5スレ>>822-2

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 くしくも深々と雪が降る末月の月末。  そう、ホワイトクリスマス。 「あうえうあう、なんでこうなるんですかー!?」 「あの、私としても聞きたいんですけど……」 「いいから、はやくいきましょう。ね?」  そんな、とある一室での会話の欠片。 ~メリークリスマス・インザワイリーホーム~ 「イヤッホオオオォォオオウウ! なんてかわいいんだい、僕のかわいいジニー!」 「ちったぁ落ち着けあんたは! ハイドロキャノン発射だディー!」 「あら、野暮なことはしないでほしいわ」 「ぐはぁ!?」  ヴァージニアを一目見るなり、一瞬で暴走するエド。  彼をすこし頭冷やそうと、傍らの異能の権限『運命のいたずら(ディスティニー・ゲーム)』・愛称ディーがもつ2つの砲、  ハイドロキャノンを構えたのだがしかしそれを他の誰であろう、なんとヴァージニアに阻止された。  背後からの、全力全壊のドロップキックで、である。 「げっほうげほう、痛いなちきしょう!」  吹っ飛ばされた先はなぜか見事に恋歌の膝枕なのだがそれはひとまず横に置いておき、吸血主従の桃色(?)トーク。 「ああ、かわいいよジニー……君にこんな衣装をプレゼントしてくれた、あわてん坊のサンタクロースに感謝するよ」 「ふふ、ありがとうエディ。でも……サンタは、私よ?」 「ああ、まさに、まさに! 僕に、僕に、僕にそう! 愛というなの幸せをプレゼントしに来てくれたんだね!」 「っふふ、そうね……じゃあ、キスのプレゼントはなしでいいかしら?」 「否! NO、NO、NO! 絶対にNO! ここでさらにプレゼントを要求するのが子供、そうサンタが訪ねていく子供!  というわけでさあ! 権利書でもいいからプリーズマイハニーサンタクロース!」  どっかぶっとんだ会話(というか片方の発言)ではあるが、いちゃついていることだけは伝わってくる。  そしてそんなぶっとんだ会話を楽しんでいる節があるあたり、この娘もこの娘で変わっている。 「………………♪」 「………………」  つづけて謎のにらめっこが始まった。そしてすぐに終わった。  何のことはない、最初から2人とも笑っているのだ。勝負がつくはずがない。  ただ、その笑顔の方向性が変わっただけである。 「……ジニー」  常のエドワードの、どこか狂ったようなとさえ思えてしまうような、楽しさしかない笑顔。  それが、どこまでも優しい、恋人にしか向けないものへと。 「……うん。“お兄様”♪」  直後、満足したように頷いて背伸びするヴァージニア。  彼にしては珍しく、本当の本当に珍しく、心底狼狽したような、照れたような顔のエドワードに、彼女はその唇を重ねた。 「ひゅーう。やるねぇジンジャーも」 「ソウダネーイイハナシダネー」 「……リン? 最近マスターみたいなごまかし方が増えてきたね」 「がはらぁっ!?」  さて、さっき脇に追いやったリンレンカップルである。  なぜか膝枕なのは変わらず、気恥かしさから逃げるチャンスをうかがっていた凛悟だったが、恋歌の一声で撃沈する。 「……ただまぁ、人前であそこまでいちゃつくってのは……」 「うん、大問題。見せつけられたいもんじゃない」  だが、恋歌が何の気なしに振った話題に即座にくらいついた。 「だね。ボクはマネできないや、二重の意味で」  くらいついたが、しかし釣ってもらわなければ水面に出られない。  それでもわずかためらうのみで、自ら餌を求めて飛びあがる。 「……なら、僕が真似してあげようか」 「え?」  ミイラ取りがミイラ。いや、釣り師を釣るといったところか。  言うが早いか、右手は恋歌の後頭部を抑えて逃げ場をなくし。  左手は床を押して、上半身を持ち上げている。 「────っ!? な、ちょ、リン、人、目!」 「気にしてないとでも思うの?」  あわてる恋歌に、すかさず答える凛悟。  その言葉に、ああ、ちゃんと誰も見てない時を狙ったのかと恋歌が安心した、まさにその一瞬をついて、 「まぁ、本当に気にしてなかったんだけど」  凛悟はそう言った。  結果として、彼は膝枕される立場からは逃げ出すことに成功したのである。 「……その、どう、かな? アルバート」 「その帽子をかぶりながらもポニーテールにこだわったんだろうな。しかしやはり完全な両立は無理だった。  だから、帽子を斜めにかぶり、ポニーテールの代わりにサイドテールという形で一つ結びという髪型は保った、と」 「……あの、アルバート?」 「つまり何がいいたいかというと、お前のその努力と試行錯誤がたまらなくうれしく、また可愛らしさといとおしさを覚え、  さらにはその結果、つまりサイドポニー+帽子という新境地に達してつまり今のお前に萌えというにふさわしい感情を抱いている」 「一言で言ってください」 「かわいいぞ、言ノ葉。愛している」  こちらはこちらで何かがおかしいアルバート&言ノ葉。  やはり兄弟だということか、この場面で暴走するのは。 「私も、愛してるよアルバート」 「嬉しい限りだ。ただ、その格好でここに来たことに関しては少々気にくわんな」 「……え?」  こちらの暴走は、一見しただけでは暴走とわからない程度の違いだろう。 「まずその可愛さが他のやつらに見られること、それ自体が気にくわん。  だからといってお前に惚れるような奴はいないだろうし、いたとしてもそこらの裏路地に転がるこのになる。  だが俺が言いたいのはそういうことじゃない、単純にお前のかわいい姿は独り占めにしたいというわがままだ」  こともなげになにかすごいことを言うアルバート。  言ノ葉は、その頬を僅かに赤く染めている。 「次に、なんだそのミニスカートは。ふとももの大部分が露出している。  いや、それが女性の服装として全く正しいことは理解している。だがしかしこれも俺のわがままだ。  その細くて白くて見るからにやわらかそうでしかし実際さわってみるとこれが意外な弾力に富むお前の太腿をだ、  たとえ家族だろうと女だろうと見られたくはない。というわけで着替えるんだ、俺の部屋に行くぞ」 「あ、はい……ってなんでアルバートの部屋!?」  あまりに自然に語られるからわからなかったが、ようやく後半の独白の意味を理解した言ノ葉。  同時に、理屈に合わない点を指摘する(別に着替えることもそれをおそらくアルバートに見られることも構わないと思っている)。 「万が一にも他の誰にも見られたくないからだ。」 「なら私の部屋でもいいじゃないですか!?」  さらに理屈に合わない台詞に、つい普段の口調に戻りかけてしまう。 「……万が一にも俺が見逃さないためだ」 「……わかりました、もうすきにして」  結局、こうなったアルバートは止まらないことは理解している。  素直に従う言ノ葉であった。  ~こっからサバト~ 「あうえうあう~~……ひどい目にあったです」  ここにいるのはごく普通の男の娘……という紹介はさておき、サバト君。  スカートでこそないものの、どう見ても女の子な格好である。サンタコスの。  髪も普段の流しっぱなしではなく、軽くウェーブがかかったものになっている。  さて、ここからわかる人はわかると思うが、彼は先ほどまで手持ち達にいじられまくったのである。 「……あれ? そういえば、ランがいなかったような……?」  全く余裕がなかったため、周囲をしっかりと認識していたわけではないが、思い返してみれば確かに1人足りなかった。  左手を右ひじに、右手を顎につけるという格好つけたポーズで思案する。  しかしながら答えが出ないまま、自分の部屋までたどり着いてしまう。 「(……まあ、考えるのはあとでもできますし……いまは着替えましょう。もしサナ達に来られたらまたあんなめに……!)」  先ほどの恐怖を思い出し、僅か身震いしながら部屋にはいるサバト。  そこで彼を出迎えたのは── 「……メリークリスマス、マスター」  ──クラッカーの小気味よい音と共に降る、ランの声だった。 「……え、え?」 「マスター、これは私からのプレゼントです」  よくわからないままに、小さな箱を受け取るサバト。  視線で問えば、開けてもいいようだ。  丁寧に包装を解いた中にあったのは、どうやら首飾りのようだ。  真紅の珠と、深緑の珠がついたシンプルなもの。 「これって……」 「ええ、マスターの瞳と、同じ色です」  しばしその珠の美しさに見とれていたサバトだが、すぐに我に帰る。 「あ、ありがとうです、ラン!」 「喜んでいただけたようで、なによりです」 「よろこばないはずありませんよ……こんな、こんな……」  少女のように目を輝かせるサバト。  そんな彼と、同じ格好をしていた彼女は、僅か踏みより、その手を重ね。 「……あ、」 「ん……」  瞳を閉じ、唇を…… 「お兄」 「っうわあ!?」 「きゃあ!?」  重ねようとした瞬間、横やりが入った。 「や、夜月……驚かさないでください」 「ん、ごめん。でも、みんなお兄をさがしてる。夜月はみんなをあつめてるから、はやくきがえてきてね」 「あ、は、はい……」  あまりに淡々とした口調に、こくこくと頷くサバト。  オーバーリアクションなその行動が、夜月の発言を聞き逃す。 「……夜月が……のは、お……しじゃなく……ゃまなんだけど、な」  振り返り、いつものペースで部屋を出ていく夜月。  ランも、しばしの後に歩き出す。 「……着替えはなるべきお早めに。少し、時間を稼いでおきます」 「あ、ありがとうございます」  なんとなく気まずくて、目を合わせられないサバト。  それでも、最後にはこう言った。 「……メリークリスマスです、ラン!」

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