5スレ>>939-2

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「ナゾノクサちゃん、マダツボミちゃん、しっかりして!」  敵の猛攻から主を懸命に守っていた二体のポケモンだが、ついに力尽き倒れ伏してしまう。  手持ちに必死に声をかける少女に近づく黒い影が一つ。 「だから最初から言ったろう。おとなしくその化石を渡せば痛い目に遭わなくて済むってよ」  手持ちを従えながら、下卑た笑みを浮かべ少女の細腕を掴む。 「痛っ! やめて、はなして!」 「なら、さっさとよこせ! 一生もんの傷でもつけられてぇか!?」  なんとか腕をふりほどこうとする少女だったが、男の怒声にビクッと身を震わせ、震える手でポケットの中に入れていた化石を手渡す。 「そう、これだよこれ。ったく最初から素直に渡せばいいものを」  少女の手から奪い取るように化石をひったくり、しげしげと化石を眺める。 「さて、こんだけ集めれば十分だろう。あとは・・・」  泣きながら手持ちの名前を呼び続ける少女に向き直り、 「目撃者の始末だな!」  手に持ったロッドを振り下ろす!  ロッドが少女の頭を打とうとした直前、  ジュッ! 「うおっ!?」  突然手元に炎が発生し、慌てて手をはたく。 「な、なんだ、いきなり・・・?」 「怪しいやつっていうからどんなやつかと思えば、とんだゲス野郎だな」  ふぅ、ギリギリだったな。  マドカが機転を利かして指示を待たずに攻撃してくれたおかげで、なんとか間に合った。  しかしアサギならともかく、マドカが自ら進んで攻撃するとは珍しいな。  そのおかげで間に合ったんだし、別にかまやしないんだが。 「なにもんだ、てめぇ!」  目の前の男の胸には赤いRの文字。やはり件のロケット団か・・・?  なんつーか・・・だせぇ。 「ただの通りすがりのトレーナーだよ。そういうあんたは?」 「はっ、ただの通りすがりで命を無駄にする気か?  お前が今目の前にしてるのは泣く子も黙る秘密結社・ロケット団だぜ!」  いや正体隠せよ、秘密結社。  自分で聞いといてなんだが、こんなのが団員で大丈夫なのか?  まぁいいか、それならそれで手加減しないですむ。 「おい、あんた、少し離れてろ!」  突然の状況に対応し切れていないような少女に声をかける。 「う、うん、わかった!」  数秒逡巡したようだったが素直にオレの言葉に従い少し離れた場所に隠れる。  ちらっと見ただけだが、彼女の手持ちはだいぶ傷ついてはいるものの、そこまで大事にはいたってないみたいだ。  これならポケモンセンターで回復してもらえば大丈夫だろ。  後はこのアホっぽい男だが・・・。 「正義の味方気取りか、あぁん?」  秘密結社の団員つーか、ただのチンピラだな、こりゃ。 「別にそんなつもりはないさ。『気に入らない』、それで十分だろ?  準備は良いな、マドカ、アサギ」 「はい、マスター!」 「もちろん! ギッタギタにしてやるわよ!」  やる気は十分か。心強い限りだ。  相手も手持ちを前に出してくる。ズバットとアーボか、毒を喰らえばやっかいだがそう強い相手ではない。  マドカとアサギで十分対応できるだろ。 「ま、マスターもうやめましょうよぉ・・・」 「そうですよ・・・もうこんな悪いことするの・・・」  と、どうやら相手の様子がおかしい。  手持ちのポケモンがそろって主に止めてくれるよう懇願している。  なるほどな、手持ちは進んで悪事に荷担してるってわけじゃなさそうだ。 「うるせぇ! お前らは黙ってオレの言う事聞いてりゃいいんだよ!」  男は自分の手持ちを蹴り飛ばし、無理矢理オレたちの前に進ませる。 「ひどい・・・お兄ちゃん!」 「あぁ、分かってる。マドカ、アサギ、できるだけあいつらを傷付けないように時間を稼いでくれ。その間に策を考える」 「分かりました!」 「頼んだわよ!」  言うとともにに散開し、互いの相手を迎え撃つ。マドカはアーボ、アサギはズバットだ。 「いきますよ、たぁっ!」 「あんたに恨みはないけど、ねっ!」  二人ともさっそく仕掛けていくが、その攻撃は空を切る。  しかし、矢継ぎ早に攻撃を仕掛け相手に攻撃する隙を与えない。  そうだ、それでいい。相手を傷付けるわけにはいかないが、それで相手の攻撃を受けてりゃ本末転倒だ。  だから隙の少ない攻撃を空振りでもいいから連続で仕掛け、相手に攻撃の暇を与えない。  ただでさえ相手は消極的になってるわけだし、これで時間も稼げるだろ。 「ちぃっ! バカが、何をやってる! 遊んでないでトレーナーを狙え!」 「なっ!?」  こいつ、マジか!? ポケモンにトレーナー襲わせるなんて正気かよ?  この指示にはさすがにズバットとアーボも明らかに躊躇しているようだ。 「お前ら! オレの指示を無視してどうなるか分かってんのか!?」  しかし男の恫喝に苦虫を噛みつぶしたような顔でこっちに向かってくる。 「あっ、マスター逃げて!」 「こらっ、待ちなさい!」  ちぃっ、マジで来やがった!  まさか本当に来るとは思ってなかったのかマドカとアサギの初動が遅れてしまう。 「ごめんなさい・・・っ!」  ズバットとアーボがその牙をきらめかせ同時に襲いかかってくる。 「くっ・・・!」  ズバットの急降下を屈んでかわすが、目の前にはすでにアーボが迫ってきていた。  まずい、かわしきれない・・・っ! 「お兄ちゃんっ!」  ドカッ! 「ぐぅ・・・っ!」  すんでの所でルイザが飛び出して、アーボを体当たりで吹き飛ばす。 「大丈夫!? お兄ちゃん!」 「あ、あぁ、オレは大丈夫だけどお前・・・」  見ればルイザの身体ははっきり分かるほどに震えていた。 「あ、あれ、アハハ、な、なんだか無我夢中だったから・・・」  ったく、まだ闘うのは怖いくせに・・・。 「すまんな、助かった。ありがとう」 「エヘヘ・・・」  そう言い、頭を撫でてやってるうちに、マドカとアサギも戻ってくる。 「大丈夫ですか! マスター!」 「まったくどんくさいわねぇ。あれくらいかわしなさいよ」  お前らじゃないんだから無茶言うな。  っとまだ戦闘は続いてるんだ。こんな和んでる場合じゃ・・・。 「ホントに使えねぇな、てめぇらは!」  ドゴッ!  男の怒声とともに鈍い音が響く。  突然の伏兵による攻撃だったためか、思いの外男の足下まで吹き飛んだアーボが、マスターであるその男に踏みつけられていた。 「ま、ますた、やめ・・・」 「マスター、それ以上やったら本当に死んじゃいますよ!」 「てめぇもだ、よっ!」  必死で呼びかけるズバットすら手に持ったロッドで殴りつける。 「てめぇらの役目はオレを守ることだろうが! それをこんなガキ相手に手間取りやがって!」  こいつ・・・どこまで腐ってやがる・・・! 「ちょっとあんたいい加減にしなさいよ!」 「そうです! ポケモンをなんだと思ってるんですか!」  男の行為にアサギとマドカも非難の声をあげるが、男は澄ました顔で、 「は? んなもん『道具』に決まってんだろ」  そう言ってのけた。 「・・・っ! このぉ!」  「マスター!」  あぁ、こんなやつは一度痛い目に・・・。 『コロセ』  ・・・? 『コロセ』  なん・・・だ? 『コロセコロセコロセコロセコロセコロセ』 「うあああぁぁぁっ!!」 「!? マスター!」 「ちょっと、サイカ!」 「お兄ちゃん、どうしたの!?」  頭が割れんばかりの頭痛と直接頭に響くような殺意に満ちた声。  なんなんだよ・・・これは! 『コロセ!』 「・・・っつ、ぐ、ああぁぁぁっ!」  声が語りかける「目の前の男を殺せ」と。  そうだ『あいつら』はみんな殺さなくちゃいけない。  コロサナクチャ・・・。  ソウダ・・・コロセ!! 「マスター!」 『サイカ!』  っ・・・!  ・・・『マドカ』? その声は『マドカ』なのか? 「マスター!? マスター、しっかりしてください!」 「あ・・・マド、カ・・・?」  目の前にいるのは幼なじみの『マドカ』ではなく、ポケモンのマドカ。  今にも泣きそうな顔で、オレに縋りついていた。 「マスター? マスターですね?」 「あ、あぁ・・・」 「よかった・・・」  問いかけに答えると心底ほっとしたような表情で微笑む。  オレは今いったい何を・・・。 「サイカ、あんたホントに大丈夫なの?」 「お兄ちゃん、すごく顔色悪いよ?」 「いや・・・なんとか、大丈夫だ」  さっきの頭痛と声は何だったんだ? まるで殺意の塊のような声。  それにマドカの呼びかけに重なって聞こえた声は確かに幼なじみの『マドカ』の声だった。  いったいぜんたい何がどうなって・・・。 「おい! 何こっち無視してやがる! いけ! お前ら!」  無視される形となっていた男が怒鳴り散らし、すでにボロボロになっているズバットとアーボを再度けしかける。 「ちょっと! まだ懲りないの? いい加減に・・・」 「マドカ、アサギ、一瞬でいい。あいつらの動きを止めてくれ。その間に終わらせる」  食ってかかりそうになっているアサギを押さえ二人に耳打ちをする。  正直まだ頭がガンガンしてるんだが、そうこう言ってる場合じゃない。  早く終わらせないとおそらくあいつら死ぬまで戦わせられる。 「マスター・・・」  珍しく神妙な顔をしてオレの目を見るマドカ。 「なんだ?」 「・・・いえ、なんでもありません。行こう、アサギちゃん!」 「え? あ、う、うん!」  ? 何だ? なんでもないって割に何か言いたそうな顔だったが・・・。  って、そうじゃない。集中しろ!  軽く頭を振って前を見ればマドカとアサギが互いの相手を押さえ込んでいた。  その状況を確認し、オレは一気に男に向かって走り出す。 「っ! てめぇ!」  男がオレの考えに気づきロッドを振り上げるがもう遅い。  ドウッ! 「ぐっ・・・!」  まずはボディーに一発。  バキッ! 「がはっ!」  次いで顔面を渾身の力で殴りつける。  男は派手に吹っ飛び、洞窟の壁に背中をしたたかに打ち付けぐったりと動かなくなる。 「これ、借りるぞ」  男が気絶しているのを確認して、腰につけたモンスターボールとロッドを拝借し、  バキャッ!  ロッドでボールを叩き割る。 「あ・・・」  ズバットとアーボが驚いたような顔でオレを見上げている。 「これでお前らは自由だろ? もうこんなやつらに捕まるなよ」  つってもこのまま野生に離すのもまずいだろうから・・・あぁ、そうだ。 「おい、あんた」 「は、はいっ!」  すっかり忘れ去られていた少女に声をかければ素っ頓狂な声をあげて飛び上がった。 「こいつらのこと、頼めるか?」  どうせ手持ちをセンターに連れてくだろうし、こいつらもいっしょに連れてってくれれば助かるんだが。 「あ、あぁ、そういうこと。ねぇ、あなたたち、私といっしょに来る?」  少女は自分の目線をポケモンたちの目線まで下げ、優しく話しかける。 「え・・・えっと・・・」  たった今解放されたばかりの二体のポケモンは少女の申し出に少し迷っているようだった。  無理もない。あんなクソ野郎に今までこき使われてたんだ。そりゃ人間不信にもなるわな。 「大丈夫、あなたたちがイヤならそれでいいんだけど、せめてセンターまでは、ね」  その言葉にズバットとアーボは顔を上げ、 「・・・一緒に行ってもいいんですか?」  と少女に問いかける。  とたん、少女は笑顔になり、 「もっちろん!」  と明るい声で返すのだった。  自分の手持ちをあんだけ必死になって助けようとしてたトレーナーだったしなんとかなるかと思ってたんだが、予想以上にうまくいったみたいだな。 「それにしてもあなた強いのね」  ズバットとアーボをモンスターボールに収めた少女がオレに語りかけてくる。 「そうか?」 「そうよ。あんな武器持ちの相手に突っ込んでいくなんて、やっぱり男の子なのね」  あぁ、今になって思えば迂闊だったかもなぁ。  なんか自然に体が動いたような感じだったけど、そんなにケンカもしたことないし場慣れはしてないはずなんだが、はて? 「まぁ、なんにせよ助かって良かったわ、ありがとね」 「礼なんていいよ。通りがかったらムカつくやつがいたんでブチのめした。それだけだ。  それよりあんた今日友だちと二人で来たんじゃないか? 入り口のとこで待ってるってよ」 「え、そうなの? ・・・いっけないもうこんな時間! それじゃ、あたしはこれで!」 「あぁ、気をつけろよ」  そして少女は今頃待ち疲れているであろう友だちの所へ急ぎ足で駆けていった。  ふぅ・・・なんとか終わったか。 「マドカ、アサギよく頑張ってくれたな。ルイザもサンキュな」 「あたしもあいつ気に入らなかったしね。別にいいわよ」 「うん、ボクもたいしたことしてないしね」  そう言いつつも二人の顔は嬉しそうだった。 「マスター」  不意にマドカがオレの名前を呼ぶ。その顔はまた神妙なものに戻っていて。 「ん? どうした?」 「マスターは・・・マスター、ですよね?」  は? どういうことだ? 「それはどういう・・・」 「えっ、えっと! なんでもないんです! すいません、変なこと聞いて・・・」  慌てたように手をパタパタさせて笑顔を作るが、何かを隠しているのは明白だった。  さっきの声といい、マドカ、お前はいったい・・・。 「うわーっ! すっごいキレイ!」 「本当にキレイですね、マスター」  ようやく洞窟から外に出て視界に飛び込んだ景色にルイザとマドカが感嘆の声を上げる。 「そうねぇ・・・きれいな『夜空』ねぇ・・・」  あー・・・そうだな・・・。  結局、ズバットの群れから逃げた時点でかなり迷った上に、トレーナーを助けるために急いで駆けつけたことで余計に迷ってしまった。  なんとか洞窟を抜けることは抜けたが、山の中腹に出ただけでしかも時間はすでに夜。 「さすがにこの暗さで山を下りるのは危険だし、今日はここにキャンプだな」  真の敵はトレーナーでもなく、野生のポケモンでもなく、オレ自身の方向音痴なんじゃなかろうか。 「で、でもマスターいいじゃないですか。こんなにキレイな星空の下でキャンプなんてなかなか経験できないですよ」  お前は本当に優しいなぁ、マドカ・・・。  ・・・マドカ、か。  あの後、やっぱりマドカの態度が気になって、何か言いたいことがあったんじゃないかと聞いてみたが「何でもない」とはぐらかされてしまった。  さすがにここまで来ると不思議に思うなというのが無理な話なんだが・・・。  無理矢理聞き出すってのもどうもなぁ・・・。  結局はいつか話してくれるのを待つしかないのか。 「お兄ちゃん、あそこ、なんだろう?」  ルイザが何かに気づいたように指で指し示す。  その指さす方向に見えたのは、 「あれは・・・湯気?」 「ってことは・・・やっぱり温泉じゃない!」  喜色満面という感じで飛び上がったアサギが上空から温泉の発見を報告する。  助手さんのいってた温泉か? こんなとこにあったんだな。 「ねぇ、サイカ、先に入ってもいい!? あんな洞窟の中にいたからけっこう汚れちゃったし」 「あぁ、いいぞ。マドカも先に行ってこい。テントの設営はオレとルイザでやっとくから」 「いいんですか? すいません・・・」  少しこちらを気にしたようだったが、マドカもアサギと連れだって嬉しそうに温泉に向かう。  こういうところを見るとやっぱり女の子だよな。バトルもしたから大変だったろうしゆっくり疲れをとってくれたらいい。 「つーわけだ、ルイザ。悪いが手伝ってくれるか?」 「うん、いいよ、ボクはそんなに汚れてないしね」  ルイザに手伝ってもらいながらテントを手早く組み立てていく。  最近は簡素で軽めな割にしっかりとしたテントがあって助かる事この上ない。 「なんだかお兄ちゃんすごい慣れてるね?」 「あー、まぁ昔とった杵柄ってやつだろ」  覚えてないんだけどな。昔も旅してた頃はテントも使ってたろうし、身体が覚えてたってことか。 「あー、いいお湯だったぁ~♪」 「ホントだったね、隠れた名湯って言われる意味も分かるなぁ」  しばらくして温泉で十分に暖まったであろうマドカたちが帰ってくる。  上気して赤くなった頬が色っぽ・・・くはないか。姿形的にまだ。 「マスター、お待たせしました。今日のご飯はわたしが作りますね」 「あ、あたしも手伝うわよ、マドカ」  うーん、アサギに手伝わせて大丈夫なんだろうか・・・。なんか嫌な予感がするんだが。 「あぁ、楽しみにしとくよ。んじゃルイザ、オレたちも温泉いくか」 「うん、いこういこう♪」  ルイザに手を引っ張られる様にオレたちも温泉に向かう。  さすがに今日はオレも疲れた。ゆっくり入って疲れをとろう・・・。 「~♪ ~~♪」 「マドカ、ずいぶんご機嫌ね」  鼻歌交じりにパスタの入った鍋をかき回すマドカ。火はしっぽの火を使うエコ仕様である。 「うん、料理するのなんてずいぶん久しぶりだから」 「ふーん、そうなんだ?」 「それに・・・」 「それに?」  言葉を切り、鍋を見つめるその顔は何かを慈しむかの様な柔らかい笑みだった。 「大切な人のために料理を作れるんだもん・・・」 「・・・ねぇ、マドカあんたってやっぱり・・・」 『―――!!!』  アサギが何かを言いかけた瞬間、温泉の方から叫び声が聞こえた。 「あっ!!」 「あぁっ!!」  そう、彼女たちはひとつ重要な事を忘れていた。 『んじゃルイザ、オレたちも温泉いくか』  サイカの発したあの言葉。そこにあるひとつのとんでもない問題点を。 「アサギちゃん!」 「マドカ!」  互いに頷きあい、鍋をほっぽり出して駆け出す。  このままだと大変なことに・・・! 「ふぅ・・・あー、疲れがとれる・・・」  ていうか溶ける・・・。温泉の縁に手をかけ、ぐったりとしながら夜空を眺める。  さっきのマドカたちじゃないがホントにキレイな空だな。  昔旅した時もこんな空を見たんだろうか?  そういえばオレが昔共に旅をしただろう手持ちたちは今どこにいるんだろう?  トレーナーを止めた時に野性に返したのか、それとも誰かに預けたりしたんだろうか。 『サイカ・・・』  『マドカ』か・・・。ダメだな、昔のことを考えるとどうしてもあいつの顔が思い浮かんじまう。  あいつのことを吹っ切るための旅でもあるんだけどなぁ。 「ちっ・・・」  昔のことはとうぶん考えない方が良さそうだな。  過去に引きずられたまんまで前に進めるわけがないか。 「お兄ちゃん、入っていい?」  後ろからルイザの声が聞こえてくる。 「あぁ、さすがに夜は冷えるし、さっさと入っちまえ」 「うん! それっ!」  ドボーン!!  思いっきり温泉に飛び込んだおかげで水しぶきが顔にかかる。  ったく、このお子様は・・・。 「あー、あったか~い♪」 「あのなぁ、ルイザ・・・」  ルイザに温泉のマナーを注意しようとして身体が固まる。  温泉のお湯がきめ細かな肌の上をすべる。  華奢な体つき。  少し膨らみかけた二つの胸。  そして視線を下に向けると、 「お、おおお、おま、お前・・・!」 「ん、どうしたのお兄ちゃん?」  ついてねぇ。 「女じゃねーかーーーー!!!!!」 「え、そうだけど?」  『ボク』とか紛らわしいこと言ってんじゃねぇよ!  慌てて温泉から出ようとすると、 「マースーター・・・」 「サーイーカー・・・」  不意にマドカとアサギの声が頭上から降ってくる。  えーと・・・? 「マスターの・・・」 「サイカの・・・」  ちょ、ちょっと待て! 話せばわか・・・! 「バカァァァァァァァァァ!!!」 「アホォォォォォォォォォ!!!」  その瞬間オレの身体は宙に舞っていた。  あぁ、空がキレイだ・・・。 「?」  問題の当事者の片割れは何がまずかったのか分からないようで頭の上に『?』を浮かべていた。 「え? 男の人といっしょにお風呂入ったらいけないの?」  マドカの作ったカルボナーラを食べながらルイザが驚いたような声を上げる。  どうやら彼、いや彼女は野性の生活が長かったせいかそういった感覚に疎かったらしい。 「んー、でもビードルちゃんともいっしょにお風呂入ったりしてたけどなぁ」  あのビードルが逆に男だったのかよ・・・。 「と・に・か・く!」 「あんたもさすがにそれくらいは知っときなさいよ・・・。色々とまずいから」  そうだな、マジでまずいから・・・。  で、だ・・・。 「なぁ、オレの飯は・・・」 「マスターの分はありません!」  すげなく突っぱねられる。  オレを除いた3人がマドカの料理に舌鼓をうってる一方で、オレは両手を縛られ地面に転がされていた。 「あんたは少し反省してなさい!」  誤解だ・・・マジで男だと思ってたんだって・・・。  空腹に鳴る腹を抱えながらオツキミ山の夜は更けていくのだった。 駄文  コメディ回。(挨拶)  前回がシリアス回だった反動でこうなりました(^q^)。  若干のシリアス成分はありますがコメディ書くのは楽しいですね、うん。  今回はマドカだけじゃなくサイカの謎もピックアップされ、ますます謎は深まるばかり。  では、第七話、ハナダシティでお会いしましょう!

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