4スレ>>218

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待て。待て待て待て! 一体どれだけのトレーナーが萌えもんリーグを目指して旅していると思ってるんだ? リーグ挑戦を目標に掲げながら、バッチの半分も集めきれずに夢を諦めるトレーナーも数え切れないのに? リーグには興味ありません、ただしその手前の草むらに用がありますってだけでカントーのジムを制覇せよと? ちょっと考えなくてもわかる、どう見ても無理難題。 えらくあっさりと無茶を言い出した博士を見返す俺の目が、うろんなものになっていたことは責められないだろう。 それに気付かないまま(あるいは無視して)、博士は話を進めていく。 「無論、タダでとは言わんし、十分にバックアップはさせてもらうつもりじゃ。それに急いでというわけでもない。どうじゃろう?」 これを引き受けると言うのはつまりは、トレーナーになるということで。 「ちょっと待って下さい。つまり俺にバッチ集めの旅をしろって訳ですよね?  確かにタマムシにはすぐに戻れないけれど、カントー中を渡り歩くつもりなんて無かったし・・・  いきなりチャンピオンロード前まで行けって言われても・・・バッチ集め切れるかどうかもわからないですよ?  それにジム戦は公式戦なわけで、そこにこの子を使うわけには行かないし・・・」 「それはわかっておる。君とリーフィアちゃんのやり取りを見る限り、君には萌えもんと高みを目指す素質のようなものは十分見受けられる。  萌えもんについてはここに一匹萌えもんがおる、連れて行くと良いじゃろう」 もともと3種類いたうちの一人で、彼の孫とその幼馴染に選ばせた結果、残った子だそうだ。 「とは言っても、あやつらが旅立ってからと言うもの、どうにも気性が荒くなっておってのう・・・  そうじゃ、君は萌えもんセンターの職員じゃったな。ちょっと見てやってもらえんかね」 ・・・見る限り素質があるとか、連れて行くといいとか・・・ どうやらもう行かせる気でいるな。もらってそのままトンズラしてやろうか。 まだ心の中で難色を示している俺とは違い、なぜかリーフィアは楽しそうに見える。 「えらくわくわくしてるみたいだな、リーフィア」 「はい、私、生まれてからすぐにロケット団の所にいたので・・・」 生まれる→ロケット団研究所→タマムシジムと、主に屋内で過ごし外に出るという機会のほとんどなかった彼女には旅というものが楽しみで仕方ない様子。 ・・・こっちも行く気まんまんってところか・・・ 正直言って、この時の俺はあまり乗り気では無かった。 俺が働いていたタマムシ萌えもんセンターにだって、リーグ挑戦の夢を半ばで断念した先輩、同僚は何人もいた。 彼らの現役の頃の話も幾らか聞き、体感ではないにせよ現実がどれだけ茨の道か想像はつく。 だが、それはあくまで俺の都合で行く気がしないというだけの話。すぐにはタマムシに戻れないという状況は変わっていない。 それに、嬉しそうにしているリーフィアを見ていると、心のどこかで、行ってもいいんじゃないかという気持ちが芽吹いてくるようだ。 そのうちに博士が萌えもんボールを持って戻ってくる。 「この子じゃ。ほれ、でてこい、ヒトカゲ!」 博士の投じたボールから現れたのはオレンジの髪の萌えもん。 背は丁度リーフィアの半分ほど、尻尾には火がともっている。 顔立ちは可愛らしいのに・・・ その瞳は、とてもではないが迂闊に近寄れるような様子には見えなかった。 明らかに人間に敵意を、それもかなりのものを抱いている。 どう見てもまだ幼い萌えもんがここまで暗い感情を持つことなど、信じがたい話だった。 「どうしたのかと理由を聞いてもちっとも答えてくれなくてな」 困り果てている様子の研究畑一同。 (聞かなくてもわかるんじゃ・・・?だって三人いたのが一人になった頃からの異常なんだろ・・・?) 単純に考えてみれば誰でもそこに行き着くはずだ。 だが考えすぎるあまりに行き過ぎて深みにはまったらしいというのはいかにも研究者らしいというか。 などと心では思っても口には出せない。 それに、確実に俺が推測した理由だという保証もない。 このままお見合い状態では何も進まない、とりあえずはまぁ会話から── 「近寄んなっ!」 ヒトカゲの手が迂闊に近寄った俺の手を薙ぎ。 わずかに血が散る。 「っ痛・・・」 思わず顔をしかめた俺に、リーフィアの様子が一変する。 「ッ!」 「ストップ、リーフィア」 一気に身構えたリーフィアを呼びとどめる。 「でも、マスター!」 「落ち着けってば、喧嘩腰じゃあまとまるものもまとまらない」 俺の言葉にしぶしぶといった体でさがるリーフィア。 改めてヒトカゲに向き合い、笑顔で語りかける。 「随分嫌われてるなぁ。俺、君とは初対面のはずなんだけど、なんか不味いことしたっけ?」 萌えもんセンターの職務にも心のケアは入っている。 そのため俺でも(経験は浅いが)カウンセリングの基本のようなものくらいは知っている。 どんな態度でこられても、まずは笑顔で接するというのもその一つ。 だが、こちらの問いにもそっぽを向いて答えてくれない。 ならこちらが喋り続けるしかない。 ひとまずの推測から入ってみることにした。 「フシギダネや、ゼニガメがいなくなったせいで機嫌が悪いのかな?」 問いかけはある意味で成功。ある意味で大失敗だった。 理由としてはほぼビンゴ、それゆえに神経を逆撫でする形になった。 キッとこちらをにらみつけるヒトカゲ。その目に燃える怒りは尋常ではない。 「人間なんか、嫌いだ」 重い、一言。 「生まれた頃はたくさんいた。皆一杯遊んでくれたし、友達もたくさんいた」 その瞳に、涙が浮かぶ。 「そのうちだんだん連れて行かれた。たまにまた会えることもあったけど、ほとんどは二度と会えなかった」 「いつの間にか、三人だけになっちゃったけど、その分とっても仲良しだった」 「他に何にも要らなかった。三人でいられればそれで楽しかった。なのに」 「自分たちの都合ばっかりで、平気で皆どこかへ連れて行く。最後の、最後の友達だったのに」 話せば話すほど、涙がこぼれる。 それにかまわず、ヒトカゲは叫ぶ。 「皆を・・・友達を、帰せ!」 しばらく、あたりの音はヒトカゲの嗚咽だけになった。 誰も、言葉が出ない。おそらく皆、同じ理由で。 萌えもんセンターにはいろんな萌えもんが運ばれてくる。 野生で命の危険があると判断され、つれてこられた萌えもんも少なくない。 人になれていないその子らが浮かべるのはほとんどが怯え、警戒で。 トレーナーの萌えもんなら、トレーナーを通じて人を知るから、様々にせよ人に向ける目はたいていが温かいもので。 俺は、人に敵意をむき出しにした萌えもんを、今まで見たことが無かった。 その目は人というものを憎んでいて。その涙はいなくなった友達を想っていて。 友達を連れて行ったのと同じ人間の世話を受けなければならない、自分が悔しくて。 心はきっと、今にも張り裂けそうで。 その心を救いたいと、その時、ただそう思ったのだ。 「じゃあさ・・・」 周りが言葉も出ない中、微笑む。さっきのものよりももっと、心からの微笑みで。 再びヒトカゲに近づき、目線を合わせる。 「いなくなった、その友達を探しにいかないか?」 「え・・・?」 言われた意味がわからず涙を流したばかりの目できょとんとするヒトカゲ。 「友達のフシギダネも、ゼニガメも、きっとカントーのどこかで元気にしているはずだ。  それを探しにいくんだ。どうかな?」 ついさっきまでの、バッチを求めての旅に乗り気でない自分はいつの間にやらなりを潜めて。 リーフィアと俺と、それからこの子とでカントー中を巡るのならそれもありだろう・・・そう思い始めていた。 やっぱり俺は治す仕事が天職だったんだろうな。 治してあげたいという意思の元でなら、どんな事だって引き受けられそうだ。 「探して、くれるの?」 「ああ。一緒に探そう」 まだ幼いこともあるからか、心情の動きは滑らかだったようで。 もう一押しかな? 「俺は君の友達と、そのトレーナーを探す手伝いをするから。  君は、俺達の旅の手伝いをしてほしいな」 眼をそらさずに告げる。 ヒトカゲは呆然とした表情のまま、涙を残す瞳で俺を見つめ返している。 やがて涙は止まり・・・ 「・・・わかった。あたしを連れてって」 その言葉が紡がれた。 まるで今まで止まっていた時がいっせいに動き出したかのように、皆が胸を撫で下ろしている。 「これからよろしくな、ヒトカゲ」 手を差し出す。 始めには薙ぎ払われたその手に、今度は小さな手が重ねられる。 「というわけで、一緒にいくことになったから。仲良くしてくれよ?リーフィア」 振り返り、ちょっとおどけて言ってみせる。 「わかってます。まずは私がお友達になるんですから」 笑顔で答えてくれるリーフィア。 俺はオーキド博士を振り返り、告げる。 「依頼、受けさせてもらいます。完了するのがいつになるのか、見当もつきませんが」 「なぁに、わしがぽっくり逝くまでに済ませてくれればかまわんよ」 返事と、ヒトカゲのボールを受け取り、リーフィアをつれて俺は研究所を出た。 「あとでトレーナー登録証をトキワの萌えもんセンターに君宛で送っておこう。  忘れずに受け取るんじゃぞ」 研究所の入り口で別れの挨拶。 「それと、記録も忘れずにたのむぞい」 「わかってますよ」 記録とはリーフィアのことだ。 といっても、食べ物の好みだとか体調の変化だとか、どんな技を習得したかとか。 観察・健康日記みたいな感じだ。 「それとじゃが・・・」 さらにまだ博士が呼び止める。 「なんでしょう?」 「ヒトカゲの件じゃが・・・そういう理由なら、グリーン達に連絡をつければ済むと思うのじゃが・・・」 あぁ、フシギダネとゼニガメを連れて行った二人か。 「でも、それで再会したとしても、彼女にとっての『人間』は変わらないままだと思うんですよ。  それにすぐに帰ってこられるとは限らないし、無事再会できたとしても進化していたとしたら・・・  連れて行かれたせいで変わってしまった、って、余計に悲しみが深くなる気がして・・・  それに、研究所で生まれた子でしょう?リーフィアと一緒に、外を見せてあげたいなって思って」 「・・・やはり、君に頼んだのは正解だったようじゃな。君なら、あるいはリーグ制覇も夢ではないやもしれんな」 「おだてても何もでませんよ」 一体何人のトレーナーの卵に言ったんだそのセリフ。 などと穿った考えを持ってしまうのは、かけだしトレーナーとしては俺がもう歳を取ってるほうだからか。 なんにせよ引き受けたからには始めようか。 「さぁ行こうか、二人とも」 「はい、マスター」 「うんっ」 しっかりした返事が帰ってくる。 タマムシで生まれ育った俺も、実を言ってしまえば二人とさほど変わらない。 きっと見たこともない出来事ばかりの旅になるに違いない。 けれど。 この子達と一緒なら、どんな道でも歩けるだろう。 どんな困難でも、立ち止まらず超えてゆけるだろう。 頭上に広がる空は何処までも蒼く。吹き抜ける風は何処までも穏やかで。 この日、どこかのんびりとした、世間知らず三人の旅が始まった。                                                fin? 「先に宣言しておきますけど・・・」 後ろでリーフィアがヒトカゲになにやら話しかけている。 「マスターの元に来たのは私が先ですからね?私が先輩なんですよ?」 「そんなの知らないもん。あたしが言うこと聞くのはご主人様だけー」  ご 主 人 様 と 申 し た か 思わず足を止めそうになる。 身長が自分の腰ほどにも満たない愛らしい少女に『ご主人様』と呼ばれる日が来るとは思わなかった。 「知らないって、そんな、あんまりです!独り占めなんてさせません!」 「出来るもんならやって見せてよ!べーっだ!」 「何ですって!?」 「何さ!」 ・・・感慨に耽っている間にケンカしてるし。 「ケンカするほど仲がいいとは確かに言うけどな・・・」 呆れ気味に割ってはいる。 「出会って一時間もしないうちからケンカってどうよ。もう少し穏便に仲良くなっていけないのか・・・?」 俺に言われて二人とも黙る。が、どう見ても黙っただけだなこれは。 「やれやれ・・・」 この先二人が仲良くなってくれることを、普段信じてもいない神様にちょっとばかり、祈った。                                         今度こそ fin 主な人物と萌えもん ヒロキ(マスター)   今回名前でなかった。もともとタマムシの萌えもんセンター勤務の青年。            年齢は20代前半のつもり。だから萌えセン職員としてはぺーぺー。            どうしてこの仕事を選んだのか等については筆者も知りません(未定)。 リーフィア      メインの萌えもん・・・のはず。そもそも研究所にきたのもリーフィア関係だし。            Lv的には今のところは5くらいか。もらったばかりの御三家と同レベル。           性格は基本まじめ+天然・おちゃめのつもり・・・(汗) ヒトカゲ      最後で出てきて大活躍。リーフィアより幼い+やんちゃなイメージ。           リーフィアと些細な可愛らしいケンカをしたりヒロキに無茶言ったり。           あとはわりと幼さゆえに単純という感じかな。          あとがき この話を持ちまして一応第一部(仮)は終了となりますが・・・ うん、なんだか(筆者の)様子がおかしい。 急展開なんてLvじゃねーぞ。ヒトカゲ関連が特に。 おまけに最後の話なのにリーフィア空気気味。ごめんよごめんよ。 ヒトカゲは初代御三家の萌えもんのなかで一番好みでした。 ヒロキ、リーフィアの二人があまり能動的でない分までいろいろな切っ掛けを作ってゆく いろんな意味でのトラブルメーカーみたいな感じですね。 途中の説明臭い部分はほとんどが筆者の脳内情報。無茶苦茶な点大盛りだったりしても勘弁。 オーキド博士以下助手達もけっこう能天気というかスカタンぞろいになっちゃった。研究大丈夫なのか。 書き方もアドバイス受けてちょっとずつ変えてみてます。 やっぱ心情の変化といったものは非常に加減が難しい。リアルの人間関係が寂しいせいか? 余談みたいに書き加えたのは余計だったかなぁ? いきなり入ってきたヒトカゲとリーフィアがすんなり仲良しにってイメージ沸かなくて。 あとはシリアスというか、マジメばっかりになってしまうのが悩みですね・・・ 萌えもんたちのかわゆさにヒロキをはっちゃけさせたくても、いまいち不完全燃焼。筆者にあまりそういう経験ないからか。 やっぱり読んでくれた方の感想やアドバイスは励みになりますね。何度も読み返してはニヨニヨしてた俺ヤベェ。 とりあえず妄想あふれるままに書き連ねたらあっという間に五作目。 お付き合いくださり、誠にありがとうございました。

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