5スレ>>906

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「アサギ、まずは「なきごえ」だ!」 「わかった!」  バトル開始と同時に指示を飛ばす。  圧倒的なタイプ不利を覆すには補助技で少しでもイーブンに持っていくしかない。  そのためにもこっちの一手目は「なきごえ」で向こうの攻撃力を下げることにした。  本来ならばいわポケモンの防御力の高さを考えて「にらみつける」を選択したかったんだが、おそらく向こうには防御力をあげる補助技があるはず。  向こうもこちらが補助技を使ってくることは想定内のはず。せっかく下げた防御力を即座に戻されちゃ意味ないしな。 「なるほど、まずはこちらの攻撃を下げるか。いい判断だ、察しのとおりイシツブテは「まるくなる」を覚えてるからな」  ちっ、どうやら完全に読まれてたみたいだな。さすがはジムリーダー、か。  で、それを見逃すってことは何かしらの策を用意してるのか? 「オレのモットーは何事にも耐え抜く固い岩のような信念。その程度の技でひるむような奴はオレの手持ちにはいない!  どんな技を受けようがひたすら相手を叩き潰すのみ!」  ・・・つまり脳筋ってことか?  しかしこれはこれで厄介だな。こちらの補助技を少しでも気にしてくれればよかったんだが、完全に攻撃に回られるとこっちはジリ貧だぞ。  アサギの方が素早さがはるかに高いのが救いだが、どこまで攻撃をかわしきれるかが勝負だな。 「今度はこっちの番だ。行け、イシツブテ!」 「行っくよー! 「いわおとし」!」  イシツブテがアサギに向かって岩を投げつけてくる。  だが、その程度のスピードならアサギにとっては何の問題もない! 「アサギっ!」 「わかってる! あたしはそんなものに当たるほどのろまじゃないわよ!」  降りかかってくる岩をひょいひょいと素早い動きでかわしていく。 「おっ返しぃっ!」  そのままのスピードでイシツブテに接近し、「つつく」をお見舞いする。  ガッ! 「くっ・・・!」  のだが、攻撃したアサギの方が苦悶の声を上げる。 「そんな攻撃効かないもーん!」 「そいつはそんな攻撃でダメージをうけるほどやわじゃないぞ!」  ちっ、さっきの意趣返しのつもりか? ほんと腹立つな、こいつ。  さてどうしたもんか、奴の言うとおりさすがの防御力だな。ちょっとやそっとの攻撃じゃまったくダメージを受けない、か。  第一このフィールドがジムリーダーに有利ってのがな。武器になる岩はいくらでもあるわけだし。  ・・・岩? なるほど、向こうに有利な環境ならそれに抗ってもしょうがない。  ここはひとつそこを利用させてもらうか。 「ふん、これが効かないなら何度でも喰らわせてやるまでよ!」 「いいよー、そんな攻撃なら蚊に刺された程度のもんだからねー!」 「こんの・・・!」  っていかん。あのバカまた頭に血が上ってんのか。 「アサギ! いったん戻ってこい!」 「ほーら、あんなこと言ってるよー。さっさと戻った方がいいんじゃない?」 「ぐっ・・・サイカ! 早く済ませなさいよ!」  手持ちの方もずいぶん挑発上手なことで。正直どうなるかと思ったが意外にも素直に戻ってきてくれた。  こめかみのあたりがぴくぴくしてる気がするが見なかったことにしておこう。 「もう、何よ!」 「ん、ちょっとな。ていうか意外と素直に戻ってきたな」 「・・・だって、また指示聞かないで負けるのなんて、嫌だもん・・・」  ・・・これは意外だったな。  どうやらリンと戦ったときのことをまだ気にしてたらしい。  少し横を向いてむくれたような顔をしているアサギ。照れているのか頬が赤くなっている。  まったく普段からこうなら可愛いとこもあるのにな。 「・・・そうか。で、どうだ、実際に攻撃してみた感想は?」 「んー、やっぱ固いわねぇ。攻撃してるこっちの方が痛い目見るってどんだけなのよ」  だろうな。ある程度は予想してたが、まさかこれほどとは。  攻撃しては逆にダメージを受け、しかも向こうの反撃もかわさないといけない。  正面切ってかかればまさしくジリ貧だな、これは。  それならだ・・・。 「だいたい、なんなのよこのフィールド。岩ばっかりで動きにくい、しかも向こうは攻撃しやすいし」 「まったくだな。けど、それならこっちはこっちでそれを逆に利用するぞ」 「え? それってどういう・・・」  怪訝そうな顔をするアサギに考えた策を耳打ちしてやると、なぜかアサギの顔がすごい勢いで赤くなっていく。  ついでに後ろにいるマドカから何か殺気のようなものも感じたが気のせいだな、たぶん。 「・・・ってわけだ。いけそうか」 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・アサギ?」 「へっ、えっ、あっ、う、うん! 大丈夫!」  顔を真っ赤にして惚けてるアサギに声をかけると、ものすごい勢いで首を縦にぶんぶん振る。  ・・・ほんとに大丈夫か、これ。 「すまんな、こんな格好悪い策で。もっといい手を考えつければ良かったんだが」 「別にかまわないわよ。あんたは、その、あたしの、マ、マスターなんでしょ!  あんたが勝てると思って考えた策なら、あたしたちはどんなにかっこ悪くてもやってみせるわよ。  だ、だから! もっと自信もって指示しなさいよ!」  ・・・まさかこいつにマスターなんて呼ばれるとは。  普段の様子から嫌われてるもんだとばかり思ってたが、少しくらいは信頼もしてくれてるらしい。 「そっか、ありがとな。それじゃ頼むぜ!」 「よっし、行くわよ! 絶対泣かす!」  これで好戦的なところがなかったらなぁ。泣かすってなんだよ。 「どんな浅知恵を考えてきたのか知らないけど泣かせられるもんならやってみなー」 「ふん、そんなこと言ってられるのも今のうちよ!」  言うやいなや、アサギは猛スピードでイシツブテの背後に回り込む。 「後ろから攻撃しようってつもり? けどどっから攻撃しても・・・って、え?」  振り返るイシツブテの視界には岩が転がるフィールドのみ。アサギの姿は影も形もなかった。  思った通り、イシツブテはその固い体が災いしてアサギの動きにはついて行けない。  それを利用してフィールドにごろごろ転がっている岩に隠れさせてもらったってわけだ。 「イシツブテ! お前から見て左斜め後ろの岩だ!」 「えっと、お茶碗を持つのが左だから・・・」  加えてちょっと頭悪そう。 「遅いのよっ!」 「痛っ!」  考え込んでる隙にアサギの攻撃がヒットする。そして再び岩に隠れる。ヒット&アウェイってやつだ。  イシツブテの防御力は変わらないんだから与えるダメージ自体には変わりはない。  しかし今のアサギの攻撃は不意打ちのようなものだ。  不意の攻撃は防御の準備も与えないし、精神的にも堪えるものがある。  事実、イシツブテは今の攻撃に痛みを感じている。  まぁ、あんまりスマートな戦法ではないが挑発してきたのは向こうだしかまわないだろ。  この調子で攻撃し続ければあるいは・・・! 「それっそれっそれっ!」 「ぬっ! くっ! うわっ!」  休む間もなく攻撃しては隠れるアサギにイシツブテは完全に翻弄されているようだ。  それにしても、タケシがやけに静かだな・・・。何かあるのか? 「いつまで遊んでる気だ、イシツブテ」 「あれ、ばれてた?」  そう思った瞬間にこれか。  タケシの言葉にイシツブテはぺろっと舌を出して応える。  まさかあれでもダメージ受けてなかったってのかよ!? 「そんな、あれだけ攻撃したのに・・・」 「へへー、けどそれなりに痛かったからね。せっかくだから・・・」  イシツブテの体が大きく揺れる。 「本気で相手してあげる!」  その声とともに、アサギの隠れていた岩もろとも辺りの岩が一斉に巻き上げられる! 「ちょっ! 嘘っ!」 「もう遅いよー! 「岩なだれ」ぇっ!!」  無数の岩がすさまじい勢いでアサギに襲いかかる。  だがあの量ならまだかわしきれるはずだ! 「くっ・・・けど、これ、くらい、ならっ!」  岩と岩の隙間を縫って紙一重でよけていく。  よし、これを避けきったらいったん態勢を立て直して・・・。 「へー、すごい、すごい! けど・・・残念」  いや、違う! これは・・・!?  ふとイシツブテがいた場所を見るがその姿はどこにもない。  その代わり、その向こうにいるタケシの勝ち誇ったような顔が見えた。 「しまっ・・・! アサギ! 逃げ・・・」  ドンッ!!  はっきりと聞こえるくらいの音を立ててアサギの体が大きく吹き飛ぶ。 「がっ・・・!」  降り注いでくる岩の中、その中にイシツブテの姿があった。  自分で投げた岩にまぎれ、あの威力、おそらくは「すてみタックル」で攻撃をかけていたのだ。  ドシャアッ! 「ぐっ、うぁ・・・っ!」 「アサギ!」 「アサギちゃん!」  吹き飛ばされたアサギの元に駆け寄り抱き起こす。  まずいな、もろに喰らったせいでかなりのダメージを受けてる。  しかも「あの」イシツブテのタックルだ。これはもう・・・。 「うぅ・・・」 「アサギ、もうい」 「もう、いい、なんて・・・言わせ、ないわよ!」  オレの言葉を遮り、体を押しのけてアサギが立ち上がる。  だがその足取りはフラフラで立っているのがやっとという感じだった。  見るからに無理しているのが分かる。とてもじゃないが戦える状態じゃない。 「バカ言うな! もう無理だ! ここはおとなしく・・・」 「あのときは、指示、聞かなくて、負けたけど・・・」  なんだ・・・? 「ちゃんと、指示聞いたのに、負けたら・・・あんたが負けたみたいで、嫌じゃない」 「お前・・・」 「ねぇ、マドカ、あんた言ったわよね。サイカはあんなやつに、負けたりしないって・・・」 「・・・うん」  アサギの真摯な言葉に、マドカは静かにうなずく。 「だったら、あたしが負けるわけには、いかないじゃない」  荒い息を吐きながら、その顔には笑顔さえ浮かんでいた。  自分の、いや、自分たちの勝ちを微塵も疑わない笑みで。 「ねぇ、サイカ。あんたのことだから、ひとつくらい策が、できてるんじゃないの?」  あるにはある。  だが、今のダメージを受けた状態では策というより自殺行為に近い。  そんな策をさせるわけには・・・。 「あーもう! まだるっこしいわね!」  パシンと頬を両手で挟み込まれる。痛ぇな、なにしやがる。 「さっき言ったばっかでしょ! あんたはあたし達のマスターなんだから自信もって指示しなさいって!」  顔を近づけて思い切り叱咤される。まるで母親に怒られてるような感覚だ。 「いい! あたしが勝つって言ったら絶対に勝つの! だからあんたは黙って指示を出しなさい!  ・・・あんたがあたしを信じてくれないと、あたしだってあんたを信じられないじゃない・・・」  顔をうつむかせオレから離れる。  そうか・・・そうだな。  こいつらが傷つくのが嫌だった。  けどそんなものはオレ自身の甘えでしかない。  こいつらが戦えるっていうんだ。オレがそれを信じてやらないでどうする! 「かなり危険だぞ。いいのか?」  答えはすぐに返ってきた。 「上等っ!」 「よし、なら・・・」 「ふーん、あのまますごすご引き下がるかと思ったら意外と根性あるじゃん」  再びフィールドに立ったアサギを、意外にもイシツブテは静かに迎えた。 「あんたごときに負けるのがしゃくにさわっただけよ」 「へぇ、言うじゃん。もう足もフラフラなくせに」  イシツブテの言うとおり、今の状態であと一発でもいいのをもらったらもはや戦闘不能だろう。  だからこそ、そこにつけいる隙がある! 「けど手加減はしないよ!」  向こうの初手は「いわおとし」。  なんだかんだで一応警戒はしてるみたいだな。その方がこっちも動きやすい。 「って、またいないし!」  アサギは再度フィールド上に点在する岩に隠れる。 「もー、かくれんぼはは飽きたってばー。そんなことしても通じないよー」  どうやらイシツブテはこちらの行動がさっきまでと同じだと考えてるみたいだな。 「大丈夫かな、アサギちゃん・・・」  後ろに控えてるルイザが心配そうな声をあげる。  バトル慣れしてないこいつにとっては、たぶん見るのも辛い光景なのかもな。 「大丈夫だよ、ルイザちゃん」  しかしそれに応えるマドカの声は明るい。 「だって、アサギちゃんの目はちっとも負けてなかったもの」  あれだけのダメージを受けながら、アサギの目はまったく死んでいなかった。  立っているのもきつい状態だろうに、それでもオレを信頼してくれることが嬉しく、そして誇らしかった。 「だから、応援してあげよ。少しでもアサギちゃんの力になれるように」 「うんっ! アサギちゃん、頑張れー!」  トレーナーがバトルでポケモンのためにしてやれること。  勝たせてやること、そして何よりも、信じてやること。 「アサギ! 行け!」  お前がオレを信じてくれたように、オレもお前を信じる。  だから、勝て! 「行くわよ!」  隠れていた岩からアサギが飛び出す。  アサギに与えたオレの指示は・・・。 「喰らえっ!「みだれづき」っ!」  無数の突きがイシツブテに向かって繰り出される!  ガガガガガッ! 「・・・痛いなぁ、けどその程度じゃ通じないってまだ分かんない?」  さっきと同じくイシツブテにさほどダメージがあった様子はない。  けど、それは織り込み済みだ。  今の攻撃でわずかに見えた「綻び」。それをアサギが見抜けていれば・・・。 「最後の攻撃がそれとはな。イシツブテもういい、とどめを刺してやれ」 「うーん、割と楽しかったんだけどなぁ。そろそろ終わりにしよっか」  イシツブテの言葉とともに、周囲の岩が再び宙に浮く。 「けっこう頑張ったけど、残念だったね」 「くっ・・・!」  そして落下する勢いを使い、地面へと叩きつけられる。  アサギも危なっかしい動きではあるが、なんとかそれをかわしていく。  一発もらったら即終わりなこの状況でよくやってくれている。  そうこうしている間にイシツブテの姿がいつの間にか消えている。  また岩に紛れ込んだか。  岩に紛れ込んだイシツブテを見つけるのは至難の業だが、この状況なら話は別だ。  向こうの「岩なだれ」はあくまでフェイク。こちらの行動を制限するのが目的だろう。  その証拠に飛んでくる岩は明らかにこちらを追い込む動きをしている。  追い込んで逃げ場がない状況で確実に「すてみタックル」を決める。それが向こうの戦法。  なら「すてみタックル」をしかけてくるイシツブテを見破ること自体は容易い。  問題はその後だ。 「あははっ、ほらほらもう逃げ場がないよー」 「みたいね・・・」  降り注ぐ岩に退路をふさがれ、もはや逃げ場はない。  そこにまっすぐ向かってくる岩、いや、あれがイシツブテだ。  このままではまた喰らってしまう、しかしアサギは動かない。 「覚悟を決めたかな? それじゃこれで終わりだよっ!」  さらに勢いを増し、まっすぐアサギに向かってくる。 「覚悟なら決めてるわよ・・・」  静かに響くアサギの声。 「たとえ差し違えてでも、あんたを倒すっていうね!」  二人が衝突するまさにその瞬間!  ガォンッ!!  すさまじい音と衝撃が響いた。  衝撃によって巻き上げられた土煙がそのすさまじさを物語っている。  その土煙の向こうにはうずくまる影が二つ。 「くぅっ・・・さすがにこっちも痛いわね・・・」  ゆっくりと立ち上がったのは、 「アサギちゃん!」 「勝ったよ、アサギちゃん!」  ぼろぼろになりながらも見事勝利を収めたアサギだった。 「かっ・・・はっ・・・!」 「さすがに、動けないでしょ」  倒れたままのイシツブテはかすれた息を吐き、指の一本も動かせないという様だ。 「けほっ、あ、あんた・・・見え、てたの?」 「さっきの「みだれづき」のときにね」 「なるほど、あれで見抜いたというわけか。しかしまさかあの一瞬でとはな」 「まぁ、一か八かだったけどな」  オレとタケシもフィールドに降り、それぞれアサギとイシツブテを抱え上げる。  イシツブテのいう「見えてた」とは早い話イシツブテの「急所」のことである。  違和感を感じたのは先のヒット&アウェイ戦法のとき。  実際にはほとんどダメージを受けていなかったイシツブテだが、ある方角からの攻撃のときだけほんの少し体をよじっていた。  つまりあれは万が一にも急所に当たらないように攻撃を避けていたんだろう。  それに気づいたオレは急所の正確な位置を見極めるため「みだれづき」の指示を出した。  その結果、一点だけイシツブテが明らかな防御をした所があった。  おそらく防衛本能による無意識だったんだろうがそれで十分だ。  あとはそれをうまく攻撃に結びつけられるかどうか。  こっちの状況が状況なだけに、確実にとどめを刺すために向こうが「すてみタックル」を使うのは予想できた。  「すてみタックル」は知っての通り諸刃の剣。自分の体にも負荷をかける技だ。  まぁ、イシツブテはその体の固さを利用してほとんど負荷無しで使ってたみたいだな。とんでもねぇ。  けど、こちらの攻撃に無防備なのには変わりない。  そこを利用してギリギリまで引きつけてからの「つつく」クロスカウンター。しかも急所。  で、結果は見ての通り。タケシにも言ったとおり一か八かだったが無事決まって良かった。 「ちょ、ちょっと、サイカ。じ、自分で歩けるから!」  抱きかかえてたアサギが腕の中で暴れ出す。まったく少しは素直になったと思ったらこれだからな。  けど・・・ 「ありがとな、アサギ」  この策は下手をしたら取り返しのつかないことになった可能性だってある。  予測をつけた急所だって本当に急所なのかもわからない。  しかもこちらは満身創痍な状況でのクロスカウンターだ。  一瞬でもタイミングがずれれば逆にこっちがやられてた。  それでもこいつはその策を、オレを信じてくれた。 「ん・・・だって、ほら、その・・・マスターの指示は聞かなきゃだし・・・」  なんだかんだいいつつも、一応はマスターと認めてもらえたらしい。  出会いのときこそ最悪だったが、ちっとはマシになってきたってことか。 「あぁ、それでもありがとな。あとはマドカにまかせて休んでろ」 「うん、そうする・・・。あ、マドカ、ルイザ」  そろそろ体力が限界なのか、たどたどしい声でマドカとルイザの名前を呼ぶ。 「ん、なに?」 「なに? アサギちゃん?」 「応援、ありがと・・・嬉しかった。あと、マドカ、あと、よろし、くー・・・」  ・・・寝やがった。  かなり無理をしてただろうからな、ゆっくり休んでくれよ。 「ふふ、かわいい寝顔ですね」  アサギを床に横たえると、いつの間にかマドカが横に立っていた。  微笑みながらもその目には再び闘志を燃やして。 「負けられませんね、私も・・・!」 「だな・・・」  振り返ればタケシがふんぞり返って次のボールを手にしていた。  なんでふんぞり返ってんだよ? 「さっきのはなかなかいい作戦だった。手持ちにもずいぶん信頼されているようだな」  そりゃどうも。 「だが、ここからはオレも手持ちも本気でいかせてもらう。さっきのようにはいかんぞ!」  あれで手を抜いてたってか? 冗談・・・でもないか。  ジムリーダーの本気にどこまでオレが食らいついていけるか。  タケシの手から放たれたボールが光り、中から姿を現したのは・・・。 「なっ・・・!?」 「で、でかい・・・」  イシツブテとは比べものにならないくらい巨大なイワークだった。 「仮にも女の子をつかまえてでかいとは感心しないねぇ。大将、本気でいっていいんだろ?」 「あぁ、思う存分お前の力を見せてみろ!」  イワークはアサギ以上に好戦的な目つきで手の関節をポキポキ鳴らしている。  ちょっとこれは予想外だな。まさかこんな相手とは・・・。 「マスター」  不意にマドカがオレを呼ぶ。 「私は絶対に負けません。だから、マスターも私を信じてください」  自分より数倍大きな相手を目の前にしても、その目は少しも揺らいでいなかった。  そうだな、お前が負けないっていうんだ。きっとそうに決まってる。 「あぁ・・・。よし、いくぞ!」 「はいっ!」  たとえ相手がどんな奴だろうと、オレは手持ちを信じて戦うまでだ!

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