1スレ>>278

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この町はいつだって曇り空だ。人の悲しみを如実に表してる。 俺の気分もこんな感じなのかね、晴れた空を見たのは何日前だったかな。 ポケモンタワーから目を赤くしたトレーナーが歩いてくる。 あぁ、君の娘は幸せだっただろうか。笑って天寿をまっとうできたかな。 お墓というものは気が滅入る。無縁というわけにはいかない。 だからって必要ないときに思い出したくない。あいつらが死んだら―――― ―――俺は正気でいられるだろうか? 「・・・・ふぅ」 「どうしました?ため息なんかついて」 「や・・・大分長いこと歩いてきたなと思って」 軽く嘘をついてあしらう。半分本当だけど半分は嘘だ。 ポケモンセンターで休息こそとってるもののそろそろ限界か、 ここ2週間、バトルサーチャーを使って萌えもんバトルを続けてるわけだしな。 ・・・・あんだけコテンパンにされちゃあなぁ・・・・ 2週間前、シルフカンパニーでサカキに勝利した足で そのままヤマブキジムに挑んだ。 皆調子がよかったし勢いを落としたくなかったからな。 その結果?6タテを喰らったよ。 これでも基本的な戦略は熟知してるつもりだ。 娘たちの能力も理解してるつもりだった。 自分は戦いの指揮を執るに十分な実力があると思ってた。 それがどれだけ浅はかだったんだろう。 どれだけ皆を傷つけたんだろう。 どれだけ苦しませたんだ。 どれだけの涙を。 屈辱を。 悲し―― 「マスター!」 「のわぁ!?」 「・・・大丈夫ですか?考え込んでるようでしたけど」 「大丈夫だ、さてと、今日はサイレントブリッジにいくか」 「本当に大丈夫ですか? ここのところお金もほとんど傷薬なんかにつかってますし」 「当たり前だろ?トレーナーっていうのはな・・・」 「でもここのところマスターろくに食べてないじゃないですか」 「そうか?いつも通りだと思うよ」 「そんなことないです!私たちのご飯はいつも通りなのに、 マスターのご飯の量は明らかに減ってます!」 「それは勘違いだ。俺の食べてる量は変わってない。 頑張ってるお前らのほうが腹も減るだろ?お前たちのご飯の量が増えてるだけだ―」 グゥゥゥゥ・・・・ 情けない。今後意地を張るときは腹筋に力を入れないとな。 あいつらもトレーニングしてるわけだし俺もひとつIDの数だけ腹筋でも、 いや、あれだな無神論者の俺だがひとつラマダンでもして食べ物の有り難味と共に――― 「マスター、私たちは大丈夫ですからもっと自分を大切に」 「大丈夫だって。お前の胸でも触ればすぐに元気になれ―」 「バカマスターッ!」   ドコッ! 「み、鳩尾はないだろ・・・・」 「せっかく心配してるのに・・・もう知りませんっ!」 いかん ・・・・冷静さを欠いてる。今はボケるところじゃなかったはずだ。 情けないな、あいつに心配されるとは。 今日の成果はまずまずだった。セキチクのポケセンに泊まらせてもらう。 ジョーイさんと少し話した。最近よく会うからな、励まされるのはいいもんだ。 明日も頑張れそうだな、でも・・・・ あいつは不機嫌な顔のままだった。 ほかの娘に 「なんかあったんですか?」 と心配された。大丈夫、明日には笑顔になってるさ。 と答えておいた、そんな確信何一つないのに もっと毅然としよう。あいつらの不安な顔はみたくない。 もっとあいつらを楽に戦わせないと、まだ足りない。もっと俺が強くならなきゃ 性格判断みたいなことをやってる奴がいたな、胡散臭かったがあれもひとつの手か。 あいつらの考え方を把握すれば引き際がわかる。そうすればもっと有利に展開できるはず。 ・・・たしかマサキの家に萌えもん生態学の論文があったな。 各萌えもんごとの弱点部位についてどうこうとか・・・ あの時はマサキのコレクションに目が言ったが今必要なのは情報だ。 よし、明日はサイクリングロードを北上してハナダまでいくか。 ちと坂道がしんどいが俺の足腰強化にも――― うしろに程よい重さとやわらかさを感じた。 ん、憑き物・・・ではないよな、どう考えても実体の感触だし。 「マスター」 あぁ、お前か。 今日のこと謝らないとな、しかしどう謝る。考えてなかった・・・ ―今日のアレは冗談だ、きにしないでくれ 駄目だ。しっくりこない ―本日の私の失態はすべては私の精神の弱さにあり・・・ どこの政治家だ俺は。 ―ごめんな。 やっぱりこれか。種族が違ったって仲直りの方法はいつだってシンプルなもんだ。 「今日はご―」 「ごめんなさい。」 「へ?」 「マスターがこんなに頑張ってるのに、 勝手に心配して勝手に怒って・・・ごめんなさい」 「俺のほうこそごめんな。心配されてちゃマスター失格だ」 自分でも自虐的な笑いだったと思う。 駄目だ。こいつは気づいちまう。またこいつを不安にさせる。 もっと自然に笑えよ俺。こいつとどれだけ一緒にいると思ってるんだ。 みろ。こいつの顔はこんなに暗くない。 もっと綺麗なはずだ。俺が心から惚れてるこいつの笑顔はもっと綺麗だっただろ。 俺が、こいつの笑顔を奪ってる。 こいつを安心させてやれなきゃトレーナーとして失格だろ。 もっと気のきく言葉をいってやれよ。 こいつの笑顔を見たいのは俺じゃないか。 こいつと一緒にいたいのは俺じゃないか。 殿堂入りさせて自慢のパートナーだと。 寝食を共にした最高のパートナーだと。 そう言いたいのは俺じゃないのか! 「ねぇマスター」 「ん?」 「私・・・一緒にいられて本当によかったと思う」 「どうした急に」 「こんなに誰かのために身を削る人ってほかにいないと思うから」 「そうか?トレーナーなんて皆そうじゃないのか」 ―おい、なんでそんなこと言うんだ俺。 あいつの言葉をもっと真正面から受け止めろよ。なんでひねくれるんだ。 「そう思う?他のトレーナーは自分のパートナーのことより バトルの勝敗に悔しそうだった」 「相手から見れば俺もそう見えるんじゃないか?」 ―馬鹿。励ましの言葉をなんで遮る。 素直になれよ。一番一緒にいる奴の言葉だろ。 こいつを信用してやれなきゃ俺は誰を信用できるんだよ。 「私はそう思わないから。きっと他のトレーナーの下だったら私、 逃げ出してると思うな。マスターだから一緒にいれた。 マスターが頑張るなら私も頑張るよ。ううん、それ以上に頑張るから。 だから少し休もうよ。ね?そうすればきっといい風が吹くよ」 ―ほんと、こいつは俺の心にこうもすんなりと・・・ ギュッ 「ちょっとマスター!?こんなところで」 「ごめんな、心配かけさせて」 「・・・いえ、私は平気ですから」 ―小さな身体だった。 こいつの肩に俺は要らない物を背負わせてたんだな・・・ 「ずっと、ついてきてくれるか?」 「勿論です。・・・あ、マスター?」 「ん?」 「あの・・・別に、触りたかったらいいですよ?」 「何を」 「む、胸です・・・ま、マスターになら別に嫌じゃないですから、その―」 「・・・はは、ありがとな、気遣ってくれて」 頭を撫でた。こいつが喜ぶと思ったから。 こいつの喜ぶ顔が一番俺が見たいんだから。 こうすることが俺にとって一番の安らぎだと思うから。 「・・・・」 「・・・ん?寝ちゃったか」 「えいっ」 急に視界が暗くなると同時に唇にやわらかい感触が触れた 「お前な・・・」 「へへっ」 あぁこれだ。俺が一番見たかったもの。 初めてこの笑顔を見たのはいつだったかな。 本当に久々に見た気がする。 窓の外をみた。綺麗な星空だった。 きっと昨日も、一昨日も、その前の日もこんな綺麗な星空だったんだろうな。 それに俺は気づかなかった。いつもそこにあるのに。 ずっと下を向いてたから気づけなかった。 ちょっと見上げればすぐそこにあるのに気づけなかった。 でも気づけた。俺の腕の中には世界で一番のパートナーがいる。 こいつが笑っていれるようなトレーナーになろう。 明日はサファリにでも・・・ってこいつらがあそこにいっても楽しくはないよな。 そうだな。マサラに戻ろう。自分の家でゆっくりするのも悪くない。 これぐらいの休息で別に目標が遠ざかるわけじゃない。 リーグでチャンピオンになるのが目標だった。 別にそれが消えるわけじゃない。ちょっとだけ目標が変わっただけだ。 こいつと一緒にいてよかったって思い出をつくる。 チャンピオンになるなんてそのための通過点だ。 そう思ったら随分身体が軽くなった気がする。 シオンタウンの方を見た。少し雲がある。 でもきっとあの町にも綺麗な星空が見えるだろうな。 だってそうだろ? 死んだ娘たちだって曇り空じゃ気が晴れない。 こんな綺麗な星空――だれだって見たいと思うだろうから。

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