3スレ>>817

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……ママ。 …ねぇママ、どこにいるの? ママ。 いるんだよね。 ――ママ。 …ママ。 ・ ・ ・ 「呼んでる……。」 「……?どうしたんですかナツメさん。」 「呼んでいるわ。…行かなくちゃ。」 「へ?ちょ、ちょっとナツメさん、どこに!?」 「皆!ナツメさんがまたどっかに!」 「またですかナツメさん!」 -+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+- 亡 き 母 親 へ の 鎮 魂 歌     ~Reincarnation~ +-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+-+ カントー首都圏。それは経済都市ヤマブキ、歓楽街タマムシ、貿易都市クチバ、住宅街ハナダ、 これらから成る大都市群のことを指す。が、実はもう一つ、首都圏に数えられていた都市がある。 その都市――現在の名は、亡霊都市シオン。 カントー七不思議のひとつ、シオンタウンの怪奇現象。あるときから街中に霊がはびこり、 人は逃げるように移住し今では、亡霊たちの街と化している。 しかしながら、シオンタウンには萌えもん達の霊を悼む為の霊廟、萌えもんタワーがあるため、 萌えもん達の墓参りでシオンにやって来る人は少なくない。 そのために現地で留まる人間もいるにはいる。が、街はやはり昼間でも不気味な程静かであった。 「感じる……どこにいるの?」 その亡霊の帝国と化した街へ足を踏み入れたのは、ヤマブキシティジムリーダー、ナツメ。 別に誰とも話しているわけではない…いや、厳密には話しているのか。そこにはいない、誰かと。 「…塔?これって……。」 いつの間にか足は高く聳え立つ塔の入り口まで進んでいた。 ナツメは幼年期の頃に不思議な力に開花した。それは俗に人が言う"超能力"なるもの。 その能力がどういったものかというのは俗説様々入り乱れてはいるが、萌えもんに似通った能力を 持つ者もいることから"超能力"と呼ばれるものは大きくニつほどの能力に大別される。 その一つは、ESPと呼ばれる、超感覚能力。通常の人間には認識できない現象を認識、干渉する能力。 接触感応(サイコメトリー)、精神干渉(テレパシー)、予知能力(プレコグニション)、透視能力(クレヤボヤンス) そして催眠能力(ヒュプノシス)、これらは超感覚能力に分類される超能力である。 もう一つは、PKと呼ばれる、念動力。これは物理現象に干渉するタイプの能力で、 念力(サイコキネシス)、物体移動(アポーツ)、これらの能力が属する。 例外として、この二つに属さない瞬間移動(テレポート)能力がある。 …が、実際に理論が確立されるわけでもなく、また矛盾した力の干渉なども報告されておらず、 ひとつに"超能力"とは何なのか、と聞かれて、正確に答えることのできる人間は恐らくいない。 紛れもない事実なのは、そういった類の能力を持ち、それを実際に目で見たものが、いるということだ。 「また随分と死霊蔓延るところに来たもんだな。」 と、どこからともなく声が聞こえた。その姿は、ナツメの隣に現れた。 「……マジック?」 「ナツメ、ここはヤバいわよ。あなたも感じ取っているでしょう?"霊"の波動を。」 …超能力が内在する力で構成されているとすれば、世の中の怪奇現象――人に見えない不思議な力の一種―― は霊能力なる概念で構成されているだろう。そしてこの二つは、よく似ているということ。 …そう語るのは、ナツメ、そして彼女の萌えもんである、ムウマージことマジック。 ナツメの隣をふわふわと浮遊し、片手に持っている星型のステッキをかざす。 「――。とても強力な霊が、ひとつ。その周りに無数の霊が集まっているようね。」 「マジック。あなたは霊を読み取る事に関しては秀でているようだけど、念を感じ取れてないようね。」 「こんなにたくさん霊が集まってるとその中にある念を感じ取るのはあたしにはちょっとね…。 ナツメは…念を読み取れてるの?」 霊と念。同種の力なのかそれとも相反するものなのか。 あるところによると、霊は、死者が遺した念とも説明されているらしいが――。 「あるわ。こんなに霊がたくさんあるのに、そのなかに一つだけ、念が。」 ナツメは特殊な超能力者だった。霊も念も、どんな状況においても正確に読み取れる。 それは数多の人間に羨まれたり、妬まれたりしたため、彼女の身内は彼女を畏怖し遠ざけている。 「……行きましょう。微弱だけど確実に念を放っているものがいるわ。」 その念だけを手がかりに、ナツメは彷徨えるほど広く高いその霊廟へと吸い込まれていった―― ・ ・ ・ …ママ… ここはどこなの…?薄暗くてよくわからないよ… ねぇママ…… もう出てきてもいいよ… ママ… …… 『去れ……』 「…ひっ…!」 『生ける者よ、ここは死者の地なり…』 『早々に立ち去れ…』 『貴様も死の淵に追い込まれたいのか…?』 「う…うわぁぁぁぁぁぁ!」 『ヒヒヒヒヒ…』 『そっちは出口じゃないよ…』 『出口はどっちかなぁ?』 『こっちだぜ…ヒヒ』 『いやいやこっちだ…』 『出口なんぞどこにもねぇよぉ!』 『『『あっはははははははははは!』』』 「怖いよぉぉ……助けて!助けてママぁ!」 「エクソシズム!」 ぱぁぁぁぁぁぁ…っ …不意に、辺りを強力な光が包み込んだ。 『ギぃぃィぃ…ェェえァ…ァあぁ……』 この世のものかと思えるほどの聞き苦しい悲鳴が聞こえた―― 光が収まる頃には、辺りの薄暗さは消え、不気味な静寂を取り戻していた。 「…ぁ……?」 そこに呆然と立ち尽くしていたのは、一人の少女。 綺麗な銀色のショート髪が映える褐色の肌。そしてその手には、一本の太く長い骨を持っている。 「こんなところにどうして来たの?」 骨を持った少女に話しかけたのは、ムウマージのマジック。 片手にもった星型ステッキを振り下ろしながら、辺りを警戒している。 「………。」 「ここは悪霊の蔓延る危険な場所よ。運が悪ければ、永遠に彷徨うことになるわよ。」 「…わかって…います。」 おずおずと褐色の少女は答える。 そこへ、二人の間に割ってはいる人物がいた。 「――呼んでいたのは、あなた?」 ナツメである。 「…え…?」 「ずっと聞こえていたの。ここに来るまで、あなたの呼んでいる、声が。」 優しく微笑むナツメ。その微笑に、生ける者の温かみを感じる。 「……私が…。」 少女は語りだす。 「私が…呼んでいるのは……ママ…。」 「…ママぁ?」 素っ頓狂な声をあげるマジック。反してナツメの反応はいたって真面目なものだった。 「お母さんに会いたいの?」 「………会いたいよぉ……でも……でも…っ!」 涙をこらえる少女。まるでとめどなく溢れ出そうな想いをせき止めているかのように。 「……殺されたのね?」 ――!! とてもつらかった。とても切なかった。それを思い出してしまうから。 ナツメは少女の思いを汲んでいるのか、彼女が告白を終える前に、言い放った。 「つらい出来事だったね…。よく耐えてきたわ。立派な子。」 そっと、頭を優しく撫でるナツメ。もう耐えることはない。我慢しなくていいの。 …そんなことを語るかのような右手は、少女の頑なな心を溶かした。 「うぅぅ……ぁぁ……ぅぅわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ナツメの懐に、顔をうずめる。そんな少女を優しく迎え入れる。 「……こういう話……弱いのよねぇ…うぅっ。」 傍らで見守っていたムウマージも、いつの間にか涙を浮かべては頬に一筋の曲線を描いた。 「……フーカ。出てきて。」 褐色の少女を胸に抱き寄せ立ち上がると、ナツメは二人目の萌えもんを披露した。 「やぁ。事情は把握してるよ。さっそく一仕事させてもらいますか、ね。」 フーカと呼ばれた女――フーディン――は、大きなスプーンを肩にかけ、意気揚々とナツメ達の前に姿を現した。 ・ ・ ・ 天に近づくにつれて、空間を包む闇は濃くなっていった。 「そういえば、あなた名前は?」 懐にしがみついている褐色の少女に訊ねるナツメ。 「……カラナ…。」 「そう、カラナ。いい名前ね。」 ――種族は……カラカラかしら。となると母親というのは…… ナツメが思考に意識が沈みかけた時だった。 「ナツメ!」「マスター。」 二人に同時に声をかけられた。 「!!」 ナツメはすぐに感じ取った。ものすごい数の悪霊、それにいつの間にか囲まれていることを。 「高位霊体かしら?」 「かもしれない!あたしもすぐに気づけなかった。」 「思念体かもね。霊念混在ならその波長も見分けづらい。」 ナツメを囲む形で陣形を取るマジック、フーカ両名。 「…ひ…っ!」 「大丈夫。すぐに追い払うわ…。」 恐怖に身体が竦む。さらにしがみつくカラナを宥める、ナツメ。 「う…ちがうの…。」 …が、カラナの様子がおかしい。 『憎い……』 ――!この波動は…。 闇の集団の一点、最も瘴気の濃い場所から、その声は聞こえた。 『ニンゲンめ…殺してくれる…!』 そして放たれる殺気。そこから湧き出る霊魂たち。マジックとフーカは、戦闘態勢に入った。 「ちぃ…っ!これは数が違いすぎる!フーカ!ヘマしてもフォローする余裕なんかねえからな!」 星型のステッキを振り回し、動き回って霊魂を確実に一体ずつ浄化していくマジック。 「こっちのセリフですよ。」 肩にかけた大振りのスプーンで応えるフーカ。ナツメを中心に激戦が繰り広げられる。 「カラナ…どうしたの?」 漆黒の一点を凝視したまま、声も出さずに固まっているカラナを心配する、ナツメ。 「……!………!」 その間にも、闇の中心からはどんどん霊体が湧き出て来る。 「これは困りましたね。」 「困りましたねじゃねーよ!このままじゃあたしらもやばいだろ!」 単体では取るに足らない相手ではあったが、この量は異常である。 100の精鋭兵で10000の軍勢に突っ込んでいくようなものだ。 「……ぅ…ぁ…!」 最もパニック状態なのは、ナツメの胸の少女。 ――恐怖のあまり声も出ないのね。でも安心して。 「…あなたの声は、ちゃんと聞こえるから。大丈夫。」 「……!」 「ごめんね……あなたの中を、少し覗かせてね…。」 そう言ってカラナの額にそっと手をかざす、ナツメ。その瞬間―― パリッ… 彼女の手とカラナの額の間を、何かが高速で通り過ぎた―― ――接触-サイコメトリー-開始――! ぞわっ! 000101000010100110010111000000000101010001010100000 100010100100000101000100100011001110101000000011001 000010001001010111010101010000101000101000000110000 001010001111010000100110001000110101010001111010110 011101110110101101011101111111101111111111101111111 110000100000101110101101011010101001010010110111110 11111101111111011111111111101......... acknowledgment... synchronized! ・ ・ ・ 「霊廟の墓を発くなど…なんたる冒涜かっ!」   「全て燃やせ!この街は呪いの街だ!!」 「殺せ!」 「街の住民は禁忌に手を染めた罪人を庇っている!」 「ぎゃぁぁぁぁあああ!!」 「あぁ老師よ…何故…こんなことに…」 「だからあの男を街に迎え入れるのは反対だったんだ!」 「あの塔?…そうよ。萌えもん達の魂が眠っているの…」 「ぁぁぁぁあ゛あぁぁ゛ぁぁぁっ!!」 「だから、――も祈りを捧げなさい…」 「痛いぃぃィいいいイィぃよぉぉォォぉぉォぉっ!」 「ひゃぁぁーっははははははははぁ!!」  「やめて!この娘だけは…この娘だけはッ!!」 「ママぁぁぁぁぁぁぁっ!いやあァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 ユ  ル  サ  ナ  イ  ・  ・  ・ 0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 00000000000000000000000000000000000000000000000 00000000000000000000000000000000    0000000000000000000000  0000000000000    0000000 000 ・ ・ ・ 「…………っ!」 ぷつんっ…! …ナツメの頬を伝う、一筋の涙。彼女の中に入り込んだ情報、それは人が起こした悲劇。 「なんという…ことを…」 全てを悟った彼女は、否定したかった。今、頭の中に入り込んだ惨劇の一部始終を。 血と業火で赤く染まった街。重なる死体。黒ずくめの集団。そして、母親の死―― 「おいナツメ!サイコメトリーは終わっただろ!?はやくなんとかしてくれ!」 そんな瞬間にも戦いは繰り広げられている。霊にまとわりつかれて取り払うのがやっとという状況のマジック。 「こんにゃろ、はなれろ!はなれろって!」 ――ぶんっ! グシャッ!! 『ぐぃぃえぇぇぇぇぇ!!』 マジックに引っ付いていた悪霊は急な衝撃で吹き飛ぶ。その衝撃を与えた本人とは―― 「……ふ、フーカ!」 「やれやれですね。最初の威勢はどこへ行ったんですか?」 「あ、あれはだなぁ!」 助けられた不覚に、言い訳の一つでもかもしたいところのマジックではあったが、今はそれどころじゃない。 「甘いんだっつぅの!!」 不意に体を捻り、星型ステッキを後方へ振り回すマジック。 バシュン!! 声もあげずに背後の霊魂は消滅させられた。 「なんだ、まだまだ元気じゃないですか。」 「あたりまえだ!」 そう言う傍らで、フーカは三体、マジックは一体の悪霊を仕留める。 ――数えただけで撃破は四十体位、あたしが十五体くらいでフーカが二十五体か?超不本意なんだが… それでもまだまだ悪霊たちは沸いて出る。 ――どうするんだよ、ナツメ…… ちらりとナツメのほうを見る。…目が合った。 「マジック、下がりなさい。」 ――! 「フーカ、少しつらいかもしれないけど、足止め頼める?」 「このくらいなら、何とかなるよ。」 ナツメが命令したのは、陣形の変更。それは与えられるべき役割が生まれたということを意味していた。 即ち、ナツメには打開策が、あるということ。それを理解しているマジックもフーカだからこそ、 彼女の命令に静かに従う。 「…さて、本気で行かせて貰いますよっと。」 そう言ってスプーンを持ち直すと、さらに加速して霊魂の群れに突入していくフーカ。 「…前線はフーカに任せるしかないわ。マジックは、カラナを中心にして……。」 その作戦の全容を伝えるナツメ。墓標の影をうまく移りながら悪霊からの攻撃を避ける。 「…どう?マジック、やれるかしら?」 「……はは、あんたは言うことがむちゃくちゃだなぁやっぱ。OK、やってみる!」 決意の眼差しには期待も不安も入り混じっている。これから起こす行動ははじめての試みなのか、 そういった印象を受ける、マジック。 「さぁ、カラナ。」 「うぅ…ママ…あそこにママが!」 「カラナ。気持ちはわかるわ。でも落ち着いて」 「できないよ…ママを、消しちゃうの?…そんなこと…っ」 「違う。」 ナツメは、懐からカラナをはがすと、地に足をつかせ、自らの力で立たせた。 カラナの背にあわせて視線を下げるナツメ。 「あなたのお母さんは、もういないのよ。」 ――そう、もういないのよ。 ナツメは冷静に、そしてまっすぐに、残酷な真実を、優しく告げる。 …それはカラナ自身わかっていたことなのだ。でも――目の前で母が殺されれば、目を背けたくなる。 そうして作り上げた逃げ道は、走りつかれたら引き返すしかないのだ。 「…ぅっ…マ…マ…」 「もうあなたは立派だもの。お母さんを無事に天国に送り届けよう?」 わが子を宥める母親のように、優しく説得するナツメ。 「あの中で、お母さんは苦しめられているの。だからその苦しみを解き放ってあげる。 そのために、あなたの力が必要なのよ。」 「………ママ…。」 深い闇の一点を見つめるカラナ。決意は―― 「…やる。私、できることならなんでも…。」 固まった。 あそこにいるのは母親なんかではない。ただの亡霊である。…彼女はそれがわかったのかわからなかったのか。 それは定かではないが、マジック、フーカ…そしてナツメ。 必死で戦う彼女らのひたむきな姿勢に、心はゆれ動いた。 「……せよ。…尊き命は空へと舞い、名もなき霊は地に還り、混沌の淵より"輪廻"と転ぜよ!」 ぶぅぅぅぅ…ん。 マジックの詠唱により、巨大な魔方陣が浮かび上がる。その中心に立つのは、ナツメとカラナ。 「ナツメ、フーカ。こっちは準備できた!」 「ほいよ、と。援護しますよ。」 「助かる。」 マジックとフーカ。フーカの絶妙な援護で滞ることなく作業を進めるマジック。 そして、カラナはナツメに指示されたとおりに動く。 「さぁ今よ!骨をかざして!」 「…う…うん、えいっ!」 天高々に誇示された、一本の骨。そこから眩い光が溢れる。 「よし、今だ!ナツメ!!」 マジックのステッキが虚空に弧を描く。そしてナツメが最後の鍵を開く―― 「リインカーネイション!!」 ぱぁあぁぁぁぁぁぁぁ…ッ!! 輪廻の名の下に、描かれた魔法陣が、眩しく光り始めた―― 収束したその光線は、カラナのかざした骨を介し、光の光線となり闇の中心を、穿つ! ――。 そうです。 それで、いいのですよ。 もう、私のせいで悲しむ必要はない。 もう、私のために悩み挫ける必要なんてない。 あなたは、あなたの人生を、歩きなさい。 私は、私の人生を、歩きます。 新しい器を、授かり、この世に産み落とされる新たな命として―― ――。 ねぇママ。 もう、いいんだよ。 もう、私を心配する必要はない。 もう、私のためにこの世を彷徨う必要なんてない。 ママは、ママの人生を、歩いてね。 私は、私の人生を、貫きます。 古い因果を棄てて、この世と立ち向かう新たな強さをもって―― 強い光の奔流は、深淵を丸ごと飲み込み、そしてその闇と共に消えていった。 ・ ・ ・ 「…そう。やはりこの墓を守っていたのね…」 タワーの最上階。藍色に染まった空、満点の星空。 強い風が吹き付ける。そこには一つの、墓があった。 大きいわけでもなければ小さいわけでもない。いたって普通である。偉人の墓には見えない。 「ひどいことを……。」 「墓を発くなんて…!」 信じられないという表情のナツメ、そしてマジック。 そう、その墓は発かれて放置された後だった。徹底的に掘り尽くされていて、ひどい有様だった。 「…ロケット団の仕業だろうね。どれ、…」 墓の周りを調べ始めるフーカ。掘られた穴を覗いてみたり、墓を触ってみたり… 「…うん。遺骨はあるみたいだ。…それ以外のものが、全て持ち出されている……。」 あったのは、墓の深くに安置されていた壷、一つだけであった。 「お墓……荒らされちゃったの?」 と、ナツメの足にしがみついている、カラナ。 「……。」 「直して行きましょう。お墓。」 こうして、墓を直して再び、供養をすることになった、四人。 「…てか、霊のあたしが墓参りって何かヘンじゃない?」 「いいや。」 「そうかしら?」 「……?」 その墓標には、こう書き記してあった。 "偉大なる、萌えもんボランティア協会の第一人者、フジ老師。其の魂、ここに眠る――" きらっ―― 無限の星々が散りばめられた夜空に、一筋の光が線を描いた。 流れ星――それは魂の方舟と言い伝えられている、刹那たる命の輝き。 - 亡 き 母 親 へ の 鎮 魂 歌~Reincarnation~ 完 - -+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+- 【設定集】 ◇登場人物 ・ナツメ ヤマブキシティのジムリーダーにして超能力者。その能力を駆使した戦いでチャンピオンの卵たちに試練を課す。 人物名称が苗字なのか名前なのかは不明…だと思うんですが一応名前だと思って書いてます。 エスパー使いといいながら、ゴーストタイプのムウマージ使っているのは筆者が見た目で選んだせいです。 ヤマブキにはもう一つジムがありましたね。旧ジムの設定はこちらARで言う、シズク嬢の道場です。 ナツメとシズクは幼馴染で、昔から犬猿の仲。しょっちゅう噛み合わない主張をしては喧嘩をしていたようです。 その腐れ縁に決着がついたのが、前ジムリーダー同士による戦いで二人の関係も同時に幕が下りました。 今ではとっても仲良しなようです。たまに大規模な喧嘩をするらしいですが、それは昔の古傷の舐め合いというもの。 ・マジック 名前の由来…というか、magic(呪術)そのものです。高位霊体として自我を持ち、普通の萌えもん達と同じように 定義できる幽霊さん。種族はムウマージ。ナツメとの出会いは不明ですが、霊の特徴として、霊の強いところに 集まる性質と、念に反発する性質であるとすれば、超能力者であるナツメには近づこうともしないでしょう。 ナツメが特別な能力者であったことと、マジックが自身の強い意志を持っていたこと、これが大きいでしょう、 とまぁ、理由を無理やりこじつけてみるとw なんか見た目魔法使いっぽいから、ステッキにも設定を乗せてみました。先端にプリティな星のついたタクト みたいな棒――本人は「ステッキだ!」と強く主張しますが――『シューティングスター』というらしいです。 「だから!棒じゃないばか者!いいか、これは素敵なステッキなんだ。……なんなのさ、その寒い目は!!」 ・フーカ 名前の由来はfuga(遁走曲)から。種族はフーディン。ナツメともっとも古い付き合いの萌えもん。 彼女の真価は精神攻撃より肉弾戦までこなせるオールラウンダー性である。近接技であればその手に持っている 「プラティナムティース」…でかいスプーンを振り回して応戦できる。逆に距離が離れていれば得意の超能力で 相手の阻害をしながら精神的ダメージを狙うことができる。これもまだ彼女がケーシィであった時代から ナツメとシズクの喧嘩に巻き込まれたゆえの賜物?なのかもしれない。 さすがにたかが喧嘩で身内の精神かき乱しちゃいかんでしょうし、ねぇ?w ◇超能力と霊能力 超能力も霊能力も、超心理学で確立されている学問のようですが、詳しくは知りません。 作中に出ている超能力の分類は本当にそう定義されているようです。 霊能力は死者の残留思念、超能力は内在的な力によって発揮されるとも言われています。 萌えもんのところで言う、ゴースト、エスパータイプの分野ですね。 ◇フジ老師に関する二次設定 最後の最後でその名が登場したフジ老人。本作品では以下のように設定が変更されています。 ・故人 ……や、嫌いではないんですよ?そもそもフジ老師が行った功績として、萌えもん孤児や難民を救う 組織団体、萌えもんボランティア協会を設立したというものがあります。 ですが彼はそれ以前に何をやっていたかというと、μ2計画に加担していた、という設定になっています。 (μ2計画に関しては、第四話"カントー都市伝説レポート"を参照)その研究員の生き残りでもあり、 その研究の罪の重さに気づくことのできた一人でした。よって彼は、グレン→シオンの順で移り住み、 裏でこっそり歴史を刻んでいった人物となります。 彼の死後、どこまで情報を掴んでいるのかはわかりませんが、ロケット団により墓を発かれます。 この一連の事件によって、カラナの母親が殺害され、街中に亡霊が蔓延るようになった、ということです。 これが「シオンタウンの怪奇現象」の全貌です。「焼き払われた村」に同じかその近くの時系列ですかね。

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