5スレ>>102

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「きゃはははー!捕まえれるもんなら捕まえてみなー!」 「くっ!まて、こいつー!」 いきなり騒がしくて申し訳ない。 ここ、萌えもんハウスには捨てられて野生では生活できない萌えもんたちが集められ、 新しいマスターが見つかるまで預かっている施設である。 預かるとはいっても、マスターが見つからない場合もある。 そこである程度野生でも生活できるように訓練する場合もあるがここでは割愛させていただく。 捨てられた子たちも様々でいろんなタイプがいる。 うちのオオタチみたいに塞ぎ込む子もいるし、捨てられたことすらわかっていないような子もいる。 一箇所に同じ固体の萌えもんがたくさん捨てられていて、「生態系がくずれるから」とそれがうちに来たこともあった。 そんな中、今うちで一番騒がしいやつがいる。 そいつはいたずら好きで、ことあるごとにいたずらをし、仕事を増やしていく困ったやつである。 (仕事が増えるとはいっても、もともと許容範囲なので問題はない) その萌えもん―エイパムはうちの中でムードメーカーみたいなやつだった。 「またやってるの?先生もこりないわね」 「そう思うなら手伝ってくれ。“でんこうせっか”とか“こうそくいどう”なら追いつくだろ」 「“こうそくいどう”なんて使えないし。私はこの子たちの相手で忙しいの。ねー?」 「そうだよー。おねーちゃんにえほんよんでもらうんだー」 「わかったわかった。自分でやるからもういいよ。姉ちゃんのいうことちゃんと聞いてるんだぞ?」 「はーい!」 とりあえず今日ぐらいは捕まえて説教してやらないとな。しばらく忙しくて放置しすぎたしな… 後探してないのはこっちの倉庫だけか。 しょうがないな…かまかけてみるか 「あれー!なんで倉庫の戸が開いてるのかなぁー!これはちゃんと閉めて鍵も掛とかないとなぁー!」 「それはだめー!」 「つーかーまーえーたー♪」 「くそー。だまされたー…」 「とりあえず、落書き消しな。ランターンに見ててもらうから」 「はーい…」 「ふ~、疲れた~。ってもうこんな時間かよ」 時刻は12時を回ったところ。普段10時にはすべての仕事が終わっているので驚いてしまった。 「お疲れ様です~」 ランターンがお茶を淹れて持ってきてくれた。 「おう、悪いな。あの2人は?」 「カラカラちゃんはいつも通り皆といっしょに寝ちゃってますね~。オオタチちゃんも疲れてたのか、皆と寝てますよ~」 「そっか…。わかった、ありがとな」 「いいえ~これぐらいどうってことないですよ~」 「あー、そうだ、明日からさ新しく預かる子くるから」 「萌えもんの子ですか~?」 「いや、人間の子だ。両親の仕事で3日だけな。よろしくたのむわ」 「たのむわ、じゃなくて~働いてください」 「ぐ、俺はな、他にもやることあるんだよ!」 「わかった上で~言ってるんですよ~?」 「ああもう、わかってるよ!」 次の日、その子とその親御さんが来た。 「じゃあ3日だけ、お願いしますね」 「はい、任せてください」 「ママー!いっちゃやだー!」 「ほら、泣かないでいい子で待っててね?もう時間だから。じゃあ後はお願いします」 「あ、はい、お気をつけて行ってきて下さい」 親御さんが行ってしまい泣きじゃくるその子ども。 さてどうしようかと声をかけながら考えていると、エイパムが近づいてきた。 「なんでその子泣いてるのさー。泣かせたのかー?」 「あのな、俺が泣かせるわけないだろ。いいからあっち行ってろ。ほら、泣いてないであっちいってみんなであそぼ?ね?」 「あたしもあそぶー!ほら、あっちいこう!」 ‘その子’の手を引いて、みんなのいる方までかけていくエイパム。 その様子を見ていたかどうかはわからないが、ランターンに言われる。 「サボってないで~働いてくださいよ~?」 「サボってねぇよ!」 正直びっくりだ。 ほんの数時間前まで泣いていた‘その子’が今ではみんなと一緒に楽しそうに遊んでいる。 それもいたずら好きのエイパムが中心になってだ。 はっきり言ってエイパムはそれまで1人で遊ぶのが多かった子だ。 だから余計に驚いているんだと思う。 「お姉ちゃんみたいな気分なのかねぇ」 「独り言は気持ち悪いですよ~?」 「じゃあ聞き流しとけよ。ん、そうだ。ちょっとここ見といてくれ。一回部屋戻るわ」 「言うと思ってましたよ。早く用事済ましてきてくださいね~」 「わかってるよ」 部屋に戻り、資料をさがす。 エイパムの資料は…っとこれか。 さて、うちから萌えもんを新しいマスターに渡す場合、ある程度の資料と一緒にわたす。 大抵が萌えもんと暮らしたことのない人の家にいくので、一緒に暮らす上での注意をまとめたものである。 普通に接する上では危害はない。 しかし、それでも彼らは人間とは違う生き物でバトルなんかも行うので、それなりには危険なのだ。 そこでこのような資料を作ってから引き取り先にあずける。 今作っているのは正直無駄になるかもしれないが、作っておく価値があると思ったので今作っているというわけだ。 「こんなところか…」 いろんな子がいるので、同じ種族でもまったく違う内容になることもある。 そのため、資料だけをまとめておいて渡す直前に作るのがほとんどである。 前々から作っておく場合もあるが、毎日が発見の連続だったりするので直前のほうがより詳しく書けると思っているからこうしているわけだが。 「せんせ~。まだなの~?」 ダンダンとノックの音。 子どもたちがよんでるみたいだ。 「おう、今行くからまってな~」 俺は、子どもたちのところに向かった。 ‘その子’は3日預かった後、親御さんに連れられて帰っていった。 ‘その子’がエイパムと離れたくないといって泣きじゃくっていて、 俺が「エイパム連れて行きますか?」といったときの‘その子’の顔はほんとにうれしそうだった。 親御さんも「ほんとにいいんですか?」と言っていて、引き取ること自体は肯定的だった。 けど当のエイパムが行かないと言ってどこかに行ってしまったので資料だけ渡してその日は帰ってもらうことにした。 さて…エイパムはどこかな…。多分あそこにいるだろう。気分的に。 「やっぱりここだったか」 「えっ?!せんせー何でここが?」 ここ―屋根の上―はたいがいの悩んでる子が行き着く場所だから、一発でわかる。でも、 「今日はいい天気だからな。日向ぼっことかしたくなるだろ」 「ふ、ふ~んそっかー……」 こんな感じでそれっぽいことを言っておいて茶を濁しておく。 「とりあえず、あとで落書き消しな」 「なんでばれたの?!」 「あんなことするのなんかお前しかいねーよ」 相当混乱してるな、こりゃ。 「あの子と離れるの嫌なんだろ」 「な、なんのことさ?!」 「ん~。独り言だから気にすんな」 「………」 むすっとした顔になるエイパム。俺は問いかける。 「あの子のとこに行きたかったら行ってもいいんだぞ?」 「せんせーはあたしがいなくなってもさびしくないのか?」 「ん~そうだな、いたずらするやつがいなくなって静かになっていいな~」 「え~。さびしくないのかぁ~」 「でもなぁ。静かなのは嫌いじゃないからな」 「そっか~」 「てゆーか別にお別れじゃないぞ?」 「え?」 「あの子のとこに行ってもな、遊びに来ればいいさ。いつでも来いよ。」 「あそびにいってもいいのかー?」 「誰がだめって言った?」 「そっかー。そうなのかー」 「そうだぞ。だからさ、あの子のところにいってもいいんじゃないか?」 「……うん。あたし、あの子のとこ行くよ。その前にさお願い聞いて?」 「なんだ?今日のご飯のメニューか?」 「そうじゃなくて!一回、一回でいいから抱っこして?お願い」 俺はわかったと言って、エイパムを抱きかかえる。 すると、エイパムは泣き出してしまった。 「ほんどにざ、ひっ、ま゛たきでもいいんだよね?ほんどに、ひっく、いい゛んだよね?」 「ああ、いいから何時でも来ていいから。カラカラとかもさ、お前のこと待ってるから。いつでも遊びに来いよ」 しばらくした後、エイパムは「泣いてたこと内緒にしてね」といつも通りの顔で言ってきた。 俺もいつも通りの態度で「でもなぁ、鼻水とかいっぱいついてるからなぁ」と冗談を言っておいた。 その後もいつも通りにご飯を食べ、お風呂に入り、そして寝る。 「マスター、お茶が入りましたよ~」 ランターンがお茶を持ってくる。今日はオオタチも一緒だ。 「ん~、ありがとな。ってオオタチがくるなんて珍しいな」 「別にですね、今日はなんとなく行こうかなと思っただけなんだから!」 ん?何で怒ってんだ?まあいいか。 「…さびしくなるなぁ」 「そんなの今に始まったことじゃないでしょ」 「わかりますけどね~。その気持ちは」 「まあ、あれだ。あしたは笑顔で送り出してやろうな」 「わかってますよ!」「わかってますよ~」 その後、俺は眠りについた。 次の日、‘その子’と親御さんがエイパムを引き取りにきた。 ‘その子’もエイパムもとても笑顔で、こっちまで微笑ましくなるくらいだった。 正直泣きそうだけど、ぎりぎり耐えている。 他のやつらも同じだし、カラカラとかはもう泣いている。 「ほら、泣くな。笑顔で見送ってやれ」 《なきそうなくせに》 「泣いてるやつよりマシさ」 そんなことを言いながら、エイパムを見送る。 エイパムが最後にいったのはこうだった。 「せんせー、みんな、いってきまーす!」 さようなら、じゃないのがあいつらしかった。 だから俺は、「おう、行ってこい!何時でも待っててやるからな!」 と返してやった。

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