5スレ>>71

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「……うぅ、けほけほっ」  ここは何処だ……。  べとべたぁを追って飛び込んだまでは良かったが、水の流れに負けて溺れてしまった。  助けるどころか自身も要救助状態になるとは……不覚。  ともあれ、ここで伏せっていてもしょうがない。  べとべたぁの方から俺を探しに来れるとは到底思えないからな。  ぽたぽたと体中から雫を垂らす体を起こし、犬のようにぶるぶると震わせる。 「さ、さぶ……」  とりあえず待ってろよべとべたぁっ。すぐに助けに行くからな。  でもまずは体の水気だけでも落とさなくちゃ……風邪ひくぞ……。  背負った荷物からタオルを探し、取り出す。  ……濡れてる。  俺は肩を落とした。  ズブ濡れになった荷物を整理していたら随分と時間がかかった。  マッチも使えなくなったし、お握りはもうなんとも。  大量に用意した大型タオルは濡れちゃったし……。  タオル絞るだけで腕が少しくたびれた。 「よし、そろそろ行くか」  体の震えは止まってはいないがさっきまでよりはかなり改善されたし。  これならべとべたぁを探すのに支障はきたさないだろう。  行くべき場所に見当はないが、一本しか道は続いていないようだし、まずは行けるところから。  しかし……寒い場所だということは十分理解していたのだが、雰囲気までこんなに冷たいとは。  うすらと漂う白い靄、地面から突き出したクリスタルのような氷柱。  うち氷柱は歩けば歩くほどその数を増やしていった。  近づくな、と排斥感を象徴するように。  だが俺はべとべたぁを見つけるまでは帰るつもりはない。  五分ほど進んだ頃、ようやく辿り着いた。 「……」  掛かっていた靄はすっきりと晴れ、氷柱の一本も生えていない空間。  その中央、二つの影が見える。  片方は見慣れたものだった。 「べとべたぁ……っ!」  期せずして出た一声に、べとべたぁはこちらへ振り返った。  にぱ、と大きな笑顔を見せて、とてとてと駆け寄ってくる。 「ごしゅじんさ――っ」  ずしゃ。  転んだ。  綺麗に顔から地面に突っ込んだ。 「……う、うぅぅぅ」  しかも泣き出す。  いつも通りの流れに俺は思わず微笑んだ。  走り寄って、手を貸してやる。 「ほら、立て立て」 「ごひゅじんさまぁ……」  起こすと、がしりと抱きついてきた。  肩を震わせてるのは泣いているからだろうか、喜んでいるからだろうか。  とりあえず腕を回して抱えてやる。  ぽむぽむと頭を叩いてやれば震えも収まっていく。 「そなたがこの者のトレーナーか」  慰めムードの中、鋭い声が耳を貫いた。  顔を上げると目の前に赤い瞳。  ……こいつが氷の女王か。  こんな場所で堂々と振舞える萌えもんなんてそれ以外に思いつかなかった。 「あぁ、そうだけど……」 「なればはよぅ立ち去れ。我を氷の女王と知っておるのだろう?」 「やっぱりそうか……」 「凍らされたくはなかろう?」  若干、ほんの僅かに周りの空気がぴし、と音を立てた。  もとより冷たかった空気が更に冷やされる。  べとべたぁを背後に回して、じり、と後ずさった。  今に来て俺は氷の女王と対峙する。 「むむーっ」  後ろで不満げにべとべたぁが唸っているが無視。 「うぅー」  無視。 「どいてですごしゅじんさまっ。わたしはフリーザーさんとお話しするですっ」 「……フリーザー?」 「こおりのじょおうさんのおなまえですっ。さっき教えてもらったですっ」  教えてもらった? べとべたぁが? 「……さっきまで何はなしてたんだ?」 「じこしょうかいをしてから、いっしょにおそとにいきましょうってはなしをしてたです」 「へぇ……結果はどうだった?」 「なかなかうなづいてくれないですっ。でもぎゃくに燃えるですっ」  めらめらと目の中が燃えている。  これは止まらないな……。  後はべとべたぁに任せることにした。 「さぁふりーざーさんっ! ごしゅじんさまもきたですし一緒にいくですよっ!」 「我は外に出るつもりはないと言うておろう」 「かんけーないですっ。でるですっ。そとはきもちいいですよっ」 「しかしだな」 「おそとにははんばーがーというおいしいたべものもあるですし、おそらとうみはなかよしですっ」 「……」 「くりすますという日にはきれいなつりーがたつですっ。他にも他にもっ」  両腕をばたばたと振ってふりーざーを捲くし立てるの図。  べとべたぁが女王の名を冠する萌えもんを怯ませているというのが面白い。 「たいようはぽかぽか、くもはすずしくて、あめはぬれるです。  かぜはゆらゆら、かみなりはこわいですけどごしゅじんさまがいるのであんしんですっ」 「……ふ」  フリーザーが口の端から笑みを漏らした。  一度出てしまえば後はなし崩しに笑いが生まれる。  あれこれとひたすらに喋り続けるべとべたぁを見、その頭に手を伸ばした。  ? という表情でフリーザーを見つめるべとべたぁ。  女王は手を当てたまま屈んで、視線の高さをあわせた。 「外は……そんなにも楽しいのか」 「はいっ!」 「では、我も行こう……」 「……?」 「外へ行ってもよい、と言っておるのだ」 「……」  ぽーっとした表情のべとべたぁ。  ゼッタイに何言ってるのか理解できていない顔だ。 「そとへいってくれるですか……?」 「そうだ」 「え……ぇ……。や、やったーですっ!!」  がし、とフリーザーにべとべたぁが飛びついた。  その顔には迷惑そうな色は見えない。むしろ穏やかな目に変わった。 「さ、ごしゅじんさまっ! おそとにもどるですよっ!」 「おぅ」  たたーっと俺が来た道を駆けて行く。 「おまえだけ先に言ってもいみないんだぞー!」  聞こえてない。  駆け足が止まらない。  俺は口元に手をやり、笑っているであろうフリーザーに声を掛けた。 「外に出ていいのか?」 「どういうことだ?」 「お前、恐いんじゃないのか? 子供を凍らせたこととか」 「恐い? 人を凍らせたのは事情があったからだ」 「事情……? いいや、うん。とにかく大丈夫なんだな」 「あぁ。我はただきっかけを求めていただけなのかも知れぬ」  多少、町で聞いたお話とは異なる点が気になるが、関係ないな。 「ところでフリーザー。お前、ちょっとおかしくないか? 話し方が」 「……そ、そんなことはないぞ」 「そうかぁ? 所々口調が崩れてる気がするんだが」 「……」 「ほら、正直に吐け。今の内にはいた方が後々苦しまなくて済むから楽だぞ」  肘でつついてみた。 「ほれほれ」 「……む」 「む?」 「む……無理っ、無理ですっ! やっぱり自分には偉そうな口調は似合いませんっ!」 「……は?」 「に、似合わないですよねっ? ねっ?」 「偉そうな口調の方が似合ってるとは言えない……。おっと、口に出てた」 「そ、そんなことないですよぅ。自分は演技とかニガテですからっ」  ぱたぱたと翼を振って弁解するフリーザーを見て、氷の女王という名は似合わないな、と思った。 「氷の女王なんて恐れ多かったんですよぅ……」  とりあえず、オドオドしすぎだこのやろう。

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