3スレ>>95

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「ほら、お姉ちゃん。薬だよ...」 俺は姉の口もとに飲み薬を近づける。 「あー...うー...」 声を漏らすだけで、お姉ちゃんの言葉を聴いたのは何時だっただろうか。 ヤマブキの研究所から脱走し、タマムシシティのスラム街に身を潜めている 「あ...。んむ...ん...ゴク」 姉の口に流し込む。もう自分で飲むことはムリだ。 脱走をしてから2ヶ月が経った。最初の内はタマムシのデパートに忍び込み、薬や食料を盗んでこれたが 何度も行うたびに警備が強化されてしまった。失敗をしてしまい。もう盗みに行くことはできない。 「ちゃんと飲めたね。よかった」 ほっと一安心し、食事を食べさせる。けど...症状は一向に回復していない。 日に日に悪化している。最近は2日寝続け、起きても2,3時間の時もあった。 「じゃあ、次は体を拭くからね。」 「うー...」 お姉ちゃんの体は痩せ細ってしまった、彼女の体を清潔にしながら思う。 食事も満足に与えられない...。日々の薬とわずかな食料で精一杯だ。 俺の能力で人間に変身し、今は身を売り日々の糧にしている。 金の髪は人間でも多い。気づかれることはない。 研究所から逃げてきて、まさかその能力が活かされるとは...惨めなものだ。 「さ、次は背中だよ」 お姉ちゃんの綺麗だった青く澄んだ肌と髪は、今は濁った蒼い色をしている。 もっと高い薬を...しっかりと食事を与えることができれば... 「うん...きれいになったよ。お姉ちゃん。」 「あー」 このままじゃダメだ。お姉ちゃんを...昔のように優しく綺麗な声、 美しかった彼女に戻すことはできない。 ふと気づくと、俺の服を姉は掴んでいた。 「ん?どうしたの?」 「さー...す。...おー..んね。」 お姉ちゃんは何かを喋ろうとしている。久しぶりのお姉ちゃんの言葉を聞けると気づき、俺は 「お姉ちゃん!なに!?もう一度!」 俺の顔が綻ぶ、久しぶりのお姉ちゃんの言葉が聞けると。 「さんー...すー。」 「なんだい?」 優しくお姉ちゃんに問う。 「...ご、めん...ね。」 「っ...なんだよ。いきなり」 「ご...めんね。ご、めんね...ごめんね。ごめ...」 姉を抱きしめる。 「俺が! 俺が絶対に元のお姉ちゃんに...元に戻してあげるから!だからっ」 強く抱きしめる。お姉ちゃんを手放さないように...誓う。 「うっ、あ...」 「あっ、ごめんよ...痛かった?ごめん。」 「うー...」 お姉ちゃんの腕が上がり俺の頬にあて、涙を拭った。 「あ、なんだよ俺。泣いてなんか...」 「あ、あー...」 しばらくの間、またスラム街の小さな部屋の中で、お姉ちゃんと抱き合っていた... 改めて誓う。元のお姉ちゃんに、優しかったお姉ちゃんに戻すこと。 俺に力を与え、お姉ちゃんを壊した...研究所の奴等、あのマフィア共を... 殺してやることを。
「……ん? やべ、寝てたか」 息抜きにやってきた一の島、ともしび温泉。 その入り口裏手にある砂浜で、穏やかに照り映える太陽に目を細める。 どうやらうららかな陽気についついまどろんでしまったらしい。 ふぁ、とあくびをしながら体を伸ばし、軽く周囲を見渡して気づく。 「――あれ? ブースター?」 そう相棒の名を呼ぶも、答えは返ってこない。 俺が寝ている間にどこかへ行ってしまったようだ。 「弱ったな……」 己のアホさ加減に呆れ果てる。 せっかく相棒をくつろがせるために連れてきてやったのに、相棒ではなく自分がくつろいでどうする。 さてどうする、と頭をかきつつ思案し始めた、そのとき。 「ふふん、ふっふふん、ふふふふ~んふふ~ん……♪」 ……どうやら、探す手間は省けたようだ。 不意に流れてきた聞き覚えのある鼻歌が聞こえる方向へ足を向かわせると、案の定。 「……お前は何をやってるんだ?」 「あなほりっ!」 もう、これでもかというくらいご機嫌で砂浜に穴を掘るブースターの姿があった。 だいぶ前から掘りつづけていたようで、掘り出した砂で出来た山は、結構な規模になっている。 ……あなをほる、は、覚えさせてないはずなんだがな。 「楽しい……か?」 ブースターの背中から穴を覗き込むようにして、そう尋ねる。 すると。 「うんっ! すっごく!」 ――さよか。 まぁなんというか……犬っぽいからなぁブースター。 見た目とか雰囲気とか、あと人懐っこいとことか。 他のイーブイの進化種と比べて犬っぽさがずば抜けて強いよなぁ。 「んしょっ、んしょんしょっ、えへへへへっ」 そんな俺のくだらない感想などお構いなしに、ブースターはひたすら穴を掘り続ける。 あーあー、熱中しすぎて腕からどんどん穴の中にハマってっちゃってるよ……って。 「……ん? んん?!」 無邪気なブースターの様子に肩をすくめた次の瞬間、俺は素っ頓狂な声を上げてもう一度ブースターを凝視する。 皆さん、想像してもらいたい。 砂浜にしゃがみます。 それもいわゆる女の子座りという奴で。 穴を掘ります。 どんどん掘ります。 穴が深くなります。 背筋を伸ばしたままでは底まで手が届きません、どうしますか? 背中を曲げて、かがみますね? そしてまた掘ります、掘り進めます。 かがんでも手が届かなくなりました、どうしますか? ――おしりが、上がりますね? 「ふん、ふふんふ~ん♪」 俺の心中など皆目気にすることなく、ブースターは穴を掘り続ける。 その鼻歌にあわせるように、大きくてもふもふな尻尾が左右に、ふりふりふりふり。 ご機嫌ボルテージがマックスなのか、尻尾に合わせてかわいいおしりも、ふりふりふりふりふりふりふり。 「…………!」 声が出ない、言葉にできない。 わかってくれるだろうか、この胸にふつふつと湧き上がる途方もない熱量を伴う感情を。 目の前で、ずっと一緒に旅をしてきたパートナーともいえる女の子が――萌えもんだということはこの際関係ない――無防備に、おしりを、こちらにむけて、ふりふりふりふり。 「――い、いかん、いかんぞ俺! 落ち着け……素数を数えて落ち着くんだ……ッ!」 飛びかけた理性を間一髪掴み取り、自己嫌悪に頭を抱えつつ必死で冷静さを取り戻そうとする。 が、しかし。 「――できたぁ! ますたー、見て見てぇっ!」 ――その、声に、顔を上げる。 そこには。 「――――ッ!」 「えへへぇ、すごいでしょお? がんばったんだよぉ!」 自分の掘った穴を崩さぬよう腕を伸ばして四つんばいになり、愛らしいおしりを高く掲げ、うれしそうに大きな白い尻尾を振ってこちらを振り返る、ブースターの姿が。 ……そして、俺は、考えるのを、やめた。 「ぶ……ブースタァァァァァァァァァァ!!!」 「ふぇえっ!? ま、ますたー、どうし……ひゃああああああああああんっ!」 ――後日、ブースターと仲睦まじく帰宅した俺の元に、ともしび温泉から一通の手紙が届いた。 文面にいわく――『せんじつはおたのしみでしたね』と。 ……存分に楽しませていただきました、ありがとうございました。

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