そうか…聞いてみるよ。行くぞ、シャワーズ」 「は、はい」      * * * 「ああ、フライゴンの眼鏡かい?預かってるよ」 「ホントか!?」 「昨日フライゴンが部屋に戻るとき落としたらしくてね。  返そうと思ってたんだけど姿が見えないから困ってたのさ」 …なるほどな。 フーディンからメガネを受け取る。シャワーズにそれを預け、俺はリビングに戻ることにした。 まだ昼前なのに…なんでこんなに疲れてるんだ、俺。 無性に眠くて仕方がない。ソファーでひと眠りするかな… 「……はぁ」 とりあえず、フライゴンのために今度ネックストラップでも買いに行こう。 俺はそう決意して、ソファーに横になり…意識を手放した。

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