5スレ>>76

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静かな音をたてながら、カーテンと窓が開かれる。 窓の外には、まだ淡い紅色に染まっている銀世界。 落ち着いた表情とは裏腹に、彼女の金色のしっぽは本心を 露わにしている。 「マスター、朝ですよ。早く起きてください」 「ぅうー……あと5分……だけ……」 俺の体を揺すっていたウインディの動きが止まる。しっぽ以外。 ~~きっちり5分後~~ 「マスター、5分経ちましたよ。早く、早く起きてください」 「ぅうー……あと5分……だけ……」 俺の体を揺すっていたウインディの動きが止まる。 「……ていっ!」 ──と次の瞬間、布団が吹っ飛ばされ、俺の体は1月の冷気に晒される。 いつもならここで飛び起きるのだが、今日はそうはいかない。 何せ布団に入ったのが、外が薄っすら明るくなってきた頃なのだ。さすがに眠気が強い。 「寒い……寒いよ……あぁ布団……布団が恋しい……」 いつもどおりのパターンで起きてくれない俺に対して、ウインディは少し顔をしかめる。 「毎朝私に付き合ってくれるって約束したのに……  ……マスターは私よりも布団のほうが好きなんですか?」 「いや、そういうわけじゃ…ないん…だ……ぁ寒いよ…ムニャムニャ」 ──ドサッ。 全身にもふもふな重圧がかかる。何か顔にやわらかいものが── 「それなら私が布団になってあげます♪」 き、気持ちは嬉しいがウインディ!顔顔!!息が、息がッ──────!! 俺の意識はここで途絶えた。 v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v 「どうです、目が覚めましたかマスター?あれ……マスター?」 ──返事がない。 「お~いマスター……ペチペチ」 ──返事がない。 よく見ると、主人の顔には謎の血がべったりとついている。 …… ………… ……………… 「何 故 殺 た し」 「ほ、ホーホーさん!?あの、これは、その、えっと、どどどうしよう、マスターが!」 「もう2人騒ぎ飛び出す時間、出てこない、不思議で覗き……  主人に襲い掛かるウインディ 自 重 汁」 「どうしようホーホーさん…………とととりあえず埋めちゃおうか……」 「とりあえず も ち つ け ウインディ」 ホーホーはバッグから復活草をつかった!▼ マスターのHPが113回復した!▼ v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v 不意に目を覚ますと、そこには複雑な表情のウインディが俺の顔を覗き込んでいた。 なんかすごい事があったような気がする……がウインディをあまり待たせても気が引けるので、 俺はいろいろ考えるのをやめて支度をはじめる。手早く顔を洗い、服を着替えて…… なんか口の中が苦いんだが……気にしてる暇はない。 支度を済ませて外に飛び出すと、ウインディもちょうど準備を終えたところだった。 自転車のハンドルにはリードが結び付けられており、ウインディはしっかりと リードの一端を握っている。いつも思うが逆じゃないかコレ。俺が散歩されてる錯覚にとらわれる。 「それじゃ、いきましょうか♪」 自転車に乗るが早いか、ウインディは猛スピードで走り出す。 俺は急発進の衝撃をこらえつつ、雪道にタイヤを取られないようバランスをとる。 にしてもウインディ、あのAAが似合いそうなポーズで走るなぁといつも思う。( ^ω^) 振れるしっぽとチラリズムのコンビネーション。毎朝の散歩の醍醐味である。眼福眼福。 「風が気持ちいいですね~マスター」 俺は寒いばかりだが。炎属性+もふもふのお前はさぞかし体温が高いんだろうなぁ。 そんなことは置いといて、とりあえず話を切り出す。 「なぁ……今朝のことだけどさ」 走るウインディの頭が、少しうつむき加減になる。 「……ん……い」 ポツリとウインディがつぶやくが、風のせいで上手く聞き取れなかった。 「ゴメンな。毎朝の散歩があるって覚えてながら夜更かししてた俺が悪かったんだ」 「────!!」 ウインディはさらにうつむき加減になり、手を地面について走りだして ────って"しんそく"は らめぇえええええええええええええええええええ!!!!!!!! 自転車の重心はリードの結ばれたハンドルよりも低かった。 不意に加えられた前方への加速ベクトルに耐えられず、自転車の後輪が宙に舞い── 自転車は吹き飛んだ。 急に軽くなったリードに気がつき、ウインディが走るのをやめる。 「──……マスター!?」 v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v ウインディは雪に埋もれて動かなくなっている主人を掘り起こす。 「ウイン……ディ……」 幸い、雪がクッションとなったおかげで酷い外傷は見当たらない。 しかし、顔に生気は感じられない。体温がかなり奪われているようだった。 散歩の都合上、カーブのないまっすぐな田舎道。近くに家は見当たらない。 「寒い……寒いよ……」 「マスター!寝ちゃダメです!!しっかり、しっかりしてください!  うぅ…………そうだ、私のわざで暖めてあげれば……!」 泣きそうになりながらも、ウインディは必死にわざを繰り出す。 「えいっ、ひのこ!ひのこ!ひのこ!」 僅かに雪が溶けるばかり。人を暖めるには明らかな火力不足だった。しかし…… 「私に使える炎技はこれしか……」 主人が彼女をゲットする際に、ヘマをしでかしたのが原因である。 ──彼女に使える炎技は、"ひのこ"しかないのだ。 ウインディはぺたりと座り込んだ。──無力感、絶望感が漂う。 「あぁ布団……布団が恋しい……」 主人のうめき声に、ウインディはハッと顔を上げる。 そして──意を決して、躊躇いながらも──主人の濡れた服に手をかけた。 v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v─v あぁ……暖かい……もふもふで…… それに……いい香りがする…… なにか……やわらかい…… 「ひぁっ!?///」 ウインディ……?ごめん……俺……夜更かししてて……眠いんだ…… あと5分だけ……寝かせてくれ…… 目が覚めたのは昼過ぎで、俺はいつもどおりベッドに居た。 もしかして夢……だったのか? 「あ、マスター気がつきましたか?」 部屋にはいってきたウインディ。"気がつきましたか"ってことは夢じゃなかったんだな。 「あぁ、もうすっかり大丈夫だ。むしろ気分がいい」 「──!!もしかしてマスター、帰り道のこと覚えてますか!?///」 「いや、はっきりと覚えてはいないんだが……」 なぜか安心した様子のウインディ。そういわれると逆に気になるんだが。 「と、とりあえずご飯食べましょう、ね?準備して待ってますから」 「あぁ」 「マスター、その……」 閉まりかけた扉の隙間から、ウインディがつぶやく。 「ん?」 「……ごめん…なさい」 「あぁ、俺は別に気にしてないよ。お前のああいうところも大好きなんだ」 扉が壊れるほどの勢いで閉まる。照れるな可愛いぞコンチクショウ。 【ウインディのターン】 ────"ああいうところ"!? やっぱりマスター、帰り道で起きてたんだ……どうしよう/// 「お 楽 し み で し た か  ウインディいつのまにそんな積極的。主人は裸、ににんばお「ドスッ」」 ホーホーさんこそ自重してください! 「何 故 こ ろ…た …し……」 【ここまで】 まぁ、たいした事態にもならなかったんだし、今日の事は大目に見てやろう。俺はそう思った。 ──ウインディが引きずってかえってきた自転車の有様をみて、憂鬱になるとは知らずに。 -fin-

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