5スレ>>42

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「ん~…よく寝た」 おはようございました、エアームド(♂・3年生)です。 こう見えて僕も学生で忙しいけど、今日は土曜日。部活動には参加していないし、お手伝いの依頼もなし。 つまりは、今日は一日自由に…は過ごせないか。依頼一つあるし。 …まぁいいや。とりあえず朝ごはん作って…っと、なんか居間のほうからいい匂いがするんだけど。 とりあえず用意しておいた私服に着替えておこうかな。羽は装備せず。 ご存じの通り僕は、萌えもん学園に通っている。そこから徒歩で20分かからない場所にある、高級マンションに一人暮らし。 親は年末やお盆以外はずっと海外にいる。何の仕事をしているか全く分からないし、教えてもくれないが、 年商はとんでもない額になっている。色々なところに預けてあるお金を纏めれば、億単位には軽く達するようだ。 まぁそう言う事で、本来なら僕は朝食を一人で用意すべきなんだけれど。 居間に出ると、朝食の匂いが確かに漂っていた。そして、キッチンには赤い髪の女の子が一人。 「…おはようございます、お兄ちゃん」 「あぁ、ロコンか…おはよう。今日は土曜日だと思ったんだけど…ずいぶん早いね?まだ八時台だよ?」 「フシギバナお姉ちゃんと、ライチュウが、部活なので…お弁当が…」 「ああ、成程」 フシギバナ・ライチュウ・ロコンは、この部屋の隣、7階の端に位置する部屋に住んでいる。 同じ学校に通っている事もあって、いろいろと助け合って暮らしているのが現状だ。 ロコンは1年、カードゲーム同好会所属。 ライチュウも1年、陸上部所属。 フシギバナは2年、バレー部所属。ちなみに全員女の子。みんな結構可愛いよ? 「お兄ちゃんの分も、ありますから…食べてください」 「そっか、ありがと。いただきます」 御飯、味噌汁、お浸し…和食か。和食は確か、フシギバナの得意分野だっけな。 「これは、フシギバナが?」 「はい、準備してくれて…わたしが、仕上げを…」 「なるほど。…おいしいよ」 ロコンも、フシギバナやシャワーズ(時々遊びにくる)から料理を教わって、ぐんぐん上達してるからなぁ。 もうたぶん僕より上手だね…最近この子たちに頼ってあんまり自分では調理しなくなってきたし。 「ごちそうさま。ありがとね、ロコン」 「い、いえ…」 「お礼とは言えないけど、もし連れてって欲しい場所があるなら乗せてってあげるよ?どうせ昼前には僕、家を出るから」 「じゃ、じゃあ…」       * * * 「うーん、ここに来るのも久しぶりかも…」 駅前、カードショップ。僕もそれなりにカードゲームは集めてた時期があって、 ここのお店にもずいぶんお世話になった記憶がある。…自制心にはそれなりに自信があるけど、こう言うのって一度始めると止まらなくなるよね。 ロコンを乗せてここまで飛んできた。まぁ、同好会でやるからには休日とか学校帰りに寄っていって、 こうやってカードを買って、デッキ組んで、次の日対戦――とかもやるんだろうね。普通に。 カードゲーム同好会の助っ人はやったことないからなぁ…そもそも助っ人いらないだろうし。 …そういえば、今日の依頼はカードゲーム同好会の子だっけ。何度か話したこともあったから、覚えている。 「へぇ…今はまた新しい種類が出てるんだ…」 「お兄ちゃんも、カード、してたんですか?」 「んー、高校に入る頃には全部処分というか、当時の友達にあげちゃったけどね。  その後マンションに引っ越してきた訳だし。ルールとかは変わってない、みたいだけど…」 しかし、今改めて見直すと…楽しそうだなぁ。家の都合であんまり遊ぶ相手もいなかったけど、今ならまぁ… 今思えば、当時のレアカードとかあげるの勿体なかったなぁ…バーサーカーソウルとか。…うん、よし。 「よーし、僕もスターター二種類くらい買ってみるかな…」 「はい…家に帰ったら、遊びましょう…!」 まぁ、時間に余裕もあるし、大丈夫でしょ。とりあえず二人で、支払のためにレジへと向かった。       * * * 家に帰ってデッキ構築、暇なのでロコンと対戦していると、携帯がなった。 …そろそろ時間だな。メールで指示をだして、僕はカードを片付ける。 「じゃあロコン、僕も出かけてくるよ。昼過ぎには戻ってくるから、大人しく待ってて」 そう言って、ロコンの頭を撫でてやる。2歳年下にしては、ロコンの身長は結構低い。 「一応帰りにシャワーズ乗せて帰ってくるよ。英語の手伝いしてもらわないと駄目だから…」 「はい…いってらっしゃい、マスター」 「うん、行ってくる」 部屋を出て、廊下に立ってふと思う。…今、ロコンは僕の事をなんと呼んだ? 「…いや、いいか。時間もあんまりないし、行かなきゃ」 手に持っていたゴーグルをつける。これは、ロコンが僕に渡してくれたものだ。 暗視・赤外線・サーマル・レーダーなどの多彩な機能が付いた超高級品。誰かからの貰いものらしいが、彼女が使う事も特にないらしい。 …これをつけると、何となく何かを思い出しそうな気もするけど…気のせいだな、うん。 「よし、…行くか!」 エレベータで一階に下りて、外へ出る。すこし歩いて、僕は全身の鎧羽根を展開した。 展開しない状態なら邪魔にならないし、開けばすぐに空を飛べる。…全く、こう言うときには最高に便利な体だ。 一瞬の後、僕はすでに空の住人と化していた。       * * * 「やぁプクリン。待たせちゃったかな」 「ううん、まだ時間にはなってないよ。ボクが早く来すぎただけじゃないかな?」 「まぁ何にせよ、待たせたのは悪かったよ」 待ち合わせ場所には、すでに依頼人が到着していた。 萌えもん学園2年生・カードゲーム同好会所属のプクリン。やっぱりこの子も可愛い…んだけど。 今は私服なので女の子の格好をしているものの、彼自身はれっきとした男である。学校ではちゃんと男子用制服も着ている。 「それじゃあ、下調べもしてあるし…さっそく行こうか」 「うん!よろしくおねがいしまーす、先輩!」 勢いよく手をあげる。こうやって見てるとどう見ても女の子だよね…キレると電柱振り回したりする事を考えなければ。 「元気でよろしい。じゃあ、乗って」 「は~い」 町の上空を飛ぶこと数分。翼を畳んで着地した僕は、ある小さな料理店の前に立っていた。 ビルの間で目立たないこの建物は、どこか隠れ家のような印象を感じる。 「ここ?」 「ああ、ここ。君が指定してた小奇麗で割と安くて落ち着いた雰囲気のお店。  それじゃ、入ろうか。今回は僕が奢るから」 「わーい、先輩大好きっ!」 (…いくら可愛いとはいえ、同性に言われてもなぁ) ともかく、二人でそのお店に入る。席について、料理を注文。 それぞれランチセットを頼み、料理が来るまでの間、雑談で暇を潰す。 「そういえばさ、今日ここに来る前にロコンとカードショップ行ったんだよね。  最近、遊○王も格段に種類が増えて…なんとなく、新しいの買ってみちゃったよ…」 「へぇー、先輩もカードやるんですか?よかったら同好会に入りませんか?」 「あー…ちょっと惹かれたけど、手伝いとかも忙しいし…」 「うーん、残念…あ、でも、暇なときとか遊びに来て下さいよ!先輩ならいつでも歓迎ですよ?」 「ありがと。また気が向いたらお邪魔させてもらおうかな。  …っと、来たね、料理」 サラダ・スープ・メイン(日がわり、いくつかから選択)・コーヒーor紅茶。値段も良心的。 隠れ家的な落ち着いた雰囲気もあって、なかなかいい場所だと思う。 「いただきまーす!」 「いただきます、と。…ん、やっぱ美味しい」 自慢になっちゃうけど、僕はそれなりにいろんな物を食べてきているので、舌も肥えているつもりだ。 それでも、ここの料理は非常においしく感じられる。ここに来るのは2回目だけれど、今後も誰かを連れてきたいものだね…シャワーズとか。 「でさ、プクリン。…このお店、どうかな?ヨノワールちゃんも気に入ると思うけど?」 「ぐっ!?…げほ、げほげほっ…!先輩、何を…!?」 いきなりせきこまれた。…水が器官に入ったらしい。 「大丈夫?…いや、そこまで派手なリアクションされるとは思ってなかった…いつもの態度からして」 「せ、先輩?…何が、言いたいの、かな…?」 「そのナイフをこっちに向けるな危ない。普通に弾けるけど」 すごい目でこっちをにらんで来るプクリンの手を抑えて、ナイフを戻させる。 「僕の趣味を君が知らないとは思えないけど?君の周辺の人間関係を見れば、これくらい分かるよ。  彼女も、おいしいものは好きだろうしね」 「…誰かに言ったりしないよね?」 「言ったらどういう問題があるのか、あんまり思いつかないけど…言わないよ、言う意味もないし」 「はぁ…ホント、びっくりさせないでよ…すいません、オレンジジュース一つ追加でー」 …報復かコノヤロウ。…まぁいいや。 「すいませーん、僕も同じものを一つ。…で、どうかな?」 「うん…今度一緒に来てみようかな。イイ感じのお店だし、値段も安いし」 「それは何より。報酬は…まぁ、デートが無事終わったら貰おうかな」 「で、でーと…」 こうやってみると、思いきり恋する乙女だね…       * * * 「ふぅ、食べた…先輩、ごちそうさま」 「どういたしまして。さて…このまま飛ぶのもアレだし、軽く散歩して帰ろうか」 「はーい」 二人並んで、町をのんびりと散歩する。休日と言う事もあって、人の流れはいつもより激しい。 「先輩、今度出る新曲って買う?」 「あ、それ今迷ってるんだよね…アルバム待ってもいいし…プクリンはどうするの?」 「んー…ボクは買おうと思ってる。…学生はお金が入り用だねー」 「全くだね。後輩のためにご飯奢ったりしなきゃいけないし」 「え、今から払った方が」「冗談だよ」「ひどいよ先輩!」 などと、とりとめもない会話をしていたら。 「あ、エアームドだー」「エアームドだー」 後ろから声をかけられた。振り向いてみれば、小さなイーブイが二人。シャワーズの妹と弟、仲のいい双子だ。 「よ、チビッ子コンビ。どうしたの、お使い?」 「うん、お母さんにたのまれておつかいー」「おつかいー。エアームドは、でーと?」 「は?」 …一瞬意味が分からなかったが、気づいた。僕の隣にいるプクリンは、知らなければどう見ても女の子だ。 そりゃ勘違いもされるか。 「いや、残念ながらハズレ。今日はちょっとしたお仕事だよ」 「うそだー、でーとだー」「おねえちゃんにいいつけよーっと」 「え、ええっ!?」 「あのな、二人とも…」 「ばいばい、エアームド」「ばいばーい」 「え、あの、ちょっと!?…行っちゃったよ、どうしよう先輩?」 「プクリン。あの子たちのお姉さんは君が男なのをちゃんと知ってるから」 なるほど、とプクリンは手を叩いた。 「あ、そっか…シャワーズ先輩だもんね。あの人奇麗だよねー…先輩、付き合ってるの?」 「…なんでそう言う事を聞くかな。…バラすよ?何をとは言わないけれど」 「ゴメンナサイ」 「まったく…さて、それじゃそろそろ帰るよ。家でいいよね?」 「あ、うん。お願いしまーす」 「はいよ。じゃあ乗って、お客さん!」       * * * プクリンを家の前まで送って、僕は自分の家、マンションへと向かった。 今日はこれから、シャワーズに英語の宿題を手伝ってもらう予定だ。フシギバナと夕飯も作ってくれるらしい。 あと、携帯の使い方もまた教えておかないと。頭はいいのに機械音痴なんだよね… 「時間の波をつかまえて 今すぐに行こう約束の場所 限界無限 いざ飛び込め Climax Jump♪」 気分よく鼻歌を歌いながら、空を駆けて行く。シャワーズは今日は歩いてこちらへ来るつもりだと言っていたっけ。 部屋の掃除は昨日しておいた…というか、僕は結構掃除は得意だから普段から部屋はキレイなんだけどね。 「…ん?」 マンションが見えてきた。高度を落とすと、入口に見慣れた影が一つ。 「シャワーズ!」 「エアームド?」 マンション前の道路に羽を畳んで着地、彼女に走り寄る。…うーむ、制服もいいけど私服もいい。 なんというか、真面目で清楚っぽいイメージにロングスカートがよく合います。 「今ちょうどこっちに来てたんです。そっちは?」 「うん、ちょっとまたお仕事。いいお店を紹介しててさ。…ほら、入ろ?」 中に入って、エレベーターで7階まで。廊下を歩いて、部屋の鍵を開けた。 「さ、入って」 「はい、お邪魔しますね。…先に食材を置いておきたいんですけど」 「わかった、預かるよ。お茶くらい出すから、座ってて」 食材の袋を開ける。…カレー?…でもネギとかちくわとか…カレー鍋かな? とりあえず、種類を分けて冷蔵庫とラックに入れておこう。土鍋はうちにあるし。 飲み物を持っていくと、シャワーズはすでにテーブルにテキストを広げていた。 暖かいお茶を渡して、自分のテキストを持って向い側に座る。 「はいこれ。ありがとね、来てくれて」 「いえ、私も退屈でしたから。時間もあるし、ゆっくり片付けましょう」 「そだね。じゃあ、ここの問題なんだけど…」 ロコンは自分の部屋に戻っているようなので、二人で静かに勉強。…それもまたよし。 「ふぅ…終わったー…案外早かったかも…」 「それはまぁ…いくら週末とはいえ、一時間もかかる課題はそんなに出ませんよ?」 「それもそうだ…なんか食べる?夕飯までだいぶ時間あるし…」 テキストやプリントを片付けながら、聞いてみた。 「え、でも…ほら、あの…」 「昨日料理部部長さんがクッキー作ったからって分けてくれたんだけど」 「いただきます」 シャワーズはこう見えて甘いもの好き。…多めに食べても栄養がどっかに偏るらしいし。 もちろん本人には言いませんが。…乗せてる時は全然軽いから、そんなに気にすること無いと思うんだけどな…。 「はい、どうぞ。…そういえば、最近は携帯使ってる?」 「あ、やっとちゃんとメール打てるようになりましたよ。そういえば、着信音の変え方が…」 「ああ、それは…」 とりあえず後ろに回り込んで、携帯の画面をのぞきながら指示してやる。 …背後からだと、ちょっとまぁ正面より危ない気もする。…何が、とは言わないけれど。 個人的には、大きいほうが割と好みです。…ナニガとは言わないけれど。 「…まぁ、だいたいこんな感じかな。友達からもらったり、ウェブ使って取得できるから…っと、  誰か来たかな?」 シャワーズへの指導を終えた頃、インターホンが鳴った。 とりあえず、扉を開けてみる。 「ただいまー、エア兄!」 「ああ、ライチュウか。ロコンなら部屋に戻ってると…って、ロコンも一緒か」 「は、はい…お邪魔します」 とりあえず、二人まとめて家にあげてやる。暇な時はこの二人、ウチにしょっちゅう遊びに来るからね… 「あ、シャワーズおねえちゃん」 「こんにちわ、ロコン、ライチュウ。部活の方は、もう終わったの?」 「うん、練習は今日は終わり!…ひょっとして、今二人きりだった?お邪魔かな?」 「…う、ううん、別にそんな事は…」 「ほらほら、年上を困らせるもんじゃない。フシギバナは…今日は試合だっけな」 言いながら、テレビの前にあるソファーの片方に2人を座らせて、飲み物を渡す。 「勉強も終わったし、せっかく4人いるんだし…何かゲームでもする?」 「あ、じゃああたしがコントローラー部屋から取ってくる!」 こうして、4人で対戦ゲームをすることになった。…まぁ、いいか。 「シャワーズ、機械音痴なのにゲームそれなりに強いよね」 「機械音痴じゃないです。苦手なだけですから…」 (…見栄張っちゃって…) 「そういうエア兄は、なんか負け多くないー?」 「…わざとだよ、わざと」 …だって本気でやったらライチュウ怒るだろうに…。 「そもそもこう言う落ちゲーは苦手なんだよ…っと、もう5時か。そろそろフシギバナ帰ってくるんじゃない?」 と、次の瞬間にはインターホンが鳴った。 「おかえり、フシギバナ。ロコンとライチュウならこっちだよ。上がって」 「あ、ただいまー!面倒見ててくれたんだね、ありがと」 フシギバナも家のなかへ迎え入れて、これで5人。今日はこのメンバーで夕食をとることになる。 「それじゃあ、私とフシギバナは支度しますね」 「うん、ありがとうシャワーズ。手伝う事があったら言って。どうせ暇だから」 「ううん、年少組の面倒を見てあげてくださいな」 そう言われては引き下がるしかない。自室で服を着替えてきたフシギバナと、シャワーズがキッチンに入っていく。 …うん、エプロン姿もまたいいものだね。 とりあえず机を拭いて食器と調味料を用意、後はふたたびロコンとライチュウの元へもどる。 が、コントローラーを握った瞬間、ライチュウが横から囁いてきた。 「…エア兄ってさ、シャワーズ先輩にもう告白したの?」 「いや、まだだけど…どうして?」 「先輩はさ、きっとエア兄の事、好きだと思うな。好きでもない男のために夕飯作ったりしないし」 「そうかもね」 「エア兄だって、先輩の事は好きでしょ?」 「もちろん」 「じゃあどうして?どうしてこんな半端な距離を取ってるの?」 ライチュウは、ムッとしたようにこちらを睨んでくる。 …それは、僕の弱い部分を突き刺している視線だ。一度息を吐いて、ゆっくりと話し始める。 「ライチュウ」 「?」 「僕は、ね―――  ここに引っ越してくるまで、こんなに誰かを好きになったことはないんだ。  学園に入学するまでは、訳も分からないまま異端扱いされててね。常に、他人とは距離を取らざるをえなかった」 そう。僕は3年前、ここに来るまで――ずっと嘘の仮面をかぶっていた。優等生を演じ、他人の奇異の目を無視して、いつも一人でいなくてはならなかった。 何度も自問した。無言で叫んだ。何故僕がこんな目に合わなくちゃいけない?僕がいったい何をしたって言うんだ!?   両親は僕の仮面を知っていた。…2人は忙しく、なかなか家には帰ってこなかったけれど、いつも僕を大切に思ってくれていた。 けれど。それは、僕の孤独感をより深めていくことになった。 それが、3年前。山の上にあるあの学園に入って、全てが変わった。 よく「環境が変われば自分が変わるなんて事はない」と言われているけれど、あそこはそうじゃない。 特異すぎるんだ。…とんでもない人がたくさん集まっていて、僕も仮面をつける必要がないくらいに。 あの場所で、僕は変わっていった。いや、元に戻ったのかもしれない。 だから、今は――。 「今は、このままで充分楽しいんだ。この毎日は、僕にとって本当に新鮮でずっと忘れたくない毎日で…。  そりゃあ、僕もいずれは告白するつもりだけど、今はもうちょっと、この距離感を楽しんでいたい。  …そう思うんだ」 ――神様がいる、なんて別に信じちゃいないけれど。 ――もしいるとすれば、この最高に楽しい日々を下さった事に、心から感謝します。 ――そして。もうすこしだけ、この曖昧な距離の幸せをかみしめていたいと願う事を。 ――あなたは、きっと許してくれると信じています。 「…エア兄、それ、カッコつけてもヘタレの言い訳っぽいよ?」 「ぐっ…、自分でも思ってたが、やっぱり?」 「…でも」 ライチュウが笑っていた。反対側のロコンも、小さく微笑んでいた。 「…その方が、お兄ちゃんらしい、と、思います…」 「うん、そだね!エア兄はそれくらいでいいかもね」 「まったく、好き勝手言ってくれるよ…」 けれど、悪くない。…これが、僕の生き方だと言うのなら、決して悪くはない道だと思う。 ほどなく、何やらおいしそうな匂いが背後のキッチンから漂ってきた。 そして、フシギバナの声。 「エアームド、鍋運ぶの手伝ってー!」 「ん、分かった。鍋つかみ取ってくれる?」 5人で食卓を囲んで。1人の時とは比べ物にならないくらいおいしい夕飯を、僕らは平らげたのだった。       * * * 夜。僕はシャワーズを乗せて送っていこう…と思ったんだけど、 夕食後いきなり飛行するのは両方にとって危険なので、歩いて家まで送ることになった。 「ホントに、今日は来てくれてありがと。課題も終わったし、ご飯もおいしかったし…」 「いえ、私も楽しかったですから…」 二人並んで、夜の道を歩く。 「あのさ、シャワーズ。また、来てくれる?」 「…?はい、もちろん」 気付けば、そこはもうシャワーズの家の前だった。 「それじゃ、おやすみ。また明日ね、シャワーズ」 「うん、おやすみなさい。……あ、エアームド!」 何、と尋ねる前に。真正面から、思いきり抱きつかれた。 その事実を認識した直後、耳元でささやく声がやけにはっきりと聞こえた。   「私はずっと、待ってますから。貴方のコト」 「え?……あ」 「そ、それじゃあ、また明日!おやすみなさいっ!」 そう言って慌てて離れて、家の中へ消えていくシャワーズ。 …僕の方は、唖然として1分くらい全く動くことができなかった。 「…聞こえてたのか」 もう飛んで帰る気分にはなれない。僕は顔からすさまじい熱が出ているのを感じながら、 もと来た道を引き返し始めた。…さっきの言葉が、耳に残る。 「『待ってますから』、か。…女の子は、あんまり待たせるモノじゃないよね」 深呼吸して、気持ちを落ち着けて。 歩きながら携帯を開いて、シャワーズの短縮番号を呼び出す。 どうやって話を切り出すか、考えながら。僕は、夜の街を歩いて帰って行った。 「…もしもし、シャワーズ?さっきの事なんだけど」 「ごめんねエア兄、先輩じゃなくて」 「…え?」 「先輩さ、携帯を部屋に忘れて行っちゃったみたいで…今さっき気づいたの!どうしよう…」 「…………」 「エア兄?どうかした?」 「…なんでもない。携帯は明日僕が渡しておくよ。じゃ、今から帰るから」 「???うん、気をつけてね」 結局、エアームドが無事告白できたのは2週間後だったとか。 おしまい。 あとがき。 さて…今回もなんか変なオチでしたが… 今回は、蓬莱氏のプクリンを拝借してストーリーを作りました。メインは相変わらずこの二人ですが。 さらに、ロコン・ライチュウ・フシギバナも登場。…キャラがかぶるので、進化系がバラバラなのはご愛敬。 この3人はゴーグルシリーズからほぼそのまま持ってきた形となっています。 それでは、また次回の作品でお会いしましょう。読んでくださり、ありがとうございました!
ある雪の振る冬の日、ボクはコタツに入りながらふと思った。 「ねー、ニャースは外で遊ばないの?」 ボクは対面でコタツに入っているニャースに聞いた。 ニャース以外の他の萌えモン達は皆、外で雪合戦をしている。 「あー、イシツブテを入れて投げるのは反則だよー!」 「ホホホ、勝負の世界は非常なのよ~♪」 楽しそうな声がここまで響いてくる。 「あたいは猫なの。  寒いのは苦手だからいいの。  外で雪合戦するよりコタツでみかん食べてるほうがよっぽど有意義なのよ。」 そう言いながらコタツにおいてあるみかんを手に取りモグモグと食べる。 「まーボクも寒いの苦手だから。」 コタツの中でぬくぬくしながら思う。 やっぱりコタツはいいなぁって。 「あなたこそ、雪合戦しなくていいの?」 みかんを食べながらニャースが聞いてくる。 「ボクは弱いから。  ボクが入るとチームが負けちゃうからさ。」 ボクは運動が苦手だ。 学校でもかけっことかは遅いほうだし…。 「あーもう!  イライラするわね。  そんなことで悩んでないでさっさと行ってくる!  別に負けたからって誰も恨まないんだから。」 そう言われるとコタツから蹴りだされた。 ボクは一言 「ありがとう。」 と言って外に飛び出した。 皆の雪合戦に加わるために…。 「まったく、いつまでも女々しいんだから…。  それにコタツはあたいの物なの~♪」 そうやってニャースは一日中コタツに篭っていた…。

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