5スレ>>848

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パープルには一人の幼馴染がいた。 否、彼女のことを一人と呼称するのも幼馴染と表現するのも些かの語弊があるが、 彼女は確かに人間でこそないものの殆ど人間と同じ姿をしてまた人間のように喜怒哀楽を持っていて、 またムラサキは自身が子供であった頃から彼女と親しかったので間違いであると言い切れない。 何故そんな意味深長な言い方をするのか。何故なら彼女は生きているわけではないからだ。 それは決して脳内幼馴染と呼ばれる寂しさと虚しさと狂気が溢れんばかりに滲み出ている存在ではなく。 彼女は俗に幽霊と呼ばれる萌えもんであり、生物とははっきりと断言できない存在だからだ。 分類は『マジカル萌えもん』。種族名は『ムウマージ』。 出会った時は進化前の『ムウマ』で、名前を持っていなかったので、パープルは彼女を『ユウ』と名付けた。 これは彼女が幽霊であることと幼いパープルが彼女を男だと思っていたことから由来している。 名付けてから数年後、男と勘違いしたまま悪戯をしたパープルがユウに半殺しにされたのは別の話である。 その話は後々に語るとして、今現在、パープルはユウに尋ねてみたいことがあった。 本当は昨日の晩にふと思いついたのだがその時には布団に潜っていたので翌朝にすることにした。 「なぁ、ユウ」 「なんだい、パープル」 それで、翌朝。青い空と白い雲。優しい陽光の三つが綺麗にマッチして映える、清々しい天気の日。 朝起きて、顔を洗い、寝癖を整えて、居間の方へと向かい、ユウが作った朝御飯の前に座り。 半分は忘却の彼方でも物を口に含んでいれば覚めていくもので味噌汁を飲み干したのとほぼ同時に思い出し、 幽霊らしく、居間の日陰になっている場所で、静かに広辞苑を読んでいたユウへと視線を向ける。 思えば今からする質問は何となく彼女に失礼な気がしてきたがそれでも好奇心に押し負け、思い切って聞いてみる。 「僕っ娘って、お前どう思う?」 「………藪から棒だね。それに気のせいか、その質問からは僕への悪意を感じるんだが」 「気のせい気のせい。ほら、お前も自分のこと『僕』って呼んでるし、どう思ってるのかな、と」 「なんでそうなるんだ」 完全に新聞紙から目を離して「やれやれ」とでも言いたげに息を吐く、ユウ。 少年のような顔立ち。女性的な膨らみは僅かにあるが、それを大きめなマントで覆い隠している。 加えて一人称は『僕』。着飾ることに全く興味を持たない。初見なら誰だろうとユウを男の子だと思うだろう。 そんな彼女が巷で流行りらしい『僕っ娘』なるものにどのような感想を抱いているのか。 馬鹿呼ばわりされた上に現在進行形で冷たい眼差しを浴びせられているが、 それでもやはり気になるものは気になるので、諦めることも、辟易することもなく、問い質してみる。 「答えてくれよ。僕っ娘」 「どこでそんな言葉を知ったのだか。………どうでもいい。それが答えだ」 「どうでもいいって、適当だなぁ」 「適当も何も本当にそう思っているからね。そういう君はどう思っているんだい?」 「え?」 逆に問われてパープルは詰まる。 パープルにとって僕っ娘とは今ハマってるとあるゲームの攻略サイトを眺めていた際に偶然見た単語であって、 知った時に「そういえばユウの一人称も僕だな」と何となく考えてたくらいしか思い入れが無い。 要するにパープルにとっても『僕っ娘』とは、どうでもいい単語であるのだ。 欲を言えば幼馴染をからかえる単語になるかもしれないと思ったがそれ以上は特に何も思わなかった。 「いや、まぁ、俺も『ふーん、そんなのあるんだ』な程度だけどさ」 「だろう?そんなものはただ珍しいだけ。だから実際にその程度で当たり前なんだよ」 「珍しい、ねぇ」 「そう。中身がなんであれ、希少であれば何にでも人は寄りつくものだからね」 「そうなのか?」 「少なくとも僕はそう思っている。だから『僕っ娘』なんてのも今は珍しいだけで、すぐに飽きられるさ」 納得したがつまらなそうに「ふぅん」と。今度はパープルが鼻を鳴らしてから息を吐く。 少し粘着質になって聞いてみた割りに返ってきた淡白でつまらない答えを不満に思っているのだろう。 それからパープルは何も言わず食事を進める為の箸を動かし続ける。 炊きたての白御飯(卵ふりかけ付き)に手を掛けようとしたその時ふとある単語が頭を横切った。 これも昨日の晩、偶然知り、何となく興味を持って、ユウの反応を見ようと思っていた単語である。 「なぁ、ユウ」 「まだ何かあるのかい?」 「今度は違う言葉だけど………ヤンデレって、お前どう思う?」 「ヤンデレ?」 「これは知らないのか?えーっと、確か」 知らない、と言われるのが予想外だったのか驚きで一瞬の間だけ間の抜けた顔をするパープル。 それから必死に頭の中からヤンデレという単語の意味を思い出して足りない部分は自分なりの解釈で補う。 ヤンデレとは、精神的に病んだ状態にありつつ他のキャラに愛情を表現する様子をいう(『Wikipedia)』より)。 その上に何となく興味を持って知った『監禁』だの『SATSUGAI』だのと大雑把に付け足すと、 ユウは「あー」と一旦唸り、何とも複雑で何を思ったのか分かり辛い表情を浮かべ、口を開いた。 「つまりは性的倒錯や躁鬱状態に近いもの?」 「間違いじゃないな、多分」 「………そんな危ないものに対して君は僕にどんなリアクションを求めていたんだ」 「ぃゃー、ほら、ユウも一応は幽霊だし。何か近いものを感じるのじゃないかと」 特に理由が思い至らず大雑把に言ったが、案外間違ってはいないような気がした。 幽霊とは死んだものが未練や遺恨を引き摺って魂のみがこの世界に現れた存在のことを指している。 狂気にも似た感情を原動力としているだろう彼ら。それはヤンデレという名の狂人と何か変わりがあるのだろうか。 パープルは期待交じりにユウを眺めていると、再び「はぁー」と今度は大きく間延びした溜息を吐く。 それから少し、怒っているかのような口調で話し始める。 「あのね、幽霊全部が犯罪者一歩手前ってわけじゃない。 確かに幽霊萌えもんは生前の未練や遺恨が凝り固まって出来ている奴が殆どさ。 大抵の幽霊はちゃんとした理性を持っていて人間と同じように自分の欲と折り合いをつけることができる」 「あー、悪かった悪かった。聞いた俺が馬鹿だった。忘れてくれ」 「生前に余程酷い目に遭ったとか、死亡後に自分の欲に触れられるとか、余程強いストレスを与えられるとか。 そんな目に遭わない限りは僕達幽霊萌えもんは暴走なんかしたりしない。分かった?」 「うん、分かった」 「まったく、何でそんなものが流行るかな」 それも先にユウが言った人間の好奇心の為ではないか、とパープルは口に出し掛けたが止めた。 流行らせたのは自分ではないが飛び火という形で説教をされそうな気がしたからだ。 だから黙って、時折、不機嫌そうに唇を尖らせながら広辞苑を再読し始めたユウを眺めながら朝食を続ける。 味噌汁を飲み干し、白御飯を一粒も残さず食べて、僅かに残った沢庵へと箸を向ける。 しかしまた途中でふと何かが脳を掠めた。それは流行りの単語などではなく単なる疑惑であった。 「(ユウは何で出来ているんだろう)」 そういえば知り合ってから既に十年以上は経っているのだが、パープルは生前のユウを知らなかった。 何処で何をしていたのか。本当の名前は何なのか。何で幽霊なんかになったのか。 気づけば、当たり前のように『ユウ』と呼び、当たり前のように遊んでいて、当たり前のように同棲していた。 本当は彼女も腹の奥には真っ黒な感情があってその存在の為に今もこの世界にいるのではないか。 それはどうなんだろう、とパープルは自問する。幼馴染として、ユウを成仏させてあげるべきではないだろうか。 ユウとの付き合い方も改めなければいけないのかもしれない。そう考えると、何だか憂鬱になってきた。
パープルには幼馴染の萌えもんの少女がいた。 否、少女のことを『少女』と呼称するのも『幼馴染』と表現するのは適切ではないのだが、 確かに『少女』は人間でこそないものの姿形は女の子そのものでありまた人間と同等の知性と感情を持っていて、 加えてパープルが小さな子供であった頃から親しかったので『幼馴染』という表現も間違いでないのだ。 何故そんな曖昧な言い方をするのか。何故なら彼女は実体と言うものを持っていない。 それは決して脳内幼馴染などと呼ばれる寂しさと虚しさと狂気が滲み出て生まれた存在などでは決してなく、 少女は俗に幽霊タイプと呼ばれる萌えもんであって生き物であるとは断言できない存在だからだ。 分類は『マジカル萌えもん』。種族名は『ムウマージ』。 出会った時は進化前の『ムウマ』で、名前を持っていなかったので、パープルは彼女を『ユウ』と名付けた。 これは単純に少女が幽霊であることと幼かったパープルが少女を男の子だと勘違いしていたことから由来している。 名付けてから数年後、誤った認識のままちょっとした悪戯をしたパープルがユウに半殺しにされたのは別の話である。 その話は後々に語られるとして今現在パープルは二つほどユウに尋ねてみたいことがあった。 本当は昨日の晩に思いついたのだがその時には布団に潜っていたので翌朝に尋ねてみることにした。 「なぁ、ユウ」 「なんだい、パープル」 そして、翌朝。青い空と白い雲。優しい陽光の三つが綺麗にマッチして映える、清々しい天気の日。 朝起きて、顔を洗い、寝癖を整えて、居間の方へと向かい、ユウが作った朝御飯の前に座り。 寝惚けた頭の中ではほぼ全ての記憶が霧に隠れていたのだが熱い味噌汁を飲み干したとほぼ同時に思い出し、 幽霊らしく居間の日陰になっている場所で広辞苑を読んでいたユウへ視線を向ける。 思えばその質問は非常に馬鹿らしくユウに失礼な気がしてきたがそれでも好奇心に押し負けて、思い切って聞いてみる。 「お前、『僕っ娘』ってどう思ってる?」 「………藪から棒にだね。僕への嫌がらせなような気もするんだけど気のせいか?」 「気のせい気のせい。ほらお前も自分のこと『僕』って呼んでるしどう思ってるのかなと」 「何がどうなってそうなるんだ」 完全に広辞苑から目を離し「君は実に馬鹿だな」と呟いてから息を吐くユウ。 少年のような顔立ち。女性的な膨らみは僅かにあるが、それを大きめなマントで覆い隠している。 加えて一人称は『僕』。着飾ることに全く興味を持たない。初見なら誰でもユウを男の子だと思い込むだろう。 そんな彼女が巷で流行りらしい『僕っ娘』なるものにどのような感想を抱いているのか。 馬鹿呼ばわりされた上に現在進行形で冷たい眼差しを浴びせられているが、 それでもやはり気になるものは気になるので諦めることも辟易することもなく問い質してみる。 「答えてくれよ。僕っ娘」 「どこでそんな言葉を知ったのだか。………どうでもいい。それが答えだ」 「どうでもいいって適当だなぁ」 「適当も何も本当にそう思っているからね。そういう君はどう思っているんだい?」 「え?」 逆に問われてパープルは詰まる。 パープルにとって僕っ娘とは今熱中しているゲームの攻略サイトを眺めていた際に偶然見た単語であって、 そういう言葉を知った時に「そういえばユウの一人称も僕だな」と何となく考えてたくらいしか思い入れが無い。 要するにパープルにとっても『僕っ娘』とは、どうでもいい単語なのだ。 もう少し言えば幼馴染をからかえるネタになるかもしれないとは思ったがそれ以上の感想は特に無かった。 「いやまぁ俺も『そんなのあるんだ』な程度だけどさ」 「だろう?そんなものはただ珍しいだけ。だからその程度で当たり前なんだよ」 「珍しい、ねぇ」 「そう。中身がなんであれ珍しければ何にでも人は寄りつくからね」 「そうなのか?」 「少なくとも僕はそう思っている。だから『僕っ娘』なんてのもその内に何でもなくなるさ」 今度はパープルが息を吐く。 少し粘着質になって聞いてみた割りに返ってきた面白みの無い答えを不満に思っているのだろう。 それからパープルは何も言わず食事を進める為の箸を動かし続ける。 しかし炊きたての白御飯(卵ふりかけ付き)に手を掛けようとしたその時、ふとある単語が頭を横切った。 それも昨日の晩に偶然知って興味を持ちユウの反応を見ようと思っていた単語である。 「なぁ、ユウ」 「まだ何かあるのかい?」 「今度は違う言葉だけどさ………ヤンデレって、お前どう思う?」 「ヤンデレ?」 「これは知らないのか?えーっと、確か」 知らない、と言われるのが予想外だったのか驚きで一瞬の間だけ間の抜けた顔をするパープル。 それから必死に頭の中からヤンデレという単語の意味を思い出して足りない部分は自分なりの解釈で補う。 ヤンデレとは精神的に病んだ状態にありつつ他のキャラに愛情を表現する様子をいう(『Wikipedia)』より)。 その上に何となく興味を持って知った『監禁』だの『SATSUGAI』だのと大雑把に付け足すと、 ユウは「あー」と一旦唸り何とも複雑で何を思ったのか分かり辛い表情を浮かべてから口を開いた。 「つまりは性的倒錯や躁鬱状態に近いもの?」 「間違いじゃないな、多分」 「………そんな危ないものに対して君は僕にどんなリアクションを求めていたんだ」 「ぃゃーほらユウは一応は幽霊だし。ヤンデレと近い存在じゃないのかと」 特に理由が思い至らず大雑把に言ったが案外間違ってはいないような気がした。 幽霊とは死んだものが未練や遺恨を引き摺って魂のみがこの世界に現れた存在のことを指している。 狂気にも似た感情を原動力としているだろう彼ら。それはヤンデレという名の狂人と何か変わりがあるのだろうか。 パープルは期待交じりにユウを眺めていると「はぁー」と今度は大きく間延びした溜息を吐く。 「あのねぇ、僕達幽霊萌えもんは皆が皆、犯罪者一歩手前ってわけじゃないんだよ。 確かに幽霊萌えもんは生前の未練や遺恨が凝り固まって出来ている奴が殆どだけどさ。 でも大抵の幽霊はちゃんとした理性を持っていて自分の欲と折り合いをつけることができる。人間と同じさ」 怒っているかのような口調で始めるユウに、悪い気がしてきて少し後悔し始めるパープル。 「生前余程酷い目に遭ったとか、強いストレスを与えられるとか。そんな目に遭わない限り暴走しない。分かった?」 「うん分かった」 「まったく何でそんなものが流行るかな」 それも先にユウが言った人間の珍しいもの好きの為ではないかとパープルは口に出し掛けたが止めた。 流行らせたのは自分でこそないが飛び火という形で説教をされそうな気がしたからだ。 だから黙って時折、機嫌を損ねたように唇を尖らせながら広辞苑を再読し始めたユウを眺めながら朝食を続ける。 飲み掛けた味噌汁を飲み干し、白御飯を一粒も残さず食べて、僅かに残った沢庵を箸で挟む。 しかし途中で再び何かが脳を掠めた。それは流行りの単語などではなく単なる疑惑であるのだが。 「(ユウは何で出来ているんだろう)」 知り合ってから既に十年以上は経っているのだがパープルは生前のユウを知らなかった。 何処で何をしていたのか。本当の名前は何なのか。何で幽霊なんかになったのか。 気づけば当たり前のように『ユウ』と呼び、当たり前のように遊んでいて、当たり前のよう同棲していた。 本当はユウも生前に酷い目に遭いその時の恨みつらみが彼女を現世に留めているのではないか。 それはどうなんだろうとパープルは自問する。幼馴染としてユウを成仏させてあげるべきではないだろうか。 ユウとの付き合い方も改めなければいけないのかもしれない。そう考えると、何だか憂鬱になってきた。

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