5スレ>>839

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5スレ>>839」(2010/03/10 (水) 23:33:08) の最新版変更点

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じわじわと蝉が鳴く、暑い暑い、夏の或る日。 「…あち…」 俺はクーラーのない部屋で、一人ぼやいていた。 地球温暖化が騒がれる昨今だと言うのに、太陽は頑張り過ぎだと思う。もう少しソフトな光を提供出来ぬものだろうか。 地熱だったり、コンクリートからの反射熱だったりする事もあるけれど。 長めの道路など眺めた日には、蜃気楼が見えそうだ。そんな事を思いながら、傍にあったペットボトルを手に取った。 「…ぬっる!」 部屋に篭もる前に冷蔵庫から取り出したそれは、傍に置いた時にはまだキンキンに冷えていた筈である。 しかし、今やそれも窓から降り注ぐ熱ですっかり温くなっていた。 この部屋で篭もるのはあまりにも危険だ。日射病的な意味で。 ペットボトルを冷やしに行く序でに、コンビニに行ってアイスでも買って来よう。 そう思いながら立ち上がる、と、その時だ。 「おとーさんっ」 「…おとーさん」 ドアが開き、二つの影が飛び出して来る。 「ヒスミ、ウルハ。どうした?」 「あのね、あのね、お隣のシャナおねーちゃんからもらったのー」 「…向日葵?」 二人の持つ黄色い大輪は、一般からすれば小振りだが、それでも立派な向日葵だった。 因みに、お隣のシャナお姉ちゃんとは、文字通り、隣の家に住むトレーナーのシャナさんの事だ。 庭に向日葵の花壇があって、毎年この時期になると立派に花を咲かせるのだった。 「…うちは、飾り気がないからって」 「……あぁー…そう言う事」 「飾ろ! 飾ろ!」 「ああ、待って待って。確か物置に使ってない花瓶が…」 そんなやり取りをしながら部屋を出る。 温いペットボトルも忘れずに持って、ドアを閉めた。 俺・アカヤシ カナタは、文章で生計を立てる作家である。 先程の二人――グレイシアのヒスミとリーフィアのウルハからは「おとーさん」と呼ばれているが、実際は結婚暦などない独身だ。 当然ながら、この二人とは血の繋がりは無い。その理由は話すと長いので、また今度。 兎に角、この一つ屋根の下で暮らす血縁のない親子は、暑さにもめげず(一瞬めげかけたが)生活を続けているのだった。 「えーと…これだ」 リビングから直結している物置を探ると、大き目の花瓶を引っ張り出す。 緑の硝子で出来た花瓶は、少し埃を被っている。 少しは彩を添えたらどうだ、と言う友人の勧めで買ったものだが、特に飾るものもないので放置してしまっていた。 水洗いして埃を落とすと、緑色が透き通る。 模様が刻まれた陶器製の花瓶より、こう言うシンプルなものの方が何かと気が楽だ。何かとは言わないが。 「ヒスミ、ウルハ、向日葵かして」 「はいっ」 「…はい」 二人から手渡された向日葵を、纏めて花瓶に挿す。そして、中に水を注ぎ入れる。 これで準備は万端だ。後の問題は、置き場所だ。 「何処に置こうか?」 「玄関!」 ヒスミの間を置かない即答に、ウルハもこくこくと頷いて同意する。 玄関なら目に付くし、幸いシューズボックスの上には何も置いていない。確かに適所だ。 それを受けて玄関へ向かうと、シューズボックスの上に花瓶を置く。うん、なかなか映えるじゃないか。 「これで良し、と」 「きれー」 「…きれい」 「花瓶買っといて正解だったな。…っと、そうだ」 リビングに戻りながら、ふと席を立った本来の目的を思い出す。 ペットボトルは既に冷蔵庫に突っ込んであるから、後はコンビニでアイスを買うだけだ。 「二人とも、これからコンビニ行くけど、アイス要るか?」 「アイスっ!?」 「…アイス」 呼びかければ、二人は目を輝かせてこちらを見る。 「アイスっ、アイスっ。ヒスミねー、ハーゲンダッツのクッキー&クリーム!」 「子供がハーゲンダッツなんて食べるんじゃありません」 「む、むー!」 「ウルハは?」 「…ブラックサンダーアイス」 「はいよ。大人しく待ってろな」 「はぁーい」 財布をポケットにねじ込むと、二人に見送られながら家を出る。 まだ陽は高い。太陽が休息に入るのは、まだまだ先だろう。 「…暑いな」 俺は道中ずっと、それだけを呟いていた。 ―――――――――――― 見よ、この1時間クオリティ(^q^) 実はこれ続くんだってよ。連載と言うよりシリーズに近い。 最後にちょこっと登場人物。 ・アカヤシ カナタ 24歳。小説家で生計を立てる男。 結婚暦がないどころか彼女すらまともに居た事がない独り身。何故かヒスミとウルハと一緒に暮らしている。 ・ヒスミ(氷澄/グレイシア♀) 6歳。ウルハの双子の妹。 カナタとは血縁関係はないが、彼を「おとーさん」と呼び慕っている。非常にテンションが高い。 ・ウルハ(麗葉/リーフィア♀) 6歳。ヒスミの双子の姉。 同じくカナタと血縁関係はないが、彼を「おとーさん」と呼ぶ。妹とは対照的に大人しい。 あくまでヒスミとウルハはカナタの義理の娘であって、手持ちではありません。 カナタの手持ちは居る事には居るんですが、登場時期は未定。

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