5スレ>>112

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――――今まで来た道を戻る。 先程の戦いで無謀にもサンダーに立ち向かい、ぶっ飛ばされた俺は、イワークの肩を借りて歩くこととなった。 全身がとにかく痛い。でも、骨が折れてる様では無さそうだから良しとしておく。 「いてて……」 歩くたびに、体中が痛む。 「マスター、やっぱり少し休んだほうがいいのでは……」 何度も痛みにうめく俺の身を案じてるのか、さっきからイワークは俺に休むように言っている。 そりゃあ、そこまで俺のことを心配してくれるのはありがたいし、出来るならば休みたいけど……リザードンの容態が心配だ。 戦闘後、幸運にもバッグの奥底から発見されたげんきのかけらで、応急処置はとったが、 それでもサンダーの雷撃を受けた右翼は回復する気配を見せない。一刻も早くセンターに行って診てもらわないと。 「大丈夫だって。というか俺のことよりリザードンのことを心配してくれ」 「でも、マスターだって随分深い傷を負ってるみたいじゃないですか」 「こんなの寝てれば治る。でもリザードンはそうじゃないだろ? もしかしたら二度と飛ぶことが出来なくなるかもしれない。 リザードンをそんな目には遭わせたくないからな」 この傷が寝ただけで治る確証は無いが。 「マスター、優しいですね。自分の身を心配するより仲間の心配をしてくれるなんて」 「ま、まあ、トレーナとしては当然のことだろ」 イワークが笑ったもんだから、照れくさくなって頬をかく。 笑顔の可愛さと、さっきから肩を借りてる=密着してることも重なって、無駄にドキドキしてしまう。 落ち着け、落ち着くんだ、俺……速まる鼓動を抑えるために、とにかくこの状況について、過剰に意識しないことにする。 ――――それにしても……俺とイワークの前を行くエレブーの足取りがどこか重く感じる。 さっきまではスキップしながら楽しそうに歩いていたのに。 「なあ、エレブー」 「……」 俺の呼びかけにエレブーは返事をしない。今度はさっきより少し大きな声で呼んでみた。 「エレブー」 「わっ! え、えーと……なに?」 いきなり呼ばれて驚いたのか、肩を一度震わせた後、振り返るエレブー。 「どうしたんだ? さっきから元気がないみたいだけど」 「そ、そうかな、そういう風にみえるかな? あはは」 ガラガラからよく鈍感と言われる俺でも、エレブーの笑顔が作り笑いであるということはすぐに分かった。 何故俺が鈍感と言われるのかは……よく分からんが。 「何かあったのか? 隠さないで言ってみろよ」 「……言わなきゃ、だめ?」 隠し事があるというのは確かなようだ。 「心配になるだろ。俺たちは仲間なんだからさ」 「……うん、分かった」 渋々と了承してから、エレブーはは色んなことを話してくれた。 無人発電所にサンダーがやってきて、皆の食料――ごはんを奪ってしまったこと。 ここの長であるマルマインを中心に、サンダーに対して抵抗を試みるが、サンダーは皆を襲い始め、 エレブーのお父さんは逃げ遅れたコイルをかばって大怪我を負ってしまったこと。 そして、マルマインからトレーナーの存在を聞いて、トレーナーと共にサンダーを倒そうと考えたこと。 でも、話の内容を聞いた限りでは、何故エレブーが落ち込んでいるのか、その理由は分からなかった。 「そんなことが……だからあの時自分から仲間になるとか言い出したのか?」 エレブーは頷いた。 「なるほどな……それで? 元気が無いのとどう繋がりがあるんだ?」 「そ、それは……あ」 更に追求しようとエレブーを問いただしたその時、俺の方を見ていたエレブーの視線が遠くへと逸れた。 「捜したぞ、エレブー」 背後から声がしたので振り返ると、浮遊しながら腕を組んでいるマルマインがいた。 とにかくその目に圧倒された。凄い威圧感を放っている。 俺はイワークの肩を借りながら体の向きをマルマインのほうへと変えた。肩を借りているせいか、ちょっと動きづらい。 「さっきから最深部で凄まじい音が聞こえたから、どうしたものかと行って見たら……あの有様だったのでな。 まさかお前の身に何かあったのかと思ったのだが……どうやら無事のようだな」 こいつがさっきエレブーの話に出ていた、ここの長のマルマインだろうか。 彼、いや彼女と言えばいいのか、マルマインは俺に向かってお辞儀をした。 「トレーナー。礼を言おう。お前たちのお陰で私たちは救われた」 「いや、そんな、俺は何もしてませんよ。礼ならエレブーに、是非」 「それでもいい。お前たちが私たちを救ってくれたことには変わりは無い」 深々と下げた頭を上げることなくマルマインは言う。 「あ、あの……そんな深く感謝されてもな……」 ここまで感謝の念を表されると、ちょっと困惑してしまう。 それだけこいつらはサンダーに長い間苦しめられていたってことになるのだけれど。 「これでもう、飢えに苦しむ者はいなくなる。もちろん、外の世界への電気の供給も元通りになるはずだ。 ……ところでエレブー」 マルマインは顔を上げて、エレブーの方へ目をやった。ただでさえ険しい目つきが更に険しくなる。 「掟は守ってもらうぞ。約束だからな」 「う、うん……」 掟という言葉を聞いて、悲しそうにうなだれるエレブー。 「掟?」 「ああ、ここでの掟だ。トレーナーに捕獲された、または手を借した者は、是非問わずここを出て行ってもらう、そういう掟だ」 掟があることなど、初めて聞いた。さっきのエレブーの話には少なくとも掟の話題などなかったし。 「そうなのか? 掟があるって」 エレブーに確認を取ってみると、彼女は小さくうなずいた。どうやら本当のことらしい。 「エレブー!」 また背後から声がする。振り返るとたくさんのコイルに支えられながら、おぼつかない足取りでエレブーがこっちへ歩いてきた。 「お父さん!」 「エレブー、無理はするなと言ったはずだ!」 マルマインとエレブーがこっちへやってきたエレブーの元へと駆け寄る。どうやらエレブーの父さんのようだ。 「す、すまない……まさかお前の身に何かあったのではないかと胸騒ぎがして、じっとせずにはいられなくなったんだ。 しかし……やはりまだまだ自分一人の力で歩くのには程遠いようだな」 「無茶をするな。少し座るといい」 マルマインがコイルに指示を出し、コイルたちはそっと父さんを座らせた。 「お父さん……」 「エレブー、良かった。無事だったんだな」 「うん……!」 少し涙ぐんで、エレブーは父さんの手を握る。 手に力が入らないのか――父さんはエレブーの手を握り返そうとはしなかった。 「……マスター、大丈夫ですか?」 イワークが心配そうに俺の顔を覗きこむ。 「俺の怪我のことか? それなら大丈夫だって言ってるだろ、心配するなって」 「そうじゃなくて……」 「え?」 イワークの視線の先を辿る。辿った先は、俺の胸元。 知らず知らずのうちに俺は胸の辺りを強く握り締めていた。 「苦しいんですか?」 「……そうらしいな」 イワークにそう指摘されて、さっきから胸が締め付けられていることに今更になって気づく。 さっきサンダーの突進を喰らった時の痛みじゃない、もっと別の何かが、俺の胸を締め付けている。 「引き離したくないんでしょ、あの二人を」 背後からガラガラの声がした。 「そりゃ、あんな親子仲がいいのに、掟に従って別れなきゃいけないなんて……悲しいよね」 ガラガラは俺の隣に立つと、少し悲しげな表情でエレブーたちの方を見た。 「そうだな……」 掟に従って……エレブーはここを出なければいけない。 それは父さんとの別れを意味する。だから、さっきからエレブーは落ち込んでいたのか……と今になってようやく理解した。 「エレブー、ここで……お別れだ。 ずっとこのままでは埒が明かない。トレーナーを待たせてはいけないからな」 父さんの言葉を聞いて、エレブーは俺たちの方を振り向く。 「うん」 エレブーの右手が、父さんの手の温もりを惜しむかのように、ゆっくりと離れた。立ち上がって、俺たちの元へ駆け寄る。 「ご、ごめん。い、行こうか」 また作り笑い。 「……」 俺は何も言えなかった。 何故掟に従わなければいけないのだろうか。それが伝統だから? 今までの仲間が守ってきたことだから? そうだとしても……俺は納得がいかなかった。 「なあ、マルマイン」 「なんだ?」 「俺は……エレブーを連れて行けないよ」 俺の言葉にマルマインの顔が強張った。信じられない、と言わんばかりの顔だ。 「いくら掟だとしても、こんな形で親子が離れ離れになるのは……やっぱり辛いと思うんだ。 それに、こんな状態の父さんを一人にするわけにはいかないだろ?」 「お前、何を言って」 「マルマインさん、いいよ、だいじょうぶ」 マルマインの言葉を遮ったのはエレブーだった。 「マスターの言うとおりだよ、私ね……ホントはお父さんと別れたくない。 でも、決めたんだ。お父さんと別れることになっても、サンダーを倒しに行くって。 みんなのごはんを取り戻すんだって。これは私が決めたことだから……ね?」 「エレブー……」 「私だって、もうこどもじゃないんだから、お父さんがいなくても、大丈夫だから……」 泣くことをこらえているのか、必死に笑顔を作るエレブー。 「トレーナー、私からもお願いする。どうかエレブーを連れて行ってくれ」 父さんもまた、エレブーと同じ気持ちだった。 「私はいつか、娘と共にここを出て、色んなものを見せたかった。でも、この体ではその夢も絶たれてしまったようだ…… だから頼む、代わりにとは言わないが、エレブーに見せてやってほしいんだ、この外に広がる美しい世界を」 「……」 俺は結論を出せずにいた。 ここまで本人から言われると、俺に拒否権はないのだけれど。 それにそろそろ仲間を増やさないといけないと思ってたんだ。数日前ののセキチクジムのことを考えると尚更に。 でんきタイプはパーティにいないから、大歓迎だ。 でも……どうしても突っかかる。 これは本当に二人が望んでいることなのだろうか、と。 親子が離れ離れになろうとも、望むことなのだろうか、と。 「……自分が旅に出始めた頃を思い出してみたら?」 「え?」 「マスターも同じでしょ。この旅だって、マスターが望んで続けている。 家族と離れ離れになったとしても、その上でこの旅を続けている。 お母さんだって、本心はマスターを止めたかったんだと思うけど、それでも、マスターのことを考えて行かせてあげた…… 状況は同じだと思うけどな。結局のところエレブーだって、父さんとの別れを覚悟した上でこう言ってるんだしさ」 ガラガラにそう言われて、旅に出始めた頃の記憶を思い返す。 オーキド博士に図鑑を渡されて、是非問わず、出発じゃー! とか言われて、 旅に出ることを母さんに話した時は、やっぱ男の子は旅にでるものなのよ、って笑ってたくせに、 いざ旅立つ日になると目を潤ませて俺のことを見送ってくれてたな。 俺も、母さんと離れ離れになるのは嫌だったけど、それでも萌えもん図鑑完成という使命を全うしようと、そう決めたんだっけ。 「同じ気持ち、か」 天井を見上げて、目を閉じる。 これが、2人の望んだことならば。――――よし、決めた。 目を開けて、エレブーの方を見る。 「エレブー」 そして、手を差し出した。 「一緒に……行くか?」 エレブーは父さんの方を見た。 父さんは、一度うなずいてから、笑って、 「行って来なさい、エレブー」 十数年間、片時も離れることの無かった愛娘を、見送る。 エレブーも父さんの笑顔に笑顔で応えると、再び俺の方を向いて、 「よろしくおねがいします、マスター」 差し出された手を、強く、握った。 「主!」 無人発電所から出るや否や、ギャラドスに呼び止められる。 「ギャラドス? 確かお前ハナダに帰ったはずじゃ」 「無人発電所の方角から光が見えて……主に何かあったのかと思ったが…… その体、大丈夫なのか?」 急いでここまできたのか、少し息を切らしている。 「大丈夫だって、……それより、イワヤマの萌えもんセンターまで乗せてってもらえないか? ちょっとリザードンが飛べない状態なんだ」 「む、そういうことなら承知した」 イワークとガラガラをボールに収めて、ギャラドスの背中に乗る。 さっきまではイワークの肩を借りてたから良かったものの、無くなるとただでさえ痛む全身が余計に痛む。 「相当無茶をしたようだが、目的は果たすことが出来たのか」 「逃げられたよ、ちょっと挑むのが早すぎた」 「その割には、随分と清清しい表情をしてるんじゃないのか?」 「そうか……?」 もし本当に俺が清清しい表情をしてるなら、それは――新しく仲間が入ったからだろう。 その仲間は今、ボールの中で騒いでいる。 初めてだらけの外の世界に対する興奮と、別れの悲しみを紛らわす為に。 ギャラドスの背中の上で揺られながら、今後の方針でも考えることにする。 まずは萌えもんセンターに行って皆の治療をするだろ。 あと、俺の怪我も何とかしないといけない。 たまには母さんの所に顔を見せに行くのも悪くは無いな。 他には――ああ、そうそう。 頑張ってくれた皆へのご褒美として、奮発してタマムシにでも行ってごはんでも食べてくるか。 間もなく沈もうとしてる真っ赤な夕日を背中に、俺たちは無人発電所を後にした。                                        おわり ―――――――――――――――――――――――――― 5話にしてようやく完結。読んで下さった方ありがとうございます。 文章見ても分かる通り、SSを書くのはまるきり初心者なので、 「ここおかしいんじゃね?」って方は御指摘して頂けると嬉しいです…… とにかく自らの語彙の無さに涙。小説でも買って勉強してこようかな。

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