「2スレ>>556」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「2スレ>>556」(2007/12/20 (木) 23:47:44) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
「ん……」
気がつくと、私は自分の巣に戻ってきていた。
日は地平線の向こうから昇ってきていた。
……? 私は一体……。
一つずつ、思い出せるところから順番に頭の中を整理していく。
私は……私は……トレーナーの萌えもんに負けて……。
「――っ!!」
はっきりと思い出した。
少年は。彼の萌えもんでない私を助けてくれた、あの少年はどこか。
形振り構わず、私は巣から飛び出した。
周囲の気配を探る。
<……ザッ>
足音がした。
もしや、期待に胸が膨らむ。
<ザッ……ザッ……>
なおも近づく足音……誰の物かはよく分からない。
全身系を集中させ、足音の主を探った。
<ザッ……ザッ……ザッ……>
……。
「違う……」
少年の足音とは似ても似つかない。
そしてふと、私はあることに気がついた。
……どうして?
「こんなに残念なの……?」
どうしてこんなにもがっかりするのか。理由は分からなかった。
でも、分かることもあった。
「会いたいんだ……」
言葉にすることで意思を明確に。
「私は……あの男の子に会いたい……」
そんな気持ちが私の中で燻り始めた。
しかし、名前も知らない少年を探すのは無謀なことだった。
名前が分かれば誰かに尋ねよう。
出身地が分かればそこに行こう。
だが、少年との接点は助けてもらったことただ一度のみ。
一体これでどうやって少年を探せばよいのだろう。
「……私の……バカ」
こんな想いになるのならすぐに名前を尋ねればよかった。
後悔の念が私の心に影をさす。
一度光を遮ると、影は貪欲に肥大していく。
(ふるふる)
頭を振ってマイナスな思考を払い落とす。
……前向きに。
いつか昔、誰かに言われたことのある言葉だ。
もう声すらも思い出せないけれど、きっと私の大切な人の言葉だ。
だって、そうでなければ覚えているはずがないのだから。
だから前向きに。
「……接点は一つ……」
ならばやるべきことは自ずと絞られる。
違う。
もとよりそれしか方法はなかった。
……そうと決まれば。
私は後ろ向きの感情を置き去りにして足を踏み出した。
「よいしょ……」
僕は虫萌えもんたちを数人背負って、萌えもんセンターを目指していた。
最近はいつもやっていることだった。
始まりは一週間くらい前、友達とかくれんぼをしていた時である。
隠れるのが大の得意だった僕は、友達が見つけに来れないようなところを探していた。
「あっ」
背の高い草むらに隠れるようにして、小さな洞穴があった。
……きっとここなら見つからない。
僕は草むらを掻き分けて穴に入る。
体の小さい僕が少し屈んで歩いていけるくらいの大きさだった。
……暗い。
表の草が日の光を妨げているため、洞窟の中は薄暗く、視界は僅かに一メートルにも満たなかった。
でもそれが僕の探している隠れる場所にはピッタリだった。
あとは、オニが降参するまでここで待っていればいい。
でもきっと、降参するまで長いだろうから……。
僕はほとんど真っ暗な洞窟の中をそのまま奥へと突き進む。
どこまで続いているのか気になったのだ。
<……ハァ……ハ……>
そんな僕の耳に荒い息遣いのような、そんな音が聞こえてきた。
その音は洞窟を奥に行くにつれて次第に大きくなっていき……。
「あれ……?」
少しばかり開けた場所に出た。
と言っても、洞窟の中に変わりはない。
ただ、どこからか光が差し込んでいるのか、空洞全部を見渡すことが出来た。
そして、僕は見つけてしまう。
「……」
空洞の更に奥、一人の萌えもんがつらそうに乱れた呼吸を繰り返している。
その周りには同じ種類の萌えもんたちが、それを見守るように囲んでいた。
それは、どの萌えもんもあの子を助けられない、そう語っているように見えた。
胸の奥に刺さっていた棘が震えた。
「――っ」
いつかのつらい記憶が頭に蘇る。
たすけて、たすけて。
もはや呪いとなった記憶が頭の中を縦横無尽に乱れ飛ぶ。
「くっ……」
<――!!>
僕の苦悶が一人を囲んでいた萌えもん達の注意をひきつけた。
……あ。
その全ての鋭い視線が、彼らの願うような視線が僕の呪いを抑え付ける。
とたんに湧き上がるのは、助けなければというただ一言。
ここで見て見ぬ振りをしたら。
きっと彼らは僕を恨む。恨んで恨んで呪いを残す。
呪いは僕の体を蝕んでいつか僕を殺してしまう。
怖かった。
だから僕は見捨てられなかった。
よく人から優しいと言われるけれど、それはこんな後ろ向きな理由から生まれ出たものだった。
優しくしなければ――。
そうして僕は終わりのない苦行に手を伸ばしたのだった。
<……ざわ……ざわざわ>
何やら萌えもんセンターの辺りが騒がしかった。
何があったのか聞きたかったけれど、知らない人と話をすることは出来なかった。
だから何で騒いでいるのか僕には分からない。
事件でも起きたのかもしれない。
けれど、そんなことよりも。
背負った萌えもんたちのほうが僕にとっては大事だった。
<ウィーン>
萌えもんセンターの自動ドアが開く。
「……あら、キミは」
受付のお姉さんが僕を見る。
僕は返事もせずに受付まで歩いて、背負った萌えもんたちを引き渡した。
そして、気になったことを尋ねてみた。
「あ、あの……表……騒がしい……?」
「表? 騒がしい? ……あ、それなんだけどね」
お姉さんは萌えもんたちをラッキーに渡すと、僕をセンターの奥に案内してくれた。
よく分からない漢字のついた扉の向こうには、一人の萌えもんが、ベッドに横たわって眠っていた。
「この子、昨日キミが連れてきてくれた子なんだけど……」
僕は近くで、眠っている萌えもんの顔を見た。
それは……
「ニドラン……?」
「そう、そのなかでも女の子だけどね」
「……どうしたの?」
喋るのはニガテだったけど、どうしてか言わなきゃと思う言葉は口をついて出た。
ニドランを撫でながら、お姉さんはワケを話しはじめた。