5スレ>>862-1

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 アサギを仲間にしたオレとマドカは、リーグの近くまで行くために再び22番道路を歩いてるわけだが・・・。 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・(ニコニコ)」 「・・・・・・・・・・・・」  無言。とにかく無言なのだ。それでもなぜかマドカだけは笑顔だが。この空気の中よくニコニコできるな、こいつ。  会話のきっかけがないとか、話すことがないとかそういうわけじゃない。  単純に「会話が成り立たない」のである。  たとえばさっきも・・・。 「なぁ、アサギ」 「・・・・・・何よ」  すげぇジト目。オレ、なんかしたか?  ひとまず気になってたことを聞いてみることにする。 「さっきマドカと戦闘になったとき、攻撃当たってなかっただろ? さっきはああ言ったけど本当はどっか悪いんじゃないのか?」  攻撃がかすった程度なのにいきなり倒れられたら普通そう思うだろ? 「・・・別にどこも悪くないわよ」  しかし返ってきた答えはいたって簡潔。というかむしろ突っぱねてるという感じに近い。 「じゃあなんでいきなり倒れたんだ?」  当然の疑問なのだが、その言葉にアサギの体がピクッと反応する。  あ、これはマズい。 「うるさいわね! 別に何ともないって言ってるでしょ! 女の子のことをいちいち詮索するんじゃないわよ!!  ほんと最低! なんだってこんな奴に捕まっちゃったのかしら・・・」  ・・・やっぱりな。顔を真っ赤にしてまくしたてられた。そんな怒らせるようなこと言ったか? にしてもひどい言われようだな、おい。 「別におまえが嫌なら逃げていいんだぞ。オレだってむりやり連れて行くのは嫌だしな」  言ってから気づいた。アサギの顔がさらに赤くなってく。学習しねぇな、オレ。 「なっ・・・! あんたさっき言ったこともう忘れたの? 捕まえたんならちゃんと責任持ちなさいよ!」 「いや、だからな・・・」 「もー、二人とも仲よくしなきゃダメですよー」  マドカの仲裁の声がむなしく響く。というか仲よくって問題じゃないだろ、これは。  はぁ・・・ったく、どうしろってんだよ・・・。 『第二話 トレーナー復帰戦!』  とまぁ、そんなやりとりがあったわけだ。  それからはとにかく無言。しゃべればまた口論になりそうな気がするし。  オレ自身こういう空気が苦手なわけではないが、いかんせん手持ちにいきなり拒絶されてるっていう状況が何とも・・・。  マドカが笑ってるおかげでなんとか場の空気がもってる感じだが、おまえの神経はどうなってるんだマドカよ。  誰でもいい。せめてこの状況を変えてくれれば・・・。 「おーい、サイカー!」  オレの祈りが届いたのか道の向こうから名前を呼ぶ声が聞こえる。向こう側から走ってくるその姿は・・・。 「アマネ・・・」 「やっぱりサイカだったか。一日ぶりだな!」  なにが一日ぶりだ、なにが。  案の定向こうから走ってきたのはアマネだった。後ろからラピスと、おそらく手持ちのポッポが駆け寄ってくる。  ん? ポッポを見た瞬間アサギが目を丸くした気がするが・・・気のせいか? 「やっぱりお前も旅に出てくれたかー。お兄さんはうれしいぞ!」 「バカ、オレのが生まれは早いだろ」  会ってそうそう軽口とは、やっぱりこいつらしい。  それに空気も変わったし、そりゃあもう一瞬で見事に、その分については感謝しとくか。 「あー、やっぱりお前はヒトカゲにしたか。名前つけたのか?」  オレの横にちょこんと立っているマドカを見てそう聞いてくる。「やっぱり」ってのが気になるが。 「あぁ、マドカ、挨拶しな」 「はい、マドカです。よろしくお願いします」  マドカの名前を聞いた途端アマネの顔が曇る。 「『マドカ』ってお前・・・」  ん、今までが今までだし当然の反応だろうな。だからこそオレはその目をじっと見据えてやる。  決して過去を引きずってるわけじゃないというように。 「まぁ、なんだ、けじめみたいなもんだ」 「・・・なるほどな、お前がそれでいいならいいさ」  そう言って笑顔を見せる。言葉足らずでも十分伝わる、やっぱりこいつはこういうとき助かる。 「マドカちゃんっていうんだ。わたしはラピス、よろしくねー」 「うん、よろしくね、ラピスちゃん」  オレたちの横ではマドカとラピスが自己紹介をしてた。なんとも微笑ましい光景だ。 「へぇ、そっちもずいぶん懐いてるみたいだな」 「ん、そうか?」  何が根拠なのかはしらんがアマネによるとマドカはだいぶオレに懐いてくれているらしい。  さすがに最初の手持ちに嫌われちゃ話にならんしな。本当に懐いてくれているんなら、素直にうれしい。  ・・・一人問題児もいるが。 「手持ちも増えたみたいだし、一応紹介しとくか。こっちがオレの新しい手持ち、ポッポのリンだ」 「リンです。よろしくお願いしますね、サイカさん」 「あぁ、よろしくな」  ずいぶんと礼儀正しい子みたいだな。うちの誰かさんにも見習ってほしい。 「マスター、わたしも紹介してくださいよぅ!」 「んっ、そうだな! オレの可愛いラピスを紹介しないなんて罰が当たる!  というわけでオレの嫁、ラピスだ!」 「はい! マスターのよめ、ラピスです!」  アホだ、アホがいる。というか分かってて「よめ」って言ってんのかラピスは・・・。 「・・・いいなぁ」 「ん? なんか言ったか、マドカ」 「い、いいいい、いえ、何も!」  気のせいか? なんかボソッと聞こえた気がしたが。  次はオレの手持ちの紹介だな。アサギの方を振り返りつつ、 「オレの方は、こいつがオニスズメのアサ・・・」  ・・・「にらみつける」覚えてたか?  さっきから静かだと思ったら、アサギはリンを恐ろしい目でにらみつけていた。後ろにゴゴゴゴゴという擬音が見える気がする。 「やっぱりあんた、リン!」 「あーら、どっかで見たような顔だと思ったらアサギちゃんじゃなぁい」  あ、知り合いか?  っていうか、リンの声色がさっきまでとぜんぜん違うんだが。あれか、学園ドラマでいういじめっ子のお嬢様的な。 「リン、おまえら知り合いだったのか?」  オレの疑問をアマネが代わりに問うてくれた。しかし、その解答は先にアサギの口から出る。 「そいつはあたしのライバルよ!」 「ライバルって自称じゃなぁい」 「うっさい!」  アマネとオレは顔を見合わせる。どうやら知り合いどころの騒ぎじゃなかったな。  リンの方は軽くいなしてるが、アサギの方は今にも掴み掛かりそうな勢いだ。 「あんたはいっつもいっつもいきなり現れてあたしの獲物横からかっさらっていくんだから!」 「そんなのあなたがとろいだけじゃなぁい? だいたい取られる方が悪いのよぉ」 「なんですってぇ!!」  マズい。マジでケンカになりそうだ。・・・話を変えるか。 「それはそうとなんでお前がこんなとこにいるんだ? とっくにもっと先に行ってると思ってたんだが」  自分でもかなり無理矢理だとは思うが、話の矛先をアマネに向けてみる。 「いやぁ、やっぱり久々にトレーナーやってみるとポケモン捕まえるのも楽しくてな。昨日一日かけて捕まえまくってたんだよ。で、あとはお前と同じかな」 「ってことはお前もリーグに?」  さすが親友。考えることは同じってことか。言ってしまえば原点だからな。 「そういうこと。けど今は行けないぜ」 「あ? どういうことだ?」 「昔と違って、今はバッジ持ってる奴しか通してくれないんだと。そんでオレも今引き返してきたとこなんだよ。ずいぶん厳しくなったもんだ」  そうだったのか。昔はバッジ持ってなくてもリーグまでは行けたんだがな。もちろん四天王に挑戦はできないけど。  ってことは今行っても無駄ってことか。 「どーする? お前も引き返すか?」 「ん・・・まぁ、行くだけ行ってみる。こいつらにもゴールへの道くらいは見せてやりたいしな」 「さようか。ま、それもいーだろ。それはそうと、だ。サイカ」  ぬ、こいつさっきのお返しとばかりに話を切り替えてきやがった。  しかもこのニヤケ顔は・・・何を企んでんだか。 「久しぶりにバトルしないか?」  その声ににらみ合ったままだったアサギとリンが首をグリンとこっちに向ける。 「よーし、白黒はっきりつけてやろうじゃないの!」 「いいわぁ、どっちが上か教えてあげるわよぉ!」  アマネと顔を見合わせて苦笑する。トレーナーの意志なんてあったもんじゃねぇなぁ。 「で、どーすんだ? サイカ」 「こうなった以上、しょうがないだろ。やるよ」  オレ自身も久々にバトルしてみたかったしな。なんて言ったらアマネがさらにニヤけるのでぜったい言わないが。 「サイカ! まずはあたしが行くわよ!」 「マスター! 分かってるわね!」  呼び捨てかよ。つーか仲悪いくせになんでこんなときばっかりこうも息が合うかね。 「はぁ・・・好きにしろ、アサギ」 「頼むぜ、リン!」 「アサギちゃん、頑張れー!」 「リンちゃん、負けるなー!」  こうしてオレの7年ぶりのトレーナー復帰第一戦はぐだぐだな感じで始まるのだった。 「うりゃぁぁぁぁぁぁっ!」 「ほらほらほらほらぁっ!」  目の前でアサギとリンの激しい攻防が続く。・・・トレーナーそっちのけで。 「おい、アサギ! 少しは指示を聞け!」 「リンー、もう好きにやっちまえー」  二人のポケモンは完全にヒートアップしててトレーナーの指示なんか聞きもしない。  もうアマネなんて完全にあきらめて、観戦モードじゃねぇか。 「あんたの、指示なんて、いらない、わよ!」 「あらぁ、あなたは、指示をちゃんと、聞いた方が、いいんじゃない?」 「ふん! 寝言は、寝てから、言いなさいよっ!」  これはどうしようもないな。オレもあきらめて観戦モードと行くか。 「お前はこんなんでいいのか、アマネ?」 「はは、あいつらも楽しそうだし、いいんじゃないか? お、いいぞ! そこだー!」 「お前も十分ノリノリじゃねぇか・・・。楽しそうならいい、か」  確かにライバルとか言って仲悪い割には、戦ってる二人はすごく生き生きした顔をしてる。  なるほど、競い合える相手だからこそライバルってわけか。そりゃ生き生きもするわけだ。 「それにオレもただ好き勝手やらせてるわけじゃないぜ」 「何?」 「おいおい、オレはそう簡単に勝たせはしないっての忘れたか?」  そうだ。こいつは普段の性格に反して、バトルは戦略をしっかり立てて戦う奴だった。  昔は考えなしに突っ込んでこいつの策にやられたこともよくあったな。  ということは既にリンには何か策を・・・? 「ちっ! アサギ、気をつけろ! 向こうは何か策を持ってる! いったん落ち着け!」 「あんたの、指示なんて、いらないって、言ったでしょ!」 「せっかくの、指示なんだから、聞いたら、どうかしらぁ!」  ダメだ、まったく聞きゃしねぇ。ならせめて向こうの策を考えないと・・・。 「そろそろ勝負を決めてあげるわぁ! 「かぜおこし」ぃ!」  リンの翼で巻き起こった風がアサギを襲う!  しかし距離が遠すぎたのか、風はアサギに近づくにつれ徐々に弱くなっていく。 「そんなものっ!」  その風に向かってアサギが一気に突っ込む。弱くなった風を突き抜けて一気に距離を詰める気か。  しかし、なんでまたあんな距離で「かぜおこし」なんか撃つ? あれじゃ届く前に風が・・・。  いや、まさか、わざと弱くしたのか!? 「アサギ、よけろ!」 「大丈夫よ、こんなもん! てやぁぁぁぁぁぁっ!!」  オレの声もむなしく、顔の前に手を交差させアサギは風に突っ込んでいく。しかし―― 「それよっ! 「すなかけ」ぇっ!」 「えっ・・・きゃあっ!」  風を突き抜け、手の防御を解いた瞬間を「すなかけ」で狙い撃ちにされる。  やっぱり狙いはこれか。「かぜおこし」はあくまでおとり。本命はこっちの目をつぶすことだったか。 「くっ、目が・・・」 「残念だったわねぇ。アサギちゃん?」 「よーし、リン、ナイスだ! 一気に決めちまえ!」  リンが距離をつめて「たいあたり」をしかけてくる。まずい、こんな状況でくらったら・・・! 「アサギ、右だ! 右によけろ!」 「え? み、右? 右ってどっち・・・」 「無駄だぜサイカ! 目の見えない状況のポケモンに指示なんて通じないさ」  アサギが戸惑ってる隙にリンが迫る! 「終わりよぉっ!」 「っ、きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」  悲鳴とともにアサギの体が大きく吹き飛ばされた。 「大丈夫か、アサギ!」 「アサギちゃん!」  吹き飛ばされたアサギに急いで駆け寄る。大きく肩で息をしているが傷はそんなにひどくないみたいだな。  戦闘はもう無理だが、しばらく休んでれば回復するだろ。 「・・・なさい」  アサギが何かを言いたそうにしている。傷が痛むのかその声はだいぶ小さい。 「どうした、どこか痛むのか?」 「ごめん・・・なさい」  聞こえてきたのはまさかの謝罪の言葉だった。よく見てみると、アサギの目は涙でいっぱいだった。  やっぱり傷が痛むのかと思ったがどうやらそうではないらしい。 「っく、負け、ちゃって、ごめんなさい・・・ひっく、指示、ちゃんと、聞か、なくて・・・ごめん、なさい・・・」  こいつ・・・。とんだ跳ねっかえりかと思えば。  オレが手を差し出すと、アサギは怒られると思ったのかビクッと身を固くする。  まったくこんなんじゃ、トレーナー失格だよな。 「・・・・・・あ」  軽く頭をなでてやると、アサギは目を丸くしてオレを見上げる。 「大丈夫だから、今は休んでろ」 「・・・・・・うん」  光がアサギを包みボールに吸い込まれていく。  オレは、もっとこいつらのことを知ってやらないとな。そうでなきゃ信頼されるわけがない。  次は勝とうな、アサギ。 「おーい、まだかー」  アマネの急かす声が聞こえる。オレとマドカはうなずき合い、振り向く。 「あぁ、行くぞ、マドカ!」 「任せてください! アサギちゃんの敵討ちです!」  アマネの笑みが余裕とは別のものに変わる。あれは昔と同じライバルの顔。  まだ勝負は決まってない!

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