5スレ>>627

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僕はどうしようもなく臆病だ。 誰かを傷つけるのが怖い。 でも、自分が傷つくのはもっと怖い。 だから、僕は仮面をつけることにした。 それは、俺が入社して、まだ1週間が過ぎたばかりという頃、突然上司が代わった。 そして、研究内容が過激なものになった。 逆らった同僚は、黒づくめの男たちに連れて行かれ二度と戻ってこなかった。 その同僚がどうなったかわからないし、わかりたくもない。 自分は同僚のようになりたくない。 怖いから従った。 でも、傷つける側になるのも怖かった。 だから、できるだけ感情を抑え込むことにした。 自分はどんな酷いことも平気で出来る。 そういう風に振る舞っていれば、いつか本当になって、苦しみから逃れられると思っていた。 決して逆らわず、ただただ協力し続けた俺は、他の同僚より比較的自由に行動することを許されるようになっていた。 部屋は薄暗く、壁は暗い青に塗られている。 部屋には大きな水槽があり、水が張られている場所と陸地とに分かれている。 そして、水槽の中だけが明るい。 それが、私の周りにある世界のすべて。 私は物心ついたときから、既にここにいた。 だから、私は見たことがないのだが、水族館というところをイメージして造られたらしい。 そこに、白衣を着た一人の男がはいってきた。 「お疲れ様。今日の仕事はもう終わったの?」 「お前に食事をやれば終わりだ。」 彼は不機嫌そうに答える。 「フフ、毎日大変ね。もう半年になるのかしら?あなたが来てから…」 「確かにそうだ。だが、俺はお前と仲良くお喋りする気はない。」 「つれないわね。本当は優しいのに。」 「とにかく、残さずに食べろよ。お前が体調を崩すと俺の責任になる。」 彼は眉根を寄せてそう言うと部屋から出て行った。 私は食事に目をやる。 栄養価だけを考えて、味なんて一切考えていない。 どうにも味気ない食事である。 だが、そんな中に場違いなものが一つ。 ミックスオレだ。 もちろん、あの連中の出す食事にこんなものは含まれていない。 なぜ、そんなものがここにあるのか。 それは、彼と会って一週間になろうかという頃、彼からもらって初めてミックスオレを飲んだ。 そのとき私が「おいしい」と喜んだのを覚えていて、毎週金曜日の夕食に彼がつけてくれているのだ。 やつらが来てからの研究は、それは酷いものだった。 萌えもんを状態異常にするためのアイテムを開発するための生体実験。 萌えもんを売りつけた後、購入者に逆らわないようにするための拘束具の開発。 そして、最近は萌えもんにどれだけの電流を流してバイタルの変化を調べるという危険な実験をしている。 マジックミラーの向こう側で椅子に縛り付けられた萌えもんが悲鳴をあげて苦しんでいる。 流される電気はどんどん増えて行き、このままでは死んでしまうと思った。 だが、それでも流される電気は増え続ける。 俺は、やつらが怖くてそれを止めることができなかった。 そして… 彼が部屋に入ってくる。 だが今日はいつもと様子が違った。 「どうしたの?顔が真っ青よ。」 「なんでもない。」 彼はそう言うと黙り込んでしまった。 そして、突然水槽の出入り口の扉を開いた。 「どうしたの?何かの実験に行くの?」 そう尋ねると、彼は最初はぽつぽつと、しかし、途中からは堰を切ったように話しだした。 「今日、実験中に萌えもんが一人死んだ…俺は止めることができなかった…  もう耐えられない。俺は誰かを傷つけるのが怖かった。でも自分が傷つけられるのはもっと怖かった。  だから、平気なふりしてやつらに協力したんだ。でも、君に優しいと言われる度に胸が痛んだ。  いつか本当に平気になると思ってた。でも、俺はなれなかった。」 彼は一気にまくしたてると私に告げた。 「だから、君たちを逃がす。」 「あなたはどうするの?そんなことして大丈夫なの?」 「大丈夫じゃない。だから、君たちを逃がしたら僕も逃げるよ。」 そして、僕は萌えもん達を逃がした。 見張りは萌えもん用に開発した睡眠玉で眠らせた。 萌えもん達は地下と空から逃げるように言っておいた。 萌えもん達と別れた僕は、やつらがいないクチバ方面に向かった。 ゲートの警備員は、こんな時間に出ていく僕を不審がっていたようだ。 しかし、僕が与えられた自由にはゲートの通行も含まれていたため通ることができた。 …おそらく、僕は殺されるだろう。 僕はやつらの研究を知りすぎている。 やつらにとって、僕は絶対に逃げられるわけにはいかない程度には重要で、迷わず殺してしまえる程度には重要じゃないはずだ。 精一杯生き延びる努力をしようとは思うが、体力もなく逃走するための知識も持ってない。 見つかるのは時間の問題だ。 せめて、僕の捜索に人員が割かれている間に、彼女たちが遠くに逃げられればいいと思う。 「おい、見張りはどうした。なぜ、寝ている。」 「萌えもんたちがいないぞ。」 「馬鹿な。自力で逃げられるはずはない。」 「誰かが裏切りやがった。」 「眠らされる前に白衣の男を見たらしい。」 「なんだと。研究員を確認しろ。」 「ヤツがいない。見つけ出せ。殺してもかまわん。」 辺りが騒がしくなってきた。 僕が逃げたのがバレたのだろう。 僕は必死に逃げた。 だが、いつの間にか追い詰められ、いつしか崖を背にしていた。 僕の前には上司と一人の黒づくめの男がいる。 「どうやらここまでのようだな。背後は切り立った崖。飛び降りても確実に死ぬ。死体もあがらんよ。」 上司がおかしそうに言う。 「君が戻ってくるなら許してやってもいい。だが、それが叶わなければ…」 黒づくめの男が銃を構える。 きっと戻っても殺されるのだろう。それに、たとえ殺されなくても、もうヤツらに協力するのは耐えられなかった。 「断る。もう君たちに協力はしたくない。」 「そうか。残念だよ。やれ。」 黒づくめの男が指示を受けて引き金を引く。 パーン 乾いた音がした。 僕は撃たれたと感じた次の瞬間、浮遊感を味わっていた。 そして、僕の意識は途切れた。 眩しさに目を開けると、そこは一面の青だった。 「ここは…」 「よかった。気がついたのね。」 青い美しい髪の萌えもんがこちらを振り返る。 「ラプラス…僕は…撃たれて…」 わけがわからない。 僕は撃たれて崖から落ちた。そして死んだはずだった。 でも、痛いところなどなく、目の前には彼女がいる。 「別に怪我は無かったわよ。撃たれたと思って驚いて足を滑らせたんじゃない?」 どうやら、そのようだ。 弾は僕に当たらなかった。しかし、撃たれたと勘違いした僕は崖から落ちた。と 「でも、君が何故ここに?」 「背中に乗せてくれた娘に一番近い海に送ってもらったの。  でも、いきなり沖に行くのは怖いから岸の近くを泳いでいたのよ。  そしたら、崖の上が騒がしくなって人が落ちてくるんだもの、ビックリしたわ。  しかも、それがあなたなんてね。」 彼女がおかしそうに笑う。 「すごい偶然だな。でも助かったよ。」 崖に追い詰められて、弾が外れて、勘違いして落ちて、そのままだと死ぬところを偶々通りかかった彼女に助けられる。 出来すぎているような気がするほどだ。 「偶然?違うわ。こういうのには、もっと他の呼び方があるの。」 「何て呼ぶの?」 「運命よ。」

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