4スレ>>231

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4スレ>>231」(2008/01/22 (火) 21:51:18) の最新版変更点

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ふぅ……カントーに来るとはしゃいでいたが、以外にも田舎に来てしまった。 親父め、トキワに出勤するんだからそっちに家を建てればいいのに、土地代の関係でマサラにしやがって。 ゲーセンもカラオケもないし、家でMH2やるのも飽きたし、 だから外に出てみようとしたのがそもそもの間違いだった。 NEETはNEETらしくPCの画面に張り付いていればよかったと、オーキド研究所内部で俺は思っている最中。 何故、引越しの荷物も片付け終わっていないのにここにいるかって? ちょっと休憩にと散歩をして、草むらに入った瞬間変なジジイに拉致されたんだ。 なんでも、もえもんも持たずに草むら入るんじゃねえとかなんとか。 そのジジイは自分の知識の量の多さを自慢しながら、こんなことを言いやがった。 「すまんが今人手が足りなくてのう、ちょっとトキワの電気屋でこのメモにあるメモリ買って来てくれんか?」 いや、でも草むら通らなきゃあかんのですが。あんた俺を草むらから引っ張り出したセリフ覚えてるか? 「わかっとるわい。ほれ、これを貸してやろう」 といってバットを渡された。 グリップの部分に何か書いてある。 悟……史……? 俺この漢字わかんないけど、別にいっか。 どうやらジジイ改めオーキド博士は、とあるマシンを業者に頼んでいたが、 ちょっとした機能を届いてからつけたくなったらしい。 だがメモリが足りないので、俺に買ってこさせようと目をつけられたわけだ。 「コラッタとかポッポならバットででも追い払えるじゃろう。 それにこの辺のもえもんは皆、大人しいのばかりじゃ」 そうだが、バットで追い払うってのは絵的にはグロくないか、それ。 突っ込みどころ満載だが、徒歩20分程度だ。 元々散歩がしたかったわけだし、ちょっとトキワまで行ってくるか。 承諾するとオーキドは嬉しそうにほくそえみ、メモと代金を俺に渡した。 このままパクろうとしても田舎町だ。名乗らなくてもどこの誰などとは知れているのだろう。 渋々了承しながら研究所を出て、トキワ方面の草むらに足を踏み入れる。 と、一歩目を踏みしめた足に激痛が走る。 俺、足元を見る。 コラッタがすっげえ噛り付いてた。 誰だ。大人しいって嘘ついやつは。 剥がして二歩目。 ポッポがの大群が空から降ってきた。 おいおい、アニメ版のサトシじゃねえんだぞ。 さて、何かやばいほど目が血走ったコラッタやポッポに追われてるんだが、さすがにLv5が最高の草むらだ。 ステータス15程度で武装した人間の命取れるほどの戦闘力はない。だが体はぼろぼろである。 昔は運動してたが、引きこもってだいぶ落ちてるみたいだ。 しかもこのバット、鉄製だから重てえよ。 悪態をつく暇もなく飛び出してくるコラッタ。 心の中でこんなかわいい子に……と思いつつバットを横に凪いで飛ばそうとする。 できるだけ手加減してだ。紳士だからな心は。 するとなんだ、ありのままを話すぜ。瞬間移動しやがった。 コイツ……低レベルじゃねえ。いまのは高速移動か? そうなるとレベル30前後だから、lv5で手一杯の俺なんか一瞬でピチューンだぞ、おい。 迫る必殺前歯(らしき攻撃モーション)と同時に迫る死期。 これガードしても削りでHP全部消えるよね。誰か、助けてくれ。 「カメさん! 水鉄砲」 なんて祈ってみたら女子の声が聞こえ、頬を切るほどの高圧の水柱が俺の耳の横を通りすぎてコラッタに当たった。 これは俺をコラッタから助けてくれたのか、それともKILLしようと放ったか判断が難しいところだ。
「おや?コンパンのようすが……」 BBBBBBBBBBBB  何気ない普通の日のはずだった。いつものように俺は萌えもんマスターになるべく、野生 萌えもんをゲットしながらジム戦に向けてのレベル上げを図っていた。  その途中、最愛のコンパンは経験の粋を集め新たなる形へと姿を変えようとしていた。紛 れもない、進化である。博士にもらった萌えもん図鑑も躍起になって解説を始めた。  全身に光を帯び、彼女はあふれ出る生命の圧力をコントロールしようと、息を荒げ胸を押 さえる。いじっぱりな彼女はその苦痛にも一言すら発さない。  しかし、俺は傲慢で自分勝手にもその進化を止めてしまった。萌えもん図鑑から特殊な光 がコンパンへ照射され、進化のエネルギーを奪う。驚いたコンパンは一瞬俺へ顔を向けたが 、すぐに気を失ってしまった。  草むらを抜け、俺の膝枕で彼女を休めた。彼女のやわらかいふわふわの触覚が服越しに俺 の足をくすぐり、その微かな快感は彼女が目覚めるまでの時間の経過を瞬くものに縮めた。 「どうして……ですか」  うっすらと目を開けた彼女は抗議の表情を浮かべ、小さな手で俺の服の裾を握った。 「俺は、今のままのお前が好きなんだ」  彼女の前髪をかき分け、額をなぞる。しかし、それは無下に振り払われた。 「わたしは強くなりたい。マスターの役にもっと立ちたいんです」  眉を寄せ、真剣な瞳で俺を真っ直ぐ見つめる。 「大丈夫だよ。今のままでも十分強いさ。気にするな」  俺もここはどうしても譲れない。 「見え透いた慰めは――」  こういうときは唇で言葉を奪うのが一番良いのだ。様々な文献がそれを示す。が。  コンパンの手のひらが俺の頬に炸裂した。 「わかってくれないんですね……」  それ以上、会話は続かなかった。  その夜、自らのマスターが眠りに落ちたのを見計らってコンパンは宿の出口に向かった。 「待ちなよ」  外へ出て、星空を見上げたところをリザードンが引き止める。 「リザードンさん……」  マスターの一番最初の萌えもんで一番の実力者、リザードンには全く頭が上がらない。し かも、苦手な炎タイプと飛行タイプの両方を併せ持つ。それ以上にメンバーの空気を酷く濁 したことに後ろめたさを感じていた。 「すみません。進化できないのなら出ていきます」 語尾に小さく邪魔なだけだからと付け、コンパンは闇のほうへ向き直った。 「マスター悲しむだろうね」  リザードンの言葉がコンパンの背中を突き刺す。愛されているのはわかっている。ただ、 このまま進化できないのなら、いつか自分がレギュラーから外されてしまうのではないか。  自分は秘伝要員としても役に立たない。そう考えるとたまらなく怖かった。 「無責任でごめんなさい」 「いいよ。確かに、あんたを進化させないマスターは間違ってると思う。好きに生きな。マ スターには上手く言っておくからさ」 「ありがとうございます……」  コンパンは振り返らずに礼を言う。心を決めたのだ。  そのまま歩き出し、次第にコンパンの姿が見えなくなる。 「野生で会ったら、お互い手加減なしだかんね!」  リザードンは明るく笑って手を振った。  暗闇の足音が一瞬止まり、すぐにガサガサと音は遠くなっていった。    どれくらい歩いたかな。上がった日もまた落ちて、丁度一日くらい経った。  何回か野生の萌えもんと対峙したけど、相手のタイプもレベルもわからなくて、全部逃げ てしまった。これじゃあ強くなれないよね。ああ、もう強くならなくていいんだっけ。  不意に、月の光に輝いたりんぷんがわたしの視界を奪う。トレーナーのモルフォンのしび れごなだ。  これがわたしの進化した姿。きれい……。こんな風に、なりたかった。  しびれごなが効いてきて、わたしの体の自由は奪われた。 「いきなりモルフォンで捕まえたから、コンパンもゲットしておくか。こいつも結構可愛い なウッヒョッヒョ」  トレーナーは涎を啜り、モンスターボールを構えた。 (――ダメ、捕まる……)  その刹那、空から何者かが落ちてきてわたしに覆いかぶさった。この温かい匂いは、マス ター……。 「やっと見つけたぜ、嫁よ」  マスターはすっくと立ち上がりトレーナーを睨み付ける。 「おい。人の嫁捕ったらドロボーだぜ?」  上空で旋回していたリザードンさんが舞い降りて、そこは萌えもんバトル会場と化した。 「ごめんね。あいつ、強情だからさ」  リザードンさんがチラリとこちらに目をやる。  情けなくて、申し訳なくて、でも嬉しくて、声の代わりに涙が出た。 「ちいっリザードンかよ!」  トレーナーはモルフォンにねむりごなを指示する。 「甘いぜ。リザードン、かえんほうしゃだ」  勝負は一瞬、敵のモルフォンは一撃で倒れた。後続の萌えもんもすべてリザードンさんに よって焼き払われた。やっぱり強すぎるよリザードンさん。本当にわたしの入り込める隙間 なんてないな……。  マスターがトレーナーからの賞金も頂戴せずわたしに駆け寄ってまひなおしを使ってくれ る。そして、痛いくらいに抱きしめられた。 「好きなんだよコンパン……。今のお前すべてが愛しいんだよ!どこにもいかないでくれ!」  珍しく、マスターが声を荒げた。密着した体に声の振動がそのまま伝わる。 「でもわたし、この旅についていける気がしないんです。だから……」 「もういいんだよ!」  マスターがさらにきつくわたしを抱きしめて、苦しい。 「お前が辛いなら、俺が上を目指すことでお前が追い詰められるなら俺は萌えもんマスター にはならない」 「何言ってるんですか!そんな、わたしのせいでマスターの、マサラタウンの皆さんの夢を 奪うなんて、そんなこと……絶対にできません。マスターのことを一番に考えて動くのがわ たしたちの使命です」 「俺のことを一番に考えてくれるなら、俺と一緒に平和に暮らそう。本当にもうお前しかい らないんだよ俺は」 「どうしてわたしなんかのこと、そんなに好きなんですか……」  マスターの愛に気付いてからずっと謎だった。弱いのに、役に立たないのに、どうしてこ んなに愛されているんだろう。 「どうしてって、それはもうどうしようもなく萌えるんだよ!リアルで萌えるなんて言っち まったぜちくしょう!」 「り、理由になってませんよマスター……」 「安心しろ。理解できるのは俺だけだ」  もうマスターの腕が苦しくて意識が……。  薄れゆく視界の中、リザードンさんが呆れて笑っていた。  今まで戦ってきてくれたメンバーを集めて、俺はみんなへ頭を下げた。 「みんな本当にすまない。俺はここで旅をやめる」  頭は上げられなかった。どんな顔して言えばいいのかわからない。 「あんたと一番一緒にいたのはこのあたしなんだからね。最後くらい情けない泣き顔見せな さいよ」  リザードンが俺の頭を掴んで、無理矢理顔を上げさせる。ニヤリと笑みを浮かべ、俺の頭 をぐしゃぐしゃと撫でた。 「ばっ、別に泣いてねーよ!」  赤くなった目にも気付かず強がっている俺を、皆は笑った。 「コンパンのこと不幸にしたらハサミギロチンだからね」 「不器用な奴だよなあ。他のトレーナーは誰でも一夫多妻制だよ?」 「博士のところにでも戻って愛の器の大きいマスターにお世話になるかなー」 「元々トレーナーとしての才能は微妙だったかもしれないし丁度いいんじゃない?」  口々に、メンバーは柔らかい罵倒で俺をいじる。俺は涙を堪えて照れ笑いを浮かべた。 「あたしたちが萌えもんリーグに挑戦するときが来たら連絡入れっから、絶対見に来なよ」 「ったりめーだ。じゃあ元気でな、相棒!」  リザードンと固い握手を交わし、みんなに別れを告げた。  本当はわかっていた。彼女らも本当は涙をこらえていたのを。背を向けた後、彼女らが涙 を流していたのを。  俺はあいつらのマスターだからな。  でも、もう俺はこの愛に後戻りは出来ない。したくない。  人間と萌えもんの、壁を越えた。 「じゃあ行こうか、俺の嫁よ」  俺が手を差し出すと、コンパンはまだ大粒の涙をいくつも溢していた。  手を引いて走った。どこまでも。彼女の涙が笑顔に変わるまで。                                   おわり

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