2スレ>>538

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「……飽きた。」 「マスター? 何を唐突に。」 今日7組目のチャレンジャーを撃退し、やっと調子の出てきた昼下がりの午後。 マスターがとうとうボヤき初めてしまった。 そうよねぇ、ここ1年あまりチャンピオンとして君臨し、 チャレンジャーを悉く返り討ちにしてきた私たちにとっては、最近は既に作業と化した仕事だわ。 「……あぁ、チャンピオンがじゃない、この部屋の内装の事だ。」 ……本当にこの人の思考は判らないわ。 無機質な機械をむき出しにしたこのチャンピオンルーム。 確かに、見慣れた……というよりも見飽きてしまったわ。 「そうだ、……少し戻ってろ。」 と言って、いきなりボールに私を戻そうとする。 いつもの事なので慣れてしまったけれど。 しばらくして何かをする音が響き始めた。 ――― 3時間あまりが過ぎ、私も怠惰な昼寝から目を覚ました頃。 「……出てきていいぞ。」 深く紫煙を燻らせるいつもの吐息の後、静かに語りかける言葉。 マスターの癖は知っているわ、言葉を話す前に必ず煙草で落ち着いてから話すのよ。 あれで結構照れ屋だったり……。 「早く出て来い。」 どうやら私の笑いが聞こえてしまっていたみたいね。 普段通り気だるげに出て……、私は目を疑うことになる。 ―――  ~3時間前~ 思いついたのはよかった。 ……が、ダルい。 ……引っ込めてしまった手前、やるしかないか。 「……俺も丸くなったか。」 新しい煙草を咥え、俺は昔の仕事道具であるチェーンソウを振り上げた。 ――― 本来私は森に住む狐。 狭く無機質な部屋に押し込められるのは好みじゃないわ。 でもこの部屋なら……、と思える風景が広がっていた。 目を疑いもする。 3時間足らずで無機質な機械ばかりの部屋が……。 見慣れた樹木の茂る見事な森に変わっていたのだから。 さすがに部屋の広さは変えられず、壁面はペンキで描いた美しい森の絵で補っている。 「これはマスターが?」 ……ふぅ……と、近くの木に寄りかかり静かに紫煙を吐き出すマスター。 これを肯定だと判る様になったのはこのリーグに挑戦する少し前の事。 無口で無愛想、無駄に凝り性で何を考えているか判らず、 思ったら確実に実行するある種の天才。 ……これでもう少し、私の事……。 「……機械ばかりだと息が詰まるだろ。」 私の頭に手を置き、まるで私の故郷を知っているかのような言葉を紡ぐマスター。 「お礼なんかいわないわよ。」 わしゃわしゃと、頭を撫でるマスターの仕草は私を宥め、照れ隠しをする時の物。 ……本当に、このマスターのいい所の判らない人間が可哀想ね。 マスターに背を預け寄りかかりながら、木々の香りを少しの間だけ私は楽しんでいた。 ――― ~1時間ほど前~ 「まったく……俺は何をしてるんだ……?」 トレーナーをするまでは絵画と彫刻で生計を立てていたのは知るものの少ない所だ。 匂いがほとんどない自然素材のペンキで壁を塗り固めながら、 自分の行動を少しばかり疑問視しなければならなくなった。 しばらくし、自身でも改心のできと胸をはれる絵画を描くことができた。 「…………」 新しい煙草を取り出し、……そこで気がつく。 ……木の葉と草がないじゃないか……。 四天王やワタルに願い出て大量の木の葉と土、 そして森の草花を集め終わるのはキュウコンの目覚めるほんの15分前。 ……本気になったこの男の執念はまさに怒涛の勢いであった。 ――― 後書きと銘打った言い訳。 あの、はい。 シリアスじゃないです。 2個前くらいからそうですね。 ダークでもシリアスでもない理由は、友人からの注文があったせいです。 このシリーズを書き終えたらシリアスに戻るかもしれません。

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