5スレ>>650-1

「5スレ>>650-1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

5スレ>>650-1」(2009/01/10 (土) 15:59:14) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

カントーとジョウトを分かつ霊峰、白銀山。 そのふもと、人もほとんど来ない静かな場所に、家があった。 普通の家族が暮らすには少々広いその家に向かい、朝の山道を進む青年と萌えもん。 「…1年ぶりか…おじいちゃん、元気かな」 「あの人はそうそう死ぬ人じゃありませんからねぇ…」 やがて上り坂から平坦な道になる。山のふもと…といっても高度はそれなりにあるが、 そこにながれる川を背にして作られた木造の家。 玄関の前のテラスに、杖をついた一人の老人が立っていた。 70代に見えるが、その割には背筋はしっかりと伸び、元気なように見える。 髪が少々後退している額には、サングラスがかけられている。 老人はこちらへ向かってくる二人を見ると、厳めしそうなその顔を少し綻ばせた。 「来たか、ミツキ。…久しぶりだな」 「ご無沙汰してます、義兄さん。サングラス変えました?」 「前のはネジが壊れてな。…お前さんはあまり変わらんな…当然といえば当然じゃが」 「…あの事件からもう50年経つか」 「ええ。…僕はこの一年、ホウエンを回ってきました。…あれからずっと、異変らしい異変は一切見当たりません」 「喜ばしいことだ…犠牲を払っただけの事はあったというわけだ。…俺もお前も」 老人はテーブルの上に置かれていたアルバムを、鈍く光る金属の左腕でめくった。 「…義兄さんは左手を『喰われ』て」 「お前は命そのものを奪われかけた。…ファイヤーのおかげで助かりはしたがな」 「年をとらないのは…やっぱりちょっと寂しいですね。キュウコンがいるお陰で助かってますが」 「…みぃと私の時間の流れはほぼ一緒ですから。私も一人じゃなくなって…よかった」 家の中。広いリビングにおかれたテーブルに向かい合って座っている、老人と青年、そして萌えもん――キュウコン。 二人はそれぞれ、最近の出来事を報告し合った。 青年は各地を旅して、調べて回ったことを。 老人はこの家で共に暮らしている萌えもんや人間のことを。 「…バルトも、今はもう二代目に任せて引退しとるらしい」 「あの人が喫茶店を開いたのが…まるで数日くらい前に思えます」 「まったくだ。…今度買いだしのついでにでもよってみようかね」 やがて、3人は立ち上がって家から出て歩き始める。 「折角だ。皆にも顔を見せてやってくれ」 「…もちろん、そのつもりできました」 家からさほど離れていない、見晴らしのいい崖の上。 そこには、規則正しく十数個の石が並んでいた。一つ一つに、名前や年号が刻まれている。 「ただいま。クロ、ルカ、みんな」 「ただいま。…お姉ちゃん達」 青年とキュウコンが並んで黙祷を捧げる。 崖下では、川岸で何人かの萌えもんがはしゃいでいるのが見えた。 「…時代は変わっている。眼には見えなくとも、新たな命が生まれ、そして古い命は消えゆく」 一つの墓石の前で座って黙祷を続けていた老人が立ち上がって、二人を見つめていた。 「もうすぐ俺もここに眠る事になるんだろう。…その前に、渡しておくものがある」       * * * それから数日間、青年とキュウコンは山の家で過ごしたのち、また旅立っていった。 「…やれやれ」 「お祖父ちゃん、お疲れ見たいですね」 椅子に腰掛け、軽く溜息を吐いた老人に、一匹の萌えもんが声をかける。 「年だからな。…肩でも揉んでくれるのか?」 「仕方ないですねぇ」 シャワーズは座っている老人の背中に周り、その薄い肩に手を当てて解していく。 「…お祖父ちゃん、どうですか?」 「………」 「お祖父ちゃん?」 「………」 「…もう…眠いなら部屋で寝てほしいです」 少し頬をふくらませ、シャワーズは椅子を離れる。 やがて毛布を持ってきて、老人の膝にかけた。       * * * 俺は奇妙な空間にいた。 黒と赤と緑と青だけでできた、目の痛くなる空間。 (…ここ、どこだっけな) ここには一度だけ来たことがあった…気がするが、思いだせない。 頭の中に靄がかかっているような。 (…いや) 靄がかかっているのは頭だけではない。 自分の肉体そのものが、ぼんやりとしか感じられない。 (…夢、なのか?) その疑問が浮かんだ瞬間。極彩色の空間に、淡い水色の光が現れた。 光は何かの形をとり、その手を俺に伸ばしてくる。 『……タ…』 ああ。…いつになっても、お前は俺をそうとしか呼んでくれなかった。 思い出した。その光の正体が、わかった気がした。 答えるように手を伸ばす。 …触れた瞬間、その光は拡がって、俺を包み込み――――        * * *    Scarlet Fighter, Crimson Revenger  完結編  - Final Dreamer -

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。