3スレ>>910

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黄色の町、クチバシティ。その中でも有名なクチバ港の埠頭に、俺は独り立っていた。 いやまぁ独りとかいっても、ボールにはいつものメンツが入っている訳なんだけれども。 「で、マスター。本当にいくのかね」 「ああ。トキワジムの強さは他とは段違いだと聞いている。  それに、その後のチャンピオンロードも考えると現状では不安が多いからな」 グレンジムでも、なんとか勝利してバッジを手にすることができた。 しかし、その過程は苦戦の連続であり、事実ジムリーダー・カツラに勝利した時には全員が満身創痍の状態だったのだ。 俺達はその後、グレンに来た時と同じように21番水道を通ってマサラに戻り、故郷でしばらく療養してきた訳だ。 やはり、今の状態では今後も同じように戦っていくのは厳しい。そこで思い出したのが、 グレンで偶然会った、『萌えもんマニア』マサキとともに行ったナナシマ諸島だった。 (萌えもんマニア、と書くとあやしい響きだけれど、彼はまちがいなくまともな人間である) ナナシマの野生萌えもん、トレーナーは一概にしてカントー地方より強敵であった。 つまり、今の俺たちにとってはうってつけの修行場所、と言うわけだ。 「マスター、修業されるのはいいのですけど、どこで修業なさるのですか?」 「ああ、それはもう考えてある。1の島、ともしび山だ。あの辺は前の時ほとんどいけなかったろ?  探索や図鑑あつめも兼ねて、あの辺りで徹底的に修行だ。お前ら、気合い入れて行けよ!」 「御主人さま!」 「なんだ、フシギソウ?」 「おやつはいくらまでですか!?」 「ああ、一人500円…って、遠足じゃねーだろ!」 「マスター!」 「どうした、ピカチュウ?」 「お土産代はいくらまでですか!?」 「ああ、一人2000円…って、修学旅行でもねーんだよ!」 「ますたー!」 「…なに、ロコン?」 「まくらなげはできますか!?」 「消灯は11時だぞ…って、お前らは中学生かっ!!」 「御主人!」 「プテラ、なんだ?」 「夕御飯は何でござろうか!?」 「ああ、きっと島だから海の幸中心の…ってだからお前ら勘違いしすぎなんだよ!!」 ああ、そう言えば、今回の俺達の旅にはとうとう6人目が加わることとなった。 グレンの研究所で復元されたコハクから生まれた、古代の恐竜萌えもん。 古代生まれだからか古風なしゃべり方をしているが、その実結構なボケキャラだったりするんだな、これが。 あと胃袋キャラだな。ちなみに前回の年越しで出なかったのは、復活したてで眠いからってずっと寝てたらしい。 「ええいお前ら、船に乗るぞ!時間がもうない!」 「いざ、ナナシマへ出発ー!」 「「「おぉー!」」」 「他のお客の迷惑になるからやめておくべきだと思うね」      * * * さて、シーギャロップと言うだけあって、一時間足らずでナナシマへ到着したのだが…。 船内で昼食は摂ったので、まずは…今夜の宿の確保か。 港からまっすぐ行ったところにあるセンターへ到着する。とりあえず部屋の予約をとって、 それから俺はセンターに併設されている通信システム制御施設へと歩き出した。 「あれ、クリムさんじゃないですか!どうもお久しぶりです!」 「こんにちは、ニシキさん。通信システムの方はどうですか?」 「はい、マサキ先輩のおかげで好調です!」 俺に敬語で話しかけてきたこの男性は、マサキの後輩で彼曰く「がんばるパソコンマニア」のニシキだ。 ちなみに、クリムってのは俺の名前。偽名でもなんでもなく、正真正銘俺の名前だ。 最初の方はいろいろと楽しそうに近況報告してくれていたのだが、 話が進むにつれて彼の顔がだんだん沈んで見えるようになってきた事に気付く。 訳を聞くと、彼はかるいため息をついてから話を始めてくれた。 …まぁ、長いので要約しよう。 以前、マサキの助けを借りてカントーのシステムとの通信は可能になったのだが、 それ以外の地方――たとえばジョウト・ホウエン・シンオウなどとの全国通信システムはまだ完成していないらしい。 とはいっても、通信システム自体は完全に出来上がっている。では何が足りないのかというと、 そのコアとなる特殊な2種類の鉱石が必要と言う事らしい。 両方ともこのナナシマにあるという事は分かっているのだが――とのことだ。 「じゃあ、その鉱石の詳しい所在は分からないんですか?」 「いえ、実は片方の鉱石、ルビーのおおよその場所は判明しているんです。  この1の島、ともしび山にあるという情報が入っています」 「…はい?」 …まぁ、その後は予想通りと言うかお決まりというか。修行のついでなのでざっとでよければ探してきますけれど、 と言うと、ニシキさんはもう泣きながら俺の両手を握ってぶんぶんと振り回してくる。 「うう、ホントにありがとうございます。最近あのあたり、何か物騒で…」 「物騒?」 「黒服の集団が出たり、上空で火の鳥みたいなものが見えたりと…」 「黒服集団…ね」 激しい光のほうはわからないが、黒服集団には心当たりがある。 萌えもんを使用して犯罪を行う秘密結社、ロケット団。(町ごと大企業を占拠している奴らのどこが秘密なのか) 今となってはどうでもいいが、俺の本当の両親はあの組織の幹部だった。たぶん今もそうなのだろう。 正直言って俺はあの黒服集団が死ぬほど大嫌いなので、修業ついでに徹底的に駆逐してやろう。 「わかりました。それでしたら、探してくれるお礼と言ってはなんですけど  オレがセンターの特別宿泊室を借りられるように話をしておきます。今回の修行の間は、自由に使ってください!」 「いいんですか?ありがとうございます」 「いえ、お礼を言うのはこっちですから!」      * * * 「ピカチュウ、ロコン、行け!」 「はーいっ!」 「いきます…!」 俺達は持ってきていた野営資材などをセンターの部屋に預け、リュックを持ってともしび山へとつづく水路でバトルを繰り広げていた。 今からともしび山へ向かっては日が暮れるまでに帰れないので、今日は近場での訓練となった。 で、現在はダブルバトルというわけだ。 ダブルバトルにおいては、戦闘に出ている2人のコンビネーションは極めて重要である。 そのため、俺はあるていど大まかに作戦パターンを決めて、各自に覚えさせてある。 「コンビネーション3-8から3-1へ。一気に片をつけるぞ!」 ピカチュウが空中へ飛び上がって、相手のシェルダーとサンドパンめがけて派手な雷撃を放つ。 しかしそれは囮。あえて注目をあびたピカチュウの下から、ロコンが炎の渦で奇襲をしかける! うーむ、最近コイツらホントに動きに磨きがかかってきたな。 「マスター、勝ったよー!」 「わたし、がんばった、です…」 「ああ、見てたぞ。2人ともよく頑張った」 「マスター、そろそろ引き上げないかい?私達もだいぶ消耗してきたことだし、時間的にもいいタイミングだと思うのだけれど」 「ん、そうだな。みんな、帰る準備するぞー」 俺がみんなをボールに戻すべく腰に手をやろうとした瞬間、背後から彼女の声が聞こえた。 「ご、御主人さま…」 「フシギソウ、どうした…?」 振り向いた先にいたフシギソウは、明らかに普段と違った雰囲気を発していた。 顔がやけに上気していて、足もともふらついている。なんというか、風邪を引いたような感じだろうか。 「ボ、ボク…きちゃった、みたい…」 …マジですか。いや、まぁ俺としては嬉しいんだけど――とか思ってる矢先に、フシギソウの体が光に包まれた! 「あ、うあぁぁぁあーーーっ!!」 光が収まった時、そこにいたのはフシギソウではなかった。彼女の特徴であった大きなつぼみは、 今は大きな花へと変化していた。…まぁ要するに、進化したのだ。フシギソウから、フシギバナへ。 「ご、御主人さま、ボク…やっと、やっと…」 「ああ!よく頑張ったぞフシギソウ!いや、フシギバナか」 「えへへへ…これで、ボクもっと強くなれるよね!」 「ああ…これからも頼むぜ、フシギバナ!」 「うんっ!」 …フシギダネもとうとう最終進化か。…できればもう少しこのままにしておきたかったが… しかし、こうなればもうそろそろこっちも行動を起こすべきだろう。 「潮時だな…ロコン!ピカチュウもこっちに来なさい」 俺のそばへやってきた2人に、リュックから取り出したあるものを手渡す。 「お前たちもこれまでよく頑張ってきた。これから先、リーグを目指す戦いはもっと厳しくなる。  フシギバナも進化を終えたんだ。お前たちも、そろそろ時期だろう」 「マスター…うん、わかった!」 「ますたーが、そういって、くれるなら…」 ピカチュウは雷の石を。 ロコンは炎の石を。 2人の体がそれぞれ輝きに包まれ、それが消えたときには二人の進化も終わっていた。 ピカチュウの時はストレートにしていた髪をツインテールに、尻尾も鞭のようなしなやかな姿へと変化する。 ロコンの時は赤かった髪が金とも銀ともつかぬ色に変化し、9つにわかれて長くのばされる。 ピカチュウからライチュウへ。ロコンからキュウコンへ。 …見た目は変わっても、性格はそんなに変わっていないようだが。 「うわー、すごーい、何だかあたしじゃないみたいー!」 「これ…私、なんですか…!?」 「…これで、ある意味最低限だ。俺達はここからもっと強くならなきゃいけない。  厳しいかもしれないが、きっと結果は出るはずだ!みんな、明日からも頑張ろう!」 「勿論です!」 「そうだね」 「うんっ!」 「はーいっ!」 「は、はい…」 「うむ!…御主人」 「どうした、プテラ?」 「…腹が減ったのだが」 「ああ…昼からずっと戦ってたもんな」 「早く帰って晩ごはんにしましょう、マスター」 「汗もかいたからな…風呂にも入りたいものだね」 「全くだ。早く帰って沸かしてしまわねば」 「よぉっし、みんなセンターまで競争ね!」 「まけない…です」 「あ、待ってってばー!」 「って、お前らまたかよ!?」 砂浜をかけていく5人を見送る…わけにもいかず、俺も唯一残っていたシャワーズと一緒に走って追いかける。 「だー、待てっつーのお前らーっ!!」      * * * で、まあ次の日。特別室の寝心地は良好で、結果としてみんなもボールの中でなく珍しくベッドで寝れるという事になった。 そのためか、6人が6人とも今日はいつもより若干テンションが高いように思われる。 余談だが、風呂場も相当広かったので、昨日は俺以外の全員で入っていた。 …いや、俺も誘われたんだけど、丁重にかつ強硬にお断りしておいた。たぶん凄く大変な事になるから。 フシギバナとシャワーズが用意してくれた朝食を全員でとり、俺達は今日の行動を決める事にする。 (ちなみに、進化したからといって料理の腕は変化してない。もともと相当うまいんだけど) 「マスター、今日はともしびやまをめざすのかい?」 フーディンの問いに対して俺は昨日から考えていた案を切り出す。 「それなんだが、ちょっと行きたい所があってな。今日一日はとりあえず自由行動にしたいと思う。  フシギバナ、お前は俺と来てくれ。今後の戦力になる重要なことだ」 「う、うん、分かった」 「一応、各自に多少小遣いも渡しておく。何かあったらフーディンに連絡すること。  その辺頼むな、フーディン」 「任せてくれ。しかし、いったい何をしに行くんだい?」 「ああ―――」 「秘奥義ってやつを貰いに行く」      * * * フシギバナのみをボールに入れて2の島へわたる――つもりだったのだが、なぜかプテラも一緒についてきた。 なぜか若干照れたように話すプテラ曰く、 「とくに見たいものも何もないから」 こっそり念話で話しかけてきたフーディン曰く、 「まだマスターから離れるのが不安だから」 …らしい。両方が的を得ているような気もする。まぁ、残りのあいつらは海でまた遊ぶんだろうけどな。 しかし、これだけ放任主義なトレーナーも珍しいんだろう。自分で言うのもなんだけどな。 と言う事で、二人をボールに入れて俺は2の島まで来たわけだ。 俺は露店やゲームコーナーをスルーして、島の北側に位置する岬へと向かった。 島の人いわく、『きわのみさき』と呼ばれるこの場所は、かつて伝説級の強さを誇ったトレーナーが住んでいる。 俺は以前にここに来た時、その老婦人にあったのだけれど…結局奥義は教えてもらえなかった。 彼女が言うには、俺の手持ちの中で唯一フシギバナ(当時はフシギソウ)には素質を見出せたらしい。 「最終まで進化を終えたらまた来るがよろしかろう。その時、お前に技を継がせるか決める」 とも言われた。(いや、言われたのはフシギソウだったんだけど) 要するに、今のフシギバナはその条件を満たしていると言う事だ。 ならば、今後の戦いにむけて少しでも強化をしておきたい俺としては、もう行かざるをえないよな。 「ごめんくださーい」 「はいはい…お主か。どうやら進化も終えたようじゃな。入りなさい」 見た感じは普通の家なんだけど、この家の地下ってとんでもない修行用の施設なんだよな… とりあえず、促されるままにフシギバナをボールから出す。老婦人も、フシギバナを繰り出してきた。 「地下に降りましょう。ここでは狭い」 「わかりました」 彼女に促され、俺のフシギバナとともに階段を降りて、広大な地下空間に出る。 以前見たときも驚いたが、相変わらずとてつもなく広い… ちょうど階段を降りてきた老女に振り返ろうと――殺気!! 「フシギバナ、ハードプラント」 振り返りかけていた俺の視界に入ってきたのは、老女のフシギバナが放った蔓、いや、根!? 視界を埋め尽くさんばかりに展開し、猛烈な速度で轟々と襲い掛かってくる根、根、根。 「御主人さまっ!!」 「うわっ!」 ちょうど俺の真横にいたフシギバナが俺を突き飛ばして、はっぱカッターを連射する。 しかし、そのフシギバナの姿は瞬く間に根に飲み込まれて見えなくなった。 ――首が、まわらない。それでも必死で体ごと振り向くと、ぼろ屑のように床に転がった親友の姿が見えた。 「フシギバナ!?」 「やれ、リザードン」 首を元に戻すと、いつの間にか呼び出されていたリザードンがこちらに更なる殺意を放射していた。 今度はフシギバナもいない。俺を守る存在は誰もいない―― ――いや、いた。腰のボールから自分で飛び出し、全身に炎を纏ったリザードンへ向けて破壊光線を放った、古の竜。 「御主人、逃げろ!」 「ブラストバーン」 プテラの悲鳴じみた叫びと、老女の冷酷な殺戮宣言は同時。リザードンの纏っていた炎が、その口腔前へ収束、超々高熱の刃として放たれる!! 破壊光線を瞬く間に飲み込み、俺の真上を飛んでいたプテラもまた、広すぎる地下室のまで飛ばされ、叩きつけられた。 「プテラッ!!」 「カメックス、撃て」 老女がさらに呼び出したカメックスが、その砲口をこちらへ向けている。先ほどの2匹と同威力の攻撃を仕掛けてくるのは明白。 やばい、あんなもの当たれば死ぬ逃げなければけど2人が逃げ死ぬ避け無理死ぬ死ぬ死ぬ死死死死死死死――ッ!! 「御主人さま、離れて!」 背中から、聞きなれた声。反射的に俺は左へと跳躍、そのまま倒れこむようにして転がってその場から離れる。さらに転がって、地下室の壁まで。 俺が振り返った次の瞬間、先ほどまで立っていた場所を、膨大な数の根が駆け抜けていた。 あれは、先ほど老女のフシギバナが放った―― 「ハード、プラント…」 ハードプラントは、俺を狙っていたカメックスめがけて殺到、その攻撃を停止させるだけに及ばず、その体ごと背後の壁に突っ込ませた! その技を放った俺のフシギバナは、こちらを向いてにっこりとほほ笑んで見せた。 「フ、フシギバナ…」 「えへへ、御主人さま…ボク、頑張ったよ…」 その言葉を最後に、フシギバナの体がぐらりと傾いて地面へ落ちた。 慌てて駆け寄り、容体を確認する。生きてはいるようだが、もはや瀕死に近い。 リュックの中からげんきのかけらを取り出して、とりあえず口に含ませる。 と、フシギバナの体が突如として浮き上がった。振り返ると、老女のフシギバナが同胞の体を蔓で持ち上げていた。 その動きがあまりにも繊細で、俺のフシギバナをいたわるようにしている事に驚愕する。 さらにその隣には、いつの間にかプテラをその両手で抱えあげていたリザードンが立っている。先ほどまでこちらに殺気を放っていた二人は、そろって頭を下げてからどこかへ走って行った。 と、俺もなんか引っ張られて立たされた。見上げると、カメックスがこちらを見返してくる。 そのまま見つめあっていると、向こうから口を開いてくれた。 「先ほどの無礼をお許しください。あなたのフシギバナとプテラは治療施設へ運んでいます。  今見られましたように、あなたのパートナーは無事奥義を習得したようです」 「…はぁ」 まぁみりゃわかる。とりあえず、カメックスに案内してもらって俺も治療施設へ向かう事にした。      * * * 「ウチの治療施設は最先端の技術を使っているからね。30分もしないうちに全快するだろう」 「………」 先ほどまで俺を殺す気で萌えもんを操っていた老婦人は、その俺の前で平然とそう告げた。 「先ほどはすまなかった。まぁ、この子たちが回復するまでの間にゆっくり説明させてもらおうかい」 で、俺達は今、老夫人の家――訓練施設ではなく、地上の家にいる。 そんでもって彼女のフシギバナが淹れたお茶をこうしていただいている訳なんだけど… 「まず、ひとつ誤解のないように言っておきたい。お主は我々の殺気を強く感じ取ったことだろうが、  我々はお主たちを殺すつもりは微塵もなかった」 「そして、なぜあそこまで過激な方法をとったのか。答えは、お主もわかっておろう」 「…推測ですけど」 「話してみなさい」 「おそらく、秘奥義とされる3つの技『ハードプラント』『ブラストバーン』『ハイドロカノン』には、  体系も極意も使い方も、マニュアルと呼ぶべきものが一切存在しないから…だと思いますが」 「その通り」 そう――あの3つの技には、使い方、極意、体系、記録、その他ありとあらゆる『情報』が全く存在しないのだ。 ゆえに、体に叩き込んで直接覚えるしかない、というとんでもない方法しかとれない。継承者がほとんどいないのも、これが原因の一つだろう。 「そして、もう一つ教えておくことがある。我々が試したのは、お主のフシギバナではない。お主自身じゃ」 「…どういう事ですか?」 「以前見た時より、お主のフシギソウには資質があふれておった。進化さえ終われば、即座に技を授けられると思うほどに。  しかし、技は萌えもんが覚えてすむ、それだけの話でもない」 「より重要なのは、それを使用させるトレーナーの資質、能力じゃ。それも、指揮能力ではない。  技の使い手が信用できるマスター、他の仲間にも信頼されるマスター、それこそが私の求める資質じゃった。  先ほど試したとき、プテラはお主の危機に自分自身でボールから飛び出した。これは、お主が信頼されておる証拠とわしは見た。  だからこそ、この技をお主とお主のフシギバナに託すことができるのじゃ…お主たちは、よくやってくれた」 そこで老婦人は席を立ち、俺に向かって深々と頭を下げた。 「ありがとう。私の技を受け継いでくれて。これで、また一つ未練は減った」 「いや、不吉なこと言わないで下さいよ!」 冗談じゃない。これでこの人に死なれたら、俺が殺したみたいじゃあないか。 「お婆様、お客様のフシギバナとプテラの回復が完了いたしました」 「そうか、ではこちらへ連れてきなさい」 ほどなく、老婦人のフシギバナ達が、俺のボールを持って地下から上がってきた。 ボールの中を確認すると、2人とも完全に傷は治っていた。 「意識の方もじき戻るであろう。…そろそろ戻られたほうがよいのではないか?」 「…そうですね。今日はありがとうございました」      * * * 「お主、1の島で修業しているのか?」 「あ、はい、チャンピオンリーグに向けて…」 老婦人の家の前。1の島で修業している事を話すと、彼女は少し考えてから、俺に告げた。 「ひとついい事を教えよう。ともしび山の頂上へ向かってみなさい。私は興味がなかったが、  お主達にとってとてもいい修行相手がそこにいるかもしれん」 「…?わかりました、明日向かってみます」 「うむ、気をつけてな。『奴』は相当手ごわいぞ」 1の島に向かう船を待つ間、海の風を受けながら考える。 老婦人の言っていた『奴』とは一体何なのだろうか。なんにせよ、明日はともしび山へむかってみよう。 新たな謎と新たな力を手に入れて、俺は2の島を後にした。      次回へ続く

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