4スレ>>296

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 そこはどこかの"元″草原。  今は、荒れ果てて、草はほとんど燃え尽き、むき出しの地面も、抉れや、ぬかるみ、黒く焦げたあとが目立つ。  その地に立っているのは、四人。ギャロップ、ジュゴン、チコリータ、そして鼻血マスター。  少し離れた場所には、フシギバナ、フーディン、レアコイルが傷つき倒れ伏している。  胸が上下しているのが見えるので、気絶しているだけなのだろう。  ギャロップとジュゴンも傷ついているが、そんなことは気にせず、互いを睨むように対峙している。  傷ついているのは、仲間同士で戦ったからだ。そして、生き残ったのがこの二人。  チコリータと少女は戦いに加わることなく、離れた場所でその様子を見ていた。  何度も止めようと声をかけた少女だが、聞き入れられることはなく、今はただ暗い表情で見るだけになっていた。  チコリータは、そんな少女を慰めるように、ギュッと抱きついている。 「残ったのは、あたいとあんただけ」  ギャロップが口を開く。 「諦めるのなら今のうちですわよ? 不利なのはそちらなのですから」  ジュゴンがそれに応える。 「相性なんて不利は、今まで何度も乗り越えてきた!」 「今回も乗り越えられるとは、かぎらないでしょう?」 「いーやっ越えてみせるさ!」  その返答は、そうなのだと確信させるほどに、自信が満ち溢れていた。 「強気なこと」  ジュゴンは、手で口元を隠し、嘲笑うようにクスリと笑う。 「その気にいらねえ笑みを、すぐに変えてやる!」 「あなたにできるかしら?  口ばっかり動かさないで、そろそろ始めましょうよ。  負けを怖がって、結果がくるのを引き伸ばすのは、みっともないですわよ?」  嘲り笑ったままのジュゴン。 「言ってろ、どうせ勝つのはあたいだ!」 「どれだけいきがろうと、勝つのはわたくしです」  最後の部分だけ同じことを言い、勝負は始まった。  互いに仕掛けるタイミングを計り、じっとその場に立つ。  そのまま数分経ち、先に動いたのは、ギャロップ。 「でんこうせっか!」  人間には見切れぬ速度で、ジュゴンに迫る。  一瞬と言ってほどの僅かな時間で、ジュゴンとの距離を詰めたギャロップは、その勢いのままぶつかっていく。 「さすがに速いですが、速いだけっ」  もとより先制は覚悟していたジュゴンは、その場で防御姿勢をとり、ギャロップの攻撃に耐える。  ぶつかりあい、そしてできた一瞬の空白に、 「ずつき!」  ギャロップの顔面めがけ、ずつきをはなつ。  これをまともに喰らったギャロップは、わずかに後退するも、すぐに体勢を整える。  その間にジュゴンは、次の技を準備し終えている。 「なみのり!」  弱点である水の技にギャロップは、すぐに防御の姿勢をとり、耐えようとする。その際に、おもわず目を瞑ってしまった。  水の衝撃がこないことを不審に思い、目を開けたギャロップの目に映ったのは、接近して再びずつきの体勢に入っているジュゴン。  技の名前をフェイントに使ったのだ。 「ぐあっ」  額にまともに受けた衝撃に、思わずギャロップは呻きを漏らす。体勢も完全に崩れている。 「れいとうビーム」  さらにジュゴンが攻める。狙ったのは、ギャロップではなく、ギャロップの足元。  足場を凍らせて、ギャロップの速さを封じる作戦だ。ついでに、足が凍り付いて移動不能になれば、儲けものだった。  ジュゴンの狙い通りにはいかず、ギャロップはとびはねるを使い、空中へと逃げていた。  れいとうビームは避けることができたが、その技を使ったのは失敗だろう。  空中で、自在に動くことのできないギャロップは、いい的だ。 「あら? わざわざ小細工仕掛けなくても、そんな逃げ場のない場所へ言ってくれるなんてね。技の選択ミスですわよ?」  そう言ってジュゴンは、今度こそなみのりを準備する。  その慢心がまずかったのだろう、なみのりの発動が遅れてしまう。  一秒にも満たない差で、先にギャロップの体重をかけた蹴りが、ジュゴンの肩へと叩きつけられる。  重い衝撃を受け地面に叩きつけられながらも、なみのりは中断されることなく発動する。  着地後で、防御などできないギャロップは波にさらわれ、地面へと叩きつけられた。  二人が倒れたまま数秒が経つ。ダブルKOかと思われたが、二人は立ち上がる。  息は荒く、足元もおぼつかない状態だが、まだ続けれると二人の目が語っている。  そして、互いに体力がギリギリで、次の一撃が最後だともわかっている。  会話する体力も惜しんで、今できる最大の攻撃をはなとうと、二人は集中し始める。 「だいもんじ!」  でんこうせっかを使えば、先制してジュゴンを倒すことができただろう。  だが今のギャロップには、動きまわるだけの体力が足りない。  でんこうせっかでの攻撃は、ジュゴンにとどく前に効果を失うと、ギャロップにはわかっていた。  だから、自身最大の攻撃で、唯一の遠距離攻撃であるだいもんじに賭けた。 「なみのり!」  ジュゴンは簡単な理由だ。相手の弱点である技に望みを託しただけだ。  動き回る体力がないのは、ギャロップと同じだが、こちらはわざわざ近づかなくとも、有利な技がある。  体力、気力を注ぎ込んで、二人は技をはなつ!  炎と水がぶつかりあうっ……ことはなかった。  炎だけが現れて、ジュゴンへと突き進み、ぶつかる。  耐性を持っていても、ジュゴンのわずかな体力を削るには十分だったようで、ゆっくりとジュゴンが地面に倒れていく。  そのときの表情は、髪に隠れて見えなかった。  なみのりが発動しなかったのは、ジュゴンの体力不足ではない。なみのり一回使う程度には、残されていた。  ならばなぜか?   それは、とびはねるの攻撃が原因だ。あの攻撃で受けた衝撃が、痺れとなってジュゴンの体に残っていた。  痺れが、技の発動を阻害した。慢心が勝負の結果にまで、影響を及ぼしたのだった。 「勝った!」  勝者であるギャロップは、ふらふらで立っているのがやっとの状態でも、嬉しそうに笑う。  その表情のまま、よろよろと傍観していた二人へと近づいていく。 「さあ、残ったケーキはあたいのものだ」  同士討ちの原因は、残ったおやつだった。  ただのおやつならば、ここまで大事になることはない。  今回は、運よく手に入った有名店の、限定チョコケーキだったのだ。  そんなことならば、ジャンケンで決めろと言いたくなるが、それをやってあいこが続いた。  レアコイルたちがグーチョキパーを全部だしたから、決着がつかなかった。  だんだんとヒートアップしていって、同士討ちにまで発展したのだった。  まあ、そのケーキも、 「ないよ。戦いの余波で吹っ飛んだ」  というわけだが。 「何度も、そう言っていたのに、集中して聞かないんだもの」  少女の言葉をギャロップは聞いていない。いや聞こえていないと言うべきか。  いままでの苦労が水の泡で、燃え尽きた。  煤けた感じで倒れたギャロップを、少女は傷薬を使ってから、もえもんボールへと戻す。  ほかも仲間も、げんきのかけらを使ってから戻してく。  皆、戦闘の疲れからか、すやすやと熟睡している。 「まったく、気持ちはわからなくもないけど、やりすぎ!」 「先輩たち、すごかった」  実力不足で参加を諦めたチコリータが、憧れを含んだ声で言う。 「もしかすると、いままでの戦いで、一番真剣だったのかもしれないわ」  それほど、甘いものへと執念がすごかったということか。  勝者なき戦いに見える今回の出来事だが、ちゃんと勝者はいる。  それは、残りのケーキを二人でわけた、少女とチコリータだ。  何度もやめさせようと声をかけた少女が、無視されたことに機嫌を悪くして、食べたのだった。  機嫌悪くケーキを分け合うことに気づかず、戦いを続けるもえもんたちの光景は、なかなかにシュールなものがあった。

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