5スレ>>940

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5スレ>>940」(2012/03/07 (水) 22:27:17) の最新版変更点

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「博士。来ましたよ」  宴会から一夜明け、俺たちはオーキド博士が強化したという図鑑を受け取りに行った。  ちなみに、サヤは昨日はしゃぎすぎてダウンしている。  今頃は幸せそうな顔で爆睡しているだろう。 「おお、待っておったよ」  博士が差し出す図鑑を受け取る。  とりあえず外装を眺めてみるが、これといって変化はない。 「どんな機能がついたんですか?」  図鑑を起動させながら問いかける。 「マップを開いておくれ」  言われるままにマップを開く。  画面にはカントー地方の全体図が表示され、  端にはもえもんの分布や周辺情報を記録・表示するためのアイコンが並んでいる。  ちなみにこのマップ機能、今のところは俺の図鑑にのみ搭載されているらしい。  博士曰く、「孫たちに細かい情報の記録は無理じゃろうから搭載しなかった」とのことだが、  それじゃあ博士の孫たちは一体何を調べているんだろう?  旅先で聞いた噂もジムリーダーとの対決の話ばかりだし…… 「あれ? この点はなんですか?」  ミルトの声に導かれて画面を見ると、そこには見た事のない光点が表示されていた。  地図を拡大して見ると、光点が示す場所はマサラタウンの真ん中、  ちょうど俺たちがいるあたりだった。 「この光点は何を示しているんですか?」 「うむ、それこそが今回図鑑に搭載した新機能じゃよ」  博士は机からバッジを取り出す。 「このバッジには発信機が組み込んであっての。  お前さんの図鑑からバッジの位置がわかるようになっておるんじゃ」  驚きの声を上げる俺たちを得意そうに見ながら、博士は解説を続ける。 「以前はもえもんの移動を調べるのは困難じゃった。  捕まえて話を聞くということも不可能ではないが、  ルートを正確に知ることができるわけではないうえに効率が悪い」 「そこでこのバッジの登場というわけですか」 「その通りじゃよレーティ君!  耐水耐熱耐塵仕様、太陽光充電もできるから稼働時間の問題もクリアじゃ。  これさえあれば一度会ったもえもんはどこまでもトレースできるぞい!」  熱心に語る博士につられ、観客(=俺達)からも自然と拍手が漏れる。 「あれ~?」  そんな中、首をかしげているもえもんが一名いた。 「どうした、ファル?」 「えっとね~。そのバッジがあれば、どこにいるかいつでもわかっちゃうんだよね?」 「うむ、そうじゃ」 「追いかけようと思えば~、どこまでも追いかけられる?」 「うむ」  得意げにうなずく博士。しかし、俺の頭にはファルの言葉がひっかかった。  『どこにいるかいつでもわかる』『どこまでも追いかけられる』  こんなフレーズを最近どこかで聞いたような気が…… 「それって、この間テレビで見たんだけど~」  そうだ、最近ファルと一緒に見たテレビの特集。あれは確か―― 「すとぉかぁ? っていうやつじゃないの?」  ファルの言葉が響いた瞬間、確かに時が止まった。 「…………えっと」  ミルト、レーティ、ファルを順に見回す。  全員の目からは、『これ、使うの?』という無言のメッセージが伝わってきた。  うん、確かにこれは使いたくない。  俺たちの仕事はデータ集めであって、スト―キングじゃない。  だが、 「ではテストを頼むぞ、トウマ君!」  凍った空気もなんのその。  子供みたいに目を輝かせて頼んでくる博士を無下にできるだろうか? 「えっと、でもこれは……」 「すまんのう。他に頼める者もおらんでの……」  博士の口調が変わる。  説得、いや、泣き落としか。ああもう、断りづらい! -------------------------------------------------- 「えっと、バッジの位置表示がこれで、移動経路の表示が……」  およそ1時間後、俺たちの姿は1番道路にあった。  理由は簡単、博士の提案を受け入れることになったからだ。  いろいろと抵抗はしてみたが、結局は博士の泣き落としに屈する形になってしまった。  頼まれると断れない性格、いい加減なんとかしないとだめかもしれないな。  ミルトやレーティはおろか、  ファルにまで「仕方ないなぁこの人は」という目で見られてしまったし……。  ただ、バッジの使用については、  「もえもんの許可を得てからつける」という条件を付けることに成功した。  これで少なくともストーカー容疑で捕まることはない。  それだけがせめてもの救いだ。前向きにいこう、うん。  そんなわけで、現在は新機能のテスト中。  とりあえず仲間全員にバッジを着けてもらい、  トキワシティまで移動しながらいろいろ試すことにした。 「それにしても、博士もすごいものを作りましたね。  近くにいる私たちだけならともかく、マサラにいるミルトの位置もばっちりですよ」  俺の上を飛びながらレーティが言う。 「まったくだ。スト―キングツールなんか作ってないで他のことすればいいのに……」 「ふふっ……。機能自体は有用ですから、思いついたら作らずにはいられなかったのでしょう。  ところで……」  スッと高度を下げ、小声で話ができる距離まで下りてくるレーティ。 「ミルトの具合、そんなに悪いんですか? 昨日の感じでは、それほどでは……」 「普通に生活する分には大して問題ないんだが、  バトルの後なんかはダメージが残ったり、体調を崩しやすくなるんだ」 「そう、ですか……」 「昨日のことなら気にするなよ?  ダメージも特になかったし、そもそも今日の検査は今までの不調の原因を探るためだからな」 「ええ……」  ……ミルトの状態は、正直に言ってよくわからない。  元気にしている時があったかと思えば、不意に体調を崩す。  体調不良を隠しているだけかとも思ったが、  元気な時に出す力は病人が無理して出している力にはとても見えず、  マサラへの帰路だけでも何度も助けられた。  無理をさせたくないのに、無理をさせなければならない。  今回の検査で、こんな状況を打開する何かが見つかるといいのだけれど…… 「とにかく、できることからやっていこう。  お前の復帰だけでも、俺たちは大助かりなんだ。頼りにしてるぜ?」 「……はい。お任せください!」  レーティの表情にようやく明るさが戻る。  つられるように笑顔を返したそのとき、 「ご主人様~」  何やら慌てた様子でファルが飛んできた。  久しぶりの故郷だし、バッジのテストを兼ねてそのあたりに遊びに行ったのだが、 「どうした? 何かあったのか?」 「うん~。なんかね、みんながすっごく怖がってるの」 「怖がる? 一体何を?」 「えっとね~、すごく怖い顔をした萌えもんが、森の中を歩いてたんだって。  それも、す~っごくたくさんいたみたいなの!」 「このあたりの萌えもんじゃないのか?」 「見たことないって言ってた~。  それでね、その萌えもん達の中に、黒い服を着た人がいたらしいの~」 「黒い服!? それってまさか――」  ズンッ―――  言い終わらないうちに、背後から大きな音が聞こえる。  慌てて振り向けば、マサラの方角から黒い煙が上がっていた。  同時にポケギアが着信を知らせる。  発信者は――オーキド博士! 「博士! 何があったんですかっ!」 『詳しい状況はわからんが、研究所が萌えもんの集団に襲われとる!  研究員総出で抑えとるが、どのくらい持ちこたえられるかわからん。  すまんが、大至急戻ってきてくれ!』 「わかりました!」  通話を切り、ファルとレーティの方を向く。 「オーキド研究所が襲われてる。もしかしたらマサラ全体が危ないかもしれない!」  不安そうな顔が驚きに染まるが、構わずに言葉を続ける。 「マサラへ急ごう!  レーティは先行して状況を探ってくれ。ファルは俺と一緒に行くぞ。  この辺りにもマサラを襲った連中の仲間がいるかもしれない。十分注意しろよ!」 「はい!」 「は~い!」  頼もしい返事と共に、俺たちは1番道路を駆け出した。 -------------------------------------------------- ―20分前、マサラタウン― 「……退屈です」  ベッドに座ってぼーっとしていると、ついそんな言葉がこぼれました。  周囲にあるのはベッドがいくつかと、その間を仕切る白いカーテン。  まるで病院のようなここは、オーキド研究所の医療棟です。  人間と萌えもんの両方に対応した医療施設であり、  特に萌えもん関係の医療では最先端の設備を誇っています。 「マスター、今頃なにしてるのでしょうか……」  そんな場所で私が何をしているかといえば、健康診断です。  『せっかく帰ってきたのだから』というよくわからない理由で、  私たちは全員健康診断を受けることになりました。  このところ調子が悪い私が最初に診断を受けることになったのですが、  待ち時間って結構暇です。 「私もついていきたかったなぁ……」  口からはそんな願望が漏れますが、どうもかないそうにありません。  廊下から看護婦さんの足音が聞こえてきました。  どうやら、次の検査みたいです。 -------------------------------------------------- 『それじゃ、楽にしててくださいねー』  スピーカーから声が流れると、私が寝ている寝台がゆっくりと動きはじめました。  寝台が向かう先には、大きな筒状の機械があります。  機械はCTスキャンやMRIのものに似ていますが、この研究所の設備である以上、  ただの断層撮影装置ではないのでしょう。  最新鋭の装置みたいなので、ちょっと面白そうですが、  私の体はそんなに大掛かりな装置が必要なのでしょうか? (大きな病気だったら嫌だな……)  場合によっては、マスターにお供できなくなってしまうかもしれません。  それだけは絶対に嫌です。 『はい、終わりましたよ』  そんなことを考えている間に、検査は終わったみたいです。  流石最新鋭、早いですね。 『次の検査の準備はもうできているので、そのまま隣の部屋に行ってください』 「わかりました」  スピーカーからの声に答えて身体を起こした時、 ――ズン――  研究所に衝撃が走りました。 『な、何があったの!?』  スピーカーからは慌てた声が響き、扉の向こうからはベルの音が聞こえてきます。 「何があったんですかっ!」  急いで靴を履き、廊下へと飛び出します。  おそらくは何かの事故。直前の振動から考えて、爆発が発生した可能性もあります。  自慢ではありませんが、私たち萌えもんの力や能力は人間以上です。  事故現場での救助活動ならば、十二分にお役に立てるはずです。 「場所は……あっちですね!」  手近な窓から外を確認すると、研究棟の向こう側に煙を確認できました。  おそらく火災も発生しているのでしょう。煙の中に時折火の粉が混じっています。  研究棟には、博士やお父さんがいるはず―― 「急がないと!」  窓枠を乗り越え、外へ飛び出します。  着地と同時に全速力でダッシュ。最短距離で煙の方へと向かいます。  そして煙の発生源を視界に収めるべく、研究棟の角を曲がった時、 「え……?」  私の目に飛び込んできたのは、煙と炎を上げる研究所と、 「どうして……」  Rの文字が入った黒服――ロケット団の人達でした。 -------------------------------------------------- あとがき みなさまお久しぶりです。白です。 毎度毎度、投稿間隔が空いてしまってすみません。 ここまで読んでいただいた皆さんにはおわかりのことと思いますが、 今回の話ももう少し続くことになりました。 なぜマサラにロケット団がきたのか? 研究所の人達は無事なのか? マサラに急ぐトウマは間に合うのか? 次も大幅にお待たせすることになると思いますが、 見捨てずお待ちいただければ、そして次を楽しみにしていただければ、大変うれしく思います。 では、また次の話でお会いしましょう。

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