5スレ>>956-2

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「待って!」  突然の言葉にビックリした。  だってそれは、ボクの声じゃなかったから。 「待って・・・ください。まだ私が、戦えます・・・!」  いつの間にボールから出て来たのか、マドカちゃんがボクの後ろに立っていた。 「バカ、何言ってんだ! お前、そんな体で・・・」 「マスター、ひとつ聞かせてください。あのスターミーは水タイプの技をもっていますか?」  マドカちゃんは、なんであんなボロボロの体でも戦えるんだろう。 「おそらく、いや『確実に』持っていない。  カスミはバトル前に『水タイプポケモンで攻めまくる』ことがポリシーって言ってたよな?  水タイプポケモンが必ずしも水タイプの技を使うってわけじゃないが、  向こうの性格を考えれば、ここまでその水タイプの技を使ってこないってのはおかしい」 「・・・ですよね。ならこちらにも勝機はあります!」  弱点の技を受けて立ってるのもやっとみたいなのに・・・。 「・・・分かった。けど無理だと思ったらすぐ止めるからな」 「はい!」  そう言ってニッコリ笑うマドカちゃんがまぶしかった。  そして、ちらっとボクを見たその目。 『大丈夫だよ』  ・・・なんとなくだけどそう言ってくれた気がした。  もしかしてマドカちゃん・・・。 「今度は私が相手です!」 「へぇー、体力だけは人一倍あるみたいじゃない。でもスターミーとヒトデマンをいっしょにしてたらもっと痛い目みるわよ!」  カスミさんの言葉を受けて、スターミーが攻撃を開始する。  すごい・・・! 「れいとうビーム」と「10まんボルト」が縦横無尽に飛び交う中をスイスイと抜けていく。  しかも「れいとうビーム」の余波を受けないギリギリの所を選んでる。 「くっ、スターミー! もっと撃ちなさい!」 「あなたの攻撃は大振りです! それじゃ撃つほどに隙ができますよ!」  言われてみれば、ヒトデマンの「みずのはどう」はすごい数の水弾を放ってたけど、スターミーの攻撃は違う。  「れいとうビーム」も「10まんボルト」も1発の威力はすごいけど、どっちも単発の攻撃だし、連発はできても少しの間は空く。  そのタイミングをもう見抜いてるなんてやっぱりマドカちゃんはすごい! 「はぁっ!」  ガッ!  攻撃の嵐を抜けたアサギちゃんの爪がスターミーに襲いかかる!  ヒトデマンと違ってリフレクターもなかったみたいだし、初めて攻撃が通ったよ! 「スターミー!」 「大丈夫だ、問題ない」  カスミさんの心配そうな声にスターミーは短く返す。  その言葉どおり、スターミーにはダメージがないみたい。ううん、違う、あれは・・・。 「まさか「じこさいせい」までもってるとはな・・・」  お兄ちゃんが苦々しい声で呟く。  お兄ちゃんの言うとおり、スターミーの傷が見る見るうちにふさがっていく。  やっと攻撃が通ったのに「じこさいせい」で回復されちゃうなんて・・・。 「だったら、回復できなくなるまで攻撃するだけで・・・っ!?」 「が、ダメ・・・っ」  再度攻撃をしかけようとしたマドカちゃんだけど、スターミーが言葉を発した瞬間動きが止まる。  その顔は驚いたような表情になっていて・・・どうしたんだろう? 「か、体が・・・っ!」 「てめーはオレを怒らせた」  その声は相変わらずの棒読みだったけど、それが逆に不気味だった。  もしかしてマドカちゃん、体が動かないの!? 「「サイコキネシス」、だと・・・? マジで技のデパートだな・・・」 「スターミーが捕まえてぇ、リザードが画面端ぃ」 「きゃっ・・・! ぐっ!!」  変なかけ声といっしょにマドカちゃんの体がガクンッ!と揺れ、一気に壁に叩きつけられる。  ・・・強すぎる、強すぎるよ。  マドカちゃんなら勝てると思ったのに、こんなに相手が強いなんて・・・。 「どう? これでもまだ戦う? 今ならサレンダー負けを・・・」 「・・・っだです。まだ、私は戦えます!」  カスミさんの言葉を遮って、マドカちゃんの声が響く。  なんで・・・? なんでまだ戦うの・・・?  さっきのダメージでもう戦う力なんてないはずなのに・・・。 「なんで、なんでまだ戦えるの・・・?」  知らず知らずのうちに声が出ていた。  それといっしょに涙があふれてくる。  自分の弱さに、無力さに。  戦えない自分の歯がゆさに。 「・・・たぶん、お前のためだろうな」  !? ボクの自問にお兄ちゃんが答えてくれた。  ボクの、ため・・・? 「だいたいだがお前の考えてることは分かってるつもりだ。  おおかた戦いたいのに戦えないってところだろ?」  お兄ちゃんの言うとおりだった。  やっぱりお兄ちゃんには全部見透かされてたんだね・・・。 「もし自分が負けたら、お前にまで戦う番が回ってくるかもしれない。  あいつだって、さすがにオレが無理矢理戦わせるようなことはしないって思ってるだろうけどな。  けど、お前はどうだ? もしマドカが負けたら自分を責めてたんじゃないか?」  ・・・たぶんそうだと思う。  だってボクが戦っていれば、もしかしたら勝てたかもしれない。  ボクが戦えないから、お兄ちゃんが負けてしまった。  そういうふうに自分を責めてたと思う。 「だからあいつは戦ってるんだと思う。お前に重荷を背負わせないために。  オレは別にお前が戦えないからって責めるつもりはないし、お前はお前のペースで進めればいいと思ってる。  ただ、あいつの想いだけは知ってて欲しくてな」  そっか・・・、さっきのマドカちゃんの目。  あれはやっぱり『大丈夫』だって言ってくれてたんだ。  ボクを、ボクなんかを守ってくれてたんだ・・・。  『お兄ちゃんはボクを無理矢理戦わせたりしない』  それを心のどこかで望んでたこんなボクを・・・! 「・・・くぅっ!」 「強靱、無敵、最強ぅ」  うつむいていた顔をあげてフィールドを見れば、壁に貼り付けられたマドカちゃんに「れいとうビーム」が放たれそうになっていた。 「・・・ここまでか」  お兄ちゃんが誰ともなしにつぶやく。 「これで終わりよ! スターミー、決めちゃい・・・」 「待った、オレの負け・・・」  カスミさんの指示を遮ってお兄ちゃんが自分の負けを宣言しようとする。  それより早く、 「ダメ!」  声が響く。  しんと静まりかえるジムにボクの荒い息だけが谺する。 「ボクが・・・ボクが戦う!」  ボクの叫びにお兄ちゃんが優しい表情で振り向く。 「・・・無理するな。そんなに震えて、怖いんだろ?」  お兄ちゃんの言うとおり、自分が戦うという決意とは裏腹に、ボクの体はガタガタと震えていた。  自分が戦うという恐怖に。  けど、違う。 「怖いよ・・・怖いよ! けど、それじゃダメだよ・・・」  確かに戦うことが怖い。マドカちゃんやアサギちゃんでも適わなかった相手に自分が勝てるなんて思えない。  自分を守ってくれるみんなの優しさに甘えて逃げてしまいたい。  でも、それじゃいつまでたってもこのままだよ。  一度逃げてしまえば、きっとその甘えから抜け出せなくなっちゃう。  みんなが支えてくれる。みんなが守ってくれる。  だから、だからこそ、ボクはそんなみんなに応えなくちゃいけないんだ! 「ボクが戦う! 今度はボクがお兄ちゃんたちの力になる!」  そう告げたボクの頭に、お兄ちゃんの手が優しく置かれる。 「あいつは強いぞ」 「うん」 「マドカたちでも適わない相手だぞ」 「・・・うん」  お兄ちゃんの声は変わらず優しい。  やっぱりボクなんかじゃ勝てない?  ボクなんかじゃ、お兄ちゃんの役に立てない? 「ルイザ」  名前を呼ばれ、顔を上げる。  お兄ちゃんはまっすぐにボクの目を見ていた。  優しい、けれどそれだけじゃない。  上手く言えないけど、ボクの弱さも臆病さも全部受け入れてくれるようなそんな目だった。  だからボクも目を逸らさずにその目を見る。  弱さや臆病さだけじゃない、ボクの中にある想いを知ってほしいから。 「・・・よし。いくぞ!」 「・・・うんっ!」  そんなボクの表情を見てお兄ちゃんがニッと笑って、ワシャワシャと頭を撫でる。  いつもより少し強くて荒っぽいのにぜんぜん嫌な感じがしなかった。 「つーわけだ、選手交代だな」  お兄ちゃんの言葉を受けてフィールドに出たところで、マドカちゃんが壁から解放される。  今まで待っててくれたのかな? すごく強いけどもしかしたら良いポケモンなのかも。 「今日の俺は紳士的だ。運がよかったな」  ・・・言ってることは相変わらずよく分からないけど。 「ルイザちゃん」  マドカちゃんが戻り際ボクに声をかける。  その目は心配そうだけど、どこか嬉しそうな感じもした。 「頑張ってね! けど無理しちゃダメだよ」 「うん、ありがとう。マドカちゃんもゆっくり休んでて!」  今、ボクがフィールドに立って相手と向き合っている。  それはお兄ちゃんがボクを信頼してくれたっていうこと。  ううん、お兄ちゃんだけじゃない、マドカちゃんも、きっとアサギちゃんも。  自分の力のせいでビードルちゃん以外には信頼なんてされたことはなかった。  そんなボクにとって、それはすごく嬉しいことだった。 「ふーん、ポケモンとはずいぶん良い信頼関係を作ってるみたいじゃない。けどそれとこれとは話が別よ! スターミー!」 「見せてもらおうか、挑戦者のポケモンの性能とやらを」  まったく覇気のない無機質な目と声。その静かさが逆にプレッシャーとなってくる。  けど戦うって決めたんだ! 怖がってる場合じゃない! 「来るぞ!」  お兄ちゃんの声と同時にすさまじい冷気が襲ってくる。 「焦るな! 直線攻撃なら左右に動いて避けろ!」  指示通りに左右に動いて攻撃をかわしていく。  今までマドカちゃんたちの戦いを見ていた分、だいたいの攻撃の避け方は分かる。  これならいける・・・かな? 「さすがはピカチュウね、すばしっこさはスターミーにも負けてない、か。でも逃げてるだけじゃ勝てないわよ!」  そうだ、避けてるばっかりじゃダメだ。  攻撃しなきゃ、けどボクの攻撃は・・・。  考えてる場合じゃない、やってみなきゃ! 「えぇぃっ!」  ドカッ!  無数のビームの間をなんとか抜けて「でんこうせっか」で攻撃する。  これで少しはダメージが・・・! 「なんなんだぁ今のは?」  効いて、ない!?  ボクの体格じゃ体当たりしてもそんなにダメージはないと思ってたけど・・・。  まさかまったくダメージがないなんて・・・。 「スターミーの防御力を甘くみないでよね! そんな体当たりどうってことないわよ!」  そんな・・・。  「でんこうせっか」が効かないんなら、ボクの使える技は・・・。 「まぁ、電気タイプの技でも使えば別でしょうけどね」  ビクッ!  その言葉に体が震える。  確かに電気タイプの技はスターミーにとって相性の良い技。  けど、ボクの電気は・・・。  脳裏に傷ついたビードルちゃんの姿が浮かぶ。  ボクの電気のせいでケガをさせてしまったビードルちゃんが。 「なによ、もしかしてそのピカチュウ電気使えないの? あははっ、そんな子をスターミーの前に出すなんて無謀もいいところよ」  俯いて黙ってしまったボクに浴びせられる罵声。  電気を使えばもしかしたら勝てるかもしれない。  けど、もしまた誰かを傷つけるようなことになったら・・・。  やっぱりボクに電気は・・・。 「うるせぇよ」  お兄ちゃんの声が響く。 「使えないんじゃない、お前を倒すのに電気なんていらないだけだ」 「強がりもここまでくると大したもんね」  強がりなんかじゃない。  こんなときでもボクを庇ってくれている。  その優しさに応えなきゃ! 「・・・いっけぇっ!」  再び「でんこうせっか」で体当たりを仕掛ける。  今の時点で、電気を使わないボクの技はこれだけしかない。  電気を使えない以上、ダメージが通るまでこの技を使い続けるしかない! 「貧弱貧弱ゥ」  何度体当たりを仕掛けてもスターミーは余裕の態度を崩さない。  けど、そんなの関係ない。  マドカちゃんだってアサギちゃんだって限界まで戦ってた。  ボクだってこんなところであきらめてられない!  限界までたたかっ・・・!? 「いささか飽きた」  スターミーの言葉と同時にボクの体の動きが止まる。  しまった、これは・・・。 「エネミーコントローラー」  ・・・「サイコキネシス」じゃなかったの? 「ちょっとスターミー! 変な技名つけちゃダメって言ってるでしょ!」 「俺からすればまだ地味すぎるぜ」  そういう問題かなぁ。  ってそんなこと考えてる場合じゃない。なんとか抜け出さないと!  体をねじったりしてなんとか束縛から抜け出そうとするけど、念動力で捕らえられた体はビクともしない。 「← → A B」 「わわっ!」  声と同時に体が操られる。けどAとBってなんだろう・・・。 「このコマンドによって、ピカチュウを相手のサイドにシューッ」 「っ・・・うわぁっ!」  ものすごい勢いで体が宙を飛び、壁に叩きつけられる。 「かはっ・・・!」  壁に激突した衝撃に息が詰まり、背中に走るすさまじい痛みに意識が朦朧とする。  マドカちゃんはこんなのに耐えてたんだ・・・。 「くっ・・・」 「ルイザ! 大丈夫か!?」  歯を食いしばってなんとか痛みをこらえると、頭上からお兄ちゃんの声が降ってきた。  そっか、トレーナー席の壁に叩きつけられたんだ・・・。  見上げたその顔はまるで自分が痛みを感じているかのように歪んでいた。  それはまるでボクをバトルに出したことを悔いているようだった。  大丈夫だよ、ボクは後悔なんてしてないし、まだ戦える!  けど、この状態は・・・。 「動けっ、動け!」  体をなんとか動かそうとするけど指一本たりとも動かせない。  こんなに念動力が強いなんて・・・! 「少し、頭冷やそっか・・・」  そうこうしてる内に、スターミーがどんどん近づいてくる。目の前に冷気を凝縮させながら。  あんなの食らったら頭どころか全身カチコチになっちゃう。  体さえ動かせたら・・・!  ・・・ううん、体が動かなくても攻撃はできる。  電気さえ、使えれば―――。  でもこの位置じゃお兄ちゃんまで巻き添えになっちゃう。  あの日、ボクのせいでケガをしたビードルちゃん。  どんなに声をかけてもその目は閉じたままで起きてくれなかった。  その姿がお兄ちゃんの姿に変わっていく。  イヤだよ・・・そんなの絶対イヤ! 「心も体も寒い・・・」  あふれ出る冷気がボクの足下にまで漂ってくる。  たぶん技を撃つまでもう少しの猶予もない。  なんとか、なんとか抜け出さないと・・・っ! 「・・・ザ! ルイザ!」  あまりに必死になっていたせいか、ボクを呼んでいた声にまったく気づかなかった。  ・・・お兄ちゃん? 「ルイザ、使え!」  使えって、何を? ・・・もしかして。 「電気を使うんだ!」  ドクン!  心臓が高鳴る。  使え、って・・・電気を?  ボクは電気は・・・それにこの位置じゃお兄ちゃんが・・・。 「オレを巻き添えにするのが心配か?」  お兄ちゃんは笑ってそういった。  やっぱりお兄ちゃんにはかなわない。ボクの考えてることなんて全部お見通しなんだもん。  でもそれなら分かるでしょ? ボクの電気は・・・。 「耐えてみせるさ」  ・・・え? 「お前が嫌だったのは自分の電気で誰かが傷つくことだろ?  オレはあのビードルみたいにはならない。お前の電気ならいくらでも耐えてやる」  でも・・・でも! 「オレは絶対にお前を悲しませたりしない。オレを信じろ」  お兄ちゃんの目はどこまでも優しくボクの目を見つめていた。  ・・・そうだ、あのときお兄ちゃんの手を取ったのはお兄ちゃんを信じたからだ。  お兄ちゃんが差しのべてくれた手。そして今も差しのべてくれている手。  その手をもう一度掴みたい。だから、ボクは―――! 「とどめよ! スターミー!」 「エターナルフォースブリザ・・・っ!?」  とどめの「れいとうビーム」を放とうとした瞬間、スターミーの顔が驚愕に歪む。  ここまで無表情だった彼女が初めて見せた表情だった。 「どうしたの、スター・・・って何よ、これ・・・!?」  カスミさんも事態に気づく。  いつの間にかバトルフィールドの天井には灰色の雲が立ちこめていた。 「これは、まさか! スターミー早く撃ちなさ・・・」  自分の力を使うことがイヤだった。  自分の力で他人を傷つけてしまうことが怖かった。  でも、それ以上に、 「うあああああぁぁぁぁぁっ!!!」  ボクを信じてくれるお兄ちゃんを信じられないことの方が、もっとイヤだ! 「認めたくないものだな…、自分自身の…若さ故の過ちというものを…」  「れいとうビーム」が放たれる直前、ボクの電気がスターミーを貫く。  そしてそのまま崩れ落ちるスターミー。  なんだか、最後まで余裕があった気がするんだけど・・・。 「はぁっ、はぁ・・・勝った・・・?」  地に伏したスターミーは倒れたままピクリとも動かない。  そしてそのスターミーに慌てた様子で駆け寄るカスミさん。  ・・・勝てた。勝てた! やったよ、お兄ちゃん! 「お兄ちゃん、ボク! 勝っ・・・!?」  お兄ちゃんを信じたことで自分の力を克服できたこと、そして勝てたこと。  その嬉しさを伝えたくて振り向いたボクの目に飛び込んできたのは、トレーナー席の縁を掴んだまま崩れ落ちるお兄ちゃんの姿だった。 「お兄ちゃん・・・? お兄ちゃんっ!」  急いでお兄ちゃんの元へ戻り声をかける。けれどもお兄ちゃんはぐったりとしたまま応えてくれない。  肩を揺すっても、いつものように笑いかけてくれない。  そんな、せっかく克服できたと思ったのに・・・。  やっぱりボクの電気のせいで、ボクの・・・ボクのせいで! 「・・・ったく、まさか、これほどとは、な。予想外、すぎるだろ・・・」  ・・・え? 「ほら、どうだ? 耐えてみただろ?」  そういって笑いながら頭を撫でてくれる。  それはいつものお兄ちゃんの姿だった。 「・・・っ! お兄ちゃぁん!!」  泣きながらお兄ちゃんの胸に抱きつく。  よかった、本当によかった・・・! 「・・・ふん、勝負は勝負だからね。ほら、持っていきなさいよ」 「あぁ、確かに」  相変わらずぶすっとした顔のままカスミがブルーバッジを差し出す。  まぁ、仮にも正式なジム戦だったわけだしな。動機はさておき。 「言っとくけどトゲピーのことは許したわけじゃないんだからね!」  だろうなぁ。あれは限定品だって言ってたし、なんとか代わりになりそうな物を探して渡すしかないか。 「それにしてもそのピカチュウ「かみなり」まで覚えてるとかどんだけなのよ」  身を屈めルイザをジト目で見ながら言うもんだから、その視線に晒されたルイザはオレの後ろに隠れる。怖がらすな、怖がらすな。  しかし、あれにはオレも驚いた。  新聞にも載ってたトキワの森の落雷事故。あれがルイザの電気だとしたらその力は相当なものだと覚悟してたが、まさか「かみなり」だったとは。  危うく、オレもノックダウンするところだった。 「えっと、その・・・」  ルイザがオレの後ろから申し訳なさそうに口を開く。  正式なバトルだったんだし、それは向こうも承知してたんだから申し訳なさそうにする必要もないだろうに。  そう思ったが、 「あれは・・・「でんきショック」なの」 「「え」」  ルイザの口から出た言葉はオレたちの予想の斜め上をいく言葉だった。  思わずカスミと声がハモる。  どう見ても上空から雷が落ちたんだが・・・。っていうか「10まんボルト」ですらないのかよ。 「な・・・あんたねぇ!」  カスミの目がギロリとオレをにらむ。  そうだよな、こんなこと言われたらどう考えても挑発にしか聞こえないもんな。  くっそ、バトルに負けたことで多少は頭が冷えた感じだってのにまた・・・。 「よぉ、カスミ、さっきの話だけどな・・・。ってあれ? サイカ?」  再び一触即発という感じになった場の空気を読まずに割って入った声。 「アマネ!? なんでお前がここに・・・」  いまいち状況が分からないという感じでジムの入り口に立っていたそいつはアマネだった。 駄文  というわけでハナダジム編もといルイザ回でした。  うーん、13歳の少女の頭の中を書くのはおじさんには難しいです、はい。  今回のように手持ちキャラには最低1回は見せ場(視点変更)を作っていきたいので、他のキャラの見せ場もお楽しみに!  あ、ボクの中のヒトデマンとスターミーはこんな子です(激駄)  では、第八話、25番道路でお会いしましょう!

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