5スレ>>656

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 十二月二十四日午後二十六時三十分。  俺たちは宿の前で、ひとつの袋を囲んで集っていた。  袋はなんとかべとべたぁが担げる程度の大きさで、中には夢が詰まっている、らしい。 「皆ちゃんと起きてるかー」 「とうぜんです!」 「夜更かしは得意ですよぅ」  サンタクロースファッションに衣装換えしたべとべたぁがガッツポーズで。  トナカイの角を頭につけたふりぃざぁが両手をぱたぱたと振って。  どちらも元気に起きていることをアピールする。  あの角、最初は俺用にと渡されたものだが……要らないので突き返した。  ……トイレでこっそり装着したら嫌に似合ってたからな! 「俺は寝てるけどな」 「おきるですよ」 「いたたたたたっ。起きてる! おきてるって!」  とまぁなんで俺たちがこんな夜遅くに活動してるかってのは、宿で安静にしてるデリバードに聞いてもらいたい。  今日のミッションは袋の中のプレゼントをサンタクロースよろしく町中の家々に配ること。 「サンタクロースよろしく、じゃなくてサンタクロースそのままですよぅ……」 「心の中に突っ込むなちくしょう」  この時間からだと朝日を拝む時間まで働いてようやく配りきれるくらいかもね。 「ともあれ、子供たちの夢を壊さない為にも、配りきるぞ!」 「おー、です!」 「がんばるですよぅ!」  べとべたぁの夢が壊されてないかという突っ込みは許可しない。  ことの始まりは町の外。  例の如く予定を立てずにふらふらほっつきさまよい歩いていた俺たちの前に傷ついたデリバードが現れた。  これも例の如くべとべたぁが助けて、子供たちへのプレゼント配りを頼まれて。  さらに例の如くふりぃざぁがそれを承諾するという三段構えのコンビネーション。  傷ついたデリバードは夜になる前に手当てして、そのまま安静にさせている。  以上。 「……まずは一軒目」  何の変哲もない普通の家。  デリバードに貰った地図によると、ちゃんと子供がいるようだ。 「べとべたぁ、溶けて中から鍵を開けてくれ」 「りょーかいです!」 「ばかっ 静かにだ!」 「わ、わかったです!」  ふりぃざぁが何か言いたそうにこちらを見ているが、なんだろうか。 「どうした?」  尋ねると、ふりぃざぁは錠に手を当て沈黙。  数秒後、 「完成しました」  ふりぃざぁは鍵を手にしていた。氷製の。 「これなら使った後もしっかり溶けて証拠隠滅万事おーけーですよぅっ」  危険なので無視した。  がちゃり、と中から鍵の開く音がして、俺は袋を担ぎなおす。 「今夜だけは見逃してくださいお邪魔します……」 「さんたさんはつかまらないです!」 「代理は捕まるかもしれないだろ」 「この夢のない入り方ならサンタクロースさんでも捕まる気がしますよぅ……」  抜き足差し足忍び足。  どこが子供の寝室なのだろうか。  手分けして探す意味もなし、一つ一つ当たりを潰していく。 「お、ここみたいだな……」  何度か扉を開けては閉じを繰り返し、ようやく子供の部屋を発見する。  クリスマスツリーの傍には靴下も用意されていて、プレゼント貰う気満々。 「さて」  ここで問題が発生する。 「どうしたですか?」  俺、この子の、欲しいもの、ワカラナイ。 「とりあえず、袋の中を見てみましょう」 「それしかないな。というか、町中全部配るにしては小さすぎないかこの袋」 「わたしでももてるです!」 「今更ですよぅ……」  ま、開けてみるしかない。四次元かもしれないし。なんとかなーれ☆  思い切ってばさっと開く。  中には……、 「光ってるな……」 「きれいです」 「まぶしいですっ」  袋の中は光で一杯だった。  俺たちが輝きに目を取られている中、袋からほたるのように一欠けの光が部屋を飛びまわった。  それは窓をつきぬけ月の光を浴びて大きく成長し、部屋の中に戻ってくる。  その後ツリーの周りをくるくると回って、靴下の中に入っていった。 「……なんだこれ」 「すごいです」 「不思議……」  デリバードは夢を配るとかどうとか言ってたけど……これがそうなのか。  きっと靴下の中の光は、子供の夢を受けて何かに変わっていくのだろう。  ……ん、待てよ……今、光は自分で靴下の中に飛んでったよな……。  それに……。 「どうしたですか……?」 「早くしないと間に合いませんよぅ」 「ちょっと待ってろ……」  今窓もつきぬけたよな……光だからできる芸当だ……。  もし、デリバードが元気だったとして、俺たちと同じ方法で配って間に合うか……?  思い当たる。  デリバードはひこうタイプも持っていたはず。 「よし。まずは家を出よう」  衣装も丁度よく揃っているじゃないか。 「出来るか?」 「だいじょうぶです! しんじるです!」 「お安い御用のちょちょいのちょいですよぅ!」 「じゃあ俺は宿の前で待ってるぞ」  確かカメラを買っておいたんだ……早く見つけないと。 「べとべたぁ大佐、そろそろ行きますよぅ!」 「りょーかいです!」  トナカイはサンタクロースを背に乗せて空へと飛び上がった。 「そろそろ来るかな……」  宿の前で俺は空を見上げていた。  頼みごとはそれぞれひとつ。  べとべたぁには袋を開けたままにしておくことを。  ふりぃざぁにはべとべたぁを乗せて町全部を飛び回ることを。  これできっといけるはず。  サンタクロースは空から子供たちの夢を運ぶ。 「お……」  見えた。  ふりぃざぁとべとべたぁが空へと昇っていくのが。  俺はカメラを構えた。  そして、レンズ越しに見る。  光を。  彼女達が飛び去った後に続く輝きはまるで川のように。  星々に劣らぬ、否、月にも勝るほどの眩しい光はそれぞれ夢を踊る。  旋回し、飛び上がり、回転し、思い思いの夢を描く。  叶わぬ夢などないのだと、夢は必ず叶うものなのだと、そう言うように。 「ごーしゅーじーんーさーまー」  見とれているうちに、べとべたぁたちが近くまで飛んできていた。  いかんいかん。シャッターチャンスを逃すわけには。 「ふりぃざぁもこっちみろよー」 「む、難しいですっ」 「なら無茶しなくてもいいぞー」  と言ってる間にパシャリ。  翼を広げ優雅に空を飛ぶトナカイふりぃざぁの背、サンタクロースべとべたぁが夢を配る。  題して、夢を運ぶ少女(ふりぃざぁは除く)。  二十五日朝。  宿の前で、デリバードが何度もぺこぺこと頭を下げていた。 「本当にありがとう!」 「あー……まぁそんなにお礼言われても」 「たのしかったです!」 「そうそう、いいもの見れたし体験できたからな。こっちもありがとう」 「そんなそんな、夜遅くに一軒一軒家を回らせるなんて……」 「……」  こいつ……何言ってやがる。  昨夜のファンタジーを体験した俺たちはデリバードの一言でがっちり硬直する。 「……あれ、どうかしました?」 「いや……お前……一軒一軒配ってたのか?」 「それ以外に方法ってありましたっけ?」  とりあえず、頭に拳骨を落とした。

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