5スレ>>635-2

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 俺がべとべたぁに教えたのは二つ。  かぼちゃをかぶったままにしておくこと。  トリックオアトリート、という呪文を唱えること。  出来れば由来とかそういうところも教えたかったんだけど、知らないし。  何よりべとべたぁが興味ないこと教えて萎えさせても可哀そうだ。 「とり、くお、あとりーと」  町全体がハロウィンムードのようなので、フリーズな事件は起きないと思うけど、一応俺も同伴。  ふりぃざぁの凹み状態も長くは続かず、それどころかなぜか嬉しそうな表情になって、宿に戻っていった。 「違う。トリック、オア、トリート」  ともあれ、まずはどの家に行こうかと思っているのだけれど……。  人の家にお邪魔する、というのが民族的に苦手である。  誰かが入って行ったところに入ればいいかな……。(民族的 「とりっ、くおっ、あとりーとっ」  で、さっきからべとべたぁの間違いをただそうとするも、直る気配がない。  どころか一層悪化してる気もする。 「……まぁいいか」  どうせ呪文だって教えたんだし、今回はそれっぽいこと言ってくれれば。  それに、まぁ……したったらずm(ry。 「とりっ! くおっ! あとりーとっ!」  一人悶えていても仕方ないので、べとべたぁの背を押して、一軒目に突撃させるのだった。 「ほら行けっ」  呼び鈴を鳴らして、べとべたぁを玄関前まで押し込んだ。  ……俺は行かない方がいいよな。  門柱の陰に隠れてことを見守ることにする。  がちゃり。  戸の中から現れたのはいかにもと言うような老夫婦だった。  その目がべとべたぁを捉えると、おぉと嬉しそうに一声。 「とり、くお、あとりーと!」  両手をがば、と大きく上げて、べとべたぁのアレは威嚇か何かのつもりだろうか。  老夫婦はいそいそと小さな紙袋を取り出して、 「「ハッピーハロウィーン!!」」  言葉の通り幸せに満ちた笑みで、お菓子を手渡した。  べとべたぁは黙ってそれを受け取り、数秒、 「あ、ありがとうですっ」  わーい、とらしく喜んでぱたぱたと駆け戻ってきた。  ……やっぱりコイツは喜んでる時の顔が一番いいな。 「ごしゅじんさま! おかしです! おかしもらったです!」  ずい、とお菓子の詰まった袋を突き出してきた。  ぱっと見た感じだが……なかなか沢山入っているような気がする。  ……俺も……いやいや。  こういうのはなんというか、小学生までだよね。 「ごしゅじんさまもほしいですか?」 「欲しくないと言えば嘘になる」 「じゃあいっしょにつぎのおうちへいくですよ!」  言うなりべとべたぁはぴょいと勢いよく俺の首に飛びついてきた。 「やめ――」  普段ならべたべたくっつくのはやめる様にいっているのだけれど……。 「無礼講……かな」  町の雰囲気か、それとも別の何かか。  要因は分からないけれど、今べとべたぁが飛びついてくることはとても自然なことに思えた。  なら咎める必要もないだろう。 「さて! 次の家はあそこだ!」 「りょうかいです!」  ……おかしい。  呼び鈴を鳴らし、応対があり、呪文も聞こえた、応えも聞こえた、玄関の戸が閉まる音も。  ここまで終わっているのにべとべたぁが戻ってこないと言うのはどういうことなのか。  ケータイでふりぃざぁと連絡とってて見ていなかったとは……。 「!」  まさか……誘拐……。  いやいや、あのべとべたぁがさらわれるわけが……。  ……。  と、とりあえずもう一度呼び鈴を。  ぴんぽーん。  玄関前に待機。  どきどきする。  ハロウィン参加の子供と間違えられないだろうか。  ……間違えられたらそれはそれでお菓子貰うか。若く見られるのも悪くない。  がちゃり。  現れたのははくりゅーが二人。性別は女。要するに姉妹。しかも美人だ。  ごくり。  ……いや、ほらはくりゅーと言えば世のトレーナー(男)がパートナーにしたい萌えもんランキング上位組だし。  それに姉妹と来たら……元気っこの妹と苦労性姉。或いは世話好き妹とダメ姉。とか他にもレパートリー豊富。  つまり一組でなんどもおいし……はっ。 「あの……?」  突っ立ってるから不審がられてるまずいまずい。  なんかヒソヒソ囁かれてるし。  意を決した。今日だけの特別な呪文。 「トリッ――」 「恥ずかしがらずに、ね。上がっておいで」  だがそれはどこか魅惑的な台詞に遮られた。  一言でへろへろになった俺は両手を引っ張られるがままに寝室。  を、すぎて居間へと連れて行かれて。 「はっぴーはろうぃん!」 「あ、ごひゅじんしゃま」  何かのパーティーと勘違いしている様子のはくりゅー姉妹の声を背に受け、聞きなれた声に目を向けると。  テーブルに並べられた数々のご馳走に手を付けるべとべたぁがそこにいた。 「家の中に入ってくのはあまり感心しないぞ。注意し忘れた俺も俺だけど」 「ごしゅじんさまだっておうちのなかにはいってたです!」 「それは、だなぁ。お前が事件に巻き込まれてないかどうかがだな……」 「……しってるです! ごしゅじんさまはハナノシタというのがのびてたです!」 「うげぇっ!」 「ハナノシタがのびてたおとこのひとはしんじないでくださいーってふりぃざぁさんがいってたです!」  なんてこと 教えてやがる ふりぃざあ。  晩飯は覚えていろよ……。からしやわさび万歳な刺激的料理つくっちゃる。  愉快に三軒目へ向かう途中。 「……」  それはいた。  べとべたぁより小柄な萌えもん。  電柱の影でこちらの様子をじっと見つめている。 「べとべたぁ」 「はいです」  背丈の差が大きい俺が行くよりべとべたぁのほうが親しみやすいだろう。 「どうしたですか?」 「……あの」  口を開く。  震える声は細く弱い。  ……こわがっているのだろうか。  べとべたぁと俺は静かに答えを待つ。 「……その……わたし……も……」  ……私……も?  俺は続く言葉に耳を傾けていた。  が、 「わかったです。いっしょににはろうぃんやるですよ!」  ……ありゃ。  べとべたぁのほうがあの子の言いたいことがよくわかるらしい。 「う、うん!」  べとべたぁの言葉に、隠れていた萌えもんはぴょこっとその姿を現した。  ……見たことのない萌えもんだ。  頭の天辺に草を生やしたような髪、甲羅のようなものを背負った姿。  ゼニガメのような、でも草タイプ……。 「おなまえはなんていうですか?」 「わたしは……なえとる」 「なえとるーですか!」  図鑑を取り出したところでまたもべとべたぁに先を越される。  ……モウイイヨ。 「ではなえとるーにとうへいに、はろうぃんのごくいをでんじゅするです」 「は、はい」 「でしはししょうのうでをみてぬすむときくです」 「?」 「わたしがまずやってみるですから、そのとおりになえとるーにとうへいもやるですよ!」 「わ、わかり……ました……」  もう放置です放置です。  俺が構うよりはべとべたぁが世話した方が早くて人間的だもの。  べとべたぁは呼び鈴を鳴らし、玄関で待機。応対されたら呪文を唱え、お菓子を貰って戻ってきた。  戦果をナエトルの前に掲げて見せて、 「このとーりです」 「わぁ……」  べとべたぁの勇姿(?)に目を輝かせるナエトル。 「ほんとはかぼちゃがないとだめですけど、こんかいはわたしがかしてあげるですよ」 「あ、ありがとう……」 「あとは『とり、くお、あとりーと』っていえばいいです。けんとうをいのるです」 「が、がんばる……」  ぶかぶかのかぼちゃをかぶって覚束ない足取りで家に向かうナエトルを見ていると、かなりハラハラする。  転ぶことなく呼び鈴の前に到着し、しかし、 「んーっ……んーっ……」  届かない。  背ならべとべたぁも足りてないが、ぴょいぴょい飛んで押すことができた。  どう見てもかぼちゃを支えるだけで精一杯なナエトルには無理な話。 「……」  俺の足元で同じく行く末を見守っていたべとべたぁが動いた。  ナエトルのもとまで歩み寄り、 「わたしのうえにのるですよ」 「でも……それなら……」 「なえとるーがやらなきゃだめです。わたしができるのはおてつだいまでです」  こくり。  ナエトルは頷いた。  べとべたぁの足に乗り、肩に乗り、腕をぐっと伸ばして……、  ぴんぽーん 「や、やりましたっ」 「まだ次があるですよ」 「は、はいっ」  玄関前まで到達するナエトル。  あの気の弱そうな子に、対人は務まるのかっ。  がちゃ、と戸が開き、俺と同い年くらいの男と、ちっこいイーブイが現れる。 「あ……う……。と、と……」  背の高いのが最大の難関か。  男はぽりぽりと頭を掻いて、 「イーブイ……」 「なんでしょうお父様」 「……」 「……」 「俺怯えられてるから任せたっ!」 「はい任されま……せん!」 「頼むよマジで。可愛い可愛いいーぶいさん」 「……お父様がそこまで言うのなら」 「ありがとっ」  ……。  危機は去った。  後は挫かれた勢いをもう一度取り戻すだけだ。 「と……」 「……」  イーブイは後ろ手になにかを隠し、笑顔で言葉を待った。  門前ではべとべたぁが。もう少し遠いところに俺が。  ナエトルの動向を見守っている。 「とり……。とり……く……」  ぎゅっと両手を握り締めた。 「とりくおあとりーと!」 「ハッピーハロウィンですよ」  ナエトルは言い切った。  イーブイに渡された包みを胸に抱きしめて、高速でこちらに戻ってくる。 「で、できました……」 「よくがんばったですよ! なえとるーはすごいです!」 「あり……がと……」 「どうせです、いっしょにほかのおうちもまわるですか?」 「いえ、私は……ひとつで十分です……」  かぼちゃがべとべたぁの元に返される。 「またあおうですよ、なえとるーいっとうへい!」 「はいっ」  最初電柱に隠れていた時には思いもしなかったような綺麗な笑顔を見せて、ナエトルは去っていった。 「へへ……。おえかきのお兄ちゃん、よろこんでくれるよね……」 「やったです! いっぱいになったです!」 「ちょいと集めすぎや御座いませんか、べとべたぁ嬢」 「ごしゅじんさまのぶんとふりぃざぁさんのぶんもあるからこのくらいですよ!」  町中連れまわされて集ったのはお菓子の山。  勿論用意しておいたナップサックはパンパンで、残りは全部俺の腕指首。  べとべたぁに持たせるわけにもいかず、しかし、ようやく宿に戻ってきた。 「あとは……ここのひとたちにもらうです!」  あぁそうね。  宿に泊まってる人たちも参加してるんだよね。  主人に準備はしておけと言われて、俺もハロウィンのことを知ったしね。 「べとべたぁ」 「なんですか?」 「俺はこいつを運ぶから、残りは一人で回れるか?」 「もちろんです! わたしももうおとなです! れでぃーです!」 「……」 「どこをみてるですか」 「さ、いいから行った行った」 「なにかくやしいけどおかしのためですー!」  やっぱりこどもだよな。  勢いよく駆けていく背中を見て、再確認した。

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