3スレ>>826

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 2日目 - ピカチュウ - 今日は朝みんなで相談して、一日休息と決めた。俺は朝からロコンの顔をまともに見れなかったが、 あちらはもうずっとキラキラした眼で俺を見ている。…なんで? 「とにかくマスター。まずは君だ。私達より相当疲れているようだからな、今日は物資の補充や情報収集も禁止。  その分は私たちが働く。用事があったら言ってくれればいいから、安心して休んでくれていい」 「ありがとうフーディン。…なるべく用事は君に頼むようにするよ」 「ああ、その方がいいかもしれないね。シャワーズ・ロコンは今日の食材と薬類の買い出しをお願い。  私は町の方で情報を集めておく。フシギソウとピカチュウはマスターのそばで監視。無茶をさせないように」 「分かりました」「はい…」 「はいはーい!」「任せて!」 フーディンが俺の代わりに指示を出してくれる。頼もしいし俺を心配してくれているのは嬉しいんだけど、 こうも有能だとトレーナーとしては若干複雑でもある。 「そんな心配しなくても、私のマスターは君なんだよ」 「読心はあんまりしないでほしいな、フーディン」 「していない。君の顔に書いてあるだけさ。」 …俺、ヤマブキでどうやってコイツに勝ったんだろ。 「マスター、補充する薬はこれくらいでよろしいですか?」 「んー、なんでもなおしを3つくらい多めに買っておいてくれ。キョウは毒使いだと聞いているからな…」 「分かりました。それでは行ってきますね」 「いってきます、ますたー」 「ああ、行ってらっしゃい。気をつけてな」(結局ロコンはいつも通りか…まぁ、考えてみたら当然なのかな) 「では私も行ってくる。分かっていると思うけど、無茶をしたら明日はかなしばりでベッドにしばりつけるからね」 「…気をつけます」 「行ってらっしゃい、フーディン!」「フーちゃん、いってらっしゃいー!」 さて、どうしようかな。休むとはいってもずっと寝てるのもどうかと思うし。 俺が思案に暮れていると、ピカチュウがいいつりざおを持ってきて俺に手渡した。 「マスター、海行こう海!ソウちゃんにお弁当作ってもらって、3人で!」 「釣りか…そうだな、それならいいかもな。フシギソウ、頼めるか?」 「うん、任せて!御主人さまとピカチュウの好きなものいっぱい作るね!」 フシギソウは料理がうまい。というか、コイツはもともと凄く器用なので、家事系統は俺が教えるとどんどん覚えて行ってくれるのだ。 俺たちの食事は、基本的に彼女とシャワーズに任せっきり…と言う事になる。 「じゃあボクはお弁当できたら海に行くから、ピカチュウと先に行ってて!」 「分かった。ありがとな、フシギソウ」 念のためにボールとバケツを持って、水筒をピカチュウに手渡す。 俺達はセンターの前の段差を降りて19番水道へと向かった。 * * * 「…それで、よくもここまで釣れたものだね」 「ますたー、すごい、です」 「いやー…隣の釣り人さんが、『君も釣り好きかね!これをあげよう!』  って『すごいつりざお』を気前よくくれちゃったんだよね…で、さっそく使ってみたら…」 普通に食べられそうな魚があれよあれよと釣れていく。しかもすべて大物。 さらには、シェルダーやヒトデマンなどの水萌えもんまで飛び出してきて―― 「しかし、ギャラドスまで出てくるとは思わなかったな…休養のつもりが、とんでもない事になっちまった。  ピカチュウとフシギソウがいなかったらどうなっていたか」 そう、挙句の果てにはギャラドスまで飛び出してきたのだ。水中から飛び出すやいなや俺に襲いかかってきたが、 近くで海と戯れていたピカチュウの10万ボルトと、ちょうどお弁当を持ってきてくれたフシギソウの葉っぱカッターによって一瞬で海に叩き返された。 「マスター、捕まえたシェルダーとヒトデマンはどうしたのですか?」 「データはとったからボックスに送っておいた。マサキがまた大喜びするんじゃないかな。」 今のところ、水タイプはシャワーズで充分事足りている。まぁ、今後「なみのり」を入手して海を渡る場合には、 さすがにヤマブキで受け取ったラプラスあたりの協力が必要だとは思うのだけど。 「あー…半日も海にいると全身潮風でベトベトだな。早く風呂に入りてぇ…」 う、そんなこと考えてたらまた昨日のこと思い出してきたぞ…イカンイカン。 俺がくだらない事で悶えていると、脱衣場からフシギソウが出てきた。頭のつぼみをタオルで拭いている。 「御主人さま、おまたせ!お風呂あいたよー?」 「ああ、わかった、じゃあ入ろうかな」 「ますたー」 「ロコン!?どど、どうした?」 「シャワーズおねえちゃんといっしょに、ばいてんにいってきたいです。いいですか…?」 「あ、ああ…行ってらっしゃい。センター内だけど、気をつけろよ?最近変態がそこら中にいる世の中だからな」 …俺は絶対そういう趣味ないからな。いや本当に。 可愛さのあまり自分の萌えもんに襲いかかったりする人もいるらしいが…いや、俺は違う、違うんだ! 迷いを振り払うように、脱衣場に入って服を脱ぐ。とりあえずシャワーを浴びて潮を落とし、 体と頭を念入りに洗う。お湯で泡を流して、湯船につかろうとした瞬間。 がちゃり、と。脱衣場の扉が開く音が聞こえた。 「マスター、入るよー?」 「ピカチュウか!?」 反応して振り向くのと、風呂場のドアが開くのは同時。 カーテンというには薄すぎる湯気の幕の向こうに、ピカチュウの幼い裸身が――ってちょっと待て。 「ちょ、タオルは!?」 「ふぇ?」 えーと、とりあえず慌ててドアを閉めた。今、ピカチュウは何も着ていなくて、それはつまりもう上から下まで一糸まとわぬ全裸だったわけで―― でも、ロコンより小さいっていうか、もうあれは完全にまない…じゃなくて!! もう拒絶とかそれ以前の問題です。本当にありがとうございました。 「せめてバスタオルを巻きなさい!女の子がはしたない!」 「はーい」 …駄目だ、もうこのタイミングで追い返すとかできねぇ。しかも何の恥じらいもなく入ってこられると、逆にこっちがおかしいとさえ思えてくる。 いかん、落ち着け俺、KOOLになれ…って昨日とほとんど展開一緒じゃねーか! 「マスター、巻き終わったよ」 「…入ってよろしい」 「やったー!」 また勢いよくドアを開けて、ピカチュウが飛び込んでくる。 転ばれて怪我でもされてはかなわない。とりあえず両手でその小さな体を引きよせ、座らせる。 「てか、お前も潮でベタベタだな。シャワーあてるぞ、目つぶって」 「うん」 適温に調節したお湯を、頭の上から流していく。こうなれば仕方ない。 頭と体は自分で洗わせるとして、昨日と同じように先にあがることに―― 「マスター」 「なんだ?」 「頭洗って!」 「…ああ」 …断れなかった。 * * * 「…目ぇつぶれよー」 「う、うん」 ピカチュウの髪はロコンほど長くはない…んだけど、気になる点が一つ。 (…これ、どうやって立ってんだ?) 頭頂部から飛び出している一筋の金髪。まぁ、いわゆる「アホ毛」って奴だ。(実際こいつは結構アホ、というかうっかり屋だと思う) 先ほどのシャワーでも、今のシャンプーでも倒れる事はなく、ずっと上へと伸びている。 うーむ、と思案に浸りながら、頭のマッサージを続けていると。 「やんっ!」 「ッ!?」 …い、今何か妙に艶めかしい声をピカチュウが発した気がしたんだが… 俺は今何をした?両手の先を見てみると、そこにあったものに気がついた。 「…あ、耳は洗ったらまずかったか?」 そう、ピカチュウの特徴の一つともいえる、大きな耳だ。野生の萌えもんを探したりする際にも大いに活躍する感覚器官は、 どうやら俺の予想以上に敏感な部分らしい。それをタオルで洗うっていうのはどうなんだろうな。 「ん、平気…耳も洗ってほしいな?」 「うぐぅっ!?」 ちょっと甘えた声でそんなこと言わないでくれ、さっきから俺はもう限界なんだ。 が、途中で投げ出すのもよくないと、俺は慎重に、丁寧にピカチュウのとがった耳を洗い始めた。 「ん…あ…ぅん…はぅ…」 「えーと、痛かったら言ってくれよ?」 「にゅ…うん、大丈夫…うぁっ…は」 …なんつーか、ある意味これは昨日よりヤバイ。タオルで耳を擦るたびにあげるピカチュウの小さな声が、 休む間もなく俺の理性を削り続けている。…駄目だ、落ち着け、K(ry 俺が耐えながらも何とか耳をすべて洗い終えた。…実際は1分かかっていないのに、すごく長い時間に感じられたのは何でだろう。 「おし、流すぞ。目ぇつぶって」 「ん…」 お湯で頭の泡を丁寧に落とす。とりあえずはこれで一息つける―― 「マスター、次は体洗って!」 「あ、悪いピカチュウ。俺ちょっと用事思い出したからもうあがらないと!  体はちゃんと自分で洗うんだぞ。あとお湯にもちゃんとつかれよ?  50まで数えてからあがってくるようにな?ジュース開けといてやるから、きちんと入ってこいよ!?」 「え、あ、うん」 「じゃあお先に!」 何とか離脱できた…正直もう駄目かと思ったぜ。 とりあえずタオルで全身を拭いて、服を着て部屋へ戻る。何やらフーディンがソファでテレビを見ていた。 「ん、どうしたんだいマスター。何やら妙に慌てているみたいだけれど」 「フーディン…どうしてピカチュウを止めてくれなかったんだ」 怒りと言うよりもう疲れをこめて彼女に問いかけると、フーディンは珍しく驚いた表情をした。 「私はてっきりシャワーズとロコンと一緒に売店へ向かったのだと思っていたのだけどね。違ったの?」 「今風呂場に乱入された」 「そうか」 「ノーリアクョンかよ!」 思わず叫ぶと、フーディンは意地の悪い笑顔を俺に向けてきやがった。 「役得、という奴じゃないか。入ってきたのが向こうなら、何かされても文句は言えないはずだと思うが?」 「俺はピカチュウの事をそう言う眼で見た事はないし、見たいとも思ってない」 「ふぅん」 何か少し考えているフーディンの横に座り込む。ソファーが少し沈んだ。 『ファーイ!』『マコトCCO!!』『ガトチュエロスタイム!』『フタエノキワミ,アッー!!』『強姦パウダー!!』 (…なんだ、これ) 明らかに外国語としか思えないアニメを、見るでもなく何となく眺めてみる。 と、真横から冷えた水の入ったコップが突き出てきた。 「まぁ、風呂上がりには水分だ。とりあえず落ち着きたまえマスター」 「ありがとう」 一気に飲み干す。と、このコップはどこから来たのだろう。 さっきまでテーブルの上、フーディンの目の前に置いてあった気がするんだけど… 「フーディン、これ」 「ああ、さっきまで私が飲んでいた。人間でいう間接キスと言う奴だね」 「ぶっは!?」 …やっぱり、コイツには勝てる気がしない。いろんな意味で。 余談だが、この日の夜もあまり眠れなかった。というのも、ロコンとピカチュウがひっきりなしに瞼の裏に浮かんでくるからだ。 …おまけに眠ったら眠ったで、余計嫌な夢を見てしまった。…俺、大丈夫なのだろうか。  3日目 - フシギソウ - 朝起きて、まず思う。 (今日こそは湯船につかりたい。ホントに) 昨日も一昨日も、体は洗えたが浴槽にはまったく入れていない。 なんとかして今日こそはきちんと風呂に入りたいものだ。 「おはようマスター。今日はどうする?」 「…そうだな。俺達はサイクリングロードを下ってきた訳だし、反対側の道路へ行ってみよう。   トレーナーも多いようだし、ジムに挑む前にやっぱり修業は必要だろ」 「はい」 「あたし、ワクワクしてきたよ!」 「御主人さま、わたしを使ってくれるよね?」 「きんちょうします…」 「ああ、そうそう。昨日報告した情報以外に、もう一つ報告。  明日は、セキチクサファリパーク開園10周年だそうだ。それで、今日の夜は前夜祭として花火の打ち上げ、  パーク周辺で出店の開店もあるらしい。夕食の後に、見に行ってみるのもいいんじゃあないかと思うね」 その言葉を聞いて、皆の眼の色が変わった…ように見えた気がする。 「おまつり、ですか?」 「それホント、フーちゃん!?」 「やったぁ、花火花火!」 「みんな、落ち着いて…まだ行くと決まったわけではないんですから」 「シャワーズ、君も顔が緩んでいるぞ?」 「う…」 ロコン・ピカチュウ・フシギダネ・シャワーズが期待の視線をこちら側に送ってくる。 常識派のシャワーズまでこんな反応とは。 …まぁ、どうせ日が暮れてはバトルもしづらい。彼女たちの事をフーディンに任せれば、俺ひとりで風呂にも入れるだろう。 「…分かった。どうせ予定があるのは昼間だけだ。夜はみんなでお祭りに行こう」 「やったぁー!」 「マスター大好きっ!」 「ありがとう、ますたー」 「ちょ、ちょっと皆…」 「まぁまぁ、元気でいいじゃないか。所でマスター、お小遣いはいくらかな?」 こいつらのこう言う笑顔を見ていると、俺も元気になれる気がする。 よし、昨日までの事は忘れよう。今日はみんなと思いっきり楽しもう。 * * * いつもいつも個性的でまとめるのに苦労する5人だが、萌えもんバトルでは頼りになることこの上ない。 その体躯からは想像もつかない苛烈な炎攻撃を放つロコン。 小柄さを生かしたスピードと電撃で敵を翻弄するピカチュウ。 ヤドリギのタネやねむりごなという搦め手と、葉っぱカッターの破壊力を併用するフシギソウ。 リフレクターや自己再生、テレポートにサイコキネシスを駆使して攻防で安定した戦いを見せるフーディン。 万能的な能力と、強力な水の技で仲間たちを援護するシャワーズ。 単体での実力もさることながら、コンビネーションに置いて彼女たちに勝るものは中々いないだろう。 この分だと、ジムリーダー相手でも有利に戦いを進められそうだ。 キョウ戦で最も重要なのは、まず毒タイプに強いフーディン、次いで耐久力のあるシャワーズ。 彼女たちのコンディションも見る限りは問題ない。後は、このまま突き詰めていくだけ。 「マスター、あたし勝ったよ!ほめてほめて!」 「ますたー、わたしもがんばりました…」 「ああ、2人ともよくやった。この調子なら、そのうち石も使えそうだな」 ロコンとピカチュウの頭を順番になでてやる。…昨日のことも、一昨日のことも忘れなくては。 「さて…そろそろ引き返さないとまずいな。みんな、セキチクに戻るぞ」 「よーし!みんなでセンターまで競争っ!」 「ソウちゃんズルイっ!待てー!」 「ま、まってください~」 「こら、みんな!勝手に行かないで!待ちなさいー!」 「やれやれ、困ったものだね」 フシギソウが叫ぶやいなや走り出し、釣られてピカチュウも駆け出す。 ロコンがその後ろを慌てて追い、シャワーズもそれを止めるために走り出す。フーディンは念力で浮き上がってふよふよと後ろから追いかける。 …元気なやつらだ。俺も折りたたみ自転車に飛び乗って、みんなを追うためにペダルを踏み込んだ。 * * * 「フーちゃん、あたしの帯知らなーい?」 「さっきそこに置いたろう。巻いてやるからこっちに来なさい」 「フーディンおねえちゃん、わたしのかみどめしりませんか…?」 「…ロコン、君の髪を今留めているのは何だと思う?」 「…おまえら、それ何所から借りてきたんだよ」 「「「センターで貸してもらったの(です・のだよ)」」」 それぞれのタイプを連想させる色の浴衣を着た萌えもん達に聞いてみると、そんな答えが返ってきた。 ジョーイさんのあの深い微笑みがまぶたに浮かぶ。あの人ホントに何者なんだろうか。 「ほら、マスターの分もあるんだよー?」 と、手渡されたのは黒地に白で模様が書き込まれた、涼しげな浴衣だった。 …グッジョブ、ジョーイさん。 「マスター…」 「ん、どうしたシャワーズ…って」 振り向いた先には、普段まっすぐ伸ばしている髪をアップで留め、青地の浴衣を完璧に着こなしたシャワーズの姿だった。 恥じらいの表情で見上げてくるその姿にはかなりグッと来るものがある。…本当にグッジョブ、ジョーイさん。 「あの、マスター…私、変じゃないですか?」 「全然そんなことないさ。綺麗だよ、シャワーズ」 また真っ赤に染まった顔を隠してふるふるしているのが可愛い。 さて…着替える前にできれば風呂に入っておきたいのだが―― 「フーディン、みんなの面倒頼めるか?俺、着替える前に汗流したいんだ。  終わったらすぐ追いかけるから、先に行っててくれ」 「…マスター」 「フーディン?」 「お小遣い500円追加」 「ぐっ!?」 コイツ、こういう時にだけ報酬を要求してくるんだよな…。 まぁ、今日のバトルで賞金は結構な量になってるから、みんなのお小遣い差し引いてもプラスだけど。 「わかった、頼む」 「ふふ、まいどあり。それとマスター」 「ん?」 「もう私以外みんな飛びだして行ってしまったのだが」 「いつの間に!?」 確かに、この部屋にはフーディンと俺の姿しかない。 「まぁ、皆は私が責任をもって引き受けよう。マスターは汗を流してからゆっくりと来てくれたまえ」 「わかった。何かあったら念でも送ってくれればいいからな。頼んだぞ」 そうして、フーディンも出て行った。 さて、今日こそはちゃんと風呂に入ろう。 もう見慣れてきた脱衣場で服を脱ぎ、タオルを巻いてドアを開けて―― 「んにゃー…んにー…」 「………」 がらがらがら、ぴしゃん。 落ち着け、落ち着くんだ俺!そうだ、素数、素数を数えて落ち着け… 「って、落ち着けるかーっ!!」 「ひゃぁぁっ!?」 湯船に浸かって眠っていたフシギソウが素っ頓狂な悲鳴をあげた。 俺も咄嗟に飛びのいて、風呂場のドアをとりあえず閉める。 「ごごごごごごっご、御主人!?」 「お前何でここにいるんだよ!さっきフーディンがみんな出て行ったって――」 そうだ。そういえば、さっきから思い返してみれば、フシギソウはずっと部屋にいなかった。 風呂に入ってそのまま寝ていたから、誰もその存在に気付かなかった、と言うわけか。 「御主人さま…」 「…何だ?」 「あの、さ?せっかくだから、一緒に入らない?」 ドア一枚隔てて聞こえるフシギソウの声。 …やっぱりなのか。結局どうやってもこの展開になってしまうのかぁぁっ!? 「ロコンやピカチュウと一緒に入っておいて、ボクとだけ入らないって言うのは…無いよねぇ?」 「って、お前なんでそれをっ!?」 「あ、やっぱり入ったんだ?怪しいなーとは思ってたんだけど」 こ、こいつ…カマかけやがったのか!いつの間にそんな高等話術を身につけやがった!? 「と言うわけで、一緒に入ってくれるよね?」 「え、あの、ちょっと、フシギソウ」 「答えは聞いてないっ!!」 「ちょ、それなんていうリュウt…って、つるのムチで引っ張るなよ、おい!?」 ドアをこじ開けた蔓が、そのまま俺の両手首をつかんで縛り、一気に風呂場へと引き込む。 俺が風呂場へと入ったと同時に、やどりぎのタネがドアへ放たれて一気に展開、逃げ場をなくす。 「フシギソウ、お前っ!」 「こうでもしないと、マスター逃げちゃうでしょう?」 「…わかったよ、逃げないからせめて両手のこれほどいてくれ。頭も洗えないだろ」 もう観念しよう。幸いにもフシギソウはちゃんとタオルを巻いてくれている。 ただ、やっぱり前の2人より成長しているせいだろうか、タオルがきつそうだ。 ひょっとして、普段気付かなかったけどこいつってかなり…いや待て俺。 「大丈夫だよ、解かなくても。頭ならボクが洗ってあげる!」 「頭はともかく体は自分で洗う。頼むから解いてくれよ」 「むー」 「フシギソウ」 「…わかった」 * * * 何とか、体と頭は自分で洗う事が出来た。一応フシギソウに背中を向けて。 が、体の泡を流し終えたと思ったら蔓が背中をつつく。 振り向いてみれば、フシギソウは湯船の片隅に寄っていた。反対側に俺に入れと言いたいらしい。 「…仕方ないな」 浴槽はひとりでは結構広いのだが、二人だと少し狭い。もちろん、その分体と体がふれあったりしてる訳だ。 何というか…三日連続でここまで理性が危険な状況に立たされているって、誰かの嫌がらせなのだろうか。 「ねぇ、御主人さま。ボク達さ、一緒に旅をしてもうすぐ1ヶ月経つんだよね」 「そうだな。…思い出してみれば、すげえ短かった気がするよな」 「オーキド博士の研究所で会ったんだよね、最初は」 「二人でトキワの森を越えて。ピカチュウに会ったのもあそこか」 「タケシと戦って。イワーク、いい子だったね」 「おつきみ山を越えて。あそこの月はきれいだった」 「ハナダでマサキさんと会ったよね。ロコンを連れて行ってくれってお願いされて」 「カスミと戦って。スターミーは強かったな」 「ホントだね。ボク達初めて負けちゃったもんね」 「で、クチバでサントアンヌ号見学したり、ディグダの穴を探検したりな」 「ボク達、海ってあれが初めてだったんだよ」 「そうなのか?マチスは…ゴミ箱しか印象にねぇな」 「イワヤマトンネルを通って、バタフリーとお別れしたのもあそこだったよね」 「まぁ、あいつも元気でやってんだろ。どっかでまた会えるさ」 「タマムシについてからは忙しかったよね」 「ロケット団につかまってたイーブイを助け出して、アジトをつぶして、エリカと戦い、  シオンでフジ老人を救出。そのままヤマブキに突入して、格闘道場と協力してシルフカンパニーでサカキを倒し、  そのまま勢いでナツメと戦って勝っちまったんだもんな。フーディン…あの時はユンゲラーだけど、あいつもあそこにいたんだっけ」 二人で並んで思い出を語り合う。こいつとは旅を始めたときからの付き合いだもんな。 会話の途切れ目。フシギソウが何気なくつぶやいた。 「ねぇ御主人さま」 「どうした、フシギソウ」 「この旅の終わりってあるのかな?今の旅は楽しいけど、終わった時どうなるのかな…って」 「…そうだな。一応目標はポケモンリーグ制覇って事になってるから、もしそれが終われば一つの区切りって事にはなるかな」 「うん、そうだよね…」 俺も時々そのことを考える。苦労もするけれど、今の旅路はとても楽しいものだ。 もしこの旅が終われば、俺達はどうなるのだろうか。…答えとは言い難いかもしれないが、俺は一つだけ分かったことがあった。 「けどさ、フシギソウ。目標とか区切りってさ、何も一つじゃないと駄目って事はないだろ」 「え?」 「たとえば、折角だからカントーだけじゃなくてジョウトやホウエン、シンオウの方のリーグも全部狙ってみる、とか!」 「えぇ!?」 「なんならもう世界中回ってみるのも面白いかもな。  そうやって、いろいろ目標を作っていく限り、俺達の旅は終わらないだろ?」 そうだ。終わらせることはいつだってできる。けれど、終わりは存在しない。 きっとそれが、俺達の旅だと思う。 「じゃあ、御主人さま」 「うん?」 「ずっと旅を続けるとして、その時はボク達をまた一緒に連れて行ってくれる?」 「バカな事聞くんじゃねぇよ」 「ば、馬鹿じゃないよ!」 「当たり前だろ。みんながついて行きたいっていうなら、俺はどこだって一緒に連れていってやるさ」 「御主人さま…やっぱり大好きっ!」 「うわっ、やめろ、溺れるから!ホント溺れるって、死ぬ、死ぬからやめろぉぉっ!!」 あと胸を押しつけるな!俺の理性も同時に死んじまうから! * * * フシギソウより先に上がって、服を着こむ。 理性は何とか、本当にぎりぎりのところでもってくれた。何気に凄いよな、俺。 「ふいー」 やがて、フシギソウも出てきた。髪色とあった、濃緑の浴衣を着ている…のだけれど。 「フ、フシギソウ!お前、なんて格好してんだよ!?」 「だって暑いんだもん…帯結べないし…」 その浴衣の前面が大きくはだけている。しかもその下には下着以外何も着ていないようで、 もういろいろな所が見えていた。流石にこれは直視できない。 「あ゛ーづーいー」 フシギソウ本人はそんなことはお構いなしにふらふらと俺の目の前を通り過ぎて、ベッドへばったりと倒れこむ。 もう本当に浴衣が意味をなしていない。むしろまとわりついている分妖しさと言うか、艶めかしさを強くしている気がする。 「わかったわかった、これ飲んでちゃんと服を着ろ」 「んー」 と、冷蔵庫にあったミックスオレを取り出して手渡す。 「んく、んく、んく…」 ミックスオレを飲み干すその白い喉の動きにさえ、今の俺は不自然に緊張してしまう。 ここ3日間で限界まで削られた理性が、さらにそぎ落とされようとしているのだ。 「あ、こぼしちゃった」 「…っ!!」 ぼたぼたと胸元へ落ちる乳白色の液体。それをフシギソウの指が掬いあげ、 ちゅ、と吸いついた瞬間。 今まで必死で保ってきた理性が、音を立てて崩れるのを俺は理解した。 「フシギソウッ…!」 「え、あ、きゃぁっ!?」 * * * 数刻後、こちらは前夜祭に参加しているシャワーズ達。 「…フシギソウか?今までどこにいた…って、何だと!?」 何やら念話を行っていたフーディンの顔色が変わった。 周囲にいたピカチュウ・ロコン・シャワーズもその声に振り返り、彼女の周りに集まる。 「わかった。とりあえず君はそこを動くな。すぐに戻る、待っていろ。  …くそ、こんな風に転ぶとは…いや、それはこのさいどうでもいいか」 フーディンは念話を切って、悪態をつく。その顔には、今まで誰も見たことないような焦燥が浮かんでいた。 「フーちゃん、どうしたの?」 「みんな、急いでセンターに戻るぞ。詳しい説明は走りながらする。とにかく一刻も早く戻るんだ!」 「いったい何が――」 シャワーズの問いに、念力で浮かび上がって移動を始めたフーディンが答える。  「ますたーが!」  「センターから飛び出して!?」  「行方不明になった!?」  「そう言う事だ。急ぐぞ!」   後編へ続く

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