5スレ>>775

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「あなた、正気ですか?」  ヨノワールのセリフである。  これはエドワードが彼に対しての仲間にならないかという勧誘への返事である。 「私はこの方々に悪夢を見せた真犯人ですよ? 慣れ合えるとでも思っているんですか?」  かなり刺々しい口調である。だがそんなものを気に留めるようなエドワードではない。 「悪夢に関しては、みんな自分の心の闇を思い知ったってことでむしろ教訓にしてるよ。  ね、アルバート。言ノ葉。ルク。恋歌。凛悟。……ジニー」  皆一様に頷いてゆく。最後、ヴァージニアだけは精彩を欠いていたものの。 「……というわけだ。コンゴトモヨロシク」 「……はぁ。凛悟さん? あなたも苦労しますね」 「そう思うなら僕の代わりになってくれない?」 「いえいえ、恐れ多い」  軽く漫才。どうやらヨノワールさんはこのメンツに適合できそうだった。  さてもう片方、ボールに捕らえられたドンカラスはと言えば── 「……まぁ単純にこういうことなんだが……」 「ふむ。しかしゴーストだからと言ってできる芸当ではないな……」 「まぁ私も詳しく調べてはみたいんだが……なにせ自分のことだし、調査できる機械等ともとんと縁がないものでな」  ──知りたがりなアルバートと意気投合している。これならすぐに他のメンツともなじめるだろう。  と、なると。 「名前が必要になるな」 「ああ、なら私は『メア』とお呼びください」  即座に反応が返ってきた。これはヨノワールの方。ではもう片方は? 「相棒? 名前が必要だそうですよ?」 「……ふむ、オーキド博士の研究所にお邪魔にっと、なんだって?」 「名前、だそうです。この際つけてもらったらどうです?」  こちらにはないらしい。ので、即座に考案。 「……烏の濡れ羽色。水も滴る。雫。……雫、羽。雫羽(しずは)。どうだ?」 「ふむ。いいだろう、それできまりだ」  こうして2人のパーティ参加が決まったのである。  そして。  ルクは本人の希望で、一度タマムシに戻ることになり、エドワードはその邪魔をしないためと、ハナダへ向かった。  わざわざ、雫羽に”空を飛ぶ”を覚えさせて。 「いずれ使う時は来るだろうし、なら今使ってもいいじゃないか、減るものでもないし」  その主張は正しいが、だからと言ってわざわざ使う必要もない。  そう言われたときは、 「シオンにはちょっと居づらいから。それに、どうせならもう少し距離を置きたいから」  と理由を重ねる。  それは彼を、普段のふざけた様子からは想像できないほど真面目な人物に見せていて。  一行の間には、何ともいえぬ空気が漂っていた。 「ハナダ、無事到着っと。おつかれ雫羽」 「なに、この程度なら問題ない」  センター前に降り立ったエドワード。いつの間にか手にしていた愛用のPDAで何かを確認しているようだ。 「……ちょうどいいころあいだな」  その言葉の意味は、誰にもわからない。 「じゃあ、留守は任せたよ凛悟」 「いいけど、どこに行くんだ?」 「……ないしょ」 「ええい、気持ち悪い。もういい、さっさと行って来い」 「はは……いってきます」  部屋を取ったあと、凛悟に後を任せるエドワード。このあたりに彼への信頼が見て取れる。  ……そして自身は、どこかへふらりと去っていった。  無論、手持ちの1匹くらいはいる。  だが、共に行くの誰かなのは、ボールの中にいてわからなかった。 「さて……あのあたりのトレーナーは蹴散らしたはずだけど、挑戦されたらどうしようかな……」  呟きつつ、足を運ぶ。  その向く先は北。24番道路。  マサキの家。  ハナダの岬。 「おお、久しぶりやなエドワード。どや、恋歌は元気しとるか?」 「ええ、毎日凛悟を振り回したり逆に振り回されてたり、見ていて飽きないくらいに」  かつての恋歌のマスター、マサキ。当然、まっさきに話題になるのは彼女の事。 「……すこし、お尋ねしたいことがあります」 「……なんや? 後ろの装置のことか?」  そして、彼女の一生を変えた出来事、その真実。 「あれは……片方の肉体に、もう片方の精神を入れる形で二者を融合させる機械。そう捉えていいんですね」 「わざわざ聞くほどのことかい。事実、ワイもピッピの体であんさんと話したろうが」 「ええ。ですが、聞きたいのはそんなことではなく……」  普通に考えて、それはおかしい。  単に頭の中身だけを入れ替えるのならわかる。  それはもともとあったものの組み合わせを変えただけだ。  だが、違う。2+2が2なのだ。当然…… 「いったい……もう1つずつあるはずの精神と肉体はどうなるんでしょう?」  ……2が、引かれていなければおかしい。 「……はぁ……あんさん、よくそんな所にめぇつけたな」 「誰だって気づきますよ。それ以上に驚くべきことがあったから、誤魔化されてるだけで」  いったい、体を奪われた精神はどうなったのか?  いったい、精神を失った体はどうなったのか? 「……わかっとる。こんなん、ひどいって。でも、それしかなかった。  あんたはどうする? 最後の最後でこんなあたりまえな問題にぶつかって、  悩む時間すらなかったとしたら?」 「迷わなかったでしょうね。後悔なんて後でいくらでもできる、と。  ──あなたを責めるつもりはありません。……真実を聞きたいだけです」  その真実を理解していて尚……否、理解しているからこそ、確かめるための”答え”を求める。 「せや。あんときはワイの体も、ピッピの心もあった。けど、あの子の時は違う。  あの子の新しい体にあったはずの心は、作られたとはいえ幸せに生きることもできたはずの心は……  あの子の体と、心中してもうた。……はは、誰がうまいこといえっちゅうたんや」 「少なくとも、あなた以外に言える人は存在しなかった。  ……それでも、僕はあなたを許しますよ」 「そうか……。  幸いと言うべきか、辛いというべきか……生まれたばかりの心は、何も知らんかった。  何も知らんうちに、逝ってもうた。逝かせてしもうたんや……」  もう、十分だった。 「わざわざ古傷をえぐってすみません。ありがとうございました」  そのまま背を向けて扉をくぐる。  時間稼ぎにするには、あまりに重い話題であることになぜ気付かなかったのだろうと、  一抹の後悔とともに。  マサキの家から僅かばかり歩き、眼前に海を望む名所”ハナダの岬”にたどり着くエドワード。  無造作にボールを取り出し、放る。彼がただ一人連れてきたのは──ヴァージニア、だった。 「…………エディ……」  何か言いたくて、けれど何も言えなくて。  そんな表情で、ただ呼びかける。  応えは、意外なもので。 「あれ、みてよ」  ただ自らが見る方向を指さし、その先を追ったヴァージニアは、その目を驚きに見開いた。 「────……」  とっさに出てくる言葉もなく、もっとよく見ようと向き直る。  その先にあったのは、2つの黄金色に輝く大きな月。 「きれいだろう? 何でだろうね、月って上ったばかりだとこんな風に、  大きく見えるし黄色っぽいんだよ。目の錯覚らしいんだけどね……  こんなにきれいなものが見られるなら大いに錯覚してくれ、ってかんじだよね」  その言葉に、彼女は頷く。 「それもこうやって海が鏡になってくれると、さらにお得だよね。  ──ほんとは、7日の日が満月で最高だったんだよ。  もう少し、ここにいればよかったね……」  今度は、首を振った。 「ううん。こんな綺麗な寝待ちの月、初めて見た……。  それだけで、満月を一緒に見たいって言ってくれただけで十分」  それっきり、声は失せる。  ただ、2人して月を眺めていた。  ──やがて、地平線から伸ばした腕の広げた手のひら2つ分ほど、月が昇ったころ。 「ねぇ、エディ」  静かに、その沈黙は破られる。 「なんだい?」  応える側も、静かに口を開いた。 「私……私ね……?」  無意識の躊躇か、続きはなかなか出てこない。  ようやく出てきたのは。 「私……エディに、ずっと言いたかったことがあるの」  そこから予測される台詞を、彼は先回りする。 「愛の告白でも、してくれるのかい?」  図星であるように、僅かたじろぐ少女。  しかし、続くのはそれとは違う。 「──私が、血を吸わなきゃ生きていけないのは、もうしってるわよね」  目を見張る彼の姿は、わざとらしくも見えるほど調和がとれていた。 「ああ。それが──どうか、したのかい」  そんな、文章にすれば疑問符すら付かないほどの問い。  少女は、一度大きく息を吸ってから、語り始める。 「当然、子供は獲物から血を吸うことができないから……親の血を吸って成長するの。  消化器官も発達していないうちは、その方が栄養を摂取する意味でも効率的だと思う。  私達の一族が捕まって研究されて、科学的に証明されたわけじゃないけど……  子供が母親の乳を飲むのと同じだと思うから……」 「……そうだろうね。アルバートなら、もう少し突っ込んだ考察だできるかもしれないけど」  彼が僅か、口をはさむ。  それに導かれて、少女は続きを口にする。 「当然、子を孕んだ母親と、離れられない時期の子を育てる親も、もう片方から血をもらって生きるの。  つまり──親の血と、配偶者の血。私達の一族が同族から血を吸うのは、この2つの場合だけ。  だから、血を吸い交わすということは──」  やはり、先回りして発言する彼。 「──互いが先の条件に当てはまる、配偶者同士のみの事柄。  転じて、将来を約束する行為。僕らの常識で言う、体を許し合うことと同じか、それ以上の意味。  そういう、ことかな?」 「……ええ。ごめんなさい、こんなこと、いままで黙ってて……」  そのまま、何も言えなくなる少女。  彼は楽しげに笑うと、少女に語りかける。 「構わないよ。だってそれは、ジニーが僕と将来を約束してくれてるってことだろう?  ……むしろ、嬉しい。僕は欲張りだからね、君の全部が欲しいんだ。  心も、体も、そして──秘密も」  少女が気づいた時には、彼はすぐそばまで近づいていた。 「君は、違うのかい?」 「わた、しは──」  ためらい、それでもしっかりと、少女は応える。 「私も、欲しい……エディの心も、体も、秘密も、──あなたの、となりも」  手すりにかけられた手。それは、少女を逃がさないだけの何かがあった。  逃げるつもりなど、少女にはなかったが。 「……ジニー」 「エディ……」  呼びかわせば、もう言葉は必要なかった。  まるで襲うように。まるで誘うように。  その唇は、自然と重なった。  深く、深く。  少女の反応をみて、細かく刺激を変えるエドワード。  彼から流れてくるものを、無心に貪るヴァージニア。  その姿は、あまりにも艶やかだった。 「…………?」  その中で、少女は気付く。  慣れ親しんだ味に。何よりも愛する味に。  彼の、血の味に。 「──んあ、エディ?」  唇を離し、問う。この一言で、十分に伝わるとの確信をもって。 「……フフ。どう? よかった?」  そしてそれは正しく、しかし問い返される。  血の味の口吸いの、感想を。 「エディ……わざわざ舌、噛んだの?」 「どちらかと言えば切った、が正しいかな。自分でも味わえるし、無駄はなかったからね」  答えるどころか、さらに質問で返す。  今度は正しく答える彼。この答えに、少女は。 「だめだよ……私は最悪、血を吸うだけでも大丈夫だけど、エディはちゃんと食事をとらなきゃいけないのに……!」  彼を気遣う言葉をかける。返る言葉は。 「それこそ最悪、栄養剤だけでも大丈夫だけどね……僕は」  そんな、自分のことを後回しにしたもの。 「そんなの、不健康じゃない!」 「ジニーだって同じこと言ったんだよ。自分を棚に上げるのはよくないよ」  互いに互いを気遣う言葉で争う2人。  その結果は、仲間たちに事の顛末を話し、判断してもらうというもの。  ──はたして、どれだけの数がそれを放棄するだろうか── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ~あとがき~  シリアス最後。  とりあえず、悪夢が描かれなかったレンの”過去”に触れてみました。  言ノ葉の”過去”は……まぁそんなこたぁどうでもいいんだよ!(ぇ  ごめんなさいそのうち触れます。  さて次は本格デートだ……次回予告! 「キングだから──もとい! 面白いからだ!」  普段のノリが帰ってきたエド一行。 「へぇ? たのしみだなぁ!」  それぞれがそれぞれの時間を楽しむ。 「ふぇええええええ!!?」  そんななか、唐突に告げられたのは…… 「ならば私達は一応恋のライバルということになるのかな」  次回、萌えもん吸血記第十二話。  ──君の心にあふれてる、その想いは何?  さっていちゃらぶだー……吸血の人頑張るよー……

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