4スレ>>55

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―私の住処は森の中、 木は鬱蒼と茂っているけど木々の間から空が見える。 だけどいつもお空は曇り空、お日様はいつものろまな雲が覆い隠しちゃう。 夜になると雲は眠りにつくのかな、お星様は見えるけど。 でも夜が明けてお日様がやってくると雲も目覚めてまたやってくる。 ―そんな森から、そんな自分の住処から。 ―私は抜け出したかった。    『日の当たらない森』 「退屈……」 曇り空を睨みながらぼやく。 私は太陽を知らない、私たちの集落の長老であるドダイトス爺の話でしかお日様を知らない。 「フシギソウ~、またジュカイン師匠の鍛練さぼったんだって?」 「うるさいなぁジュプトル」 「うるさいじゃないよ、ほかのみんなは進化してるんだよ? 昨日ハヤシガメ君が進化したのはフシギソウだって知ってるんだし― 「ほっといてよ、みんなと違って私はどんなに頑張ったって進化できないんだから」  太陽光の不足。 深いこの森は私たちにとって理想的な住処。 でも私達にとってもっとも大事な「光」がこの森には届かない。 ジュプトルやハヤシガメは太陽光が不足していても大地から力を吸収して進化できる。 でも私やベイリーフは……光を十分に浴びてその「花」を咲かせなきゃいけない。 長老や師匠が疑似的な太陽を作りだしてある程度の光を浴びることはできるけど本物には程遠い。 本物の光の届かないこの森では進化できない、だから「外」にでなきゃいけないんだけど…… 「そのために頑張って修行してきたじゃない、せっかく今までがんばってきたのに」 「うるさいなぁ!知ってるでしょ!?私たちの中で一番頑張ってたベイリーフがどういう目にあったのか!」 「っう……」 私たち4人の中で一番頑張ってたベイリーフは光を浴びるために外に出て行った。 素質もあったし努力していたから1週間もすれば進化して帰ってこれると師匠は言ってた。 ベイリーフも 「なぁに、すぐにメガニウムになってくるよ!その次はみんなだ!」 って言って意気揚揚と出て行ったのに…… 結果は悲惨なものだった。 外界は私たちを仲間と認めるはずはなく、力があっても一人で生き抜くにはあまりに厳しい世界。 加えて"ヒト"がこの森の近くまでやってきていてベイリーフは運悪くヒトに出会ってしまったらしい。 師匠が外にでたときに重傷のベイリーフを発見して2日、ベイリーフは静かに息を引き取った。 「……ベイリーフでもあぁだったんだ。私がどんだけ頑張ったってやっていけるわけないよ」 「そ、そんなことやってみなくちゃ―」 「当事者じゃないから!だからそんなことが言えるんだ!」 「でもベイリーフがいたら同じことを―」 「うるさいうるさいうるさい!もうほっといてって言ったでしょ!」 ジュプトルを突き飛ばして私は走り出した。 がんばれば絶対報われるジュプトル達が悔しくて、 努力しても報われなかったベイリーフと自分を重ね合わせて、 思いは募れば募るほどこの場にいることを是としなかった。 「ね、ねぇフシギソウそっちは外の世界だよ!あぶないって!」 その時もうジュプトルの声は聞こえてなかった。 ――――― ――― ― どれぐらい走ってるのだろう。 長老の話を聞く大樹の広場を抜け、 師匠と鍛練をする樫の林を抜け、 明け方ほんの少しだけ光が射す私たちの秘密の場所を抜け、 気づいたときには回りに木々はなく草原が広がっていた。 「うわぁ…………」 『言葉にできないほど明るく、そして優しい光』 長老の言葉を思い出していた、正にその通りだったから。 空を覆う憎い灰色の塊はひとつもなく、 青いキャンパスに白いわたが浮かぶばかり。 その青いキャンパスもただ青いだけでなく、 とても澄んでいて、その鮮やかさはフシギソウの知らない世界。 そして何よりも眩しく、目を向ければ開いてられないほど明るいのにとても温かく。 今までに感じた事のない温もりをフシギソウは太陽から感じ取っていた。 「これが……太陽……」 自分たちが想像していたものよりもずっと素晴らしいソレにフシギソウは我を忘れていた。 「こんなに気持ちいい……ずっと外にいられたらいいのになぁ」 嬉しさからか自分が"どこ"にいるのかフシギソウは忘れていた。 …………背後から物音がするまでは。 「っ!?」 咄嗟に振り向き臨戦態勢に入る。 そこにいたのはヒト。 自分たちを捕まえ傷つける敵………… そのヒトの回りには何人か見たことのない子がいた。 一人は尻尾に火を宿し紅い瞳でこちらを見つめ。 もう一人は甲羅に閉じこもりヒトの後ろに隠れこちらを窺っている。 「な、何の用だ……」 怖れから手より先に口が開いた。 自分がベイリーフと同じようになるのが怖くて、でも逃げられなくて。 ヒトがこちらに歩み寄る。 1歩、また1歩。 (こ、こういうときはジュカイン師匠はえぇっと……) 頭の中では教えてもらった教訓と恐怖が渦巻いて何一つ明確なものはでてこなかった。 手をフシギソウに向ける 「ヒャッ……」 思わず身体を屈め頭を手で覆い隠していた。 頭にヒトの手がおかれる。 (し、死にたくない、死にたくないよぅみんな……) みんなの顔が頭によぎる、あの時一緒にいればこんなことには…… 「…………い?」 頭の上に置かれた手は、フシギソウの頭を優しく撫でていた。 「……え?」 「日向ぼっこなら一緒にいてもいいかな?あ、キミが嫌なら別にその」 「マスターは押しが弱い、ついてこい!って一言いえばいいじゃないか」 「主は……優しいからそんなこと……いわなぅぅぅ」 傍にいた二人が喋りだす。 二人とも性格は違うみたいだけど僕を傷つけるとかそういうつもりはなさそうで。 「まぁ……うん、結局はそうなんだ、一緒にこない?」 このヒトもすごく優しそうで、 「一緒にいたら……お日様を見られる?」 「……は?太陽はどこでだって見れるだろ?」 「……(コクリ」 「うん、まぁ……そりゃ勿論」 初めて見たお日様と同じぐらい暖かくて。 「じゃあその……明日またここにきてくれる?みんなにお別れをいってくるから」 「わかった、じゃあまた明日この時間にくるよ」 「マスター!そんなこと言わずについてけばいいじゃない」 「別れの場に水を差すのは……無粋なの」 そしてお日様よりもずっと近い存在でした。

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