5スレ>>680

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 ナナシマ諸島。  七日間かけてできたと言われる逸話を持つ、七つの島群からなる海域。  シルフ攻略作戦で重傷を負ったアキラと仲間達は、五の島にある別荘でリゾート気分を満喫していた。  の、だが。  攻略作戦からもう二ヶ月。  アキラの怪我もすっかり良くなり、今は落ちた体力を取り戻すためにトレーニングをしていた。 「……二十九……三十、っと」  腹筋のノルマの回数を終え、床に寝転がる。  アキラは、ここに来てからのことを思い返していた。 「……まさか、あの二人がくっつくとはねぇ」  二人とは、ホウとゲンのことだ。  アキラもデルから話は聞いていたが、実際にゲンに甘えているホウを見るまでは何かの冗談かと思っていた。 「ってか、キャラ変わりすぎだろあれは」  その辺は散々待った故の反動である。  それを除けば、特に変わったことは無かった、と言えるだろう。  ……そう、「彼女」もこの二ヶ月の間、殆ど変わらなかった。 「サイホ……」  別荘に到着した後にヨシタカから託された、一個のモンスターボール。  その中には、シルフ攻略戦でカプセルの中に入っていたサイホーンの少女が入っていた。  虐待を受けていたと聞いたアキラ達は、彼女の心が癒えるように願いながら優しく接した。  が。 「失声症……それに男性恐怖症、か」  幼少の頃から、長い間……かれこれ10年近く、母親とマスターとしかまともに会ったことが無かったせいもあるだろう。  彼女は女性……デルやメリィ、ホウにはすぐに懐いたが、男性……アキラとゲンは見ただけで怯え、逃げ出してしまうのだ。  勿論、遭遇即逃走ではまともにコミュニケーションをとることもできない。 「俺、サイホのマスターにはなれないのか……?」  天井を眺めて一人呟くも、答えが出るはずはなかった。 『深林の追跡者(前編)』 「森林浴?」 「ええ、お義兄さんたちもいい所だと仰っていたので」  夕飯の席で、デルはアキラにそう提案をした。  三の島の北部には、現地人に木の実の森と呼ばれている大きな森がある。 「リラックスした雰囲気の中でしたら、サイホさんも少しはご主人様に慣れていただけるかなと」 「……待て、まさかそれは俺とサイホが二人で行って来いってことなのか?」 「流石にそれは難易度が高いでしょうから、私やメリィさんも一緒に皆で行くのがよろしいかと思いますよ」  ちなみに今、サイホとメリィはサイホに割り当てられた部屋で食事を取っている。  デルとメリィは、一日ごとに交代してサイホの面倒を見ているのであった。 「……そう上手くいくといいが」 「やる前からそれでは上手くいくものもいきませんよ?」 「まぁ、そうなんだけどさ」  正直なところ、アキラは少々凹んでいた。  今までにも、デルやメリィと喧嘩したことはあったし気まずくもなった。  けれど、きちんと話し合って解決してきたのだ。  それが、今回の場合はそれ以前の問題である。  出合ったら即逃走……まともにコミュニケーションをとることが出来ない状態。  更に言えば、サイホは「声」というコミュニケーションツールを現状では使えない。  拘束すればこちらから話すことは出来るだろうが、怯えさせてしまっては意味が無い。 「きっと、サイホさんも私達がご主人様と森で仲良くしてる所を見れば警戒心も薄れてくると……」 「……デル、お前それサイホの前でいちゃつけってことですか」 「まぁ、平たく申し上げますとそうなりますね……嫌、ですか?」 「いや、嫌って訳じゃないけど……まぁいいか。んで、何時行くんだ?」 「思い立ったが吉日と言いますし、今夜……はもう遅いので、明日にしましょう」 「オーケー、把握した。準備は……」 「今夜の内に私が全員分しておきますよ」 「さんきゅ、頼んだ」  アキラがデルの頭を優しく撫でてやると、彼女は嬉しそうに目を細めた。 「……ところで」  と、そこでアキラは食卓の対面に視線をずらす。  そこではゲンとホウが食事をとっている……のだが。 「なんでお前らは俺らの正面で『あーん』だの何だのをやってんだ」 「……わりぃ、ホウの勢いを抑え切れなくてだな。ってか気がついたらオレの箸が無くて」 「ゲン……あーん」 「う……いや、自分で食えるから」 「……う……(うるうる」 「だーっ! わかった、わかったから捨てられたガーディみたいな顔はよせ!」 「ん……じゃぁ、あーん」 「あ、あー……んむ」 「……おいしい?」 「お、おう……ってか作ったのお前じゃねーだろ」 「……デルの料理だけど、ボクの愛情が加わってるから……ね?」 「おま……真顔で言う台詞じゃねぇだろソレ」  一方でデルは二人の雰囲気に当てられたのか、頬を染めてアキラに向かい直った。 「……ご主人様」 「な、なんだ?」 「私も……ご奉仕しますっ!」 「え、ちょまっ、落ち着け! ってか味噌汁を口に含んでどうする気だ!?」 「……ん~♪」 「…………ああもうわかったよ! 気にしてる俺が馬鹿なんだな畜生ーっ!!!」 「~~~♪」  半分自棄になりつつアキラはデルの唇に食らいつく。  この後の食事の様子は延々といちゃつきながらの食事なので当然時間もかかり。  食器を下げに来てその現場に遭遇して拗ねてしまったメリィの機嫌をとるのに、アキラは夜中にも関わらずサイコソーダを買いに行くハメになったのだった。  翌日。  アキラ達一行は、昼前の便で三の島にある森へと向かった。  ちなみにホウとゲンは「家族連れの邪魔はしない……」とのことでお留守番である。 「……実際に見てみると、中々鬱蒼とした森だな」 「大きいだけに様々な種類の木が生えていて、木の実も沢山拾えるそうですよ」 「へぇ……少し探してみるのもいいかもな」  そんな他愛も無い話をしながら、アキラ達は森の中に入っていく。 「うーん……懐かしいなぁ」 「ん、どうかしたのか?」 「えっとね、私は元々森で暮らしてたからかな……こう、森の香りっていうのが昔を思い出すの」 「そうか……ごめんな、メリィ」 「あ、別にそれで辛いとかいうのじゃないから平気だよ?」 「お二人とも、もっと元気出して行きましょう。それから、サイホさんが先にいってしまいますよ?」  デルに言われてサイホを見ると、彼女は森の中の物……主に木や草の類を見て目を輝かせていた。 「………(キラキラ」 「お、そいつはオレンの木だな」 「!?(ビクッ」 「わわあっ」 「あー……」  アキラは話をすべく声をかけてみるも、サイホはそれに驚いてメリィの後ろに隠れてしまう。 「マ、マスター……ふぁいと!」 「うん、頑張るよ……」  と、そんなこんなで時間は過ぎ。 「……(クー」 「あら、サイホさん。お腹がすきました?」 「……(コクコク」 「それじゃ、お昼にしましょうか」 「さんせー♪」  アキラ達は開けた場所にシートを敷き、その場でピクニックをすることにした。 「……お、このサンドイッチ、メリィが作ったのか?」 「あ、わかる?」 「そりゃ、デルはジャムサンドは作らないからな」 「ふふっ、確かに」 「むー、どうせ私は甘いの大好きなお子様だよぅ」 「そう拗ねるなって。あ、サイホは甘いの好きか?」  そう言ってアキラは手元にあった別のジャムサンドをサイホに差し出してみた。 「……!」 「……や、何もしないって」 「サイホちゃんが食べないなら私が食べちゃうねー」  と、メリィはアキラが持っているジャムサンドにそのまま齧りつく。 「うーん、甘くておいひい……♪」 「あ、こら。行儀が悪いぞメリィ」 「こういう時くらい良いじゃないですか。私も……」  デルもそれに続いて、メリィの齧った跡にそのまま齧りついた。 「うふふっ、甘くていいですね」 「お前らなぁ……」 「ほら、サイホさんもどうですか?」 「…………(ジー」 「サイホ……」  サイホはアキラの手にあるジャムサンドとアキラの顔、そしてデルとメリィの顔を順番に見ている。  それは、ジャムサンドを食べたいが何か躊躇っているようで。  アキラは、その背中を押すように声をかけた。 「……ほら、甘くて美味いぞ?」 「……」 「サイホちゃん……」 「大丈夫……ご主人様は、優しい人ですから。安心してどうぞ?」 「……」  サイホは、おずおずとジャムサンドに口を近づけ……  ……かぷ。 「あ……!」 「……(モグモグ」 「……ね、美味しいでしょ?」 「……(コクリ」 「ふふっ……一歩前進、ですね。ご主人様?」 「あ……ああ、そうだな!」  その後も少々ぎこちないながらもサイホは何度かアキラの手からサンドイッチを食べ、アキラはサイホとの距離が少し縮まったことを大いに喜んだのだった。  一方、五の島で留守番組の二人はというと。  テレビを見ながらのんびりと怠惰に過ごしていた。 『お昼のニュースです。昨日午後六時過ぎ、タマムシシティ内のゲームコーナーで……』 「……………ぽりぽり」 「……そろそろメシ食わねーか?」 「……面倒」 「いや、腹減ったし」 「ん」 「……いや、菓子で腹を満たせと?」 「……ご飯が無ければお菓子を食べればいいじゃない」 「不健康のキワミじゃねーかオイ」 「普段バランスのとれた食生活をしているから平気……」 「なぁ、オメーもしかして料理とかできないっつーオチか?」 「………………」 「目を逸らすな」 「……別にできなくても困らない」 「いや、今困ってるじゃねーか」 「……ボクは困ってない」 「いや、オレが困ってんだけど」 「キミが料理すればいい……」 「…………オーケー、オレの負けでいいわ」 「……ん」  がっくりと項垂れつつせんべいを手にするゲン。  ホウは隣に座っているゲンにもたれかかりつつ、テレビから流れてくるニュースに意識を移した。 『……次のニュースです。ナナシマ諸島、三の島北部にある森で、少女が行方不明になるという事件が多発しており、付近の住民に警戒を呼びかけています』 『行方がわからなくなっている少女達は、年齢は10~15歳程、身長135~145cm程度で、該当する場合は森に近づかないように……』 「……ゲン」 「あ?」 「今日、アキラ君たちが出かけたの……三の島」 「……だな」 「デルも、メリィも、サイホも……さっきテレビが言ってた条件に、ほぼ当てはまる」 「……待て、それって」 「ん……アキラ君たちが危ない」 「チッ……しゃーねぇ、助けに行くか!」 「うん……飛ぶから、しっかりつかまって」 「おうよ!」  ホウはゲンを乗せると、窓から空に向かって羽ばたいた。  向かう先は三の島、木の実の森。  そこでほのぼのと昼食をとる彼らをじっと見つめる一対の瞳に気づくものは、誰も居なかったのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ・後書き  どうも、試験補正が切れたせいか筆の速度も戻った曹長です(ぇー  いやー、やっぱ何もやること無いとダレますねぇ。  ってか半月ほど風邪ひいてたせいもありますが(ヲイ  今回のロケ地は三の島、木の実の森ですよ!  そして連続少女誘拐事件ですよ!  ……ええ、原作やった人には犯人モロバレですね。  そしてゲンホウが自重しない件。  いや、何故かこいつらの掛け合いって勝手に組みあがってくから不思議。  キャラ崩壊して書きづらくなるかと思いきやそうでもなかったよ!  そして前回で名前だけ、前々回で存在だけ出てた新キャラ、サイホが漸くの登場。  ……うん、喋れない設定は少しやりすぎたかもしれない。だが反省はしていない(マテ  以下設定をば。 ・サイホ(サイホーン♀)  十数年前にメリィの母親を手にかけたサイドンの娘。人間の年齢にして12歳相当。  シルフ攻略戦の際にアキラ達が発見し保護、後に彼女の母親の意向でアキラに預けられる。  幼少の頃から長い間マスターであるロケット団幹部に虐待されていたせいで、失声症と男性恐怖症になってしまっている。  前述の経緯から、よく知らない相手(特に男性)からは逃げようとすることが多いが、心を許した相手にはかなり甘えたがる。  閉鎖された環境で育ったためか好奇心は旺盛。だが同じ理由から警戒心もかなりある。 ・外見的特長  身長145cm バストサイズ:A  体格はデルやメリィとどっこい……だが、彼女はまだ成長期ということでまだまだわからない。  ってか既に身長は二人を追い越している。  服装はふっくらとしたグレーのカーディガンに黒いスカート。  さて、次回は解決編……ってまだアキラ達は事件に気づいてすらいませんが。  それではまた、次回の後書きでお会いしましょう。

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