5スレ>>854-1

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「よし、行くぜ! ピカチュウ!」 「はい、マスター!」  一人の少年が手持ちとなったピカチュウと駆けていく。  たった今、パートナーとなったばかりの2人だが、その息の合い方は見事なもので、きっと将来はいいトレーナーとポケモンになるんだろう。  彼らは大きな夢をもってここ、マサラタウンを飛び出していった。 「・・・オレも昔はああだったのかね」  彼らを眺めながらそう一人ごちたオレはまた丘の上に寝転んだ。  あれは確か近所の・・・ヒトシ・・・だったか?  あいつもどうやらポケモンマスター目指して、この街を旅立ったらしい。  オーキドのじじぃ、相変わらずガキにめんどくせぇ仕事おしつけてんのか・・・。  まぁ、ガキどもにとっちゃようやく手に入れたポケモンと一緒に旅ができるんだ。案外楽しんでやってるのかもな。  かくいうオレもあのころは・・・ 「・・・どうだったかな」  オレもあいつら同様トレーナーやってた時期があった。が、あまりその頃の記憶はない。  よっぽどいい思い出がなかったんだろうな。 「・・・あれからもう7年か」  よく覚えてはいないが、オレがトレーナーをやめたのはだいたい7年前。そりゃ記憶も薄れるか。  やめた理由は・・・いや、考えるのはよそう。まぁ、いろいろあるだろ? ポケモンマスターの壁の高さにくじけたり、なかなか図鑑が完成できずにあきらめたり、大事なポケモンが死んだり、はたまたただ単純に飽きたり。  理由なんてどうでもいい。ただ一つ確かなことは、今さらまたポケモンを手にしようなんざ思わないってことなんだから。 「・・・・・・あちぃ」  季節は夏。うだるような暑さの日々の中で、止まっていた時間が少しずつ動き出そうとしていた。 『萌えっ娘もんすたぁ -Wishing stars-』 「よぉ、サイカ。やっぱりここだったか」  不意に名前を呼ばれ、顔は上げず目だけを声の主に向ける。 「アマネか・・・」  まぁ、別に顔を見なくても声だけでわかるんだが。  声の主はオレの幼馴染、アマネだった。 「相変わらずダレてんのか?」 「ここは風のとおりがいいからな」 「なんだそりゃ?」 「ほっとけ」  体を起こし、そうやってあいさつ代わりに軽口を交し合う。  こんな風に軽口を言えるのも今ではこいつだけになっちまったなぁ。 「で、そんなこと言うためだけにここに来たわけじゃないんだろ?」  こいつが軽口を叩く場合は、なにか言いにくいことを隠してることが多い。さすがに幼馴染みだけあってそういうことはすぐわかる。 「ん、あぁ。なんつーか、さ」  苦笑いをしながら言葉を濁す。よっぽど言いにくい事なのか?  そういうときはこっちから水を向けるに限る。オレって友達思いだなぁ。 「金なら貸さんぞ」 「なんでそうなるんだよ・・・」  ん? 違ったのか。いや、実際はただの冗談だ。  こうでもしないといつまでも言い出しそうにないからな。 「ったく・・・今日はおまえを誘いに来たんだよ」 「誘いだぁ?」  なんだ合コンでもすんのか? 悪いがオレは行かんぞ。  そんなことを考えてるとアマネは不意に真面目な顔になって、 「なぁ、おまえ・・・もう一度ポケモ・・・」 「断る」  言ってきたが、すべて言い終わる前に遮る。  正直予想はしてたんだがやっぱりそういうことか。 「お前去年もそれ聞いただろ」 「だな」 「で、オレは去年も断ったろ」 「・・・だな」  こいつは去年もこの時期にポケモンをまた持ってみないかと誘ってきた。  というのも、オーキド博士がこの夏休みの期間を利用して、10歳から18歳までの希望者にポケモンを与え、旅をさせるって企画をしてるからだ。  例によって図鑑の完成なんてめんどくせぇもんを押し付けるんだが、実質無償でポケモンをもらえるってことで希望者は多い。  そういうこともあって、アマネは去年もオレを誘ったってわけだ。 「けどオレらももう18だろ? 今年でもらえる最後のチャンスじゃん」  そう、オレたちは今年で18になる。オーキド博士からポケモンをもらえる最後のチャンスってわけだ。  去年は割とあっさり引き下がったが、今年は最後ということもあって食い下がる気のようだ。 「関係ねぇよ。だいいちオレはもうポケモンを持つ気はねぇよ。最後だろうが最後じゃなかろうが関係ない。  だいたい18にもなってポケモンもねぇだろ? ああいうのはガキどもに任せとけばいいんだよ」  10やそこらのガキに交じって必死にポケモンに指示を出す姿なんざ考えたくもないんだが。  しかし、なおもアマネは食い下がる。 「んなこたねぇだろ? いい年こいた大人だってバトルするし、オレたちなんてまだ若い方だって!  それに昔約束しただろ? 一緒にポケモンリーグ目指そうって」 「くどいぞ。持つ気がないっつったらないんだよ。  つーかそんな大昔のこと持ち出すなよ・・・」  たしかに大昔も大昔そんな約束を交わした覚えがある。オレとアマネと「あいつ」と。  けどそれもガキの頃の話だろ? 今さら有効期限も過ぎてるだろうに。  オレは話も終わりとばかりに再び寝転んで目を閉じる。 「おまえ、やっぱりまだマドカのこと・・・」  その言葉にガバッと身を起こす。 「「あいつ」の名前を出すんじゃねぇ!」  久々にこんな大声で怒鳴った気がする。 「わりぃ・・・」  途端に声に影を落とすアマネ。  「あいつ」は、マドカはオレとアマネのもう一人の幼馴染。  ともに約束を交わし合った仲。  そして、それと同時にオレにとってはもっとも苦い記憶だった。 「・・・わりぃ。けどよ、そんだけ怒るってことはやっぱり「あいつ」のことで引っかかってんだろ?」  アマネは気まずそうに問いかける。  気まずいのはオレもいっしょだ。バカヤロー。 「関係、ねぇよ。ただあんまり昔のこと持ち出すからついカッとなっちまっただけだ。  その・・・悪かったな」  嘘だ。「あいつ」のことが引っかからないわけはない。  8年前オレたちがはじめてポケモンを持ったとき、オレとアマネと「あいつ」、マドカと3人で交わした約束。3人でいっしょにポケモンマスターを目指そう。  そんな無垢な約束だったが、それでもオレには大切な約束だった。それは今でも変わらない。 「ん、まぁいいさ。・・・やっぱりもうトレーナーになる気はないんだな?」 「・・・あぁ」  7年前、「あいつ」は事故で死んじまった。オレたちの約束も宙ぶらりんのままに。  それからだった。オレたちがトレーナーをやめちまったのは。  その頃のことはほとんど記憶にない。どんな事故だったのかさえ、あいつの死に顔がどんなだったかさえ。たぶんよっぽどショックだったんだと思う。だから思い出せないというよりかは思い出したくなかったのかもしれない。  好きだったんだろうな、「あいつ」のこと。幼いながらに。  ポケモンに触れていると「あいつ」を思い出しそうで・・・。 「そうか・・・。本人にその気がないならしょうがないか」 「・・・わりぃな」 「ははっ、気にすんなよ。お前がそんなこと言うと雨でも降りそうで困る」 「なるほどいい度胸だ。そこになおれ」  さっきまでの重い雰囲気をかき消すように笑いあう。  やっぱりこいつはいい奴だ。 「それはそうと、オレはオレで明日ここを出るぜ」  と思ってたら、いきなり何を言い出すんだこいつは。 「実はさ、オレもうもらってきたんだよ。ポケモン」 「は・・・?」  ちゃっかりしてやがる。何気にもうもらってたのかよ、こいつ。  呆れてるオレをよそにアマネはモンスターボールを取り出し、放る。  一瞬光った後にボールから現れたのはゼニガメだった。 「オレの新しい手持ち。ゼニガメのラピスだ。ほら、あいさつしな」 「はじめまして、サイカさん。ラピスです。よろしくお願いします」 「あ、あぁ、よろしく・・・」  ラピスと名乗ったゼニガメがちょこんと頭を下げ、あいさつをしたのでオレもそれに応える。  いまいち状況に押されてるオレをしり目に二人(一人と一匹?)はじゃれ始める。 「よーし、えらいぞ! ラピス!」 「はい! ちゃんと言えました! エヘヘ・・・」  なんだこののどかな空間は・・・。 「どーよ、可愛いだろ? しかもいい子! もう目に入れても痛くない!」 「マ、マスター。恥ずかしいです・・・」  この親バカめ・・・。こういうとこはオーキドのじじぃにそっくりだな。血は争えんということか。  ん? そういや・・・。 「お前、はじめてポケモン持ったときもゼニガメじゃなかったか?」  そう、オレたちの最初のポケモンはオーキド博士から同時にもらったものだった。  アマネはゼニガメ、「あいつ」はフシギダネ、で、オレは・・・ 「よく覚えてたな。そういうお前はヒトカゲだったよな」  そう、オレはヒトカゲを選んだんだった。  なんとなくでしか覚えてないけど、当時は本当にうれしかったんだよな。  アマネや「あいつ」と何度もバトルしたっけか。 「懐かしいな・・・」  不意に口をついて出た言葉だったが、それは紛れもなくオレの本心だったのかもしれない。 「お、やっぱり持つ気になったか!?」 「その気はねぇって言ってるだろ」  本心であることは間違いないだろうが、それでも今のオレにはもう一度、なんて気はさらさらなかった。  それよりも何のことかわかってないラピスが混乱してるが、いいのかお前? 「ハハ・・・やっぱそうか。そんなわけで今日はしばらくのお別れをいうつもりでもあったんだよ」 「そうか・・・」  お前は・・・前に進めたんだな・・・。 「まぁ、お前ならけっこういいとこまでいくんじゃないか? 親友として応援してやるよ」 「おぅ、任しとけ! 今度はポケモンリーグまで上り詰めるぜ!」  こいつならホントにやりかねん。やりすぎて相手のガキを泣かせたりしねぇだろうな・・・。 「それじゃ、明日の準備があるからこの辺でお暇するわ。明日の出発には必ず来いよ」 「あぁ、覚えてたらな」 「てめぇ!」  そんなバカなやり取りをした後、アマネとラピスは帰って行った。  ポケモン・・・か。  ・・・何を感傷に浸ってんだ。バカバカしい。  あいつはあいつ、オレはオレ、だろう。  オレは・・・もういいんだ。  少し暗くなり始めた空に舌打ちして、オレも家路につくことにした。
「よし、行くぜ! ピカチュウ!」 「はい、マスター!」  一人の少年が手持ちとなったピカチュウと駆けていく。  たった今、パートナーとなったばかりの2人だが、その息の合い方は見事なもので、きっと将来はいいトレーナーとポケモンになるんだろう。  彼らは大きな夢をもってここ、マサラタウンを飛び出していった。 「・・・オレも昔はああだったのかね」  彼らを眺めながらそう一人ごちたオレはまた丘の上に寝転んだ。  あれは確か近所の・・・ヒトシ・・・だったか?  あいつもどうやらポケモンマスター目指して、この街を旅立ったらしい。  オーキドのじじぃ、相変わらずガキにめんどくせぇ仕事おしつけてんのか・・・。  まぁ、ガキどもにとっちゃようやく手に入れたポケモンと一緒に旅ができるんだ。案外楽しんでやってるのかもな。  かくいうオレもあのころは・・・ 「・・・どうだったかな」  オレもあいつら同様トレーナーやってた時期があった。が、あまりその頃の記憶はない。  よっぽどいい思い出がなかったんだろうな。 「・・・あれからもう7年か」  よく覚えてはいないが、オレがトレーナーをやめたのはだいたい7年前。そりゃ記憶も薄れるか。  やめた理由は・・・いや、考えるのはよそう。まぁ、いろいろあるだろ? ポケモンマスターの壁の高さにくじけたり、なかなか図鑑が完成できずにあきらめたり、大事なポケモンが死んだり、はたまたただ単純に飽きたり。  理由なんてどうでもいい。ただ一つ確かなことは、今さらまたポケモンを手にしようなんざ思わないってことなんだから。 「・・・・・・あちぃ」  季節は夏。うだるような暑さの日々の中で、止まっていた時間が少しずつ動き出そうとしていた。 『萌えっ娘もんすたぁ -Wishing stars-』 「よぉ、サイカ。やっぱりここだったか」  不意に名前を呼ばれ、顔は上げず目だけを声の主に向ける。 「アマネか・・・」  まぁ、別に顔を見なくても声だけでわかるんだが。  声の主はオレの幼馴染、アマネだった。 「相変わらずダレてんのか?」 「ここは風のとおりがいいからな」 「なんだそりゃ?」 「ほっとけ」  体を起こし、そうやってあいさつ代わりに軽口を交し合う。  こんな風に軽口を言えるのも今ではこいつだけになっちまったなぁ。 「で、そんなこと言うためだけにここに来たわけじゃないんだろ?」  こいつが軽口を叩く場合は、なにか言いにくいことを隠してることが多い。さすがに幼馴染みだけあってそういうことはすぐわかる。 「ん、あぁ。なんつーか、さ」  苦笑いをしながら言葉を濁す。よっぽど言いにくい事なのか?  そういうときはこっちから水を向けるに限る。オレって友達思いだなぁ。 「金なら貸さんぞ」 「なんでそうなるんだよ・・・」  ん? 違ったのか。いや、実際はただの冗談だ。  こうでもしないといつまでも言い出しそうにないからな。 「ったく・・・今日はおまえを誘いに来たんだよ」 「誘いだぁ?」  なんだ合コンでもすんのか? 悪いがオレは行かんぞ。  そんなことを考えてるとアマネは不意に真面目な顔になって、 「なぁ、おまえ・・・もう一度ポケモ・・・」 「断る」  言ってきたが、すべて言い終わる前に遮る。  正直予想はしてたんだがやっぱりそういうことか。 「お前去年もそれ聞いただろ」 「だな」 「で、オレは去年も断ったろ」 「・・・だな」  こいつは去年もこの時期にポケモンをまた持ってみないかと誘ってきた。  というのも、オーキド博士がこの夏休みの期間を利用して、10歳から18歳までの希望者にポケモンを与え、旅をさせるって企画をしてるからだ。  例によって図鑑の完成なんてめんどくせぇもんを押し付けるんだが、実質無償でポケモンをもらえるってことで希望者は多い。  そういうこともあって、アマネは去年もオレを誘ったってわけだ。 「けどオレらももう18だろ? 今年でもらえる最後のチャンスじゃん」  そう、オレたちは今年で18になる。オーキド博士からポケモンをもらえる最後のチャンスってわけだ。  去年は割とあっさり引き下がったが、今年は最後ということもあって食い下がる気のようだ。 「関係ねぇよ。だいいちオレはもうポケモンを持つ気はねぇよ。最後だろうが最後じゃなかろうが関係ない。  だいたい18にもなってポケモンもねぇだろ? ああいうのはガキどもに任せとけばいいんだよ」  10やそこらのガキに交じって必死にポケモンに指示を出す姿なんざ考えたくもないんだが。  しかし、なおもアマネは食い下がる。 「んなこたねぇだろ? いい年こいた大人だってバトルするし、オレたちなんてまだ若い方だって!  それに昔約束しただろ? 一緒にポケモンリーグ目指そうって」 「くどいぞ。持つ気がないっつったらないんだよ。  つーかそんな大昔のこと持ち出すなよ・・・」  たしかに大昔も大昔そんな約束を交わした覚えがある。オレとアマネと「あいつ」と。  けどそれもガキの頃の話だろ? 今さら有効期限も過ぎてるだろうに。  オレは話も終わりとばかりに再び寝転んで目を閉じる。 「おまえ、やっぱりまだマドカのこと・・・」  その言葉にガバッと身を起こす。 「「あいつ」の名前を出すんじゃねぇ!」  久々にこんな大声で怒鳴った気がする。 「わりぃ・・・」  途端に声に影を落とすアマネ。  「あいつ」は、マドカはオレとアマネのもう一人の幼馴染。  ともに約束を交わし合った仲。  そして、それと同時にオレにとってはもっとも苦い記憶だった。 「・・・わりぃ。けどよ、そんだけ怒るってことはやっぱり「あいつ」のことで引っかかってんだろ?」  アマネは気まずそうに問いかける。  気まずいのはオレもいっしょだ。バカヤロー。 「関係、ねぇよ。ただあんまり昔のこと持ち出すからついカッとなっちまっただけだ。  その・・・悪かったな」  嘘だ。「あいつ」のことが引っかからないわけはない。  8年前オレたちがはじめてポケモンを持ったとき、オレとアマネと「あいつ」、マドカと3人で交わした約束。3人でいっしょにポケモンマスターを目指そう。  そんな無垢な約束だったが、それでもオレには大切な約束だった。それは今でも変わらない。 「ん、まぁいいさ。・・・やっぱりもうトレーナーになる気はないんだな?」 「・・・あぁ」  7年前、「あいつ」は事故で死んじまった。オレたちの約束も宙ぶらりんのままに。  それからだった。オレたちがトレーナーをやめちまったのは。  その頃のことはほとんど記憶にない。どんな事故だったのかさえ、あいつの死に顔がどんなだったかさえ。たぶんよっぽどショックだったんだと思う。だから思い出せないというよりかは思い出したくなかったのかもしれない。  好きだったんだろうな、「あいつ」のこと。幼いながらに。  ポケモンに触れていると「あいつ」を思い出しそうで・・・。 「そうか・・・。本人にその気がないならしょうがないか」 「・・・わりぃな」 「ははっ、気にすんなよ。お前がそんなこと言うと雨でも降りそうで困る」 「なるほどいい度胸だ。そこになおれ」  さっきまでの重い雰囲気をかき消すように笑いあう。  やっぱりこいつはいい奴だ。 「それはそうと、オレはオレで明日ここを出るぜ」  と思ってたら、いきなり何を言い出すんだこいつは。 「実はさ、オレもうもらってきたんだよ。ポケモン」 「は・・・?」  ちゃっかりしてやがる。何気にもうもらってたのかよ、こいつ。  呆れてるオレをよそにアマネはモンスターボールを取り出し、放る。  一瞬光った後にボールから現れたのはゼニガメだった。 「オレの新しい手持ち。ゼニガメのラピスだ。ほら、あいさつしな」 「はじめまして、サイカさん。ラピスです。よろしくお願いします」 「あ、あぁ、よろしく・・・」  ラピスと名乗ったゼニガメがちょこんと頭を下げ、あいさつをしたのでオレもそれに応える。  いまいち状況に押されてるオレをしり目に二人(一人と一匹?)はじゃれ始める。 「よーし、えらいぞ! ラピス!」 「はい! ちゃんと言えました! エヘヘ・・・」  なんだこののどかな空間は・・・。 「どーよ、可愛いだろ? しかもいい子! もう目に入れても痛くない!」 「マ、マスター。恥ずかしいです・・・」  この親バカめ・・・。こういうとこはオーキドのじじぃにそっくりだな。血は争えんということか。  ん? そういや・・・。 「お前、はじめてポケモン持ったときもゼニガメじゃなかったか?」  そう、オレたちの最初のポケモンはオーキド博士から同時にもらったものだった。  アマネはゼニガメ、「あいつ」はフシギダネ、で、オレは・・・ 「よく覚えてたな。そういうお前はヒトカゲだったよな」  そう、オレはヒトカゲを選んだんだった。  なんとなくでしか覚えてないけど、当時は本当にうれしかったんだよな。  アマネや「あいつ」と何度もバトルしたっけか。 「懐かしいな・・・」  不意に口をついて出た言葉だったが、それは紛れもなくオレの本心だったのかもしれない。 「お、やっぱり持つ気になったか!?」 「その気はねぇって言ってるだろ」  本心であることは間違いないだろうが、それでも今のオレにはもう一度、なんて気はさらさらなかった。  それよりも何のことかわかってないラピスが混乱してるが、いいのかお前? 「ハハ・・・やっぱそうか。そんなわけで今日はしばらくのお別れをいうつもりでもあったんだよ」 「そうか・・・」  お前は・・・前に進めたんだな・・・。 「まぁ、お前ならけっこういいとこまでいくんじゃないか? 親友として応援してやるよ」 「おぅ、任しとけ! 今度はポケモンリーグまで上り詰めるぜ!」  こいつならホントにやりかねん。やりすぎて相手のガキを泣かせたりしねぇだろうな・・・。 「それじゃ、明日の準備があるからこの辺でお暇するわ。明日の出発には必ず来いよ」 「あぁ、覚えてたらな」 「てめぇ!」  そんなバカなやり取りをした後、アマネとラピスは帰って行った。  ポケモン・・・か。  ・・・何を感傷に浸ってんだ。バカバカしい。  あいつはあいつ、オレはオレ、だろう。  オレは・・・もういいんだ。  少し暗くなり始めた空に舌打ちして、オレも家路につくことにした。

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