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「1スレ>>440」(2007/12/08 (土) 23:29:15) の最新版変更点
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昼下がり、小春日和とはまさに今日のような日を言うのだろう。
この言葉を考えた先人は何を思い、この言葉を作ったのだろうか?
あぁ、パパそろそろ足が棒のようになってきちゃったぞー。
ニビシティを朝イチで出発し、はや数時間、目的地であるおつきみやまふもとのポケモンセンターにはあと三時間ほど掛かるらしい。
らしい、というのも、先ほどフルボッコにしたたんぱんこぞうからの情報だからだ。
溜息と共にタウンマップを見やる。
地図だと短く見えるんだけどなぁ……毎度ながら、こんな事を思い浮かべてしまうのは甘えなのだろうか?
トキワのもりだって迷いに迷って二日もお風呂に入れなくなるなんて思いもしなかった。
ニビシティのポケモンセンターにはお世話になりました。はい。
あの森って慣れた人だと半日で突破出来るんだってね。
「マスター」
しかし、博士に母さんもこんな年頃の娘に一人旅行ってこいとか、まったく、危ないとは思わないのだろうか?
あっ、一人旅じゃなくて二人旅か、ふむふむ……だがそれでも危ないよねぇ、どっちも一応女の子だし。
シゲルとかサトシみたいな元気一杯の男の子ではなく、私はつい先日まで1日の大半を自室のパソコンで費やす女の子だったのだ。
そんな私を心配に思った母が、オーキド博士に頼んで私にもポケモン図鑑の完成を目的とした旅に出発させた、という訳だ。
”私にも”というのがポイントで実はこの旅、他にもやっている人間がいるのだ。
それが、幼馴染でもああり、先ほど述べた両名サトシとシゲルである。
この二人、なかなかに進みが速く、ニビシティのポケモンセンターにてサトシはおつきみやまを越えたところ、シゲルはハナダシティにいるとメールを受けた。
「マスター」
まぁ~なんというか、依頼する母もあれだが、引き受ける博士も博士だと思う。
まさかこのご時勢「かわいい娘には旅をさせろ」を実行されるとは夢にも思わなかった。
サトシとシゲルは男の子の体力という強力な武器を持っており、旅には強い。
そこで私はどうなのだろうか?
長きヒッキー生活によって培われた無駄な知識とぷにぷにの腕……やばい、泣きたくなってきた。
「マスターっ!」
「ひゃうあ!!」
いきなり、背後から肩に手を置かれ、その手の冷たさに体が少々震え上がった。
振り返ればそこにはわかりやすい怒りマークを額に浮かべた、旅のパートナーが両手を腰に当てていた。
頑強な岩の身体に、意志の強そうな灰色の瞳、身体に対して実は以外にプニプニである頬、極めつけは―――
「全く、何度呼びかければ答えてくれるのですか!アナタは周囲に対する危機管理がなっていません、もしここで野生のモンスターが現れたらどうするつもりなのすか!?」
この透き通った声である。(CV川澄 綾子)
初対面の際に「問おう、貴女が私のマスターか」なんて言われたときは思わず鼻血を噴出させてしまい、出発が一日遅れたのはいい思い出である。
オーキド博士からこの子を貰ったのだが―――何でも最初はフシギダネを渡そうと思ってたらしいのだが、なんとロケット団の襲撃を受けてボールごと盗まれてしまったらしい。
そこで、出番のなかったはずであるこの子が私に渡される事になった、ということだ。
そうそう、サトシはピカチュウを、シゲルはヒトカゲを貰ったそうだ。
どっちもニビシティのタケシに対してマゾな選択である。
それはさておき、この子はサイホーン、性格は真面目でしっかりとした委員長タイプって感じである。
だが、その実、その身に宿す攻撃力は計り知れない。
圧倒的な攻撃力を持ってニビジムのリーダーであるタケシのイワークを「つのでつく」のみで打ち破った姿は記憶に新しい。
「あ~ゴメンゴメン、少々自分の現状における存在意義について考えてた」
「はぁ……別に考え事をするなというわけでもないですが、せめてもう少し回りをみて行動してください」
んでもってこの子のかわいい所が、こんなふうにちょっと難しい言葉を適当に並べれば結構黙ってくれるのだ。
つまり、ちょっと頭の弱い子なのである、そこが萌えるのだが。
トキワのもりでちょっとからかったら顔を真っ赤にして俯いた姿に、私は気が付けばカメラで5枚ほど写真を撮っていた。
「と言うと?」
「足元、ご覧になってください」
言葉に従い、足元を見る。
そこには―――
「おっ、きずぐすりだ」
きずぐすりのスプレーが落ちていた。
スプレーを吹きかければアラ不思議、軽い怪我なら簡単に治せてしまう便利すぎる一品である。
でもまたなんでこんな道のど真ん中に?
「それはマスターが落としたものです、先ほどリュックから飛び出しそうになっていました」
「うっ」
これ見よがしに溜息をつかれた。
彼女と旅を始めてから十七度目の溜息である。
「全く、しっかりしてください」
「うぅ……わかりましたよ~」
リュックにきずぐすりを入れて今度は落ちないようにしっかりとチャックを閉めておく。
それを背負い、また目的地に向かって歩き始めた。
「ね~ね~」
「なんですか?」
一緒に並び、ゆっくりと歩きながら声を掛けた。
「サイホーンは私みたいなのがマスターでもいいの?」
「そうですね……」
うっわ~、そこで押し黙られるとお姉さん泣いちゃうぞ?
いつもより真剣さを増した表情で彼女は歩く足を少し緩めた。
それにつられて、私も速度を緩める。
「初対面の時に、『あぁ、この人は私が支えてあげないと』と感じましたから」
「えーと、つまり私はnotご主人様but被保護者ということ?」
「端的に言えば、そうなりますね」
「―――マジですか」
「えぇ、マジです」
言葉を語る彼女の表情は、何故か今頃自宅にてお茶を飲んでいるであろう母の表情と重なった。
なんだろう、そろそろ本気で泣きたくなってきた。
「ほら、このペースだと目的地に着くまでに日が暮れてしまいます、急ぎましょう、マスター」
「う~わかったよ~」
さっきの真剣な雰囲気はどこへやら、軽い口調で彼女と私は歩くペースをあげた。
お互いの関係がどうであれ、彼女は私の事をマスターと呼んでくれるだろうし。
傍目にそういったことが察知されなきゃどうでもいいかな、なんて思い始めている私はやはり末期なのだろう。
なにより、野宿はもうイヤだし……
「あれれ~?どうして瓦礫の山があってポケモンセンターがないのかな~?」
目の前にはポケモンセンターであったらしいものの瓦礫の山、んでもって野次馬らしい数名の人間がその周辺にたむろしていた。
タウンマップを確認する、うん、ここはまちがいなくおつきみやまのふもとだ。
入り口だってちゃんとすぐそこにあるし……
じゃあなんでポケモンセンターがないんだろう?
「マスター、周囲の人に聞き込みを行ったところ、どうやらロケット団によって襲撃、マルマインによって爆破された、とのことです」
「ウソダー、ダッテココ、オツキミヤマノフモトダヨー?」
「マスター、気を確かに、ふもと=ポケモンセンターではありません」
「アハハハハ、なに?じゃあまた野宿なの?」
「そうなりますね」
「―――そろそろ泣いていいかな?私」
「―――周囲の人の迷惑になるので控えてください」
この日、私の中でロケット団が目下の敵として認識されるようになった事は言うまでも無い。
それより、ポケモンフードって意外においしいね。