2スレ>>556

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「ん……」  気がつくと、私は自分の巣に戻ってきていた。  日は地平線の向こうから昇ってきていた。  ……? 私は一体……。  一つずつ、思い出せるところから順番に頭の中を整理していく。  私は……私は……トレーナーの萌えもんに負けて……。 「――っ!!」  はっきりと思い出した。  少年は。彼の萌えもんでない私を助けてくれた、あの少年はどこか。  形振り構わず、私は巣から飛び出した。  周囲の気配を探る。 <……ザッ>  足音がした。  もしや、期待に胸が膨らむ。 <ザッ……ザッ……>  なおも近づく足音……誰の物かはよく分からない。  全身系を集中させ、足音の主を探った。 <ザッ……ザッ……ザッ……>  ……。 「違う……」  少年の足音とは似ても似つかない。  そしてふと、私はあることに気がついた。  ……どうして? 「こんなに残念なの……?」  どうしてこんなにもがっかりするのか。理由は分からなかった。  でも、分かることもあった。 「会いたいんだ……」  言葉にすることで意思を明確に。 「私は……あの男の子に会いたい……」  そんな気持ちが私の中で燻り始めた。  しかし、名前も知らない少年を探すのは無謀なことだった。  名前が分かれば誰かに尋ねよう。  出身地が分かればそこに行こう。  だが、少年との接点は助けてもらったことただ一度のみ。  一体これでどうやって少年を探せばよいのだろう。 「……私の……バカ」  こんな想いになるのならすぐに名前を尋ねればよかった。  後悔の念が私の心に影をさす。  一度光を遮ると、影は貪欲に肥大していく。 (ふるふる)  頭を振ってマイナスな思考を払い落とす。  ……前向きに。  いつか昔、誰かに言われたことのある言葉だ。  もう声すらも思い出せないけれど、きっと私の大切な人の言葉だ。  だって、そうでなければ覚えているはずがないのだから。  だから前向きに。 「……接点は一つ……」  ならばやるべきことは自ずと絞られる。  違う。  もとよりそれしか方法はなかった。  ……そうと決まれば。  私は後ろ向きの感情を置き去りにして足を踏み出した。 「よいしょ……」  僕は虫萌えもんたちを数人背負って、萌えもんセンターを目指していた。  最近はいつもやっていることだった。  始まりは一週間くらい前、友達とかくれんぼをしていた時である。  隠れるのが大の得意だった僕は、友達が見つけに来れないようなところを探していた。 「あっ」  背の高い草むらに隠れるようにして、小さな洞穴があった。  ……きっとここなら見つからない。  僕は草むらを掻き分けて穴に入る。  体の小さい僕が少し屈んで歩いていけるくらいの大きさだった。  ……暗い。  表の草が日の光を妨げているため、洞窟の中は薄暗く、視界は僅かに一メートルにも満たなかった。  でもそれが僕の探している隠れる場所にはピッタリだった。  あとは、オニが降参するまでここで待っていればいい。  でもきっと、降参するまで長いだろうから……。  僕はほとんど真っ暗な洞窟の中をそのまま奥へと突き進む。  どこまで続いているのか気になったのだ。 <……ハァ……ハ……>  そんな僕の耳に荒い息遣いのような、そんな音が聞こえてきた。  その音は洞窟を奥に行くにつれて次第に大きくなっていき……。 「あれ……?」  少しばかり開けた場所に出た。  と言っても、洞窟の中に変わりはない。  ただ、どこからか光が差し込んでいるのか、空洞全部を見渡すことが出来た。  そして、僕は見つけてしまう。 「……」  空洞の更に奥、一人の萌えもんがつらそうに乱れた呼吸を繰り返している。  その周りには同じ種類の萌えもんたちが、それを見守るように囲んでいた。  それは、どの萌えもんもあの子を助けられない、そう語っているように見えた。  胸の奥に刺さっていた棘が震えた。 「――っ」  いつかのつらい記憶が頭に蘇る。  たすけて、たすけて。  もはや呪いとなった記憶が頭の中を縦横無尽に乱れ飛ぶ。 「くっ……」 <――!!>  僕の苦悶が一人を囲んでいた萌えもん達の注意をひきつけた。  ……あ。  その全ての鋭い視線が、彼らの願うような視線が僕の呪いを抑え付ける。  とたんに湧き上がるのは、助けなければというただ一言。  ここで見て見ぬ振りをしたら。  きっと彼らは僕を恨む。恨んで恨んで呪いを残す。  呪いは僕の体を蝕んでいつか僕を殺してしまう。  怖かった。  だから僕は見捨てられなかった。  よく人から優しいと言われるけれど、それはこんな後ろ向きな理由から生まれ出たものだった。  優しくしなければ――。  そうして僕は終わりのない苦行に手を伸ばしたのだった。 <……ざわ……ざわざわ>  何やら萌えもんセンターの辺りが騒がしかった。  何があったのか聞きたかったけれど、知らない人と話をすることは出来なかった。  だから何で騒いでいるのか僕には分からない。  事件でも起きたのかもしれない。  けれど、そんなことよりも。  背負った萌えもんたちのほうが僕にとっては大事だった。 <ウィーン>  萌えもんセンターの自動ドアが開く。 「……あら、キミは」  受付のお姉さんが僕を見る。  僕は返事もせずに受付まで歩いて、背負った萌えもんたちを引き渡した。  そして、気になったことを尋ねてみた。 「あ、あの……表……騒がしい……?」 「表? 騒がしい? ……あ、それなんだけどね」  お姉さんは萌えもんたちをラッキーに渡すと、僕をセンターの奥に案内してくれた。  よく分からない漢字のついた扉の向こうには、一人の萌えもんが、ベッドに横たわって眠っていた。 「この子、昨日キミが連れてきてくれた子なんだけど……」  僕は近くで、眠っている萌えもんの顔を見た。  それは…… 「ニドラン……?」 「そう、そのなかでも女の子だけどね」 「……どうしたの?」  喋るのはニガテだったけど、どうしてか言わなきゃと思う言葉は口をついて出た。  ニドランを撫でながら、お姉さんはワケを話しはじめた。

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