5スレ>>699

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『貴方のチャームポイントはどこですか?』 以前、テレビ番組か何かでそんな問いかけをされて、自分の魅力と呼べるものがないことに愕然としたことがある。 まず、胸が小さい。 絶望的な平面、というわけでは流石にないが、逆に大きいとも小さいとも言えない微妙な大きさだ。 これでは巨乳が好きな人間では物足りないだろうし、逆に貧乳が好きな人間には持て余してしまう。 次に背が小さい。 それもかなりだ。 小柄であるということは女としてそれなりに有利に働くだろうが、しかしいくらなんでも150cmを切るとそれは小柄を通り越して低すぎる。 そもそもこんな身長ではお洒落もろくにできない。 気に入った服があってもSサイズですら持て余し、結局着られるのは子供向けのようなものばかり。 これでは色気も何もあったものではない。 更に、お尻が大きい。 これは女子にとってかなり大きなコンプレックスだ。 おまけに私の場合、身長や胸が小さいくせにお尻回りだけ異様に……その、発育がいい。 ウエストに合わせて服を選ぶとまず間違いなくお尻につっかえるため、パンツやジーンズを選ぶときはお尻回りでサイズを選び、ベルトで無理やり締めるしかない。 少し想像してもらえばわかると思うが、これは非常にみっともない。 ただでさえ服装があれだというのに、更にこれである。 最早致命的と言うほかない。 そして最後に、私の周囲が貴様らふざけてんのか?あ?と喚きたくなるほどに抜群のスタイルを誇る面々ばかりと来た。 それも生半可なスタイルではない、完璧かつ絶品の、これを放っておくような男はもはや枯れ果てたか現実に興味がないと言い切れってよいレベルのものばかりなのだ。 穏やかで豊満で、まさに母性そのものというべきバタフリー。 さっぱりとした姉御肌で頼りになるスピアー。 いつもにこにこと笑って周囲を和ませるパラセクト。 真面目で教養深く、皆の知恵袋となるフォレトス。 妖艶な雰囲気を身に纏い、色香溢れるドクケイル。 皆が皆素晴らしいスタイルの持ち主で、魅力的で、私なんて入り込む余地がない。 なのに。 なのに、どうして。 「コロトック? どうしたの、怖い顔して」 「……別に、なんでもない」 私のマスターは、大好きな大好きなマスターは。 私を、愛してくれるんだろう? 『理由はいらない』 「むー、どうしたのさ? なんかご機嫌斜めみたいだけど」 自分が愛される理由が思いつかずに悩む私の懊悩も知らず、マスターはどこか拗ねたような口調で抱きかかえた私の顔を覗きこもうとする。 その視線から逃げるように顔を背けながら、けれど触れあった部分のぬくもりが恋しくて、結局自分の小さな体をマスターの腕の中にうずめるようにして、マスターの腕で顔を隠す。 「んー、なんだろ? 寂しかったのかな?」 だったらごめんね、と言いながら私の頭をなでるマスターの手のひらのぬくもりを存分に味わいながら、けれどいつものように能天気にそれを喜ぶことはできない。 マスターはやさしい。 マスターは私をとても大事にしてくれる。 けれど、その理由はなんだろう? わからない。 わからないから、怖い。 マスターがこうして優しくしてくれるのは、私を愛してくれているからではなく。 憐みとか、情けとか、あるいは単なる気まぐれとか、その程度の理由でしかないのではないかと思えてしまうから。 でも、それを確かめるだけの勇気もないくらい、弱くて卑怯なのが自分で。 結局、マスターのぬくもりにすがることしかできない。 「……コロトック?」 そんな自分が惨めで、汚らわしくて、みっともなくて。 「ひぐっ、ひっく、うぐっ……えぐっ、ぐす……」 気がついたら、大好きなマスターの腕の中で、私は、ぼろぼろと泣いていた。 「ど、どうしたの? 何か嫌なことあった? 僕、何か悪いことしちゃった?」 おろおろと戸惑いながら、それでも私の身体を抱きしめる手は離さないでいてくれるマスターの思いやりが嬉しくて、またぽろぽろと涙をこぼしながら、ふるふると首を振って否定する。 「じゃ、じゃあどこか痛いところでもあるの? 病院行く?」 さっきよりも強く抱きしめながら私を気遣ってくれるマスター。 でも、今はその優しさが、嬉しくて、痛い。 (なんで、私なんだろう) (私なんかより、他のみんなの方が、ずっとずっと、魅力的なのに) 一度そう考えてしまえば、今こうしてマスターに抱きしめられながら心配されていることさえ私には不釣り合いな気がして、どうしようもなく悲しくなってくる。 (もっとスタイルがよければ) (もっと背が高ければ) (もっと胸が大きければ) (もっと自分に自信が持てれば) そんな考えばかりが堂々巡りをして、結局、私の目から涙が出なくなるまで、私は、ただひたすらに泣き続けた。 そして、私が泣きじゃくっている間、マスターはずっと、私を抱きしめながら撫でつづけていてくれた。 *** 「……落ち着いた?」 優しいマスターの問いかけに、泣き腫らした目をこすりながら小さくうなずく。 流せるだけの涙を流しつくした私は、もう自分を責める思考すら億劫になるほど心が疲れ果ててしまっていた。 もう楽になりたい。 楽になってしまいたい。 マスターのぬくもりに抱かれながら、私が考えるのは、ただ、そのことだけで。 だから。 「……ますたー」 「ん?」 だから、私は。 「ますたーは、なんで……わたしを、えらんでくれたの?」 このぬくもりを失うことも考えず、ただ、楽になりたい一心で、そう、マスターに問いかけた。 それは、一番選んではならない選択肢。 逃げの一手。 だけど、だけど。 もう、いつぬくもりを失うかと怯えていたくないから。 いつか捨てられるなら、いっそ捨ててしまったほうが傷が浅くて済むから。 だから、私は、その選択肢を選んだ。 なのに。 「……なんでって」 マスターは、ちょっと不満そうに、けれど、優しく、凄く優しく微笑んで。 「誰かを独り占めしたくなるくらい好きになるのに、理由なんているの?」 私の、それまでのちっぽけな悩みを吹き飛ばす答えを出して、思いっきり、私を抱きしめてくれた。

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