2スレ>>771

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 一体、この二人は何をしているのだろう。  トレーナー達が扱う道具を販売しているフレンドリィショップの店内、私は目の前の光景を眺めてはどうしたらよいだろうコイツ等、と頭を悩ませていた。  一方は私のマスターであり、その右手には様々なアイテムが入ったカゴを抱えている。  そろそろカゴからアイテムが溢れてしまいそうで、見ているこっちがハラハラさせられる。  もう一方はつい先日、私たちの仲間になったポケモンであり、実力の方は初見の時を顧みる限り、かなり高い部類に属するはず。  そんな彼女が何故マスターに興味を示したのかは少々疑問ではあるが、マスターに対して悪意はないので問題ないだろう。  そして、そんな彼女達は数多の視線を受けながら、それらを気に掛ける様子もなくその行為を続行している。 「アブラカタブラ~」 「リクラクララックライラック~」 「ゲムギルガンゴーグフォ~」 「パラクツヴィマツレシ~」 「あ~パラスちゃん反則負け~」 「あちゃ~やってしもたわ~」  本当に何をしているのだろう。正直なところ、シュール以外の言葉で表現できるほど私の語彙は豊かではない。  会話という行為は何らかの目的をもってして為されるものであり、それらには全て等しくなんらかの実りがあるはず。  ですが、目の前で行われているものは何か実りがあるのか、と言われれば答えは否。  つまり、会話であるのかすらもあやふやな訳です。  まぁ、彼女達が何を思っているのかなど、私は彼女達ではないので知る由もないのですが。  店内にいる他の買い物客も私と同じ感想を抱いているらしく、二人を見つめる視線全てに疑問の感情が混じっている。  一応、人通りのある場所でそういった行動は自重して欲しい。  他人のフリをしたいのは山々なのですが、ここで二人を放置したらそれはそれで問題が起こりそうなので、私がしっかりしなければ。 「ん~あと何を買ってないんだっけ?」 「ちょっとまってな~ポケモンフードにきずぐすりにどくけしにまひなおし、んでもってポケモンフードはカゴに入っとるで」 「あとはガスバーナーだけかと思われますが」 「ん~りょうか~い、っと、あぶないあぶない」  私が指摘すると、どこか気の抜けた生返事をしながら、マスターは何かを棚から何かを取り出した。  その手には大○製薬の固形バランス栄養食(チョコレート味)と汗拭きシートが納まっていた。 「これを忘れちゃまずいのよ~」 「な~な~、汗拭きシートはわかるねんけど、こっちは何なん?」 「コレはねパラスちゃん、伝説に名高い「蛇」の称号を受け継ぐ傭兵の好物と名高い非常食なの」  カゴにその二品を入れた後、更に続けて非常食の方を手にとっては次々にカゴに投入していく。  そして、アイテムの山はすでに表面張力が発生してもおかしくはない高さまで上り詰めている。 「好物なのに非常食なんか~」 「そうなのよ」  なるほど、非常食を買っておくことは、確かに重要でしたね。  とは言え、4本入りを10箱はいささか買いすぎなのではないでしょうか? 「あとでパラスちゃんも食べてみる?非常食のクセになかなかおいしいから」 「お~、んじゃ後でみんなで1本ずつ食べよか~」  むぅ、私はフルーツ味の方が好みなのですが……  というか、10箱全てチョコレート味ですか。 「ん~、こんなもんかな?二人とも何か欲しいものとかある?まだお金は余裕あるけど」 「いんや、大丈夫やで~」 「私も特にありません」 「了解~それじゃ、レジにいってくるからちょっと待っててね~」  ふらふらと危ない足取りでレジに向かうマスターを眺めながら、私は腕を組んだ。  さて、一体どうしたものでしょうか……  ちらりと、後方に視線を這わせる。  買い物に出発してからマスターを尾行している気配が2つ、と言っても、片方はポケモンですが。  こちらに気付かれているという事に気付かずに棚の陰からマスターのことを覗き込もうとしている。  というか、その赤い帽子のつばがどうにも気になってしまう。 「サイホーンちゃんどうしたんや?さっきから小難しい顔して」 「いえ、少々気になることが」  私の様子に何か思うところがあったのか、パラスが声を掛けてきた。  視線を少しだけ後方の棚に向けると、彼女の表情は納得といった色を浮かべた。 「あ~なるほどな~さっきからついてきてるけど、まぁ大丈夫やろ」 「何をもって大丈夫と言えるかが、私は正直不思議でなりません」 「あはは、きっついなぁ~、けどな、悪い感じはせぇへんやろ、ほんなら大丈夫やわ」 「そうなのですが……」  確かに、彼等にマスターに対する害意は感じられないし、むしろなにやら手のかかる妹を見守っている兄、という言葉が適当か、まぁ、そんな感じなのである。  しかし、傍目から見ればそれはタダの変質者にしか見えないのですが……  おや、彼等の更に後方からジュンサーさんと警察犬の役目をになっているガーディが店内に―――連行されていきましたね。 「あっ、連行されてもうたなぁ~」  あの連れ添いのピカチュウも可哀想に、「わっ、私は無罪なのです~」という言葉は恐らく真実なのだろう。  しかし、世の中には連帯責任という言葉があるように、マスターが変質者ならばそのポケモンも変質者のポケモンというレッテルが貼られるのですよ。  私も、マスターがあのような行動を起こさないよう、しっかりと見守らなければ。 「ゴメンゴメンお待たせ~、いや~持ってくるのに手間取っちゃって~」  数刻後、マスターが山のような荷物を両手に抱えて戻ってきた。  足取りはフラフラとしており、周囲の客も心配そうな視線を送っている。 「あぁ、マスター!荷物なら私が持ちますからそこから動かないでください」 「あ~ごめんねぇ、サイホーンちゃん」  マスターからアイテムの入った袋を受け取る。  私にとっては軽々と感じられるそれも、マスターたち人間にとっては大変重いものである事が簡単に把握できた。  全く、もう少し私を頼ってくれてもいいのですが…… 「さて、とりあえず買い物も終わったし、部屋に戻って今日は明日に備えてマッタリと過ごそうか」 「せやな~」 「そうですね」  こうして、私は荷物袋を、マスターはパラスを抱えて帰路についた。  それにしても、あの赤い帽子、どこかで見たことがあるような……まぁ、いっか。  

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