5スレ>>755

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「さて、ここまででいいか?」 「うん、ご苦労様」 「本当に感謝してもし足りません」 わたぼうとサンの住処までやってきた、ここでお別れだな。 「ぼーるマーカーの解除はどうする?」 「いや、このままでいいよ」 「短かったとはいえ、マスターの手持ちであったことには変わりはありませんから」 「そうか、わかった。それじゃあ達者でな~」 「はい、今まで有難うございました」 ******************************************************* さて、場所は変わってハナダシティから東の方向。 「またお前かよ・・・・・・」 またしても例の"細い木"が邪魔をしてくれていた。 「リリュさん・・・どうします?」 「いや・・・・・今度ばかりはどうしようも無いだろ」 ――あの木刀はクチバジムでお釈迦になってしまっている。 いや、待てよ? 要は通れるようにすればいいだけだから・・・ 「姉さん――あの木、燃やせるか?」 さすがの木でも姉さんの火力ならいけるかもしれない。 「出来るかもしれないけど・・・やってみる?」 半身に構え、目を閉じる。 「みんな、危ないから少し下がっててね」 俺たちが距離をとったのを確認すると、いつかのように無造作に手を振り上げ、 燃やすなんて次元じゃないほどの爆炎が巻き起こった。 すさまじいまでの熱と煙。 「ゲホッ、ゴホッ・・・」 咳き込むのが一通り済み、煙が晴れてくる。 煙が晴れれば当然その惨状が目に入ってくる。 いや、確かに燃やしてくれとは言ったけど・・・ 「誰も、地形ごと吹っ飛ばせとは言ってないぞ・・・?」 結構狭い道だったはずなのに、山が思いっきり削られている。 ――ジムでも建てられそうだ。 「・・・・・・・・・てへっ☆」 「てへっ☆じゃねぇ!!!どうすんだこの惨状!!」 「助けて~フラム君!リリュ君がいぢめる~」 フラムの影に隠れてやがる。目をうるうるさせんな!! 「まぁまぁリリュさん。ホウオウさんも悪気があったわけではありませんし・・・」 「悪気がないから余計に性質が悪ぃんだよ・・・!」 姉さんは無邪気すぎて逆に始末がつけられないことが多すぎる。 「ああもう・・・・・・!!!  幸い今の爆発で近くにいたトレーナーたちは皆伸びてるから、さっさと走るぞ!」 ほら姉さんも! 目でそう伝え、手をつかんで走り出す。 「あっ・・・(///)」 「はぁ・・・自覚ないのかな・・・ほんとにあなたたち姉弟ですか?」 フラムが何か言っていたみたいだがよく聞き取れなかった。 *************************************************** イワヤマトンネル近くの萌えもんセンターまで走る、走る。 ――考えてみれば中に入るとまずいのでそのままイワヤマトンネルまで走る。 翌日の新聞の一面は確定かな・・・ そして、準備もろくにせず突っ込んだのが仇となった。 「真っ暗ね・・・」「真っ暗だな・・・」 ・・・前もろくに見えないほど、あたりは暗かった。 離れないように皆でくっついているが、気を抜けば離れてしまうかもしれない。 「火、出す?」 「いや、止めておいた方がいい。  洞窟の中で貴重な酸素を消費するわけにもいかない」 「そうよね・・・」 なんとか回りを把握するくらいなら見えるが、それだけでは心許ない。 心眼なんて一般人たる俺には備わってなど無いのだ。 そんなとき、 「!」 こてん。 なにやらかわいらしい音がした。 「ウィル?どうした?」 「・・・・!・・・!」 パタパタともがくウィル。 「ああちょっと待ってろ。今そっち行く。  姉さん、フラム、動かないでくれ」 壁を伝ってウィルの元に向かう。 「よっこいせっと。大丈夫か?怪我無いか?」 「・・・・・・(コクリ」 「そうか、それはよかった。  じゃ、ちょっと待ってろ。今皆のところに連れてくから」 「・・・・・・!?」 ウィルの体が白く光り始める。 え?まさか・・・進化!? の前に――。 「おお、明るい!皆今のうちに走るぞ!!!  ウィル、出来る限り進化遅らせてくれよ!」 *************************************************************** 「はーっ・・・、はーっ・・・・」 「も、もう、はしれn(ドサッ」 何とか、明るいところまで、来れたのは、いいんだが・・・・ 「――てか、何でこんなに重いんだ・・・?」 「重いなんて、失礼」 「え?今の誰?」 姉さんはへばってるし、フラムは全力で首を振っている。 「だとすると・・・?」 必然的に、腕の中に答えがあることになる。 「そんなに、見つめないで、恥ずかしい・・・ますたー」 「え~っと・・・どちら様?」 「ひどい、忘れたの、ますたー・・・」 瞳をうるうるとさせる、見知らぬトゲキッス。 「え・・・・・・もしかして、ウィル?」 「うん、その通り」 「いや、正直、別人かと」 全く持ってその通りだ。 手で抱えられるほどの大きさだったのが、今では姉さんより大きいかもしれない。 たとえば・・・背丈とか胸とか――あと胸とか。 それに・・・・・・体勢が少し問題だ。 何でだかは分からないが、肩とひざの裏を両腕で抱える、まぁ所謂お姫様抱っこの形だ。 「ますたー、意外と大胆・・・ぽっ」 ぽっ、じゃねぇ。 「・・・・・・でも無表情なのは変わんないんだな・・・・・・」 「ますたーが嫌って言うなら、頑張る」 「いや嫌だって訳じゃ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 な、何だ!? 何なんだこのどす黒いオーラは!? 「・・・そう、ウィル"ちゃん"だったのね・・・  リリュ君のお姫様抱っこなんてわたしされたこと無いのに。  ああうらやましい・・・・・・」 姉さんが何か言ったかもしれないが怖くて聞き取れなかった。 とりあえず、ウィルを下ろして動こうと、「落盤だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!逃げろぉぉぉぉぉ!!!!!」 は?何の冗談だ?笑えねぇ。 ただ、周りの揺れだけは確かなもの・・・? 「――やばい!!みんな伏せろ!!」 姉さん、まごついてんな!! 「あぁもう・・・!!」 姉さんに飛びつき、庇いながら地面に倒れこんだその直後。 崩落の音が、全て覆い尽くす。 ******************************************************** パラパラと落ちてくる岩盤の欠片がそのすさまじさを物語っている。 とりあえず俺の下にいる姉さんが気がかりなんだが・・・ 「いってぇ・・・・・・大丈夫か姉さん?」 「んっ・・・・・・あ――リリュ君・・・?」 よかった、無事か。 「へ?へ?・・・・・・!!  はわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!!!!!!」 「動くな動くな!」 崩れたらどうする! 「リリュ君に抱きしめられたリリュ君に抱きしめられたリリュ君に抱きしめられたああ駄目恥ずかしいでももっとぎゅっとしてくださいお願いします(ぷしゅ~)」 「・・・・・・」 お~い、戻って来~い、湯気でてるぞ~。 ・・・まぁ、言っても無駄なんだろうな。 「さて、どうするか」 岩盤がものの見事に崩落してしまっている。出口も当然塞がっていた。 余計に時間かけさせやがって・・・ 「フラム~、ウィル~」 「・・・・・・リリュさん、いつまでそうしてるつもりですか?」 「――ますたー、そういうのが、好き?」 ん?・・・・・・・・・・・あ。 「あぁ悪い姉さん。すぐどくから」 さっきから様子おかしかったのはこれが原因なのか? 「む・・・・・・」 何でそこで機嫌悪くなるんだよ。 ・・・・まぁそんなことよりも、 「まずはこの岩をどうにかしないと」 一応他のトレーナーやその萌えもんたちが何とかしようとしているがあまりはかどっていないようだ。 「私が、やる」 「ウィル?」 「私、できるかも。任せて」 「だからって、お前・・・」 そんな女性らしい細腕でどうやってあんな岩を撤去する気だ? 「――壊す。殴って」 「は?」 こんな声が出たことを許して欲しい。どう見ても無理だとしか思えないだろ、普通。 「これでも、威力には自信、ある」 そう言い残して向かっていく。腰を落とし、岩に駆け寄り、 「砕けろ――――」 軽く飛び上がり、落下の勢いと共に右拳を振り下ろす。 その衝撃は、彗星の如く。 轟音が周囲を支配する。 「・・・・・・"コメットパンチ"?」 知らず、その名を口にする。 なんで、ウィルが。 「だから、言った。威力には自信ある」 そう言いながら、右手には青い光球が形作られる。 「・・・・・・"はどうだん"。」 下から掬い上げるように投げる。 光球は大きくカーブを描いて岩盤に命中、亀裂を広げる。 後はその繰り返しだ。 だが、その冗談では済まない威力に周りのトレーナーたちは皆呆気に取られている。 無理も無い、年端も行かぬ少女が苦も無く大岩を掘削しているのだから。 数刻の後、ついに貫通。 途中からは他の萌えもんも手を貸してくれたお陰で随分と作業が進んでいった。 歓喜の声が空気を震わせているときに、俺はウィルに尋ねた。 「なんでお前、そんな技を?」 「なんでますたーは、そんなことを聞くの?」 ・・・・・・ウィルに対して言っていることは、姉さんに何故炎が出せるのかと聞くのと同じことだ。 「悪い、気を悪くしたか?」 「別に、ますたーが、無神経なのを、怒ってるわけじゃない。私以外のことを考えていたから」 「――はい?」 いきなりそんなこと言われて拗ねられても・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 !?!? また圧力が・・・やばい、本能的なところで危険を感じる! 「あれ・・・なにかしらこの赤黒い感情・・・ああそうか、これが『嫉妬』・・・」 「と、とりあえず外に出るぞ!?」 ありがとな、ウィル。と付け加えて再び走る。遅くなりがちな姉さんの手を引いて。 「・・・えへへ・・・♪」 「・・・・・・・・もう僕は何も言いません。お二人で勝手にやってください」「全く、その通り」 二人の声は聞こえなかった。 ・・・いや、本当だぞ?俺の耳は都合の悪いことが聞こえない耳じゃないぞ? 誰に対するとも分からない言い訳と共に三人で暫くぶりの光を目指す。 end あとがき うちの主力アタッカー、ウィルさんです。その拳はシールドマシン級。 かわいい顔してブラッキーを一撃で病院送りにした実績あり。 何度この子に助けられてきたか・・・・・・ありがたやーありがたやー そしてお姉ちゃん覚醒フラグ。かわいい嫉妬なら是非ウェルカム。 それでは、これにて。

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